経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

MMT解説

【G-2】xb記法

目次 前回の復習 xb記法とは xb記法の書き方 ストック科目とフロー科目 科目の相殺消去 横断合計ゼロ法則 横断合計における科目の相殺消去 なぜ横断合計はゼロになるのか 二者間取引の横断合計はゼロになる 資産受け渡し取引の横断合計 負債受け渡し取引の横…

10-16.実物資源の視点から見たJGPとBI

失業の嵐が吹き荒れている。最も簡単で直接的な解決策は、社会に対して生産的に貢献したいと思うすべての人が公的部門でそれなりの生活費が稼げるように、政府が保証することである。 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 509/553pp 当ブログは、こちらの複式簿…

10-15.実物資源の視点から見た税

民間支出が物価の安定を脅かす危険性はあるが、政府は、インフレを寄せ付けないために思うように使える、様々な政策手段を有している。必要ならば、政府は、民間支出を冷やすために増税などの対策を講じることができ、超過需要を取り除く必要に応じて自らの…

10-14.政府支出の本質

貨幣制度は素晴らしい創造物である。貨幣制度は、我々が公正な社会を実現するように政府を機能させるために必要な資源へのアクセスを政府に与える一方で、個人の選択をも可能にする。 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 522/553pp 当ブログは、こちらの複式簿…

10-13."良い"財政政策とは

我々には社会的なメタファー、すなわち私益最大化の論理に代わる「公益」が必要である。我々は、政府が果たす積極的な役割、および政府による我々の役に立つような貨幣の利用に焦点を当てなければならない。 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 521/553pp 当ブ…

10-12.税は財源ではない ver.4

人々の直感は、「税金で支出を賄う」というメタファーを好む。私は年金信託基金に掛け金を払い込んだから、老後はその金庫から自分の分を引き出せるようになる ーー どう考えてもこの説明は完全に間違っているが、そんなことは関係ない。間違った説明がまか…

10-11.財政の正しい捉え方

政府は資金不足にはなり得ない。政府には常に、我々が自立した国家運営を行うのに必要な財政的な能力がある。 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 522/553pp 当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は…

10-10.支え合いとは

我々は、貨幣制度を公共目的追求のために使わなければならず、その結果として誰もが個々の私的な目的をある程度追求できるようになる。我々は、互いに助け合うために、共に貨幣を使うことができる。 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 524/553pp 当ブログは、…

10-9.税は財源ではない その5【税は財源ではない】

MMTは、通貨を発行する国家権力と租税債務を課す国家権力の間には密接な関係があると強調してきた。簡単に言えば、「租税が貨幣を動かす」のだ。また、主権を有する政府は支出のために租税収入を必要としないことも明らかにしてきた。 『MMT現代貨幣理論入門…

10-8.税は財源ではない その4【政府が支出するのは"税金"ではない】

MMTは、通貨を発行する国家権力と租税債務を課す国家権力の間には密接な関係があると強調してきた。簡単に言えば、「租税が貨幣を動かす」のだ。また、主権を有する政府は支出のために租税収入を必要としないことも明らかにしてきた。 『MMT現代貨幣理論入門…

10-7.税は財源ではない その3【財政赤字は不健全ではない】

MMTは、通貨を発行する国家権力と租税債務を課す国家権力の間には密接な関係があると強調してきた。簡単に言えば、「租税が貨幣を動かす」のだ。また、主権を有する政府は支出のために租税収入を必要としないことも明らかにしてきた。 『MMT現代貨幣理論入門…

10-6.税は財源ではない その2【国債は借金ではない】

MMTは、通貨を発行する国家権力と租税債務を課す国家権力の間には密接な関係があると強調してきた。簡単に言えば、「租税が貨幣を動かす」のだ。また、主権を有する政府は支出のために租税収入を必要としないことも明らかにしてきた。 『MMT現代貨幣理論入門…

10-5.税は財源ではない その1【政府支出に財源はいらない】

MMTは、通貨を発行する国家権力と租税債務を課す国家権力の間には密接な関係があると強調してきた。簡単に言えば、「租税が貨幣を動かす」のだ。また、主権を有する政府は支出のために租税収入を必要としないことも明らかにしてきた。 『MMT現代貨幣理論入門…

10-4.租税は貨幣を動かす

「通貨は、その発行者に対してその通貨で支払うように強制される義務があれば、受け取られるだろう」というのがMMTの主張である。 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 497/553pp 当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書い…

10-3.貨幣とは その2

「"モノ"としての貨幣」の"制度としての"本質は何か? 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 495/553pp 当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 xbtomoki.hatenablog.com 当ブロ…

10-2.貨幣とは その1

我々が貨幣と呼ぶ制度の本質は何か?貨幣と呼ばれる"モノ"に共通する特徴は何か?ほとんどの経済学者が、貨幣を「交換の際に使うもの」と称している。それは「貨幣とは、貨幣のはたらきをするものである」と言っているに過ぎない(人間を、テレビを見るものー…

10-1.負債とは

つまり、債務証書の保有者は、発行者に対して債務証書を渡すことで自らの支払いを実行できる。なお、保有者は債務証書を最初に受け取ったものである必要はないー第三者でもよい。 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 498/553pp 当ブログは、こちらの複式簿記を…

9-9.質的緩和とは

彼らはオズの魔法使いのようなものだが、回しているそのハンドルは経済につながっていなかった。 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 473/553pp 当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読く…

9-8.量的緩和とは

これが景気を刺激するだろうか?インフレ心配症の人は、イライラが収まるだろう。QEがインフレを引き起こす可能性はないのだから。 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 474/553p474 当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書…

9-7.マイナス金利とは その2

利益水準の低下は、銀行が貸し出しを増やす動機付けになるだろうという理不尽な希望を唱える論者もいた。 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 473/553pp 当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非…

9-6.マイナス金利とは その1

利益水準の低下は、銀行が貸し出しを増やす動機付けになるだろうという理不尽な希望を唱える論者もいた。 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 473/553pp 当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非…

9-5.日銀当座預金とは その3

通常、銀行は準備預金の保有量を最小化しようとするーつまり、支払決済(銀行間で互いの準備預金を使って勘定を決済する)とFRBが課す法定準備率をカバーするのに必要な量だけにとどめようとする。 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 472/553pp 当ブログは、こ…

9-4.日銀当座預金とは その2

通常、銀行は準備預金の保有量を最小化しようとするーつまり、支払決済(銀行間で互いの準備預金を使って勘定を決済する)とFRBが課す法定準備率をカバーするのに必要な量だけにとどめようとする。 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 472/553pp 当ブログは、こ…

9-3.日銀当座預金とは その1

通常、銀行は準備預金の保有量を最小化しようとするーつまり、支払決済(銀行間で互いの準備預金を使って勘定を決済する)とFRBが課す法定準備率をカバーするのに必要な量だけにとどめようとする。 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 472/553pp 当ブログは、こ…

9-2.外貨建て債務とハイパーインフレ その2

ワイマールのハイパーインフレが単に政府の「紙幣印刷」によって生じたと言うのは、明らかに単純すぎる。 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 468/553pp 当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非…

9-1.外貨建て債務とハイパーインフレ その1

ワイマールのハイパーインフレが単に政府の「紙幣印刷」によって生じたと言うのは、明らかに単純すぎる。 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 468/553pp 当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非…

8-1.就業保証プログラム

就業保証プログラムは、働く用意と意欲がある適格な個人なら、誰でも職に就けるように政府が約束するプログラムである。 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 409/553pp 当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。…

7-5.輸出より自給を、輸入より自給を

国全体で見れば、実物的観点では、輸出は費用であり、輸入は便益である。 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 402/553pp 当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 xbtomoki.hate…

7-4.政府は赤字であるべきだ

さらに、(クリントン政権時代のような)政府の財政黒字は偉業として称賛されるようなことではないと認識すべきであるー政府の財政黒字とは恒等式の産物であって、その意味するところは民間部門の赤字である(経常収支黒字の国の場合を除く)。民間部門は、通貨…

7-3.機能的財政論

1940年代、アバ・ラーナーは、彼が「政策に対する機能的財政アプローチ」と呼ぶものを考案した。そこで彼は2つの原則を提示した。 『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 365/553pp 当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書い…