本節では、財政赤字と貯蓄の関係、さらには財政赤字が準備預金と金利に与える影響を確認する。以下の議論は、一般的な性質に関するものである。
当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。
当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。
こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。
当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。
目次
マクロ会計の恒等式
まずは大事な大事なマクロ会計の恒等式を思い出してください。
国内民間収支+国内政府収支+国外収支=0
国内民間収支+国内政府収支-経常収支=0
1-4.マクロ会計の恒等式 - 国債乱発派のMMT解説
マクロ会計の恒等式って何だったっけ?という方はこちらをどうぞ。
本記事では、単純化のため、輸出入を無視(閉鎖経済を仮定)します。輸出入から生じる影響は、また別途後日の記事で解説します。よって、国外収支・経常収支はゼロですので、恒等式はこうなります。
民間収支+政府収支=0
民間収支が黒字になる条件
恒等式を見れば、民間収支が黒字になるための条件は簡単に分かります。
恒等式をちょっと変形しまして、
民間収支=-政府収支
政府収支に乱数を代入して、そのときの民間収支を計算してみましょう。
こんなことしなくても分かると思いますが、民間収支がプラス(黒字)になる条件は、"政府収支がマイナス(赤字)になること"です。
逆に政府が黒字なら、民間は赤字になります。
貯蓄は黒字の蓄積
簿記の世界では、資産と負債を差し引きした差額を"純資産"と呼びますが、この【純資産が増える】ということと、【収支が黒字になる】ということは、同じ意味です。(詳しくは[1-3]をご覧ください。)
逆に収支が赤字なら、純資産は減ります。
ですので、純資産の残高は、いままでに蓄積されてきた収支の累計、つまり貯蓄を表していることになります。黒字が続いていれば、それだけ貯蓄が多くなるし、赤字になれば、貯蓄が減ります。
要するに、純資産とは貯蓄のことであって、これを増やすためには黒字収支が必要だっちゅうことです。
政府赤字が民間貯蓄になる
ここまでの内容をまとめます。
- 民間部門が黒字になるためには、政府が赤字でなければならない。
- 貯蓄を増やすためには、収支が黒字でなければならない。
ということは、
民間部門が貯蓄を増やすためには、政府が赤字でなければならない。
つまりは、
政府赤字→民間黒字=民間貯蓄が増える
まずは、この流れをしっかり押さえてください。
政府収支が±0なら?
政府収支±0→民間収支±0=民間貯蓄±0
こうなります。
で、ここで言っておきたいのが、民間収支±0って聞くと、なんだか平和な感じがするかもしれませんが、それは間違いです。
民間部門の中で、黒字の"勝ち組"と赤字の"負け組"がいて、その黒字と赤字を合計したら±0というだけです。
ということは、ある人が黒字だったら、必ずその黒字と同じだけの赤字をかぶってる別の誰かが民間部門の中にいなければなりません。
つまりは、民間収支±0の世界とは、民間同士でシバきあって、他人に赤字をかぶせることに成功した"勝ち組"だけが貯蓄を増やし、"負け組"はマイナスの貯蓄(借金)を抱える世界です。
さらに悪いことに、この格差は、通常どんどん拡大します。
だって、金持ちと貧乏人がヨーイドンで、"たくさんお金を稼いだ方が勝ちゲーム"をやったら、金持ちが勝つに決まっとるやないですか。例えば、もし金持ちが1兆円持ってたら、国債を買うだけで毎年5億円の利息収入がもらえます。貧乏人は宝くじを当てるくらいしか勝ち目がありません。
最初の方で運よく勝てて、小金持ちになっても、そのうち大金持ちに負けて、結局"負け組"に転がり落ちます。
こうして民間収支±0の世界は、ごく少数の富裕層と、大多数の貧困層に分かれていきます。
政府収支が黒字なら?
政府黒字→民間赤字=民間貯蓄減
こうなるわけですから、さらにさらに悪いことになります。
民間部門全体としては赤字なのに、自分だけはいままでどおりの黒字でいるためには、"負け組"にこれまで以上の多額の赤字をかぶせなければなりません。結果、金持ちが現状維持で貧乏人がさらに借金を膨らますことになります。
政府収支は赤字が普通
結論としては、基本的には、政府収支は赤字であることが普通だと考えるべきでしょう。
民間部門の全員が黒字になるためには、民間部門が全体として黒字でなければならず、民間部門が黒字になるためには、政府収支が赤字でなければなりません。
誰かが黒字になるためには、別の誰かが赤字にならなければならないことが避けられない以上、その赤字を引き受けるのは"負け組"ではなく、政府であるべきです。
民間部門の中で、たくさん稼ぐ人・あんまり稼げない人・稼げるけど使っちゃう人、いろんな人がいるけれど、基本的にはみんなが黒字で将来に備えて貯蓄を増やしていける。世の中って、こういうものであるべきだと思います。
そういう世の中にするためには、政府赤字→民間黒字=民間貯蓄が増える、この流れがベースとして存在していなければなりません。
もちろん、ときには、民間黒字が過大になりすぎたときなんかに政府赤字を減らしたりすることはあってもいいのですが、
"政府収支を常に±0や黒字にするべきだ"、なんてのは、こりゃ完全にクレイジーです。
そんなことをしたら、日本は国民が負け組と勝ち組に分かれて延々と互いをシバきあうディストピアになっていくことでしょう。
もうすでにだいぶ近づいてきてますけどね・・・
ほら、そこ、うしろ・・・
おまけ
明日12/16 20:00~安藤裕先生のyoutubeライブがあります!
ツイッターで事前質問を受け付けられてますので、「#あんどう裕さんに質問」でツイートしてみてください。結構読んでもらえますよ。私も以前に1回読んでもらえました。
【令和2年12月16日 緊急生放送】「2020年を振り返る」~2021年 コロナウイルスからのV字回復に必要なこと~
明日12/16 20:00~ youtubeライブですよ!
日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。
私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。
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