経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

10-8.税は財源ではない その4【政府が支出するのは"税金"ではない】

MMTは、通貨を発行する国家権力と租税債務を課す国家権力の間には密接な関係があると強調してきた。簡単に言えば、「租税が貨幣を動かす」のだ。また、主権を有する政府は支出のために租税収入を必要としないことも明らかにしてきた。

MMT現代貨幣理論入門』kindle版 494/553pp

 

当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

 

当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

xbtomoki.hatenablog.com

 

目次 

 

【税は財源ではない】とは

【税は財源ではない】をフルバージョンで言うと、【私たちは財政の仕組みについて数多くの誤解をしている。私たちはそれらを正さなければならない。例えば、税は財源ではない。】となります。「税は財源ではない」は、その例示部分だけを抜き出したものです。

前回までで次の3つの間違いを説明してきました。

  • 政府は支出をするとき、その財源を確保しなければならない。[10-5]
  • 国債は税金だけでは足りない財源を調達するために発行する"国の借金"である。[10-6]
  • 財政赤字であること・債務残高対GDP比が多いことは"不健全"であり、"不健全"な財政は市場の信認を失って破綻する。[10-7]

 

本日のお題

( ゚д゚)<まだまだいっとくか?

(´・ω・ `)<おう。まだまだいくで。

ということで、今回のお題もこちらです。

【税は財源ではない】

(´・ω・ `)<続きまして〜

( ゚д゚)<続きまして〜?

(´・ω・ `)<これ↓いっとこか。

(゚⊿゚)<みなさん、これ、税金ですからね!

( ゚д゚)<お、ついに来たか。

 

財政に関する誤解 その4
「政府は国民から集めた税金を支出している」

徴税(=納税)の仕訳はこちら↓です。

徴税が行われると、企業・家計の銀行預金が減って、政府預金が増えます。

 

続きまして、政府支出の仕訳はこちら↓です。

政府支出では、政府預金が減って、企業・家計の銀行預金が増えます。

 

そこで生まれたのがこのような↓誤解です。

(゚⊿゚)<私たち国民が支払った税金は、いったん国庫に納められて、その後、公務員に給料を払ったり、年金を支給したり、工事代金を支払ったりといった政府支出のときに、再び政府から国民へ返ってきます。つまり、政府が支出しているお金は元々は私たち国民の税金なんですね。

(´・ω・ `)<それも違うぞ。
(´・ω・ `)<ええかげんにせえ。

( ゚д゚)<これも違うんか。

(´・ω・ `)<これも違うな。貨幣はブツじゃないけー、政府と企業・家計の間を行ったり来たりなんかせんよ。

(´・ω・ `)<あとさ、「国民」じゃなくて「企業・家計」って言ってくれへん?要するに企業と家計のことやろ?ややこしいねん。

(゚⊿゚)<いやだ!

(´・ω・ `)<てめえこの。

( ゚д゚)<まあまあ、言っても聞きそうにないし、今日だけ「国民」に合わせたったら?

(´・ω・ `)<んー、しゃーないのー。

【国民が支払った税金は国庫に納められて、政府支出のときに国民に返ってくる。】

これは間違った理解です。

"税金"は徴税(=納税)と政府支出のときに国庫に行ったり返ってきたりなんかしていません。

 

それ"税金"ちゃう

(´・ω・ `)<そもそもきみの言うとる"税金"って一体何のことを言うとるん?

(゚⊿゚)<そんなもん、納税のときに国民が支払うお金のことに決まってるだろ。

(´・ω・ `)<それ"税金"ちゃう。銀行預金や。

(゚⊿゚)<なんだそのくだらない揚げ足取りは。

(´・ω・ `)<揚げ足取りちゃうわ。納税のときに国民が何を支払っとるか分かってないっちゅうことは、納税っちゅうもんの仕組みがまるで分かってないっちゅうことや。まるで分かってないけー、"税金があっちに行ったりこっちに行ったりする"とか、訳の分からんことを言い出すんよ。

 

その場で消滅するんよ

納税のとき、国民が銀行に支払う(A払いをする)のは銀行預金です。また、銀行預金は銀行が発行した負債(貨幣)であり、[10-2]のとおり、貨幣は元の発行者へA払いされると消滅します。

(´・ω・ `)<てことは、納税のときに国民が銀行に支払った銀行預金は国庫に行くとか、どこそこに行くとかじゃなくて、その場で消滅するんよ。

(´・ω・ `)<じゃけー、「税金が国庫に納められて」とか「税金が返ってくる」とかな、こないだの国債は借金じゃないよって話のときと一緒や。どこが間違っとるっていうか、まるごと何言ってんのか意味不明やねん。

(゚⊿゚)<Oh,no!!!

 

徴税の仕組み

(´・ω・ `)<徴税を図で描いてみんさい。

(゚⊿゚)<なんでや。

(´・ω・ `)<はよ。

(゚⊿゚)<仕方ないな。ほれ。

(´・ω・ `)<そんなこったろうと思ったわ。このオタンコナスめ。

(゚⊿゚)<きみが描けと言ったから描いたのに、その言い草はないんじゃないか。

( ゚д゚)<せやな。さすがにそれはあんまりや。

(´・ω・ `)<たしかにそうかもしれん。でな、

(゚⊿゚)<待て待て。無視するな。

(´・ω・ `)<無視してへんよ。「たしかにそうかもしれん」て言うたやん。

(゚⊿゚)<いや、そのセリフは相手がどんな話をしてきたとしても、全然聞いてないのに聞いてる風に受け流して、さっさと自分のしたい話に持っていける便利なやつだ。

(´・ω・ `)<たしかにそうかもしれん。

(゚⊿゚)<もういい。続けてくれ。

(´・ω・ `)<徴税ってのはそうじゃなくて、こうや。

(゚⊿゚)<なんだ、銀行と日銀が抜けてるって言いたいのか?日銀と銀行の役割は政府と国民の仲介に過ぎないから省略してるだけだ。忘れてるわけじゃないぞ。そんな細かいことで間違いだなんだと喜んでるのか?

(´・ω・ `)<喜んでへんし、全然細かいことちゃうわ。ちゃんと説明したるけー、黙って聞いとれ。

 

銀行-国民

もう一度、徴税の仕訳を確認しましょう。

これの銀行-国民のところに注目してみると、

国民の銀行預金(資産)が減り、銀行の銀行預金(負債)も減っています。

これは国民から銀行への銀行預金(銀行が発行した貨幣)のA払いによって、[10-2]のとおり、発行者の元へ帰った貨幣の消滅が起きた、ということです。

図にすると、こう↓なります。

 

日銀-銀行

続いて日銀-銀行のところを見てみると、

銀行の日銀当座預金(資産)が減り、日銀の日銀当座預金(負債)も減っています。

ここでは、日銀の負債である日銀当座預金が銀行から日銀へA払いされて、さっきの銀行預金と同様に消滅しています。

これも図にしておきましょう。

 

政府-日銀

最後に政府-日銀のところは、

今度は、政府の政府預金(資産)が増えて、日銀の政府預金(負債)も増えています。

これは日銀の負債である政府預金が日銀から政府へB払いされた、つまり新しく発行されたということです。

 

徴税のときに起きること

以上をまとめると、さっきの(´・ω・ `)の図ができあがります。

このときに起きているのは、

  • 銀行預金の消滅
  • 日銀当座預金の消滅
  • 政府預金の新規発行

の3つです。

つまり、(゚⊿゚)は、国民の資産であった銀行預金が消えて、政府の資産である政府預金が生まれたことを、(゚⊿゚)<国民の預金口座にあったお金が政府の預金口座に移動した!と勘違いしているわけです。

 

そもそも貨幣は移動しない

お金(貨幣)はブツではなく、データですから、移動したりしません。

エクセルでこんな表↓を作って、

銀行預金のところ(D3セル)と日銀当座預金のところ(C3セル)をDeleteボタンで消して、政府預金のところ(B3セル)に「1」をテンキーで打ち込むと、もちろんこう↓なるわけですが…

( ゚д゚)<おお!銀行預金の値が政府預金のところに移動した!

(゚⊿゚)<いやいやいやwwそれは移動したとは言わんだろwww移動するもんだと思いこんでる人が見たら移動したように見えんこともないかもしれんがなw百歩譲って移動したということにしてやったとしても、日銀当座預金も消えとるのになんでそれは無視して「銀行預金が」移動したって決めつけるんだwwwwwもっと言ったら、千歩譲って移動したのが銀行預金だったとしても、それが"移動"なんだったら、日銀当座預金も消えとるんだから、日銀当座預金もどこかに行ってないと辻褄が合わんだろうがw消えた日銀当座預金はどこに行ったんだっちゅう話だwwwそれとも銀行預金っていうお金は移動できるけど、日銀当座預金っていうお金は移動できなくて消えるとか、そんな都合のいい理屈でも言うつもりかww

(´・ω・ `)<よー分かっとるやないか。

(゚⊿゚)<あ?

(´・ω・ `)<あ?ちゃうわ。きみの言ったとおりや。貨幣は「どこかからどこかへ移動する」っていう捉え方をできるもんじゃないんよ。貨幣はブツじゃないけーの。それをブツやと思っとるけー、訳の分からん誤解が生まれるんや。

 

政府支出のときも移動しない

政府支出は徴税と真逆の取引なので、徴税のときと真逆のことが起こります。

  • 銀行預金の新規発行
  • 日銀当座預金の新規発行
  • 政府預金の消滅

こっちでも、お金が政府のところから国民のところへ移動したりはしていません。

「政府預金が消えて、別のところで日銀当座預金と銀行預金が新しく生まれた」のを、(゚⊿゚)<お金が移動した!と言っているだけです。

 

「●●税を■■に使う」という誤解

(゚⊿゚)<みなさんから集めた消費税は全額社会保障に使われています!とか、
(゚⊿゚)<国民からいただいた血税をこんな無駄な事業に使っていいと思ってるのか!とか、
こーゆー「●●税で集めたカネを■■に使う」という言い方、よく見たり聞いたりすると思いますが、これも正確ではない、というより間違いです。

 

"税で集めたカネ"なんか無い

納税のときに国民が支払った銀行預金はその場で消滅します。このとき同時に生まれる政府預金は"元々は国民のお金だったもの"ではなく、日本銀行がその場で発行したものです。

よって、まず「●●税で集めたカネ」というものが存在し得ません。それが存在し得ないわけですから、存在し得ないものを「■■に使う」ということもまた、あり得ません。

 

納税と政府支出ができるかどうかは関係ない

政府支出のときに国民が受け取る銀行預金も、"元々は国民のお金だったものが国庫に集められた後に再び国民のところに戻ってきたもの"ではなく、そのときに銀行が新しく発行したものです。

「●●税で集めたカネを■■に使う」という言い方の何が良くないかと言えば、「国民がしっかり税を納めないと、政府はお金が足りなくなって国防や教育や福祉等の公共事業をちゃんとやることができなくなる」という誤解を生むことです。

[10-5]のとおり、政府はいくらでも支出することができますので、「政府が公共事業をちゃんと実施できるかどうか、またそのときに国民が十分な額の銀行預金を受け取れるように支出をできるかどうか」と「国民がたくさん納税をしたかどうか」は、全く関係がありません。

 

まとめ

徴税のときには、
【銀行預金の消滅】と
【日銀当座預金の消滅】と
【政府預金の新規発行】が起きます。

政府支出のときは逆に、
【銀行預金の新規発行】と
【日銀当座預金の新規発行】と
【政府預金の消滅】が起きます。

例えば、国民Aが消費税を10万円納税すると、

  1. 国民Aの銀行預金が10万円だけ消滅し、
  2. その納税を受け付けた銀行の日銀当座預金も10万円だけ消滅し、
  3. 日銀は10万円の政府預金を発行する。

その後、政府が国民Bへ年金を10万円支給すると、

  1. 政府預金が10万円だけ消滅し、
  2. 日銀は国民Bが口座を持つ銀行に10万円の日銀当座預金を発行し、
  3. その銀行は国民Bの口座に10万円の銀行預金を発行する。

なお、国民Bへの支給の前に国民Aが納税をしていなくても政府は何の問題もなく10万円を支給できます。

この一連の流れを(゚⊿゚)<国民Aが納めた10万円の税金が国民Bへ支出されている!と表現するのは、さすがに無理があるでしょう。そうだと思いこみながら見ればそう見えないこともないかもしれませんが。

そして、(゚⊿゚)<年金だけじゃなくって、政府が支出しているお金って元々は私たち国民が納めた税金なんですよ!と言うのに至っては、

これは完全な間違いです。徴税・政府支出のときには"税金"というブツが行ったり来たりしているわけではありません。

そもそも貨幣はブツではないので、貨幣の支払は「貨幣がどこかからどこかへ移動する」みたいなイメージでは正しく捉えることができません。

貨幣の支払にはA払いとB払いの2種類があり、[10-2]のとおり、貨幣はB払いによって生まれて、非発行者から非発行者へのA払いによって流通した後、発行者へA払いされたときに消滅します。

徴税はこういう仕組み↓なので、

「私たち国民が納めた税金」つまり納税のときに国民が銀行へA払いする銀行預金は、その場で消滅しています。

さらに政府支出はこういう仕組み↓なので、

「政府が支出しているお金」つまり政府支出のときに国民が受け取る銀行預金は、その場で発行されたものです。

もっと端的に示すと、徴税のときに起きているのは、こういうこと↓です。

これは明らかに銀行預金のところの「1」が政府預金のところに移動したのではありません。銀行預金のところと日銀当座預金のところの「1」が消されて、政府預金のところに「1」が打ちこまれたものです。

つまり、財政にはそもそも「●●税で集めたカネを■■に使う」という仕組みはありません。

よって、どんな税であっても、それでカネが集まることはありませんし、"集めたカネ"というものが無いので、"集めたカネを使う"ということもまたありません。

そして、「政府は、しっかり税を取って、しっかりカネを集めないと、しっかり支出ができない。」というのは完全な誤解です。政府が支出できる額と徴税額には何の関係もありません。

(゚⊿゚)<消費税法には「消費税の税収は社会保障に使うこと」って書いてあるのを知らんのか!

(´・ω・ `)<それがどうかしたんか。

(゚⊿゚)<法律にそう書いてあるってことは、政府はそうしているってことだ!そうでなければ政府は法律違反をしていることになるぞ!そんなわけないだろう!

(´・ω・ `)<それは消費税法が「税で集めたカネを使うことができる」っていう前提で書かれとるから訳が分からんことになっとるだけや。ぼくは「そんな仕組み無いぞ。そもそもその前提が間違っとんのよ。きみは政府がそういうことをしとると思いこんどるみたいやけど、本当は政府はそんなことしてないよ。まあ政府自身もそういうことをしとると思いこんどるやろけどな。」って話をしとるんや。

(゚⊿゚)<あ?どういうことだ。

(´・ω・ `)<要するにな、消費税に書いてあることがそもそも訳が分からんし、それに従っとる政府も訳が分かってないし、政府が法律違反しとるとかしてないとかどうこう言っとる人たちも訳が分かっとらんから、もう全然訳の分からんことになっとるわけや。その訳の分からんことになっとることを根拠に「お前は間違ってる!」とか言われても訳が分からんて言うとんじゃ。訳が分からないよなおじさんのありがたいお言葉をくらえ。

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

英語学習の進捗報告でも・・・

www.youtube.com

こないだ試しにこの動画を画面を見ずに音声だけで聞いてみたら、だいたい内容が理解できるくらいにはなってました。途中の日本語での説明に助けられてたかもしれませんが・・・

それから、ドラマや映画はガッツリ気合い入れて集中して見れば、英語音声・英語字幕でなんとか話に付いていけるくらいになりました。

字幕無しはさすがにまだまだキツいですが、いつかはできるようになりたいですね。

がんばります(`・ω・´)!

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

( ゚д゚)<最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!!

応援コメント、指摘コメント、お待ちしております!当ブログの拡散も大歓迎です!

よろしくお願いします!