経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

6-1.固定為替相場制とは(1)

外貨準備の枯渇を回避するために英国政府が取り得る対策には多くの選択肢があったが、そのどれもがあまり好ましいものではなかった。その選択肢は、ほぼ3つのタイプに集約することができた。つまり、(a)ポンドを切り下げる、(b)外貨準備を借りる、(c)経済を収縮させる、の3つであった。

MMT現代貨幣理論入門』kindle版 304/553pp


当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

 

当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事注釈で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

xbtomoki.hatenablog.com

  

当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。

MMT現代貨幣理論入門

MMT現代貨幣理論入門

 

 

目次 

 

第4章までは章の終わりに章まとめの記事を入れたんですが、いらんかなと思いまして、やめることにしました。

 

第6章に入ります

今回から第6章「現代貨幣理論と為替相場制度の選択ー失敗するように設計されたシステム『ユーロ』」に入ります。

 

過去記事「4-10.国際金融のトリレンマ」で、私はこう書きました。 

MMTの回答は「国によってベストの選択肢は異なる。但し、最も政策余地を広げる選択肢が、為替レート固定を諦める(つまり、変動相場制を採用する)であることは間違いない。」です。

4-10.国際金融のトリレンマ - 国債乱発派のMMT解説

( ゚д゚)<逆に言うと、「固定為替相場制にすると、政策余地が狭まる。」っちゅうことやんな?

(´・ω・ `)<そういうことや。

( ゚д゚)<それってどういうことなん?もうちょい詳しく教えてや。

(´・ω・ `)<えっ、えっと、おかんが言うにはな・・・ごめん、急にそんなん振られても困んねんけど。

( ゚д゚)<ちゃうちゃう。そうじゃないよ。きみ、良くないクセついてるね。

 

固定為替相場制とは

まず、一口に"固定為替相場"と言っても、通貨バスケット・カレンシーボード・ドルペッグ・ドル化・金本位制(ブレトンウッズ体制)・単一通貨制(ユーロ)・・・等々いろんなパターンがあります。

全部説明してると日が暮れますし、まずは固定為替相場制の雰囲気を掴んでもらいたいので、細かいことはまた今度にします。ここでは、一例として、ブレトンウッズ体制の仕組みだけ取り上げてみましょう。

 

ブレトンウッズ体制とは

ブレトンウッズ体制とは、1944年に取り決められた国際通貨システムで、1971年まで続きました。その中身は、「アメリカが金1オンス=35米ドルという金本位制を採用し、アメリカ以外の国は全て対米ドルで為替レートを固定する。」というものでした。

↓こんなイメージです。

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例えばイギリス政府は、自国通貨ポンドを1ポンド=2.8ドルのレートで交換することを約束し、為替レートを固定していました。正確に表現するなら「ポンド建て通貨をドル建て通貨に交換する」と書くべきですが、読みづらくなるので、以下、「ポンドをドルに交換する」みたいな書き方をします。

そしてポンドの交換先であるドルは、アメリカ政府が1オンス=35ドルのレートで金に交換することを約束していたので、ポンドは間接的に1ポンド=0.08オンスのレートで金に交換することが約束されていました。

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また、同様に日本の円や、ロシアのルーブル、イタリアのリラ、ドイツのマルク等も全てそれぞれの決まったレートでドルとの交換が約束されていましたので、1ポンド=1008円のように、結果的にドル以外の通貨同士の為替レートも固定されることになります。

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つまり、ブレトンウッズ体制加盟国間では、ドルを基軸として全ての通貨の交換レートが固定される仕組みになっていたわけです。

参考:ブレトンウッズ体制と崩壊 | 公益財団法人 国際通貨研究所

 

このように、政府が為替レート(自国通貨を自国通貨以外と交換するときのレート)をいくらと約束・保証する仕組みを"固定為替相場制"と言います。逆に、政府が為替レートについて約束・保証をしない仕組みは"変動為替相場制"と呼びます。

"固定為替相場制"・"変動為替相場制"は長ったらしいので、以後、"固定相場制"・"変動相場制"と書くことがあります。

ここでポイントになるのは、固定相場制と変動相場制の違いは、「為替レートが固定されているかどうか」ではなく「政府が為替レートについて約束をしているかどうか」だということです。

極端なことを言えば、変動相場制の採用を宣言しながら、為替レートをガチガチに固定することもありえるわけですね。

 

為替レートを固定する仕組み

[4-10]で固定為替相場制を採用する政府が具体的にはどうやって為替レートを固定しているかを説明しましたが、大事なことなので、ここで再度説明しておきます。

固定相場制を採用する政府がどうやって為替レートを固定しているかと言うと、[4-6]国債の価格・金利を日銀が決める仕組みを説明しましたが、これとちょっと似ています。 つまり、為替レートの目標を決めて、そこより安くなったら買い注文を入れて、高くなったら売り注文を入れるわけです。

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日銀の金利操作と勝手が違うのは、B払いが効かないところです。

自国通貨を安くするための売り注文については、自国通貨を発行すればいくらでも売れますが、自国通貨を高くするための買い注文については、買うための外貨を事前に準備しなければならず、"いくらでも買う" ができないので、宣言するだけで市場をコントロールしたりはできません。

 

外貨準備のための3つの方法

(´・ω・ `)<さて、話をさっきのブレトンウッズ体制に戻しますよ。ブレトンウッズ体制加盟国の政府は、為替レートを固定するために一定量のドルを準備しておかなければなりませんね。このような目的で外貨を準備すること、またはその準備されている外貨を"外貨準備"と言います。

( ゚д゚)<ほうほう。ほいでほいで?

(´・ω・ `)<ここで、例えば何らかのバブルによって謎の状態が起きていて、ポンドがどんどん安くなっちゃっているとします。

( ゚д゚)<謎の状態?なんやそれ。

(´・ω・ `)<分かる人にしか分からんネタや。気にせんでええ。次行くで。

( ゚д゚)<そか。

(´・ω・ `)<ポンドが安くなると、イギリス政府は為替レート固定のために準備してたドルを売って、ポンドを買わないといけません。すると、外貨準備がどんどん減ります。どんどん減って外貨準備が無くなるとブレトンウッズ体制が破綻してしまいます。

( ゚д゚)<そりゃえらいこっちゃな。

(´・ω・ `)<さて、ここで問題です。

( ゚д゚)<ばっちこーい!

(´・ω・ `)<こりゃやべえなと思ったイギリス政府が外貨準備を増やすために取れる選択肢にはどんなものがあるでしょうか?

( ゚д゚)<知るか!

(´・ω・ `)<元気があってよろしい!正解はこちら!

( ゚д゚)<ババン!

  1. 固定レートを引き下げる
  2. ドルを借りる
  3. 対外収支を黒字化する

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( ゚д゚)<おれも分からないよ。

(´・ω・ `)<せやろな。1個ずつ説明したるけー、よー聞いときんしゃい。

 

固定レートを引き下げる

例えば、イギリス政府が2800ドルの外貨準備を保有していたとします。1ポンド=2.8ドルのレートなら、2800ドル=1000ポンドですから、これは1000ポンド分の外貨準備を保有しているということになります。

ここで、レートを半分に、つまり1ポンド=1.4ドルに引き下げます。すると、2800ドルの準備は2000ポンド分になり、イギリス政府は、外貨準備を実質2倍に増やすことができます。

( ゚д゚)<そんなんポンポン下げとったら固定レートの意味無くないか?

(´・ω・ `)<ええとこに気づいたの。そのとおりや。それに、ポンポン下げとったら、みんなポンドを持ちたがらんじゃろ。ポンポンポンドや。

( ゚д゚)<は?ポンポンポンド?

(´・ω・ `)<ポンドがポンポン下がるけー、みんな下がる前にポンドをポンポン売るけー、さらにポンドが安くなるけー、イギリス政府はポンドを買うためによりたくさんのドルが必要になる。つまり、外貨準備を増やすためにレートを下げたのに、結局はそのせいで外貨準備が足らんようになる。この現象をポンポンポンドと呼ぶんや。 

( ゚д゚)<へー、おもろい名前やな。

(´^ω^ `)

( ゚д゚)<おちょくりやがったな、てめえこら。

 

ドルを借りる 

これは簡単ですね。政府はドル建て国債を発行して市場で売れば、ドルを手に入れることができます。

( ゚д゚)<簡単なのはええけど、借りたら返さなあかんけー、それ下手したら[4-11]で言っとったポンジーにならへんか?

(´・ω・ `)<せやな。返すアテも無しにポンポン借りとったら、借金が雪だるま式に膨れ上がって準備するどころか火の車や。

( ゚д゚)<そんなんなってもうたらポンポンポンジーやな。

(´・ω・ `)<は?

( ゚д゚)<クソが。

 

対外収支を黒字にする

(´・ω・ `)<この話はちょっくら長くなるけー、このへんでいったん休憩して、[6-2]で説明しよか。

( ゚д゚)<そか。じゃあそうしよ。

(´・ω・ `)<よし、じゃあ休憩や。ここまではついて来れとるか?

( ゚д゚)<ついて来とるよ。

(´・ω・ `)<そか。お腹は空いてへんか?

( ゚д゚)<空いてへんよ。なんなんそれ。

(´・ω・ `)<そかそか。昨日は何時に寝た?夜更かししてないか?

( ゚д゚)<10時や。早寝早起きしとるわ。だからなんなんてそれ。

(´・ω・ `)<そらよかった。朝ごはんはちゃんと食っとんの?

( ゚д゚)<パンに卵焼きにバナナにヨーグルトも食ったで。お前、迷子になっとるやろ。

(´・ω・ `)<せやねん。ぼくどうしたらいい?

( ゚д゚)<知らんがな。

 

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

今日のチャンネル桜の生討論に安藤先生が出るそうです!三橋貴明さんも森永康平さんも出るみたいですね。

本日3/17(木) 19時 ↓こちらのページです。ぜひどうぞ。


【討論】途上国へ転落?オリンピック・ウイルス後の日本[桜R3/3/18]

 

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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