本記事は、MMT解説ではありません。
思うところを[番外]ということで記事にしてみた次第です。
当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。
当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。
こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。
本記事における税制の説明はこちらのwebページで公開されているPDFの内容に基づいています。
目次
本日のお題
前回までで、これらの説明をしてきました。
- 間接税・価格転嫁の仕組み[番外5-1]
- 「事業者」等の語句説明[番外5-2]
- 取引区分の判定方法[番外5-3]
- 消費税額の計算方法[番外5-4]
- 仕入税額控除の計算方法[番外5-5]
- 仕入税額控除のコンセプト[番外5-6]
- 税込経理と税抜経理[番外5-7]
- 税抜経理のカラクリ[番外5-8]
(´・ω・ `)<さて、消費税のシステムの説明ができたところで、次に行こうか。
( ゚д゚)<おう。ほいだらどこから行くんや。
(´・ω・ `)<せやな・・・まずは理念ちゅうか、コンセプト的な所から叩いてみよか。
( ゚д゚)<コンセプト的と言いますと?
(´・ω・ `)<こいつよ↓
(゚⊿゚)<消費税は【消費者の消費】への課税です!
それでは、本日のお題は
【消費税は誰の何への課税なのか】
ということでやっていきましょう。
(´・ω・ `)<よろしゅうな。
( ゚д゚)<まかしときー。
(´・ω・ `)<ちゃうちゃう、ぼくが教える側よ。
消費税は課税対象が見えにくい
消費税は【誰の何】への課税なんでしょうか。いったん消費税以外の税を見てみましょう。
( ゚д゚)<所得税は?
(´・ω・ `)<【個人の所得】への課税やな。
( ゚д゚)<法人税は?
(´・ω・ `)<【企業の利益】への課税。
( ゚д゚)<入湯税は?
(´・ω・ `)<【個人の温泉入浴】への課税。
( ゚д゚)<なんで温泉入ったら課税されるん?
(´・ω・ `)<まあ、入湯税の話は今度にしよう。
さて、これらの税は、課税対象が【誰の何】なのか分かりやすいのですが、消費税は【誰の何】への課税なのかが、いまいち分かりにくい性質になっています。
(゚⊿゚)<だから!【消費者の消費】への課税だって言ってるだろ!
( ゚д゚)<じゃあ[番外5-5]のとこやけど、仕入税額控除の計算の計算するときに《課税売上高》とか《課税売上割合》ってあったやん?
(゚⊿゚)<それがどうした。
( ゚д゚)<消費への課税なのに、なんで「課税売上」って言うん?「課税対象である売上」を略して、「課税売上」なんやないの?
(゚⊿゚)<なんだなんだ。「消費じゃなくて売上への課税だと認識しとる証拠じゃないか」とでも言いたいのか。
( ゚д゚)<せやな。話が早いの。
(゚⊿゚)<うふふ。
( ゚д゚)<なにをごまかしとんww
ここで、消費税の納付税額の計算式を見返してみましょう。
このうち「消費税額」の部分だけなら、「【事業者の売上】への課税である」ということで分かりやすいのですが、問題は「仕入税額控除」のところです。
「売上への課税から仕入税額控除をしたもの」は、いったい【誰の何】への課税だと呼ぶべきなんでしょうか。
安藤説と西田説
安藤裕さんは、「消費税は、事業者の人件費と利益への課税だ。」と言われました。
西田昌司さんは、「消費税は、事業者の粗利への課税であり、これは第二法人税と呼ぶべきものだ。」と言われました。
実は、おふたりが言われていることは、コアの部分は同じことで、つまりこういうことです。
( ゚д゚)<ああ、ちょいちょい。ちょい待ち。
(´・ω・ `)<なんじゃー、すずさん。
( ゚д゚)<「すずさん」は2018年7月期のTBS日曜劇場枠(夜9時〜10時)で放送されたテレビドラマ『この世界の片隅に』の主人公の北條すずのことで、「なんじゃー、すずさん」は北條すずの夫の北條周作の口グセ「なんじゃー」に、それだけじゃ分かりにくかろうということで「すずさん」をくっつけたものです。ちなみに、劇中で北條周作はことあるごとに「なんじゃー」とつぶやきますが、「なんじゃー、すずさん」と言うことはほとんど無かったと思います。
(´・ω・ `)<そか。で?
( ゚д゚)<「粗利」ってなんじゃー。
(´・ω・ `)<ああ、せやの。先にそのへんの説明をした方がええの。
費用・収益・利益の分類
会計の世界では、費用と収益を次のように分類します。
( ゚д゚)<給与は原価?販管費?どっち?
(´・ω・ `)<基本は販管費やな。でも、製造業とかやと、工場で働いてる人の分は原価で、事務職の人の分は販管費にすることが多いと思う。とはいえ「必ずこうしなさい」っていう決まりがあるわけちゃうよ。ただ、安藤さん・西田さんは「給与は全部販管費」っちゅうイメージで話してあるみたいやな。
そして、これらに従い、利益も次のように分類します。
《損益計算書》(P/L)は、以上の分類ごとの金額をひとまとめに示す形式になっています。
( ゚д゚)<ほんほん。おけ。ほいだら戻ろか。安藤さんは「事業者の人件費と利益への課税や。」って言ってて、西田さんは「事業者の粗利への課税や。これは第二法人税なんや。」って言うてはったんやな。
(´・ω・ `)<うい。ちな、安藤さんの言われとる「利益」は「税引前利益」のことやで。
西田説の説明
いつもの設例【110円で仕入れて、165円で売る(税率は10%)】を使いましょう。消費税額が15円で、仕入税額控除が10円なので、消費税の納付税額は5円、ということになります。事業者の利益は50円です。
(´・ω・ `)<さて、それでは事業者の粗利はいくら?
( ゚д゚)<165-110=55円やろ。
(´・ω・ `)<その55円を↓の「取引価格」のところに当てはめたら消費税額はいくら?
( ゚д゚)<55×(10%/110%)=55/11=5円になったの。おんなじやな。
(´・ω・ `)<せやねん。「消費税額から仕入税額控除を引いた額」と、「粗利で消費税額を計算した額」は同じになるんよ。
( ゚д゚)<ほんほん・・・てか、そらそうやろ。
ac-bc=(a-b)cなんやし。
(´・ω・ `)<えっ?
( ゚д゚)<えっ?間違っとる?
(´・ω・ `)<いや、合っとるけど、きみが急に因数分解するからびっくりしたんや。
( ゚д゚)<ぼくかて因数分解くらいするがな。なめとんか。
(´・ω・ `)<そか、すまんかったの。
安藤説の説明
安藤さんの「人件費と利益への課税」というのも同じことです。
上の設例に「事業者が20円の給与を支払った」という事実を付け足します。
[番外5-3]のとおり、給与支給は《不課税取引》なので、事業者が20円の給与を支給しても仕入税額控除は増えませんから、消費税の納付税額は、5円のままです。よって、事業者の利益は、50円から20円だけ減って30円となります。
(´・ω・ `)<さて、それでは人件費はいくら?
( ゚д゚)<20円やろ。
(´・ω・ `)<消費税を納付する前の税引前利益はいくら?
( ゚д゚)<165-110-20=35円じゃ。
(´・ω・ `)<2つを足したら?
( ゚д゚)<55円。粗利とおんなじになったの。
営業外収益・営業外費用・特別利益・特別損失を無視して、販管費=給与(人件費)とすると、【粗利から販管費を引いたものが税引前利益】になりますから、
ということで、「粗利」と「人件費+税引前利益」は同じになります。そして粗利で消費税を計算できるのは、先ほど示したとおりです。
ということで、【消費税は誰の何への課税なのか】に対するいちばん適当な答えは、安藤さん・西田さんの言われる「消費税は事業者の粗利(人件費+利益)への課税である。」なんじゃないかと、私は考えます。
もちろん細かいことを言えば、不課税取引に区分される売上原価だってありますし、完全に正確ではない部分もあります。
ですが、95%くらいは合ってると思いますし、表現の簡潔さ・正確さ・分かりやすさのバランスを考慮すると、これがベストなんじゃないでしょうか。
西田説の「第二法人税」とは
( ゚д゚)<西田さんの「第二法人税と呼ぶべき」ってのは、どういうことなん?
(´・ω・ `)<それはな、法人税の計算方法が前提知識になってくるんやけど、まずそこから説明してええか?
( ゚д゚)<ういー。
法人税の計算式は、こう↓です。
《益金》は収益と、《損金》は費用と、だいたいイコールです。益金から損金を引いたものを《所得》(利益のこと)と言います。所得に税率を掛けて、法人税の納付税額が決まります。
法人税計算の具体的な手順は、次のとおりです。
- 日々仕訳を蓄積して、決算を行う。
- 仕訳を【益金・損金・対象外】の3区分に分ける。
- 益金・損金のそれぞれの合計を出す。
- 益金から損金を引いて所得を算出し、税率を掛けて、納付税額を出す。
なお、この手順は原則的なもので、実務ではもっと効率的な手早く処理できる手順を使います。
続いて、消費税を粗利に税率を掛けて計算する場合の手順も見てみましょう。
- 日々仕訳を蓄積して、決算を行う。
- 仕訳を【不課税売上・非課税益金・・・10%課税仕入】の10区分に分ける。
- 各区分のそれぞれの合計を出す。
- 課税売上から課税仕入を引いて粗利を算出し、税率/(100%+税率)を掛けて、納付税額を出す。
いままで見てきたとおり、実際の手順はもっと複雑ですが、「だいたいどんな要領で計算をするか」というぐらいの感じだと、こんなもんじゃないかと思います。
(´・ω・ `)<「益金」が「課税売上」に、「損金」が「課税仕入」になっただけで、やっとることは一緒じゃろ。
( ゚д゚)<一緒やな。
(´・ω・ `)<せやから、【消費税は、少し見方を変えれば、益金・損金の該当基準が元祖法人税とちょっと違うだけの、いわば「第二法人税」や。】てなことになるわけよ。
だから、税込経理方式にして、損益計算書の最後のところをこう↓書くようにすればいいんですよ。そしたら消費税ってのがいったい何なのか、こんなに長々と説明しなくてもスッと分かるようになる。
なんで2回取るんか。こんなもんさっさと廃止したらええねん(´・ω・ `)
おまけ
本編で「《益金》は収益と、《損金》は費用と、だいたいイコールです。」と言いました。"だいたいイコール"ということは、「完全にはイコールじゃない」ということです。
法人税法上の【益金・損金】と企業会計上の【収益・費用】は、完全にイコールなわけではなく、ある取引が、法人税法上の【益金・損金】には該当しないけれど、企業会計上は【収益・費用】として計上されているということがあり得ます。その逆(益金・損金に該当するけど、収益・費用に計上されていない)もあります。
( ゚д゚)<例えば?
(´・ω・ `)<例えば…年度の途中で、業績好調やったけー、社長が100万円の臨時ボーナスを会社から受け取ったとする。この100万円は、企業会計上は費用として計上されるけど、法人税法上の損金としては認められへん。
( ゚д゚)<なんでよ。そんなんどう見ても費用じゃん。
(´・ω・ `)<これがアリやと、企業はいくらでも好きなときに損金を作れて法人税が取れなくなるから。
( ゚д゚)<ああ、いかに取るかしか考えとらんのね。でも、社長の所得税は発生しますやん。損金で認めんと二重課税にならへん?
(´・ω・ `)<それはおっしゃるとおりなんやけど、あんまりつっこんどるとキリが無いけー、このへんにしとこ。とりあえず、【損金≡費用、益金≡収益】ではないねん。
( ゚д゚)<ほんほん。
ですが、決算の後から全部の仕訳を益金・損金に区分し直すのはたいへんです。そこで、実務では、
- とりあえず法人税法は無視して企業会計をして、決算まで終わらせる。
- いったん損金=費用、益金=収益とする。
- 企業会計で費用・収益に計上してないけど、損金・益金にカウントするものを損金・益金にプラスして、その逆パターンのものを損金・益金からマイナスする。
- 企業会計上の費用・収益と法人税法上の損金・益金が一致している部分はそのままにする。
- (益金ー損金)に税率を掛けて、法人税額を出す。
という手順で処理しています。
( ゚д゚)<だいたいはイコールじゃけー、イコールじゃないところだけ調整するってことか。
(´・ω・ `)<そんな感じや。で、こういうことに一応なっとんじゃけどな・・・
( ゚д゚)<どしたん。
(´・ω・ `)<「とりあえず法人税法は無視」なんか実際にはできひんのよ。
( ゚д゚)<あれ?そうなん?
(´・ω・ `)<例えば、さっきの社長さんのボーナスの件とか、損金として認められへんことが分かっとるのに、それをわざわざ出す会社なんかないやろ。
( ゚д゚)<そらそうやな。そしたら、「損金で認めません。」ってのが、実質的には「社長に臨時ボーナス出すの禁止な。」になっとるわけか。
(´・ω・ `)<せやねん。それにプラスしたりマイナスしたりの作業もめんどくさいから、非上場の中小企業とかは「それやったら最初から法人税法に合わせて会計処理しとこうや」っていうところが大半や。
( ゚д゚)<ほいだら無視どころかガン縛りされとるがな。
(´・ω・ `)<ぼくが特に問題やと思うんは、退職給与と修繕費の引当金の損金算入を認めとらんとこや。あれのために訳の分からん保険に入ったり、航空機リースしたり、節税のためにカネをドブに捨てとる会社はたくさんあると思うで。「全損保険はけしからん!」とか言うんやったら退職給与引当金繰入を損金算入に戻せっちゅうねん。
( ゚д゚)・・・?
(´・ω・ `)<おお、すまんの。ひとり言じゃ。まあ、こんなもんにしとこかの。
( ゚д゚)<ういー。
日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。
私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。
( ゚д゚)<最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!!
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