経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

国債はデフォルトしない-MMT概論

国債はデフォルトしない

MMTは、政府の財政は家計や企業のそれとはまったくの別物だと主張している。これは、ほとんどの人々にとって、身近で重要な信念に対する最大の異議申立である。我々は、「わが家の家計が連邦政府予算と同じような状態だったら、破産してしまう」「それゆえ、政府の赤字を抑制しなければならない」と常々聞かされているが、MMTはこのアナロジー(1)は誤りであると主張する。主権を有する政府が、自らの通貨について支払不能となることはあり得ない。自らの通貨による支払期限が到来したら、政府は常にすべての支払いを行うことができるのである。」

『MMT現代貨幣理論入門』

kindle版 39/553pp

(1)アナロジー:よく分からないことを自分の知っていることに当てはめて推論すること

 

当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。
複式簿記とは? - 国際乱発派のMMT解説

 

日本政府がいわゆる"財政破綻"に陥る可能性はゼロである。

これはMMTが明らかにした5つの最重要事項のうちの1つです。なぜこのように言い切れるのでしょうか。

主流派の藤巻さんは日本政府に"巨大な累積赤字がたまってしまった"ため、ちょっとしたきっかけで財政破綻すると主張されていますが・・・

世界最悪の財政状態…なぜ日本は「借金大国」になったのか?|日銀破綻|藤巻健史 - 幻冬舎plus

主流派が言う"財政破綻"は、定義が明確でないし、都合が悪くなると定義を変えてくる(しかしザイセイハタンガーと喚き続けることだけは決してやめない)ので、まず、そこを決めておきましょう。次のように財政破綻を定義します。

"非自発な政府債務のデフォルト"

つまり、日本政府が支払期限を迎えた日本国債の支払を行うことが物理的に不可能な(支払をしたくてもできない)状態になってしまう、これを"財政破綻"の定義とします。

ちなみに藤巻さんは財政破綻から身を守るハウツー本を売ることを生業にされていますので、財政破綻の恐怖に怯える人が多くなるほど都合が良いのです。こういうのをポジショントークと言えばいいんですかね。

 

それでは、なぜ"財政破綻"は起こらないのでしょうか。結論から述べますと、

政府はゼロから自由に自国の貨幣を作ることができるから、です。ゼロから自由に貨幣を作ることができる政府が貨幣が無いから支払ができないという状態に陥るわけがありません。

主流派は、貨幣とは何かということを根本的に勘違いしているので、政府はゼロから貨幣を作ることができることを理解していません。彼らは、政府が貨幣を手に入れるには、税を徴収するか、家計や企業から借り入れをしなければならないと思っているのでしょうが、それは全くの誤りです。

 

とはいえ、世界に目を向ければ財政破綻を起こす政府もときどき見かけますね。最近ではレバノン政府がデフォルトしました。レバノンでは財政破綻が起きる可能性がありました。しかし、日本ではその可能性がゼロです。それは日本国債が本質的に自国通貨建てだからです。レバノン国債は外貨建てでした。

 

  • 自国通貨建て?外貨建て?その違いとは?
  • 政府が貨幣を作り出す詳しい手続
  • "自由に"作り出すことができる政府とそうでない政府の違いは?

本記事は概説なので、これらの説明は後日にします。

 

ここでは、端的に、政府が貨幣を作り出すことが可能であるということだけ示しておきましょう。

 

日本のお金「円」はいつ生まれた?(1) | お金の歴史雑学コラム | man@bowまなぼう

こちらの記事のとおり、明治初期に"円"が日本国の通貨として定められました。

それまで円は世界に存在しなかったわけで、最初は政府も国民も誰もが1円も持っていません。

さて、ここで質問です。

もし、"政府が貨幣をゼロから作ることはできない。政府が貨幣を手に入れるには、税を徴収するか、家計や企業から借り入れをしなければならない"とすると、明治政府はどうやって"円"を日本の通貨として国民に使わせることができたのでしょうか?

 

そんなことは不可能です。政府がゼロから貨幣を作り出すことができないと辻褄が合いません。ということは政府はゼロから貨幣を作ることができるのです。

まず、政府が貨幣を作って、それを国民に支出する、そしてその一部を税として徴収し、徴収されなかった分は国民に貯蓄されていき、そしてまた政府は貨幣を作る・・・実際に行われているのは、このサイクルです。政府は先に支出をして、その後に税を徴収します。

さらにもう1つ、政府は貨幣を作って支出できるわけですから、国民から借金をする必要がありません。政府が国民に国債を売っているのはそれが無ければ資金が不足するからではなく、それが国民生活の向上と安定に有効な政策であるからなのです。

 

それでは今日はこのあたりで・・・また次の記事でお会いしましょう。

 

最後に、私が尊敬する三橋貴明氏が財政破綻論について説明されるこちらの動画をぜひご覧ください。

https://youtu.be/DdqKjNat7Yg

三橋TV第234回【財政破綻論者の断末魔 三つのパターンを完全撃破!】‬

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最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^

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