経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

1-3.ストックとフロー

本章では、現代貨幣の理解に必要な基礎の構築に取りかかる。なぜこれが重要なのか、最初は分かりにくいかもしれないが、我慢してお付き合い願いたい。基本的なマクロ会計を理解していなければ、政府の財政に関する議論はおそらく理解できない(そして、最近多くの国を苦しめている赤字ヒステリーを論評することもできない)。

『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 51/553pp


当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

  

当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。

MMT現代貨幣理論入門

MMT現代貨幣理論入門

 

 

ストックとフローの関係

これまでの議論から、財政黒字は貯蓄のフローと同じものであり、純金融資産の蓄積をもたらすことは明らかであろう。同様に、財政赤字は純金融資産を減らす。

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ストックとは

ストックとは、資産負債のことです。

資産額から負債額を差し引いた残高を純資産と呼びます。

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フローとは

フローとは、費用収益のことです。

そして、一定期間(例えば1年間)のうちに発生した費用と収益の差し引き額を"収支"と呼びます。

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特に費用収益ならば、"黒字収支"と呼び、逆に費用収益ならば、"赤字収支"と呼びます。さらに費用収益ならば、"均衡収支"と呼びます。

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また、特に政府部門の収支は"財政黒字"、"財政赤字"、"均衡財政"と呼ばれたりします。なんでわざわざややこしくするんですかね。

 

ストックの動きとフローの動きは一致する

フローの動きは必ず純資産の動きと完全に一致します。つまり、黒字収支は必ず純資産の増加を伴い、赤字収支は必ず純資産の減少を伴います。

 

仕訳で見てみましょう

ここで使う勘定科目は現金(資産)・仕入(費用)・売上(収益)の3つとしましょう。

 

黒字収支のとき

A社は100円で商品を仕入れて、それを500円で売りました。ハンパねえな。なお、すべて現金決済とします。

100円で仕入仕入|現金 100円

500円で販売→現金|売上 500円

仕入と売上を差し引きすると、売上の方が400円だけ多いですから、収支は400円の黒字です。

一方、現金が仕入で100円減って、販売で500円増えてますから、純資産は400円の増加です。

 

赤字収支のとき

A社は500円で商品を仕入れて、それを100円で売りました。どうかしてますね。なお、すべて現金決済とします。

500円で仕入仕入|現金 500円

100円で販売→現金|売上 100円

仕入と売上を差し引きすると、仕入の方が400円だけ多いですから、収支は400円の赤字です。

一方、現金が仕入で500円減って、販売で100円増えてますから、純資産は400円の減少です。

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このようにストックとフローは見事にシンクロします。いや、ほんと、よくできてますね。

 

なぜストックとフローはシンクロするのか

これは資産・費用を借方科目とし、負債・収益を貸方科目とするという、複式簿記の基礎の部分に由来します。

例えば借方に費用を立てて、貸方は未定としてみましょう。

費用|●●

ここで貸方の●●に入るのは、資産・負債・費用・収益のうちのいずれか1つです。では、それぞれを入れてみましょう。

費用|資産→費用が発生したので赤字収支、資産の減なので純資産は減

費用|負債→費用が発生したので赤字収支、負債の増なので純資産は減

費用|費用→費用が発生したが、一方で別の費用が同額だけ消滅しているので均衡収支、純資産は増減なし

費用|収益→費用が発生したが、一方で収益が同額だけ発生しているので均衡収支、純資産は増減なし

よって、仕訳の借方に費用が入るとき、ストックとフローは必ずシンクロします。借方に費用ではなく、資産・負債・収益を入れても同じことです。ストックとフローは必ずシンクロします。

なぜシンクロするのか?という質問に対する答えは、「そもそも複式簿記の仕組みが、そうなるように設計されているから」ということになるでしょう。

 

 

それでは本日はここまでとします。

 

【tips】

下のグラフは、私が「日本がアメリカと、名目GDPで、全く同じ成長率を達成していたら」という想定のシミュレーションをしてみたところ、失われたGDPは1京円を超えるということになった、というものです。

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日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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