経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

番外4-11.インフレに関する考察 その11

 

本記事はMMT解説ではありません。私がMMTをベースに理屈をこねくり回して考えたことを記事にしたものです。


当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

 

当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

xbtomoki.hatenablog.com

 

目次 

 

本シリーズのお題

「インフレ・デフレがどういう仕組みで起きるのかがよく分からない。」

これが長いこと私の悩みのタネでした。

三橋貴明さんがよくこの図↓を使って「需要が供給より大きくなればインフレに、逆ならデフレになる。」と言われます。

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新世紀のビッグブラザーへ データ44

インフレデフレは需要と供給のバランスによって起こり、バランスが需要の方に傾いたときにはインフレが起こる。

たしかにそうです。実際にもそうなってますし、それは分かってるんです。

ただ、私がよく分からんと言ってるのは、そのもう一歩先というか、手前というか、「なんで需給バランスが需要側に傾いたら物価が上がるのか」ということなんです。

 

MMT現代貨幣理論入門を読みました。
需給バランスによって起こると書いてありました。

財政赤字の神話: MMTと国民のための経済の誕生も読みました。
需給バランスによって起こると書いてありました。

マンキュー マクロ経済学Ⅰ入門篇(第4版)も読みました。
紙幣をいっぱい刷ったらインフレが起きると書いてありました。ハイハイワロスワロス

 

仕方がないので、自分で考えてみることにしました。その考えが多少なりともまとまったので、ここで書いてみることにしました。もしよろしければ、感想や指摘等をいただけたらありがたいです。

ただ、とても長くなりそうなので、「インフレに関する考察」シリーズということで、数回に記事を分けようと思います。5本以上になりそうです。

ということで、シリーズ11本目、やっていきましょう。よろしくお願いします。

 

番外4-6までのまとめ

[番外4-6]までのまとめを確認しておきます。

[番外4-1]より

  • 《インフレ》とは、「任意の財・サービスの価格が上昇すること」である。なお、上昇するのは価格であって、価値ではないことに注意されたい。
  • 《価格》は、できるだけ安く買いたい買い手と、できるだけ高く売りたい売り手が、互いに交渉して、折り合いが付いた値段のことである。つまり、価格とは、人と人との売買交渉の合意点である。
  • 価格と価値の関係性はかなり薄い。価格が価値とは関係なく上下することはいくらでもある。
  • 価格は、人と人の合意さえあれば、何にでも、いくらでも付けることができる

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[番外4-2]より

  • 価格の上昇は、良い買い手が多い【売り手有利】の状況、または良い売り手が少ない【買い手不利】の状況で起きる。

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[番外4-3]より

  • 需給バランスが需要側に偏ることによってインフレが生じる仕組みは、次の図のとおりである。

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[番外4-4]より

  • インフレ・デフレの本質は、需給バランスではなく、買い手側・売り手側それぞれの《競争》のバランスにある。
  • 要因は、需給バランス以外にも無数にあるが、その影響は買い手(売り手)の競争促進(競争阻害)の4パターンに集約できる。
  • 買い手の競争促進と売り手の競争阻害は価格上昇圧力になり、買い手の競争阻害と売り手の競争促進は価格下落圧力になる。
  • 上昇圧力と下落圧力が同時にかかり、大きい方の影響だけがインフレまたはデフレという目に見える現象として現れる。

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[番外4-5]より

  • 株価以外の普通の財・サービスについても、プライスボードで価格変動を説明することができる。

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本日のお題

(´・ω・ `)<ほいじゃあ、ラスト4つめの続き、いってみよか。

アメリカ株の価格は、今後も上がり続けるのか】

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ダウ平均株価は、1980年~2020年の40年間、平均すると年9%のペースでずっと増え続けて、2020年は1980年の約30倍にまで増えました。

これが今後も続くのかを、

  • 株価が40年間上がり続けた原因を探る。
  • その原因がこれからも成り立ち続けるのかを検証する。

という順序で考えてみようと思います。

 

前回までのおさらい

[番外4-9][番外4-10]のおさらいをしておきましょう。

  • ダウ平均株価は40年間上がり続けた。
  • これは家計が株を高値買いする意思と能力を持ち続けたからである。
  • 株を高値で買う意思は「株価は上がり続ける」という期待から生まれた。
  • 株を高値で買う能力(カネ)は財政赤字から生まれた。

(´・ω・ `)<からの、やな。

( ゚д゚)<おう、やっと本題や。3本もかかるとは思わなんだ。

(´・ω・ `)<ほいじゃあ【株価を上昇させてきた家計の高値買いの意思と能力が今後も継続していくか】っちゅうことでやっていこか。よろしゅうな。

( ゚д゚)<まかしときー。

(´・ω・ `)<ちゃうちゃう、ぼくが教える側よ。え、これまたやり始めるん?

 

カネは供給され続けるか

まずは、

【今後も財政赤字が続き、家計に株を買うカネが供給され続けるのか】

を考えてみましょう。

 

[4-2][7-4]のとおり、政府収支は、赤字であることが普通です。財政赤字は持続可能ですが、財政黒字は持続不可能です。

よって、財政赤字は、間違いなく今後も継続し、銀行預金は増え続け、家計には株を買うカネが供給され続けます。

財務省さん、クニノシャッキンは増え続けて、毎年過去最大を更新し続ける運命なんです。もうあの気持ち悪いプロパガンダ、無駄だし迷惑なんでやめてもらえませんか(´・ω・ `)

( ゚д゚)<おお、簡単やな。

(´・ω・ `)<さんざん説明してきた内容じゃけーの。

 

株価上昇を信じ続けるか

続きまして、

【家計は今後も「株価は上がり続ける」と考えるのか】

を考えてみましょう。

(´・ω・ `)<結論から言いますと・・・

( ゚д゚)<言いますと?

(´・ω・ `)<分かりません。

⊂⌒~⊃。Д。)⊃<ずこー

(´・ω・ `)<そんなもん分からんよ。他人の考えることなんて。どこぞのメンタリストじゃあるまいし。

( ゚д゚)<おい、やめろ。

(´・ω・ `)<まあ、でも、さすがに断定はしきらんっちゅうだけで、「たぶん信じ続けるやろうな」くらいのことは言えると思うで。

( ゚д゚)<ほほう。と言いますと?

(´・ω・ `)<それでは私がそのように思う根拠を説明いたしましょう。

 

リスク資産は買われ続ける

あなたが、共におるわたしの民の貧しい者に金を貸す時は、これに対して金貸しのようになってはならない。これから利子を取ってはならない。

旧約聖書:出エジプト記 第22章 第25節

旧約聖書に金貸しが登場する事実からは、【貯蓄を安全資産からリスク資産に振り替えることで、さらに貯蓄を増やす】というメソッドが太古の昔から存在したことが伺えます。

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私には、これほど長く生き残ってきたビジネスモデルが、今後そう簡単に消え去るとは思えません。一定の貯蓄を持つ人々は、これからリスク資産を買って不労所得を求め続けることでしょう。

 

問題はアメリカ株が選ばれるか

となると、残る問題は【購入するリスク資産としてアメリカ株が選ばれるか】です。

アメリカ株が選ばれれば、株価は上がり続けることになります。そして、家計は「株価は上がり続けるんだ。」と信じるようになるでしょう。

(´・ω・ `)<ちょっと誤解があるといかんから言うとくな。別に「アメリカ株が選ばれる」って全財産をアメリカ株に突っ込むって意味じゃないけーの。

( ゚д゚)<あれ?違うん?

(´・ω・ `)<そうじゃなくてやな、「アメリカ株が選ばれる」ってのは、【預金のうち、3割は預金のままで、3割はアメリカ株で、残りは国債】みたいなのも含んどる、っていうか、その方が普通や。

( ゚д゚)<ああ、なるほどな。

(´・ω・ `)<ちなみに、こーゆー「全資産のうち、何割は○○で、何割は△△で…」みたいな配分のことをアセットアロケーションって言うんやで。

( ゚д゚)<あれ?そういうのって"ポートフォリオ"っていうんじゃなかった?

(´・ω・ `)<かじっとんなー。いや、よくごっちゃにされるっていうか、ごっちゃにしても大した問題じゃないんやけどな。ポートフォリオってのは、アセットアロケーションを具体的な銘柄にまで落とし込んだやつのことや。ちょっとちゃうねん。

( ゚д゚)<ほーん。まあどうでもええわ。ほいだら、逆の「アメリカ株が選ばれない」は、そのなんとかかんとかいうやつで、アメリカ株の割合が0%にされるってことか?

(´・ω・ `)<そういうこっちゃ。ほいじゃ、そういうことになるかどうかを考えてみよか。

 

家計はアメリカ株を買い続けるだろう

ブラックマンデーリーマンショック、コロナショックと、株価はこれまでに何度も暴落してきましたが、そのたびに株価は暴落前の水準を回復し、長期的には一貫して上がり続けてきました。

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特に2020年のコロナショックは、過去最大級の暴落でしたが、大元のコロナ問題がいまだに解決されていないにもかかわらず、わずか1年以内にショック前の水準を回復し、その後もどんどん上がり続けています。
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( ゚д゚)<おお、なんじゃこら。どないなっとんねん。

(´・ω・ `)<たぶん、先進国各国(日本除く)の政府がロックダウン補償とかでコロナショック対応のために大規模な財政出動をして大量のカネを家計に供給したやろ。そのカネが株に向かったんやろな。日本は日銀が直で株を買い漁って値段を吊り上げるっていうゴリラみたいな方法で回復させたけどな。*1

 

さて、このような

  • 長期ではずっと上がり続けている。
  • 何度暴落しても必ず回復してきた。
  • 過去最大級の暴落でも政府がカネを出したら、1年もかからずに回復した。

という株価の歴史を見て、

(゚⊿゚)<あらやだ。こんなのを長期で持つなんて危なっかしくてやってられないわ。

と考える人がいったいどれだけいるでしょうか。

もしそんな人がそれほど多くなければ、アセットアロケーションからアメリカ株が除外されることはないはずですから、これからも家計は株を買い続けることになるでしょう。

 

まとめ

( ゚д゚)<ほいじゃあ、最後、まとめてもらおかの。

(´・ω・ `)<うい。

[番外4-9]から続いた本記事のテーマは、 こちらでした。

アメリカ株の価格は、今後も上がり続けるのか】

 

で、これを

  • 株価が40年間上がり続けた原因を探る。
  • その原因がこれからも成り立ち続けるのかを検証する。
という順番で考えてみました。
 

株価が40年間上がり続けた原因は何だったか

  • 株価が上がり続けた原因は、家計が株を高値買いする意思と能力を持ち続けたからである。
  • 株を高値で買う意思は「株価は上がり続ける」という期待から生まれた。
  • 株を高値で買う能力(カネ)は財政赤字から生まれた。

 

これからも成り立ち続けるのか

  • 財政赤字は、今後もずっと継続するので、株を高値で買う能力(カネ)は、これからも家計に供給され続ける。
  • 家計がこれからも「株価は上がり続ける」と信じ続けると断定することはできない。
  • しかし、いまのところ、上がり続けると思わせるようなデータはあっても、下がり続けると思わせるようなデータは無いし、今後もアメリカ政府がわざわざ株価を暴落させたままにしようとしない限り、そんなデータが出ることはないだろうから、家計のアセットアロケーションからアメリカ株がすっかり除外されることはないだろう。
  • 除外されないということは、アメリカ株は買われ続けるということである。アメリカ株が買われ続ければ、株価は上がり続けるので、いままでどおり、家計はできるだけ安く買うために高値買いの意思を持ち続けるだろう。

→ということは、株価が40年間上がり続けた原因である【家計が株を高値買いする意思と能力を持つこと】は、これからも成り立ち続ける。

よって【アメリカ株の価格は、今後も上がり続ける】ことになるでしょう。たぶん。

(´・ω・ `)<めでたしめでたし。
( ゚д゚)<おう、おつかれさん。

 

追伸

ついでに言っておきたいことと、言っておかないといけないことを書いておきます。

 

"投資家"さんたちへ

世界の銀行預金総量は、これからもずっと増え続けます。これは断言できます。間違いありません。そういうふうな仕組みになっとるんです。

てことは、株価はきっと上がり続けますよ。それもチマチマした配当金なんかどうでもよくなるくらいのペースで。

だから、そんなに焦って(゚⊿゚)<もっと配当金を出せー!下請けと労働者を絞り上げろー!とか言うの、みっともないからもうやめませんか。

 

おことわり その1

本記事はあくまで「私はこうなるんじゃないかと思います。」 というものです。

(´・ω・ `)<てめえの記事を信じて買ったら大損こいたじゃねえか。

と言われましても、一切の責任は取れませんので、ご了承ください。

 

おことわり その2

[番外4-9][番外4-10]及び本記事の考察対象は、ダウ平均株価やS&P500等で表されるアメリカ株全体の株価の30年間くらいでの長期の動きです。個別株は、対象ではありません。

個別株は、いつまで経っても上がらないとか、暴落したまま戻ってこないことも普通に起こると思います。

 

シリーズ完結です

番外4『インフレに関する考察』シリーズは、本記事にていったん完結とします。

およそ1か月半かかりましたが、だいぶ自分の中での理解が整理されたような気がしていて、書いて正解だったなと思っています。また何か思いつきや発見があったら書き足そうかなとも考えていますが、とりあえず次回記事からはMMT解説に戻ります。

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

( ゚д゚)<あれ?財政赤字で供給されるカネは、株以外を買うのにも使えるやんか?

(´・ω・ `)<そらそうよ。それがどしたん。

( ゚д゚)<ほいじゃ、家計が「価格が上がり続ける」と思ったやつなら、株以外も上がり続けるんちゃうか?

(´・ω・ `)<ほう、鋭いの。たぶんそうなると思うで。ビットコインのことを言いたいん?

( ゚д゚)<ほう、鋭いの。

(´・ω・ `)<マネすんなやwうっとうしいなw

( ゚д゚)<いやいや、(´・ω・ `)<ほう、鋭いの。の方がよっぽどうっとうしいがな。

(´・ω・ `)<はいはい、すみませんでした。で?ビットコインのことが聞きたいんか?

( ゚д゚)<おう。ビットコインだけじゃないけどさ、仮想通貨か暗号資産か知らんけど、あれを推しとる人、結構おるやん。あれ、買って大丈夫なん?

ということで、仮想通貨についても、私の考えを述べてみたいと思います。あくまで私の考えに過ぎませんので、参考にされるかどうかは"自己責任"でお願いします。

 

仮想通貨の今後について

おそらく仮想通貨の価格は、少なくとも銀行預金の総量が増え続けるのは間違いないので、基本的には上がり続けると思います。ただ、おすすめは全くしませんし、私は絶対に買いません。

 

なぜかと言いますと、

まず、前提として、仮想通貨には実在が何もありません。[番外4-1]のとおり、レターポットには何の価値もありませんが、少なくとも西野さんは実在します。ところが仮想通貨には本当に何もありません。( ゚д゚)<仮想通貨ってアレは一体何なん?と聞かれたら、私は「あれは無です。」と答えます。アレは、無に"仮想通貨"っていう名前を付けて、ブロックチェーンとかで飾り付けたものを通貨だと思い込んでるだけなんです。

いつか西野さんが「お金っていうのはみんなが価値があるっていう幻想を抱くことで成り立ってるものなんだよ」とか言われてて、デタラメ言うてんちゃうぞマジキモイなと思ったんですが、あれは仮想通貨の説明であれば、少し正解です。

ただ、問題は、【仮想通貨の正体が《無》であること】ではありません。仮想通貨を買ってる人たちの大部分が、【自分たちが《無》に価格を付けて、《無》を売ったり買ったりしていることを理解していないこと】なんです。株だって株が何なのか理解せずに買ってる人はいますが、それは購入者のうちのごく少数です。

 

その人たちが仮想通貨の正体をいつ理解するのか、理解したときにどういう行動に出るのかは完全に予測不可能です。大パニックが起きるかもしれないし、「あっそう」で済むかもしれないし、もしかしたら永久に知られないままかもしれません。

始めに言ったとおり、基本的には上がっていくと思いますし、"絶対損する"と言うつもりはありませんが、どうなるか分からない不確定要素がこれだけ大きい商品にカネを突っ込むのは・・・私はよした方がいいと思います(´・ω・ `)

 

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

‪最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^

応援コメント、指摘コメント、お待ちしております!当ブログの拡散も大歓迎です!

よろしくお願いします!

 

 

 

*1:

指数連動型上場投資信託受益権等買入等 : 日本銀行 Bank of Japan, そしてこのゴリラ戦法で上がった株価を見て「景気回復だー」とか言ってる"経済専門家"がチラホラっていう・・・(´・ω・ `)