経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

6-3.外貨関連取引の仕訳

これまでの議論は極めて一般的なものであり、自国通貨を利用するすべての国に当てはまる。通貨が外国通貨や貴金属に固定されているか否か、あるいは自由に変動するか否かは問題ではないー原則は同じである。

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当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

 

当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事注釈で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

xbtomoki.hatenablog.com

  

当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。

MMT現代貨幣理論入門

MMT現代貨幣理論入門

 

 

目次 

 

本日のお題

前々回[6-1]と前回[6-2]で固定為替相場制のざっくりとした仕組みと雰囲気は掴んでもらえたかなと思います。
続きまして、前々回と前回に出てきた取引の仕訳を確認しておきたいと思います。
 
それでは先に固定の為替レートを決めておきましょう。
なんでもいいんですが…分かりやすいのがいいでしょうから「もし日本が1ドル=100円の固定相場制だったら」という想定でやっていきましょう。
 
(´・ω・ `)<よろしゅうな。
( ゚д゚)<まかしときー。
(´・ω・ `)<ちゃうちゃう。ぼくが教える側よ。
( ゚д゚)<あらやだ、あたしったら。
 
なお、今回記事に出てくる仕訳は、「外貨建取引」として日商簿記のテキストに書いてあるような内容とは異なります。簿記のテストなら、全部円に換算しないといけませんが、今回記事の内容的に、ドルはドルのまま、円は円のままで仕訳をした方が分かりやすいと思ったのでこのようにしました。
 

外貨両替の仕訳

まずは、外貨と自国通貨の交換からいきましょう。

「政府が国民から100ドルを受け取って10000円を渡す」ときの仕訳はこちらです。

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逆に「政府が国民から10000円を受け取って100ドルを渡す」ときの仕訳はこちらです。

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ここで注目してほしいのは、外貨が政府にとっても民間にとっても資産であるのに対して、自国通貨が政府にとっては負債で民間にとっては資産であるということです。

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よって、政府にとって「自国通貨を支払って、外貨を受け取る」は、[資産|負債]の取引であり、逆に「外貨を支払って、自国通貨を受け取る」とは、[負債|資産]の取引ということになります。

つまり、政府部門にとっての外貨と自国通貨の交換は"負債の発行・回収"であるわけです。これは、民間部門にとっては、それが"資産の振替"で、現金をATMに入れて銀行預金にするのと同じような"ただの交換"であることと、かなり違っています。

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為替レート切り下げの仕訳

次に、為替レート切り下げの仕訳です。
「100ドルの外貨準備を保有する政府が為替レートを1ドル=100円から1ドル=200円に切り下げた」とき(10000円分の外貨準備が20000円分になったとき)の仕訳は↓こちらです。

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レート切り下げで実質的に10000円分だけ外貨準備が増えたので、10000円の資産増加と収益が立ちます。

 
(´・ω・ `)<これ、なんか変やと思わへん?
( ゚д゚)<は?
(´・ω・ `)<いやいや、( ゚д゚)<は?じゃなくて。
( ゚д゚)<は?以外に何を言うたらええのよ。「10000円分だけ資産が増えたから、10000円の資産|収益の仕訳です。」の何が変やねん。
(´・ω・ `)<マクロ会計の恒等式を忘れたんか?
( ゚д゚)<忘れてへんよ。[1-4]でやったやつやろ。ぼくらが生まれる前の記事やけどな。政府収支+民間収支+国外収支=0やんな。
(´・ω・ `)<せや。それや。全経済主体の収支を全部合計したら必ずゼロになるんや。てことは?
( ゚д゚)<あっ!
(´・ω・ `)<おっ。
( ゚д゚)<分からんわ。
(´・ω・ `)<そか。
 
( ゚д゚)<・・・・・あっ!
(´・ω・ `)<おっ!
( ゚д゚)<分からんわ。
 
(´・ω・ `)・・・説明してええかな?
( ゚д゚)<おなしゃす。ばぶりしゃす。
(´・ω・ `)<マクロ会計の恒等式から分かることの1つは「誰かの黒字は誰かの赤字」ってことや。政府収支+民間収支+国外収支=0 じゃけー、政府に収益が立って10000円の黒字になったら、必ず民間と国外で合計10000円の赤字になっとるはずやろ。
( ゚д゚)<政府のとこだけで収益が上がってて、それに対応する費用が立ってないのがおかしいっちゅうことか。
(´・ω・ `)<そういうことや。
 
そしたらば、その"対応する費用"は、どこにあるのかと言いますと、「円をドルに交換する人」のところにあります。
さっきの「政府が国民から10000円を受け取って100ドルを渡す」の例は、レート切り下げ後の1ドル=200円の世界では、「政府が国民から20000円を受け取って100ドルを渡す」になり、国民は100ドルを手にするために必要なカネが10000円だけ余計にかかってきます。これを仕訳で表すと↓こうなります。

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但し、この為替差損なる費用は、円を円のままで使う人のところには発生しません。為替差益も含めて、これら為替レートの差による損益が実際に発生するのは円⇄ドルの交換が行われたときだけです。
なので、さっき為替レート切り下げの仕訳を↓こう書きましたが、

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厳密には、政府が切り下げをした時点では【仕訳なし】で政府に収益は発生していなくて、円⇄ドルの交換が行われてはじめて、その交換のたびに↓このように仕訳をするべきだということになります。

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( ゚д゚)<頭が爆発しそうなんやけど。
(´・ω・ `)<せやろな。ぼくもや。まあ、ここまで考えんでもええよ。政府がレート切り下げで得したんなら、その分だけどっかで誰かが損しとる。その誰かは円→ドルに交換する人やっちゅうことだけ分かっとけば十分や。
( ゚д゚)<そんくらいはなんとなく分かるで。
(´・ω・ `)<よしゃ。じゃあ次行こか。
 

外貨借り入れの仕訳

続きまして、外貨借り入れの仕訳です。
これは2パターンあります。

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アメリカ政府からの場合は、[3-2]の銀行融資と同じ仕組みです。互いに負債を発行し合います。

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アメリカ政府以外からの場合は、個人間の貸し借りと同じです。貸し手から借り手へ資産が移り、借り手はそれと引き換えに負債を発行します。

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輸出入の仕訳

最後に、輸出入等による外貨の流出入です。輸出の仕訳は↓こちら。

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これは簡単ですね。ただ単にミートパイとドルが交換されただけです。 輸入は、この逆になるだけなので割愛します。
 

まとめ

仕訳をまとめておきましょう。

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外貨は何のようであるか

せっかくなので、"外貨"がどういったものであるのかをここでちょっと考えてみたいと思います。

外国政府が発行する金融負債ですから、外貨は貨幣であることは間違いないのですが、対になる概念である"主権通貨"とどう違うのでしょうか。比較してみたのがこちらです。

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まとめると、外貨とは・・・

  • 誰にとっても資産である。
  • 価格が変動する。
  • 国内では(普通は)支払に使えない。
  • 国内では作れない。

これらがあてはまるものとして、私がパッと思いついたのは"石油"でした。

これは私の考えに過ぎませんが、外貨は、外国政府が発行する金融負債ですから、貨幣であることは間違いありませんが、「外貨は、主権通貨よりも、石油とか小麦とか鉄とか機械とか、そういった実物資産の方に近い性質のものだ」あるいは単純に「外貨は、半分くらい実物資産みたいなものだ」と考えるのがよいのではないかと思います。

そう考えると、外貨建ての輸出入がまるで物々交換のような仕訳になることも理解しやすくなります。

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通貨主権を理解してない人たちへ 

ついでにもうちょっとだけ・・・

主権通貨と外貨がこれだけ全然違うもので、それから日本が固定相場制を50年近く前にやめたことをちゃんと理解してないっぽい"エコノミスト"とか"経済学者"が多すぎやしませんかね?

↓こーゆーの・・・

(゚⊿゚)<いかに外貨を稼ぐかが日本の生命線だー。海外市場で戦える企業が日本を救うんだー。それかインバウンドだー。カジノを建てろー。

( ゚д゚)<なんで日本は外貨を稼がなあかんの?
(´・ω・ `)<日本は主権通貨国じゃけん、外貨を稼がなあかん理由って明確なのは特に無いと思うで。少なくとも生命線ではないわ。
( ゚д゚)<そしたら、なんであの人はあんなこと言うん?
(´・ω・ `)<たぶん固定相場制と変動相場制の違いが分かってないんやないかな。
( ゚д゚)<えっ、プロの金融屋さんとか学者さんが固定相場制と変動相場制を分かってないこととかあるんか?
(´・ω・ `)<表面的な仕組みくらいはさすがに理解しとるやろうけど、「通貨主権」っていう考え方が頭にないんちゃうかな。固定相場制なら、外貨準備の範囲内でしか自国通貨を発行できひんやろ。いや、外貨準備以上に発行しようと思えばできるけど、そしたら固定レートでの交換の約束が果たせんようになるから、固定レートが破綻してまう。
( ゚д゚)<ほんほん。てことは、外貨をいっぱい稼げば通貨発行の自由度が上がるな。
(´・ω・ `)<せや。じゃけん、固定相場制では、外貨を稼ぐことに国家運営上の重要な意味がある。ところが、変動相場制なら外貨準備とかそういう物理的な制限無しで、いくらでも通貨を発行できる、つまり通貨主権があるけー、外貨を稼ぐ大した意味はありゃせんわ。そういう本質的なとこまでは理解しとらんのじゃろ。
( ゚д゚)<よく分かっとらんのに、よーあんだけペラペラしゃべれるのう。
(´・ω・ `)<何十年もおんなじことしゃべってりゃ誰でも上手になるもんや。
( ゚д゚)<そんなもんか。
(´・ω・ `)<そんなもんや。

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

 

おまけ

最近この曲のことを知りました。前から聞いたことはあったんですが、最近はじめてちゃんと聴きました。いい曲ですね。


【カバー】にじ

( ゚д゚)<あしたはきっといいてんき♪
(´・ω・ `)<あしたはきっといいてんき♪

  

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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