ジェームズ・ガルブレイスは、赤字支出の持続可能性を評価するための代表的なモデルを構築した。カギとなる公式は、こうだ。
Δd=-s+d*{(r-g)/(1+g)}
ここで、dは当初の債務額対GDP比率、sは「プライマリー黒字」(すなわち、純支払利息を控除した後の財政黒字)の対GDP比、rは実質金利、*は掛け算の記号、gはGDPの実質成長率を示す。
『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 145/553pp
当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。
当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。
ガルブレイスの公式
なんと、財務省や主流派経済学者の方々が大嫌いな(大好きな?)債務残高対GDP比を計算する公式があるそうです。
それが冒頭で引用したこちらです。
これをちょっと書き直したのがこちらです。意味するところは同じです。
グラフにしてみました
これでは訳が分からないと思いますので、グラフにしてみます。
dの初期値は100%として、
それでは、こちらです。ドン!
グラフから何が分かるか
数式とにらめっこするよりはいくぶんマシだと思いますが、グラフを作ってみてもまだまだ訳が分からないと思いますので、もう少し解説を加えます。
グラフからは、こんなことが読み解けます。
右下の3本をまとめた右下のグラフを見てもらえば分かると思いますが、r = g と r < g の違いは微々たるものです。
重要なのは、赤のr>gグラフです。
ガルブレイスの公式は"r > g なら、債務残高対GDP比が爆発的に増えていく"、という恐ろしく重大な事実を私たちに教えてくれているのです。
バクハツダー!
それでは r > g のグラフをピックアップしてみましょう。
さっきのグラフでは、s(PB対GDP)は-1%つまり1%の赤字、r(国債金利)は5%、g(GDP成長率)は3%と、適当な数字になっていましたが、もうちょっと実際のデータに近づけて描きなおしてみます。
1980年~2019年の平均で、s:r:g=-3.18%:3.16%:1.92%(国債は9年物)ですから、この数字を使います。
出典2:国債金利情報 : 財務省
「爆発だー!破綻するー!」
これはたいへんなことです。なにしろ40000000%とか書いてあります。訳が分かりません。これがあのハイパーオンフレなのでしょうか。こんなことがたった30年後に起きるというのでしょうか。
安心してください。ハイパーオンフレは起こりません。
その証拠に少なくとも1980年~2019年の40年間の平均は実際に r > g であったのに、現在の債務残高対GDP比は237%程度にしかなっていません。
なぜハイパーはオンフレしないか
繰り返しますが、先のグラフのようなハイパーオンフレは起こりません。
先のグラフには、「s:r:g=-3.18%:3.16%:1.92%という状態が30年続いたら」という全くあり得ない仮定が含まれているからです。
つまり、「30年間もの間、sもrもgも変化しない」なんてあり得ないだろうっていう話です。これグラフにするとこういうことですから。
実際のデータがこんなんになるわけありません。
実際のsとrとgの推移はこうでした。
rが3.16%と高い値だったのは、バブル期の高利率に引っ張られていたからで、gの1.92%は、リーマンショック(2009)の強い落ち込みに引っ張られています。
「平均」は、一部の極端な値に引っ張られやすい性質があるので、ご利用には注意が必要です。「平均年収はあてにならない」なんてのは、よく使われる例です。
r > g だったのは2000年頃までで、リーマンショック(2009)の前後でちょっとガチャってなってますが、以降は基本的に r = g か r < g です。そして、rはもはやゼロまで下がりました。金融緩和とマイナス金利政策が続く限り、これが上がることはたぶんないでしょう。なんで金融緩和とかでrが上がらないのかの説明は長くなるのでまた今度に・・・
とすると、再び r > g になるなんてことは、g < 0 (マイナス成長)がずっと続く時代に突入しない限りありえません。
別の角度から
さっき述べたとおり、rがゼロになっているのは政府が金融緩和とマイナス金利を継続しているからです。つまり、rは政府がコントロールできます。r > g になって爆発しそうなら、r < g になるようにrを下げれば、それだけで爆発を回避できます。
もうひとつ、マクロ会計の恒等式
政府収支+民間収支+国外収支=0
より、政府の負債が増えるということは民間の黒字が増えるということですから、その黒字増が消費や投資の増につながれば、GDPが伸びていく、gが増えることになります。
すると、わざわざ政府がrを下げなくても、債務残高対GDP比が増えれば、自然とgが増えて r > g は解消されていくはずです。
つまり、なんかの拍子で爆発して、政府も民間も30年くらい爆発しているのをボケーっと眺め続けたら、ハイパーオンフレが起きるかもしれません。
が、そんなことあり得ないだろうっていう話ですよ。
おわりに
もし仮に政府も民間もどうかしてしまってハイパーオンフレが起きたとしましょう。
たとえそうなってしまったとしても、日本政府は、その債務が主権通貨である円建てで、円の変動為替相場制を保持できていれば、いつでもいくらでもそれを支払うことができます。日銀の職員がキーボードを叩くだけでいいんですから。
詳しい説明はまた後日としますが、とりあえず、「爆発したらどうするんだ!?」と聞かれたら、私はこう答えます。「そもそも爆発しないし、爆発したところでどうもしなくていい。バカか。」
それでは本日ここまで。
おまけ1
今回記事みたいな
- まずいきなり数式とか英文とかを突き付けて思考停止させる。
- 思考停止してるうちに、わけのわからん設定をコソっと差し込む。
- 謎設定に沿って話を展開する。
- ワンダーランドに連れていく。
こういうことをする人、結構います。気を付けてください。
おまけ2
最近ツイッターで知ったんですが、
【Shift+ウィンドウズボタン+s】
これでPC画面のスクリーンショットが取れるんです。
知ってました?これめっちゃ便利なんですよ。
日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。
私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^
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