経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

番外5-5.消費税の仕組み【仕入税額控除 その1】

 

本記事は、MMT解説ではありません。

思うところを[番外]ということで記事にしてみた次第です。

 

当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

 

当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

xbtomoki.hatenablog.com

 

本記事における税制の説明はこちらのwebページで公開されているPDFの内容に基づいています。

www.nta.go.jp

  

 

目次 

 

本日のお題

前回までで、これらの説明をしてきました。

( ゚д゚)<前回、「次は仕入税額控除の説明になるかの」て言うとったの。

(´・ω・ `)<せやな。ほいじゃ、今日はこの↓式の中の《仕入税額控除》の計算方法を説明していこか。

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ということで、本日はこれをやっていきましょう。

仕入税額控除の計算方法】

(´・ω・ `)<よろしゅうな。言っとくけど、今日の話はめちゃんこややこい。よくこんだけややこいシステムを作ったもんやと感心するところもあるけど、結局、全体の仕組みの整合性っていうか一貫性が取りきれてないところもある。どこかの維新の会みたいになんでもかんでもぶっ壊したらええねんっていうのは好きじゃないけど、ほんま消費税は全部ぶっ壊した方がええと思うわ。

( ゚д゚)<ほんほん。まあ、お手柔らかに頼むわ。

(´・ω・ `)<ういー。

 

課税売上高・課税売上割合の計算

仕入税額控除を計算するには、先に《課税売上高》《課税売上割合》を計算しておく必要があります。

 

課税売上高とは

課税売上高の定義は、「課税資産の譲渡等の対価の額の合計額(税抜き)」です。

( ゚д゚)<と言いますと?

(´・ω・ `)<分かりにくいじゃろ。文章じゃなくて数式で表してみよか。

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( ゚д゚)・・・?

(´・ω・ `)<要するに、「8%課税売上の"本体価格"」と「10%課税売上の"本体価格"」を足した額ってことや。

( ゚д゚)<1.08とか1.1で割ったら本体価格になるんか?

(´・ω・ `)<なるで。例えば、"本体価格"200円の商品に消費税10%を掛けたら"税込価格"はいくら?

( ゚д゚)<消費税は20円やから、200と20を足して220円!

(´・ω・ `)<それを1.1で割ったら?

( ゚д゚)<なんで1.1で割るん?

(´・ω・ `)<えええ・・・

( ゚д゚)<冗談やがな。220÷1.1=200やろ。おお、本体価格になったな。ほーん。

(´・ω・ `)<おし、ほいだら次いこか。

( ゚д゚)<ああ、いや、ワンモアクエスチョンよ。

(´・ω・ `)<おお、はい、どうぞ。

( ゚д゚)<なんで《免税売上》は計算に入れへんの?免税売上は、「課税対象やけど、適用税率が0%」の取引やろ?そしたら「課税資産の譲渡等」っていうワードに当てはまりそうなもんやけど。

(´・ω・ `)<なんでかねえ・・・「たぶんこうじゃないかな」ってのはあるんやけどな。すまんけど、その話はまた今度にさせてもらえるか。

( ゚д゚)<ういー。

 

課税売上割合とは

課税売上割合の定義は、「資産の譲渡等の対価の額の合計額に占める課税資産の譲渡等の対価の額の合計額の割合」です。

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( ゚д゚)<訳が分からんぞ。

(´・ω・ `)<せやろな。これも数式にした方がええ。

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( ゚д゚)<ほんほん。非課税売上が上の分子には含まれなくって、下の分母には含まれるんか。えーと、「対象外の不課税取引を除外した上で、売上全体の中で、課税対象になる売上が占める割合を計算します。」って感じか。

(´・ω・ `)<うん。まあ、そんな感じや。こっちも"本体価格"で計算するってとこに注意な。試しにいっぺん計算してみよう。例えば、各取引区分の金額合計がこう↓なったとしたら・・

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(´・ω・ `)<課税売上高は3000、課税売上割合は93.2%になるわけやな。

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控除方式の選択

仕入税額控除の計算方法には、次の4つの方式があります。

  • 簡易課税方式
  • 全額控除方式
  • 一括比例配分方式
  • 個別対応方式

どの方法で計算するかは、この↓フローに従って、事業者ごとに判定します。

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( ゚д゚)<最後の一括なんとかと個別なんとかはどうやって選ぶん?

(´・ω・ `)<事業者が「こっちの方が仕入税額控除が大きくなりそう」と思った方を選ぶ。

( ゚д゚)<自分に有利な方を選んでええよってこと?そんなんでええんか。

(´・ω・ `)<ええんかって言われてもなあ。ただ、はじめて選択する事業者が一括比例配分方式を選択した場合と、いままで個別対応方式やった事業者が一括比例配分方式に変更をした場合は、その翌年も一括比例配分方式を継続せなあかんっていうちょっとした制限はある。翌々年は、また自由に選べるようになるけどな。

 

簡易課税方式とは

簡易課税方式》とは、1つ1つの仕入れについて「これは不課税か非課税か、それとも・・・」みたいな取引区分の判定を省略してよい、という中小事業者に配慮した計算方式です。本気で配慮する気があるんだったら消費税そのものを廃止してくれるのがいちばんなんですが・・・

簡易課税方式では、仕入れの消費税区分は全て「仕入」としてしまうので、仕入の取引区分の判定する事務負担が軽減され(ることになってい)ます。但し、売上の方で事業区分の判定という事務が別途必要になります。

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事業区分には、次の6種類があり、それぞれに《みなし仕入れ率》が設定されています。事業者は、1つ1つの売上について、それがどの事業区分に該当するかを判定します。

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決算のときに次の手順で仕入税額控除の金額を算出します。

  1. 事業区分ごとの課税売上高と全体に対する割合を計算する。
  2. みなし仕入れ率の加重平均を割り出す。
  3. 別個に[番外5-4]で説明した方法で消費税額を計算する。
  4. 消費税額にみなし仕入れ率の加重平均を掛けて、仕入税額控除額を算出する。

例えば、こんな↓感じで計算します。

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なお、どれか1つの区分の割合が75%以上であれば、加重平均を計算せずに、【消費税額×75%以上の事業区分のみなし仕入れ率】で仕入税額控除を計算してもよいことになっています。

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どちらの方法にするかは、事業者が選んでよいことになっています。この場合は、きっちり加重平均を計算した方が仕入税額控除が大きくなるので、普通は、加重平均を適用する方法を選択するでしょう。

以上が、簡易課税方式です。

 

全額控除方式とは

《全額控除方式》は、前回説明した消費税額と同じように仕入税額控除を計算する方式です。

 

1.~3.仕訳を仕入だけに絞り込んで、取引区分ごとの金額合計を出します。

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2.この↓式で区分ごとの仕入税額控除を計算します。

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3.全ての区分の仕入税額控除を合計します。

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以上が全額控除方式です。

 

一括比例配分方式とは

《一括比例配分方式》は、次の式で仕入税額控除を計算する方式です。

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具体的には、こういう作業をすることになります。

  1. 全額控除方式で仕入税額控除を計算する。
  2. それに課税売上割合を掛ける。

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以上が一括比例配分方式です。

 

個別対応方式とは

《個別対応方式》とは、仕入取引の仕訳の1つ1つに「用途区分」のデータを付与し、取引区分・用途区分ごとに仕入税額控除を計算する方式です。

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用途区分には、次の3種類があります。

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個別対応方式での計算表は、5つの取引区分をさらに3つの用途区分で分けるので、5×3の15行になります。

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それぞれの行の仕入税額控除をこの↓式で計算します。

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仮に課税売上割合を80%として計算してみると、こんな感じです。

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以上が個別対応方式です。

 

次回予告

以上で説明した4つの計算方式のうちのどれかで計算した仕入税額控除》と、前回説明した《消費税額》を差し引きして、消費税の納付税額が決まることになります。

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差引してマイナス(消費税額より仕入税額控除の方が大きい)の場合は、事業者が納付ではなく、政府が事業者に消費税を支払うことになります。

( ゚д゚)<この仕入税額控除ってのは、こんなめんどくさいことさせて、いったい何がしたいん?

(´・ω・ `)<これが無いと、消費税の構造上、価格転嫁が膨れ上がってまうんよ。

 

仕入税額控除の目的

まずはじめに、消費税が存在しない世界で、事業者が100円で仕入れて150円で売り、50円の利益を得ようとしているとします。

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前回は、「その世界に消費税が生まれると、事業者は元の利益(50円)をキープするために15円の値上げ(価格転嫁)をします。」と説明しました。

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ところが、実際には、消費税を課税されるのは事業者だけではありません。仕入先だって消費税を課税されますから、価格転嫁をします。すると、元の利益(50円)をキープするには、値上げ幅は15円では足りなくて、26円の値上げが必要になります。

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仕入先Aー事業者ー消費者くらいなら、150→176くらいで済みますが、AーBーCーDー事業者ー消費者のようにいくつもこれが連なっていた場合はどうなるかというと、

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このように、10%のはずの消費税が消費者のところに届くときには38%〔=(414-300)/300〕になってしまいます。

( ゚д゚)<おお、すごい膨れ上がったの。

(´・ω・ `)<価格転嫁に価格転嫁が乗るからゴリゴリ増えてくねん。せやから、仕入税額控除自体は、消費税をやるんやったら、必要な仕組みやなとは思うわ。消費税を廃止すりゃあ万事解決なんやけどな。

 

この雪だるま式の価格膨張を防いで、消費者に転嫁される負担を税率どおり、"本体価格"の10%にする、つまり最終の消費者への販売をする事業者の値上げ幅を元の価格の10%だけにさせるのが仕入税額控除の狙いです。

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( ゚д゚)<なんで仕入税額控除があると膨れ上がらへんのんじゃ。

(´・ω・ `)<んとな・・・そこの話まで行くと、けっこう長くなるからいったん今日はここまでにしようか。続きは次回っちゅうことで。

( ゚д゚)<そか。ほなバイナラ。

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

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S&P500が2020年3月にコロナショックでズドンと落ちて以来、とんでもないペースで上がり続けてて、私は、これはだいぶ大きな出来事なんじゃないかと思ってるんですが、テレビでもネットでも、これについて大して騒がれてない感じなのは、なぜなんだろう・・・

私のTLが偏ってるだけかな・・・(´・ω・ `)?

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

( ゚д゚)<最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!!

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よろしくお願いします!