MMTが示すように、政府の債務(現金通貨、準備預金、国債を含む)は非政府部門の金融資産である。政府赤字は非政府部門の黒字に等しく、その結果所得が生まれて貯蓄となる。貯蓄とは政府に対する債権であり、最も安全な資産である。主権を有する政府が自らの通貨で支払不能となり、期日における支払いが意図せず滞ることなどあり得ないからだ。
『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 49/553pp
当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。
xbtomoki.hatenablog.com
当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。
まずは復習から
まずはいったん前々回の復習をしておきます。まあ、クレイジーなんで、覚えなくていいんですけど・・・
財政健全化とは、次の2つの目標を達成することでした。
- プライマリーバランス黒字化
- 債務残高対GDP比の引き下げ
債務残高対GDP比の引き下げの意義
債務残高対GDP比の引き下げとは"政府の債務残高を名目GDPで割った数字が少なくなるようにすること"です。
債務残高対GDP比=債務残高/名目GDPですから、これを減らす方法は2つあります。
- 債務残高を減らす
- 名目GDPを増やす
ところが財務省のサイトを見ても、主流派経済学者の論説を見ても、1.の方しか書かれていません。それはなぜか。
これはただの推測ですが、
彼らが実際に興味があるのは債務残高だけなのです。しかし、単純な残高だと、アメリカなんかは日本より断然多くの債務残高を有しているので、いまいち大衆向けにはインパクトが無い。そこで国際比較のために〜とか適当な理由を付けてGDPで割る。すると日本の数字が多く見える。GDPは見栄えを良くするために付けただけだから、2.の方法については興味を持たないわけです。
ま、そのおかげで債務残高対GDP比引き下げ目標を"債務削減目標"と簡単な言葉に言い換えることができます。
どうしたら債務を削減できる?
いま積み上がっている債務がどのようにして生まれたのか、これを考えてみましょう。
- 資産|負債:借入をする(国債発行)
- 費用|資産:諸々の事業で消費
結局は費用|負債となります。
いま積み上がっている債務は、政府がこれまで借りては支払い、借りては支払い、というプロセスを繰り返してきた結果だということです。
それでは、この債務を消すにはどうすればいいか。逆のプロセスを辿ればいいんです。つまり・・・
- 資産|収益:税を徴収
- 負債|資産:借入の返済(国債償還)
こちらは負債|収益となります。
いままで政府が支払ってきたカネを税として徴収して、国債の債権者である銀行や投資家に返済をすれば、債務残高は減ります。
ただ、政府が全く何も事業をしないということは現実的ではないので、実際のところは、「費用<収益という状態になれば債務残高は減っていく」と考える方がいいでしょう。
"費用<収益"と言えば?そうです。プライマリーバランス黒字化目標ですね。
ですから、この2つは常にセットです。債務残高削減をするためにはPB黒字が不可欠であり、PB黒字は必ず債務残高削減という結果を伴います。PB黒字がナンボのもんなのかは前回説明したとおりです。"PB黒字化目標"の正体 - 国際乱発派のMMT解説
いやいや・・・とはいえ・・・
それでも彼らはめげません。こんなふうに食い下がってきます。
「PB黒字化目標に問題があることは分かった。そして債務残高削減がPB黒字を伴わざるを得ないことも分かった。がしかし!それでも債務残高削減目標は!痛みに耐えてでも!成し遂げなければならないのだー!」
いったいなんでそんなに債務残高を減らしたいんでしょうか。
私には訳が分からないので、主流派の人に聞いてみましょう。こちらは最近メディア露出の多い小林慶一郎さん財政破綻という最悪の事態に備えを | 研究活動 | 東京財団政策研究所こちらの記事でこう言われてます。
「債務残高が増えすぎると、日本国債を買う投資家が誰もいなくなる。」
記事が長いので、勝手ながら要約すると
- 日本政府の債務残高はどんどん増えてる
- 投資家は政府が増税して債務を返済すると思ってるから、いまは国債を買ってくれている
- しかし、どんどん債務残高が増えていけば、いつか返済してくれるという信用が無くなって、買ってくれなくなる
- そうすると政府は国債発行ができなくなってしまって、資金が調達できなくなる
こちらの記事国債はデフォルトしない-MMT概論 - 国際乱発派のMMT解説で書いたとおり、政府債務残高が、例えいまの1000倍になったとしても、政府が返済できなくなることはありません。
投資家の方々はバカではないので、それを知っています。だから絶対にマイナスを出せないとき、投資家が選ぶ投資先は、ほぼ間違いなく、国債です。
小林さんの「債務残高が増えすぎると、日本国債を買う投資家が誰もいなくなる。」ですが、
「債務がどれだけ増えても、政府が支払不能になることはないので、投資家が政府の返済能力を信用しなくなることはない。よって、債務残高過剰を理由に投資家が日本国債を買わなくなるわけがない。」
こちらの動画では三橋貴明先生が、さらに詳しく正しく説明してくれています。
「何らかのバブル、謎の状態」って、大丈夫か、小林慶一郎大先生!?[三橋TV253回]三橋貴明・高家望愛
まとめ
債務残高削減目標とは、要するに結局はPB黒字化を目指すことであり、その目的は「国債の信用を守ること」らしいですが、債務残高がどれだけ増えても国債の信用には何の影響もありません。
じゃあ"財政健全化"って何なんでしょう?PB黒字は家計を赤字にして、債務残高削減を成し得たところで何も起こらない。
なぜ主流派がこんなに財政健全化を叫ぶのか、正直、私には理解できません。中野剛志先生は"センメルヴェイス反射"や、"認識共同体"といった理論で説明されていました。ただ1つだけ、確かなことは主流派が財政健全化の意味を理解していないことです。意味を理解していないのに、必要だと叫ぶ思考回路がこれまた訳が分からないわけですが。
まあ、いますよね。私の会社にもいますよ。どこにでもいます。ギャーギャーと意見を主張する声はでかいけど、「なんでそう思うんですか?」って聞いたら全然答えられない人。
だからこういう人がいること自体は不思議ではありませんし、なぜこんな人がいるんだろうとか思い悩んでもしょうがありませんから、とりあえずこれだけ、覚えておいてください。
「財政健全化」「財政再建」「PB黒字」「債務残高削減」この辺のワードを使う人の話はだいたいクレイジー🤪
【本日のオススメ動画】
本日、私がオススメするのはツイッターでフォローさせていただいている方が作成された山本太郎さんの都知事選公約の解説動画です。私は山本太郎さんのポリシーに全面賛成というわけではありませんが、
経済の仕組みを正しく理解していること、そして何より、真剣に人のために政治をやろうとしていることは間違いありません。
都民をB層と侮り腐っている小池百合子さんが勝って、心の底から都民を救いたいと願う山本太郎さんが負けるなんてことがあってはならない。山本太郎さんには、ぜひとも都知事に当選していただきたい!今回、少ないながらも出せる範囲でれいわ新撰組に寄付もしました!私は都知事選については山本太郎さんを応援します!
10分でわかる地方債15兆円の疑問[山本太郎][東京都知事選][れいわ新選組]
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