国の通貨はしばしば「主権通貨」と呼ばれる。つまり、主権を有する政府により発行される通貨である。
『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 113/553pp
公式な計算尺度として認められる計算貨幣を決定する権限を有するのは、主権を有する政府だけである。さらに、自らの計算貨幣で表示された通貨を発行する権限を付与されているのは、現代の主権を有する政府だけである。
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当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。
当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。
用語説明
まずいくつかの用語の説明をしておきます。
貨幣
貨幣については第1章で説明しましたが、大事なことですから、改めて説明しておきます。
貨幣とは、"資産|負債の取引の記録"です。
その所有者にとっては金融資産であると同時に、その発行者にとっては金融負債でもあります。
具体的な形態は、紙幣や硬貨のように実体を持つ場合もあるし、銀行預金のように実体の無いデータである場合もあります。
市中銀行
りそな銀行や三井住友銀行等、いわゆる普通の銀行のこと。メガバンク以外にも地方銀行や信用金庫等も含む。証券会社(ex.楽天証券)や消費者金融(ex.アコム)は含まない。中央銀行である日本銀行と区別するためにこのように呼ぶことがある。
準備預金
日本で言えば「日銀当座預金」のこと。日本銀行が市中銀行から現金等を預かったときに引き換えに発行する貨幣。
さらに詳しい説明はこちら↓
日本銀行当座預金とは何ですか? 利息は付きますか? : 日本銀行 Bank of Japan
例えば、私が1万円の現金紙幣を銀行に預けると、銀行はそれと引き換えに1万円の銀行預金を私に発行します。さらに銀行がその1万円紙幣を日銀に預けると、日銀はそれと引き換えに1万円の日銀当座預金を銀行に発行します。
ちなみに、政府が日銀への預け金は、正確には日銀当座預金ではなく、"政府預金"らしいです。
通貨
政府(財務省などの国庫や中央銀行)により発行される硬貨、紙幣及び準備預金。
ここで要注意なのが、硬貨・紙幣・準備預金、この3つだけが"通貨"だという点です。よって、例えば、銀行預金は"通貨"ではありません。
計算貨幣
名前の印象からは、「貨幣の一種かな?」と思わせる用語ですが、そうではありません。もうちょっと他のネーミングができなかったんかなあ・・・
計算貨幣とは、米ドル、日本円、英ポンド、欧州ユーロ・・・等々、各種の通貨について定められた単位のこと。
政府の貨幣に関する権能
政府は主権に基づいて様々な権能を有します。法学者なら、ここで「主権とは?主権の及ぶ範囲は?主権の源泉は???」とか言い出すわけですが、MMTを理解するのにそんな問いは必要ありません。
少なくともいま理解するべき事柄は、次の3つだけです。
- 政府は、自国の通貨の計算貨幣を定めることができる。
- 政府は、自国の通貨の発行権を独占することができる。
- 政府は、国民が税の支払をするときの計算貨幣を指定することができる。
これを日本で言えば、日本政府は、
- 発行する通貨の計算貨幣を"日本円"と定めています。
- 政府以外が通貨を勝手に作ることを犯罪として取り締まっています。
- 税の計算・支払を日本円建てで行うこととしています。
ここまで説明しましたので、「主権通貨」という用語を定義できるようになりました。
主権通貨
ある国家の政府が独占的に発行する通貨の計算貨幣のこと。通常、主権通貨を有する政府は、税を主権通貨で支払うことを国民に強制する。
自国通貨と外貨
主権通貨に辿り着いたところで、あと2つだけ用語を覚えましょう。
自国通貨
自国内で流通する通貨の計算貨幣。
主権通貨は必ず自国通貨でもあるが、逆に自国通貨が必ず主権通貨であるとは限らない。例えば、途上国は主権通貨を持たずに米ドルを自国通貨とすることがある。
また、1ヵ国に複数の自国通貨が併存することもありうる。例えば、途上国は独自の主権通貨と米ドルを両方とも自国通貨とすることがある。
外貨(外国通貨)
主権通貨でない計算貨幣のこと。
途上国が主権通貨を持たずに米ドルを自国通貨とする場合、米ドルという外貨を自国通貨として採用していることになる。
「計算貨幣」「自国通貨」「外貨」「主権通貨」の関係性を図に表すとこんな感じです。
まとめ
さて、ということで、"日本円¥"は、計算貨幣の一種であって、日本政府の主権通貨ですが、特定の貨幣を指す言葉ではなく、特定の通貨を意味する言葉でもありません。
さらに言うと、"ユーロ€"は、計算貨幣の一種ですが、EMU(欧州通貨同盟:the European Monetary Union)加盟国の協定に基づくものです。EMUに加盟している各国の自国通貨ではありますが、主権通貨ではありません(EMU加盟国にとってユーロは外貨です)。
原著と翻訳のどっちがやらかしているのかは分かりませんが、"通貨"と"貨幣"と"計算貨幣"と"主権通貨"が複雑に絡まりあって訳が分かりません。
私もちょいちょい「あれ?」ってなります。もし第2版とか出すなら、ぜひなんとかしてほしいです。今後このへんの解説をするときはできるだけ気をつけます。
とりあえず、"主権通貨"の考え方というか、概念だけはしっかり理解していただきたいと思います。
それでは本日ここまで。
おまけ
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ただ、サロンの内容を外部に載せたりすることは規約で禁止されています。もしかしてうっかり書いてしまうといけませんから、今後当ブログでサロンの話題を出すことは一切控えますので、ご了承ください。ご興味のある方は、ぜひ入会を!
日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。
私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^
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