MMTは、通貨を発行する国家権力と租税債務を課す国家権力の間には密接な関係があると強調してきた。簡単に言えば、「租税が貨幣を動かす」のだ。また、主権を有する政府は支出のために租税収入を必要としないことも明らかにしてきた。
当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。
当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。
こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。
目次
【税は財源ではない】とは
【税は財源ではない】をフルバージョンで言うと、【私たちは財政の仕組みについて数多くの誤解をしている。私たちはそれらを正さなければならない。例えば、税は財源ではない。】となります。「税は財源ではない」は、その例示部分だけを抜き出したものです。
前回は、【政府は支出をするとき、その財源を確保しなければならない】というのは間違いであることを説明しました。
本日のお題
( ゚д゚)<「数多く」っちゅうことは、財源なんかいらないよって話以外にもまだまだあるんか?
(´・ω・ `)<おう。まだまだあるで。
ということで、今回のお題もこちらです。
【税は財源ではない】
( ゚д゚)<ほいじゃあ、お次は?
(´・ω・ `)<これ↓、いっとこか。
(゚⊿゚)<国債とはつまり、分かりやすく言うと、"国の借金"だな。
( ゚д゚)<ああ、これ。
財政に関する誤解 その2
「国債は"国の借金"である」
国債とは、例えば「政府は10年後に、これの保有者に1兆円を支払います」みたいなことが書いてある債券です。政府はこれを発行して、額面価格(1兆円)より少し安い価格、例えば9900億円で銀行等の金融機関に売る、という国債発行オペレーションを日常的に行っています。仕訳は、こう↓です。
この取引では、政府の政府預金が増えて、銀行の日銀当座預金が減るわけですが、これをこのように↓理解する人がいます。
(゚⊿゚)<これは政府が9900億円を銀行から借りて、10年後に100億円の利息を付けて返済するようなものだ。そして政府が国債を発行するのは税金だけでは支出の財源が足りないときがあるからだ。つまり家計が生活費が足りないときに借金をして、その場を凌ぐのと同じようなものだなww
(´・ω・ `)<全然違うぞ笑笑
(´・ω・ `)<勉強しろ笑笑
( ゚д゚)<全然違うんか?
(´・ω・ `)<国債は家計の借金とは全然違うで。政府が国債を発行するのは政府預金を増やすためじゃなくて、銀行の日銀当座預金を減らすためなんよ。
【国債は税金だけでは足りない財源を調達するために発行する"国の借金"である】
これは間違った理解です。前回の[10-5]で説明したとおり、政府はいくらでも政府預金の残高を補充できますし、国庫短期証券という便利な仕組みも構築しています。
(´・ω・ `)<じゃけー、"税金だけでは財源が足りない"なんてことがそもそもありえんのよ。
(゚⊿゚)<なんだと!
(´・ω・ `)<せやからな、「国債は税金だけでは足りない財源を調達するために発行するものだ」とかな、どこが間違っとるっていうか、まるごと何言ってんのか意味不明やねん。こんだけ意味不明やと反論しようもないわ。「ペンギンはラクダから隠れるために地面に穴を掘るものだ」ってのに反論してみ?
(゚⊿゚)<Oh,no!!
見たいものだけを見て、全てを語ろうとするから
国債発行の仕訳と家計の借金の仕訳を比べてみると、仕訳の構造は全く同じになっています。
国債発行をすると、政府の政府預金が増えて、市中銀行の日銀当座預金が減ります。一方の家計の借金では、借り手の銀行預金が増えて、貸し手の銀行預金が減ります。
また、国債は「将来利息付きでカネを支払う約束」です。そして、家計が借金をすると、後々利息を付けて返済することを求められます。
なので、ここまでを見ると、国債は家計の借金と同じように見えるかもしれません。そして、家計が借金をするのは「カネを支払うための持ち合わせが無い」ときです。(゚⊿゚)<国債とは、政府がカネに困ったときにするクニノシャッキンなのです!という訳の分からん理解が生まれたのは、このへんからなんでしょう。
ですが、同じなのは
- 仕訳の構造
- 利息が付く負債
という2点だけです。仕訳の構造は同じだけど意味合いは全然違う取引なんかいくらでもありますし、負債のほとんどには利息が付きます。たったこれだけの情報から(゚⊿゚)<国債はクニノシャッキン!みたいなワンフレーズで全てを語ろうとするから訳の分からん理解が生まれるわけです。
まあ、「見たいものだけを見て、全てを見た気になる」ってのは誰でも陥りがちなもんです。気を付けたいですね(´・ω・ `)
目的は日銀当座預金の回収
しつこいようですが、もう一度、国債発行の仕訳を確認しましょう。
国債発行をすると、市中銀行の日銀当座預金が減ります。国債発行のプロセスで注目するべきなのは政府の仕訳ではなく、こっちの方です。
ここで、政府支出の仕訳も確認しましょう。
政府支出をすると、市中銀行の日銀当座預金が増えます。[9-4]のとおり、市中銀行の日銀当座預金が増えると、翌日物金利が下がります。
しかし、政府支出に併せて国債発行を行い、日銀当座預金を回収すれば、政府支出の翌日物金利への影響を打ち消すことができます。これが国債発行の狙いです。
つまり、[4-7]のとおり、国債発行の目的は、【政府支出のときに市中銀行に発生してしまう日銀当座預金を回収する】ことにあり、これは日銀の買いオペ・売りオペによる翌日物金利コントロールを可能にします。
( ゚д゚)<でもそんな支出のたびに国債発行しとったら国債の金利が上がってしまわへんの?
(´・ω・ `)<[4-6]のとおり、国債の金利は市場原理とは無関係に日銀が決めることができるけー、そんなことにはならんよ。
国債発行に意味なんか無いよ
ところで、[9-4]のとおり、翌日物金利は、補完当座預金制度適用利率(日銀当座預金に付く預金利息の利率)で下限を決めることができます。
翌日物金利は、いくら日銀当座預金がダブつこうが、これより下がることはありませんので、補完当座預金制度適用利率を上げれば、必ずそこまでは上がります。
さらに、日銀は基準貸付利率によって翌日物金利の上限も決めることができます。
つまり、別にわざわざ政府に国債発行で日銀当座預金を回収してもらわなくても、日銀はやろうと思えばいくらでも翌日物金利を思いどおりにコントロールすることができます。
( ゚д゚)<んと、国債発行の目的は、日銀当座預金を回収することで、そうすると、日銀が買いオペ・売りオペで翌日物金利をコントロールできるようになるんやんな?
(´・ω・ `)<せやで。
( ゚д゚)<けど、別に政府が国債を発行せんでも日銀は買いオペ・売りオペとは別の方法で翌日物金利をコントロールできるん?
(´・ω・ `)<そう言うとるがな。
( ゚д゚)<ほいだら…回収するけど、回収したところで特に意味は無いってこと?
(´・ω・ `)<せやの。
( ゚д゚)<じゃあ国債を発行する意味って何なん?
(´・ω・ `)<国債発行に意味なんか無いよ。
( ゚д゚)<えっ?
(´・ω・ `)<何にも無いよ。
( ゚д゚)<何にも無いんか。
(´・ω・ `)<まあ、何も無いっちゅうか、正確に言うと、「主権通貨国の政府にとっては」やけどな。
( ゚д゚)<ほいだら、主権通貨国じゃなかったら、意味あるんか?
(´・ω・ `)<んー、まあ、一応…
国債発行と金本位制
国債発行の意義は、金本位制等の固定相場制を採用している政府であれば、"一応は"合理的な説明ができます。
( ゚д゚)<金本位制って何やったっけ?
(´・ω・ `)<金本位制は、【政府部門が現金と日銀当座預金を一定レートで金と交換することを約束する】っていう謎ルールや。1970年頃までは日本もブレトンウッズ体制[6-1]っていう間接的な形で金本位制を採用しとったで。
( ゚д゚)<謎ルールなんか?
(´・ω・ `)<政府が発行した貨幣を金と交換する約束なんかして何になるん?
( ゚д゚)<なんか貨幣の価値の裏付けになるとか言うやんけ。金と交換できるから、少なくともその分の価値は保証されるけー、貨幣が流通するとか。
(´・ω・ `)<[10-4]で言うたとおり、租税は貨幣を動かすけー、金の裏付けなんか無くても貨幣は流通するで。現に金と交換なんかせんでもゴリゴリ流通しとるじゃん。金本位制の本質はそこちゃうよ。
( ゚д゚)<ほーん、じゃあどこなん?
(´・ω・ `)<さて、ここで問題です。
( ゚д゚)<ババン!
(´・ω・ `)<切り替えの速さよ。
( ゚д゚)<まかしときー。
(´・ω・ `)<政府部門がこの約束を確実に守れるようにするためには、つまり、いつ日本中の現金と日銀当座預金を全部集めてきて「金と交換しろ」って言う輩が現れても大丈夫なようにするには、どうしたらいい?
( ゚д゚)<知らん!
(´・ω・ `)<そか。正解はな、政府部門が持っとる金の量以上に貨幣を発行せんかったらええんよ。
( ゚д゚)<知ってた!
(´・ω・ `)<そか。
金本位制の本質
金本位制の本質は、金によって貨幣の"価値"を保証することではありません。そもそも、[番外4-1]のとおり、貨幣に価値なんかありません。
金本位制の本質は、[10-5]のとおり、本来ならいくらでも可能な政府の貨幣発行を金の保有量によって制限することにあります。
( ゚д゚)<ほーん。なるほどな。でもなんで政府の貨幣発行を制限するん?
(゚⊿゚)<政府がデタラメな貨幣発行をすると通貨の信認が失われてハイパーインフレが起きてしまうかもしれないじゃないか!
( ゚д゚)<なんやそれwwwんなアホな理由なわけないじゃろww
(´・ω・ `)<いや、金本位制が採用されとった理由は、ほんまにあのとおりやで。「政府の貨幣発行を制限しないとハイパーインフレが起きる〜」てな。
( ゚д゚)<まじんこ?
(´・ω・ `)<まじんこよ。じゃけー、謎ルールて言うとんのや。ほいで、国債発行が貨幣発行制限とどう関係してくるのかっちゅう話に進もうか。
貨幣回収による破綻回避
政府支出と徴税の仕訳を並べてみましょう。
日銀当座預金は、政府支出をすると増えて、徴税をすると減ります。よって、政府支出が徴税より多い、いわゆる財政赤字のときには、日銀当座預金が増えることになります。
そして、[7-4]のとおり、政府は財政赤字になるのが普通なので、日銀当座預金はどんどん増えていくのが普通です。
金本位制の下で日銀当座預金がどんどん増えれば、いつか金保有量による貨幣発行制限に到達して、政府支出ができなくなり、財政が破綻します。
( ゚д゚)<そしたら金本位制をやっとったら、いつかは必ず財政破綻するってこと?
(´・ω・ `)<いや、発行した日銀当座預金を回収したらええんよ。
( ゚д゚)<ああ、そこで国債を発行するんか。
(´・ω・ `)<そーゆーこっちゃ。
金本位制を採用する政府は、支出に併せて国債を発行して、日銀当座預金を回収することで貨幣発行制限による財政破綻を回避できます。
( ゚д゚)<たしかにこれなら納得できるっちゅうか、理屈は通るの。
(´・ω・ `)<せやろ。
( ゚д゚)<でもこれ、発行した国債の期限が来たら利息付けて支払わなあかんやん。そのときに貨幣発行することになるんちゃう?
(´・ω・ `)<そんなもんもっかい国債発行して回収したらええがな。
( ゚д゚)<ああ、なるほど・・・でも、それでええんやったら結局制限になってなくない?
(´・ω・ `)<せやで。貨幣発行を制限したいがための謎ルールなんじゃけど、結局制限になってないねん。訳が分からんじゃろ。じゃけー、謎ルールて言うとんじゃ。
なお、金本位制の貨幣発行制限を避けるには、もう1つの方法があります。徴税を増やして財政黒字にすることです。財政黒字なら、日銀当座預金は減っていき、貨幣発行制限が遠ざかります。しかし、この方法は国民の暮らしを貧しくします。
国債発行=貨幣と貨幣の交換
( ゚д゚)<いや、ちょっと待って。
(´・ω・ `)<なにかね?
( ゚д゚)<[10-3]で「国債は貨幣です」って言うてたやん。
(´・ω・ `)<せやで。国債は明らかに貨幣や。
( ゚д゚)<ほいだらさ、「国債発行して日銀当座預金を回収する」って、"国債"っていう貨幣と"日銀当座預金"っていう貨幣を交換しとるだけちゃう?
(´・ω・ `)<せやで。政府部門の負債を政府部門の負債と交換しとるだけや。じゃけー、何の意味も無いって言うとんのよ。
( ゚д゚)<ほんほん。
(´・ω・ `)<ただ、金本位制では、"金との交換を約束してない貨幣"(国債)と"金との交換を約束しとる貨幣"(日銀当座預金)を交換するから、そこでは意味が出てくるんよ。とはいえ、目的も仕組みも訳の分からん金本位制の中で出てくる意味がなんぼのもんなんやっちゅう話ではあるけどな。
( ゚д゚)<ほんほん。ほいだら、その金本位制もやめてしもうて、いよいよ意味無くなっとる国債発行を政府はなんで今でもやっとんの?
(´・ω・ `)<知らんけど、どーせ、
(゚⊿゚)<昔からそうしてるから!
(゚⊿゚)<それが当たり前だから!
(´・ω・ `)<とか、その辺やろ。あのコら、そもそも政府が貨幣を発行できることも貨幣がどんなものなのかも分かってへんのやで。「私たちはなぜ国債を発行しているのか」みたいな本質的な議論なんか期待できるもんかい。
銀行にとっての国債
なお、政府部門にとって国債と日銀当座預金に大した違いはありませんが、銀行にとっては日銀当座預金は利子が付かない資産であり、一方の国債は利子が付く資産ですから、これは大違いです。
つまり、国債の利息が重要な金融インフラである銀行への補助金の役割を果たしているという部分はたしかにあります。銀行がバタバタ潰れたら困りますし、そこをそう簡単には切れない、というところもあるのかもしれません。
ただ、補助金無しには成り立たないけど、社会に必要不可欠なインフラなんだったら、銀行なんか国有化しちゃえばいいじゃねえかと思うんですが、ちょっと急進的過ぎるかな(´・ω・ `)
まとめ
国債発行の意義は、政府支出のときに生まれた日銀当座預金を回収することにあります。政府が日銀当座預金を回収することで、日銀は買いオペ・売りオペによる翌日物金利コントロールが可能になります。但し、日銀は買いオペ・売りオペ以外の方法でも翌日物金利をコントロールできますので、それが可能になることに大した意味はありません。
以上より、(゚⊿゚)<国債は税金だけでは足りない財源を調達するために発行する"国の借金"だ!というのは完全に間違った理解だと言えます。
国債は"国の借金"ではなく、日銀当座預金という"政府部門の負債"を回収するために発行する"政府部門の負債"です。
国債発行とは"政府部門の負債"と"政府部門の負債"の交換であり、その2つの同じもの同士の交換に意味なんか当然ありません。
それに意味があったのは、「現金+日銀当座預金の発行量は政府の金保有量まで」と制限する金本位制の時代までです。金本位制では、国債を発行して日銀当座預金を回収することで貨幣発行制限に達しないよう、"スペース"を空ける必要がありました。
しかし、もはや金本位制は採用されていませんから、政府が国債を発行する意味は完全に失われています。
それでも政府が国債を発行している理由は、私には「なんだかよく分からないけれど、昔からそうしてるし、そうしないといけないような気がするから」だとしか考えられません。
それでは本日ここまで。
おまけ
「財源は国債でいい」ってのが、正直ちょっと気になるんですけどね(´・ω・ `)
とはいえ、少なくとも政策論は間違いなく誰より真っ当だと思いますので、応援したいと思います(`・ω・´)
日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。
私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。
( ゚д゚)<最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!!
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