本記事はMMT解説ではありません。私がMMTをベースに理屈をこねくり回して考えたことを記事にしたものです。
当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。
当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。
こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。
目次
はじめに
「インフレ・デフレがどういう仕組みで起きるのかがよく分からない。」
これが長いこと私の悩みのタネでした。
三橋貴明さんがよくこの図↓を使って「需要が供給より大きくなればインフレに、逆ならデフレになる。」と言われます。
インフレデフレは需要と供給のバランスによって起こり、バランスが需要の方に傾いたときにはインフレが起こる。
たしかにそうです。実際にもそうなってますし、それは分かってるんです。
ただ、私がよく分からんと言ってるのは、そのもう一歩先というか、手前というか、「なんで需給バランスが需要側に傾いたら物価が上がるのか」ということなんです。
(´・ω・ `)<車が進む仕組みってどうなっとん?
( ゚д゚)<アクセル踏んだら進むよ。
(´・ω・ `)<いや、そうじゃなくて。
( ゚д゚)<なんやねんな。
(´・ω・ `)<それは分かっとんねん。ぼくが知りたいんは、なんでアクセル踏んだら車が進むんかっちゅうことや。
( ゚д゚)<そんなん知るかいな。
(´・ω・ `)<せやろな。
( ゚д゚)<しばくぞ。
MMT現代貨幣理論入門を読みました。
需給バランスによって起こると書いてありました。
財政赤字の神話: MMTと国民のための経済の誕生も読みました。
需給バランスによって起こると書いてありました。
マンキュー マクロ経済学Ⅰ入門篇(第4版)も読みました。
紙幣をいっぱい刷ったらインフレが起きると書いてありました。ハイハイワロスワロス。
仕方がないので、自分で考えてみることにしました。
その考えが多少なりともまとまったので、ここで書いてみることにしました。
もしよろしければ、感想や指摘等をいただけたらありがたいです。
ただ、とても長くなりそうなので、「インフレに関する考察」シリーズということで、数回に記事を分けようと思います。3本か4本になりそうです。
ということで、やっていきましょう。よろしくお願いします。
《インフレ》の定義
まず、《インフレ》の定義を明確にしておきます。
《インフレ》とは、「物価が上昇すること」です。デフレはその逆で「物価が下落すること」です。
通常、インフレ・デフレとは、継続的な現象だけを指し、一時的な物価変動は含みませんが、本シリーズでは継続的かどうかにはあまり拘らないことにします。
続いて《物価》も定義しておきます。
《物価》とは、「任意の財・サービスの価格」のことです。特定の財・サービスの価格について述べるときは、「○○の物価」というような書き方をします。
よって、さっきの定義と組み合わせると、《インフレ》とは、「任意の財・サービスの価格が上昇すること」となります。
インフレ=貨幣下落ではない
また、上昇するのは財・サービスの価格であって、価値ではないことを強調しておきたいと思います。
というのは、ときどき、インフレを「貨幣の価値が下落すること」と説明しているのを目にすることがありますが、私、これには異議があるんですよね。それは違うんじゃないかと。
というのも、緊縮派からもそうなんですが、ひろゆきさんとか、三浦瑠麗さんとか、それから落合陽一さん、橋下徹さん、堀江貴文さん、イケダハヤトさん、高橋洋一さん、池上彰さん・・・
あのあたりの、別に緊縮派というわけではないけど、全然知らないことを詳しく知ってる風にしゃべるのとか、中身のない話をとんでもなく長々としゃべるのとか、そーゆースキルを飯のタネにしてるあの辺の、なんていうか、闇堕ちした寅さんみたいな人たちから「インフレが起きると、円の価値が下がるから、円安になる。」という意見をよく聞く気がするんですよね。
と思ってたら、先日、カリンゴンさんまでそう言ってて驚いたのですが。
朝まで生テレビでの三浦瑠麗氏のMMT批判の反論(221)【経済の仕組み】 - YouTube
しかし、それが正しいなら日本のインフレ率がずーっと先進国最低の状況が続いているのだから、どんどん円高になっていかないとおかしいわけで、【インフレ=貨幣の価値下落】という図式は事実と反するのではないかと思うんです。
まあ、この話はいったんここまでにしておきます。次の論点にいきましょう。
《価値》の定義
- 「インフレ」とは、「任意の財・サービスの価格が上昇すること」である。
- 上昇するのは価格であって、価値ではない。
と主張する上で、経済学における《価値》とは何かについて、私の考えを明確にしておきたいと思います。
私は、「Xに価値がある」とは、「Xには、何か特定の物理的な状態または状況を実現するのに役立つ性質が備わっている」という意味だと考えます。
例えば、ハンマーには価値があります。それはハンマーには、木材に釘を打ち込むのに役立つ【固い】という性質が備わっているからです。
ここで注意したいことが2つあります。
- Xという存在に価値があるのではなく、Xに備わった性質に価値があること。
- Xの価値は、"Xの持ち主が誰であるか"によって変わったりはしない。
価値は性質に宿る
禅問答のようになってしまうのですが、固くないハンマーに価値はあるのでしょうか。
固くないハンマーは、木材に釘を打ち込むのに役立ちません。それ以外の用途が何かあるかもしれませんが、少なくとも本来のハンマーとしての価値は無くなっていると言えるでしょう。
ということは、ハンマーの価値は、それがハンマーであることによって成立するものではなく、それが【固い】という性質を備えていることによって成立するものだと言えるのではないでしょうか。
使用価値・交換価値とは別の概念
ハンマーの価値は、ハンマーの【固い】という性質に宿るものです。そして、ハンマーは、いつでもどこでも【固い】ので、木材に釘を打ち込むのに役立ちます。よって、"ハンマーの持ち主に釘を打ち込む用事があるかどうか"と、"ハンマーに価値があるかどうか"は、関係がありません。
要するに、私が何を言いたいのかと言うと、いま述べている価値の概念は、商品貨幣論の説明に使われる《使用価値》や《交換価値》の概念とは別物であるということです。
そこをハッキリさせておきたいだけで、持ち主によって価値が変わったりしないことはこれから後の議論にはあまり関わってこないと思いますので、「商品貨幣論の使用価値・交換価値」について(´・ω・ `)<何言ってんのか分からないね、という方はこの部分は気にしないでもらって大丈夫です。
貨幣に価値は無い
「Xに価値がある」とは、「Xには、何か特定の物理的な状態または状況を実現するのに役立つ性質が備わっている」という意味だとした場合、《貨幣に価値は無い》ということも言っておきたいと思います。
そもそも貨幣とは、【B払いの記録】です。もうちょっと詳しく言えば、その発行者が発行した後、いまだに回収されていない(未回収の)負債です。つまり、貨幣の本質は負債であり、貨幣に実体はありません。貨幣は、"モノ"ではなく、"情報"に区分されるものです。
( ゚д゚)<貨幣に実体が無いてどーゆーことやねん。きみ、1万円札とか見たことないんか?
(´・ω・ `)<1万円札は貨幣ちゃうよ。1万円札に書いてある情報が貨幣なんよ。
( ゚д゚)<あ?
(´・ω・ `)<うん、まあ、いきなりピンと来んのは分からんこともないわ。貨幣って何なのかは、また今度詳しい記事にする予定じゃけー、とりあえず、いまはそういうもんなんやっちゅうことで納得してもろて次行こか。
( ゚д゚)<うい。
貨幣は実体の無い情報ですから、貨幣を使って何か物理的な特定の状態または状況を実現することはできません。
( ゚д゚)<お金使ったら食べ物とか手に入るやないか。
(´・ω・ `)<それはカネを支払うことを「カネを使う」って呼んどるだけや。そういうことじゃなくて、1万円札に書かれてある「日銀には1万円の負債がある」っていう情報で釘は打てへんやろって言うとんじゃ。
よって、「Xに価値がある」とは、「Xには、何か特定の状態または状況を実現するのに役立つ性質が備わっている」という意味だとするならば、X=貨幣とした場合、《貨幣に価値は無い》と言えます。
ここで【インフレ=貨幣の価値下落】という図式は事実と反するのではないかという、はじめの方の話を蒸し返します。
貨幣に価値が無いのであれば、無いものが下がるわけがありませんから、やはり【インフレ=貨幣の価値下落】という図式は成り立たないのではないのでしょうか。もちろん、これは私が勝手に定義した"価値"を貨幣に当てはめて論理展開して得た結論に過ぎないことは承知しています。
《価格》の定義
( ゚д゚)<貨幣に価値が無いとか言うけど、為替取引で円安とか円高とか言うとるやないか。
(´・ω・ `)<円安円高は価格の話や。価格は価値の有る無しに関係なく何にでも付けられるよ。「レターポット」で検索してみ?
レターポットとは?『個人の信頼』を可視化する新通貨を、イラストで解説 | Workship MAGAZINE(ワークシップマガジン)
( ゚д゚)<ほんほん・・・?これ、どういうこと?
(´・ω・ `)<テキストメッセージを送ることを西野様に許可してもらう権利を1文字5円で売っとるんや。
( ゚д゚)<ほう、すごい世界やな。
(´・ω・ `)<もちろんこんなんに価値なんか無いで。価値なんか無いけど、こんなんでも価格を付けることは可能やねん。
私は《価格》を次のように理解するのが適切ではないかと思います。
《価格》とは、できるだけ安く買いたい買い手と、できるだけ高く売りたい売り手が、互いに交渉して、折り合いが付いた値段(人と人との売買交渉の合意点)のことです。
但し、レターポットの買い手は特別です。もっと高く買うことを望んでいるかもしれません。
価格と価値の関係性
冒頭で「インフレによって上昇するのは価格であって、価値ではない」ということを強調しました。ここで価格と価値の関係性は、かなり薄いものだということも言っておきたいと思います。
価格は、買い手と売り手の売買交渉によって決まります。売買の目的物の価値が交渉に全く影響を与えないわけではないでしょうが、目的物が全然変化していないのに価格が上下することはいくらでもあります。
また、価格は、人と人が合意さえすれば成立するので、極端なことを言えば、目的物が存在していなくても、頭脳で認識することさえできてしまえば、何にでも、例えばビットコインにでも、いくらでも価格を付けることは可能なわけです。最近はデジタルアートとかいうのにも何億円みたいな値段が付いてるそうですね。すごい。
もう1つ、価値と価格の関係がかなり薄いことを示すために《ボーモル病》と呼ばれる現象も例として挙げておきます。ボーモル病とは、いくつかの産業がどれだけ年月をかけても生産効率を高めることが不可能な構造を抱えている現象のことで、クラシック音楽業界は代表的なボーモル病患者です。
クラシックコンサートの価値は、おそらくですが、300年前からそこまで大きくは変わっていないでしょう。なのに、クラシックコンサートの価格、つまりチケット代は300年前とは比べ物にならないほど高くなっています。もし価値と価格に強い関係性があるのであれば、なぜ有名指揮者は工場作業員より多くの報酬を得ているのでしょうか。
まとめ
このへんでいったんまとめにしておきます。
- 本シリーズ「インフレに関する考察」のお題は、「なぜ需給バランスが需要側に傾くと物価が上昇するのか」である。
- 《インフレ》とは、「任意の財・サービスの価格が上昇すること」である。なお、上昇するのは価格であって、価値ではないことに注意されたい。
- 「Xに価値がある」とは、「Xには、何か特定の物理的な状態または状況を実現するのに役立つ性質が備わっている」という意味である。
- ここでいう《価値》は、Xという存在ではなく、Xの性質に宿るもので、商品貨幣論の説明に使われる《使用価値》や《交換価値》」とは別物である。
- B払いの記録である貨幣は、情報であるから、貨幣に価値は無い。
- 《価格》は、できるだけ安く買いたい買い手と、できるだけ高く売りたい売り手が、互いに交渉して、折り合いが付いた値段のことである。つまり、価格とは、人と人との売買交渉の合意点である。
- 価格と価値の関係性はかなり薄い。価格が価値とは関係なく上下することはいくらでもある。
- 価格は、人と人の合意さえあれば、何にでも、いくらでも付けることができる。
おまけ
先週、しょうもないレスバに多大な時間を浪費してしまったことをここに書き留め、大いに反省したいと思います(´・ω・ `)
日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。
私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^
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