経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

【0-1】イントロダクションその1:政府の役割

For the past 4,000 years (“at least”, as Keynes put it), our monetary system has been a “state money system”. To simplify, that is one in which the state chooses the money of account, imposes obligations (taxes, tribute, tithes, fines, and fees), denominated in that money unit, and issues a currency accepted in payment of those obligations.

ー過去4000年(ケインズが言うには、これは"少なくとも"である)の昔から、そして現在においても、我々の貨幣システムは「政府型の貨幣システム」である。

 「政府型の貨幣システム」とは、ざっと説明すると、次のようなものである。まず政府(またはこれに類する公権力)がカネの単位を決める。そして、政府は国民に税や罰金等の義務を課す。その義務の大きさは最初に決めたカネの単位によって表す。続いて、政府は国民に通貨を発行する。国民が政府から通貨を受け取り、今度は逆に先に述べた義務の支払のために、この通貨を政府へ差し出したとき、政府はこれを受け取る。

『Modern Money Theory:A Primer on Macroeconomics for Sovereign Monetary Systems』kindle版 21/453pp(訳文:xb)

 

当ブログは以下の記事の内容を理解していただいていることを前提に執筆しています。

xbtomoki.hatenablog.com

xbtomoki.hatenablog.com

xbtomoki.hatenablog.com

 

当ブログは、『MMT入門』(ランダル・レイ(著) 島倉原(監訳) 鈴木正徳(訳)、通称"金ピカ本")の内容を解説するものです。

MMTを勉強したいと思って金ピカ本を買ってみたものの、書いてあることがいまいち分からん」という人に向けて、いくばくかの助けになればという考えをもとに書いています。

なお、こちらが英語版(原版)です。こちらも適宜参照しながら書いていきます。

 

 

目次

 

本日のお題

(´・ω・ `)<ほいだら、本編はじめよか。

( ゚д゚)<うい、まずは何からやろうっちゅうんや。

(´・ω・ `)<まずはポイントのところだけをざっと説明して雰囲気を掴んでもらおうかの。なんでそうなっとるんかとか、データの裏付けはあるんかとか、そーゆーあんまり詳細な部分とかは端折って、結論のところだけを説明していこう。

( ゚д゚)<ほんほん。

(´・ω・ `)<まず最初のポイントは貨幣っていうシステムの中で政府がどんな役割を果たしとるんかっちゅう話から行こうかの。よろしゅう。

( ゚д゚)<まかしときー。

(´・ω・ `)<ちゃうちゃう、ぼくが教える側よ。

( ゚д゚)<おお、こりゃいかん。

(´・ω・ `)<ほいじゃ、よろしゅう。

( ゚д゚)<まかしときー。

(´・ω・ `)<ダメだこりゃ。

 

1.政府の重要性

MMTは「貨幣」というシステムにおける政府の存在・役割を極めて重要かつ特別なものであると位置づけます。これは従来の経済学が政府を個人や企業と同列に扱うのと対照的です。

 

1.1 政府は通貨単位とカネの量の基準を定める

貨幣システムにおける政府の役割の第一は「通貨の単位を決める」ことです。例えば日本の政府は通貨の単位を"円"と定めていますし、アメリカの政府は"ドル"と定めています。ここで単位を決めるのは通貨(政府が発行するカネ)であって、貨幣一般ではないことに注意してください。

そして政府はこの単位を用いて、次の2つを行います。

  • 課税=国民に税や罰金等の(政府に通貨を支払わなければならないという)債務を課す。
  • 支出=国民に仕事の報酬として、または単に年金等の給付として、もしくは貸し出しとして通貨を支出する。

政府が通貨の単位を定め、その単位を使って課税・支出の量を表せば、カネの量の基準が定まります。

( ゚д゚)<は?どういうこと?

(´・ω・ `)<んとな、例えば、ぼくが政府やとしよう。きみは国民な。

( ゚д゚)<なんでや。ぼくも政府がええわ。

(´・ω・ `)<それやと説明しづらいんや。ちょっと我慢してくれるか。

( ゚д゚)<しゃーないの。クソが。

(´・ω・ `)<はいはいクソクソ。

( ゚д゚)<適当に流されたわ。クソが。

(´・ω・ `)<まずは通貨単位を決めようか。せやな…「ポンポン」にしよか。我が国の通貨単位は「ポンポン」や。

( ゚д゚)<はいはい、ポンポンね。

(´・ω・ `)<いや、「ジージー」にするか…どっちがええと思う?

( ゚д゚)<どっちでもええわ。ポンポンにしとけ。

(´・ω・ `)<そか、そこまで言うならポンポンにしとくかの。

( ゚д゚)<クレヨンしんちゃんか。で?ぼくは何したらええの?

(´・ω・ `)<うむ、きみに仕事をお願いしよう。庭のお花を水をあげるんや。そしたら100ポンポンをあげよう。

( ゚д゚)<なんやそれ、もうちょっとアクティブなやつにしてや。

(´・ω・ `)<うーん、じゃあ、でんぐり返しをしなさい。1でんぐりにつき、10ポンポンをあげよう。

( ゚д゚)<いや、そこそこアクティブやけれども。もっとこう、なんつうか、その、あるじゃろ。他にもいろいろさ。

(´・ω・ `)<文句ばっか言いよるやつじゃの。まあええわ。とにかく、これで10ポンポンはどのくらいのもんか、100ポンポンはどのくらいのもんかってのが定まったじゃろ。

( ゚д゚)<10ポンポンはでんぐり返し1回分くらいで、100ポンポンは水やり1回分くらいってこと?

(´・ω・ `)<そうそう。100ポンポンはでんぐり返し10回分とも言えるな。

(´・ω・ `)<その他にも水たまりにはまっとる虫さんを助けてあげるとか、月の光を集めるとか、いろいろ仕事はあるわな。

( ゚д゚)<なんやきみ妖精の国から来たんか?

(´・ω・ `)<はいはいクソクソ。

( ゚д゚)<どうやら違うみたいじゃの。

(´・ω・ `)<で、そういうのにそれぞれ5ポンポンだの、20ポンポンだのと報酬を定めれば、それぞれの金額がどのくらいの仕事に見合うもんかが定まっていって、さらにそれぞれの仕事同士の価値の大小の関係が定まっていくわけやな。「カネの量の基準が定まる」ってのはそういうことや。

 

1.2 課税の意味

( ゚д゚)<あれ?今の話、課税が出てきてなくない?

(´・ω・ `)<おっ、ええところに気づいたの。そのとおり。通貨の量の基準を定める、つまりは「どのくらいの金額がどのくらいの仕事に見合うかを決める」ってのに課税は直接的には関係ないんよ。

( ゚д゚)<えっ、どういうこと?

(´・ω・ `)<んと、それはな…ところで、きみさっき「でんぐり返しで10ポンポン」ってのをナチュラルに受け入れとったけど、そんなんもらってどうするん?コンビニでお弁当でも買うんか?

( ゚д゚)<いやいや、コンビニでいきなり「100ポンポン払いますね」とか言っても、「どうしたのかなー?お腹が痛いのかなー?」ってなるだけじゃろ。

(´・ω・ `)<そんならポンポンなんかもらっても意味ないやんけ。

( ゚д゚)<それはそうやけど、ポンポンで払うってのはきみが言い出したんやないか。

(´・ω・ `)<それはそれ、これはこれ。

( ゚д゚)<えええ…

( ゚д゚)<じゃあ、ポンポンなんかいらんわ。でんぐり返しもやらんぞ。

(´・ω・ `)<そりゃそうなるよな。でも、それやとぼくは困るんよ。ぼくは私利私欲のためにでんぐり返しをしてくれって言っとるわけじゃないんよ。国民みんなの暮らしを良くするために必要な仕事じゃけー、お願いしとんじゃ。

( ゚д゚)<なんかいまいちピンと来んな。でんぐり返しってのが良くないんちゃうか。

(´・ω・ `)<それはぼくも薄々勘づいとるところやけれども、もう引っ込みがつかへん。このまま行くわ。

( ゚д゚)<そか。そんならもう好きにしたらええ。

(´・ω・ `)<おう。そうさせてもらうわ。でな、ぼくはきみにでんぐり返しをしてほしいんじゃ。 でも単に「報酬はポンポンで」って言うんじゃあ、きみはでんぐってくれへんわけよ。

( ゚д゚)<ほんほん。どうしたもんかの。

(´・ω・ `)<ということで、しかたがないので、きみに課税をします。

( ゚д゚)<えっ。

(´・ω・ `)<来月中にぼくに100ポンポンを払いなさい。払わんかったらしばき倒す。

( ゚д゚)<むちゃくちゃ言いよんな、きみ。

(´・ω・ `)<だまらっしゃい。きみが取れる選択肢はしばき倒されるか、でんぐり返しでカネを稼いでぼくに100ポンポンを支払うか、この2つしかない。

( ゚д゚)<いやいや、めちゃくちゃやて、それ。

(´・ω・ `)<めちゃくちゃで結構。きみに「ポンポンが欲しいです」って言わせるためなら理屈もへったくれも知ったことか。

( ゚д゚)<んー、納得はできひんけど、そう来られたらぼくはでんぐり返ししてでもポンポンをもらわなあかんな。

(´・ω・ `)<うむ、よろしい。はよ。

( ゚д゚)<「はよ」ちゃうわ。え?ガチでやらせようとしとる?

(´・ω・ `)<うむ、はよ。

( ゚д゚)<「うむ」ちゃうて。やらんよ。

(´・ω・ `)<しゃーないの。まあ今日のところは勘弁したるわ。とりあえず課税がどういう役割を果たすもんかは分かったじゃろ。

( ゚д゚)<ほいほい、じゃけー、要するに「支出でカネの量の基準が定まる」ってのが成り立つには、国民に支出を受け取ってもらわなあかんくて、国民をそうさせるためには事前に課税っていうお膳立てを効かせとかなあかんってことか。

(´・ω・ `)<いえすざっつらいと。

 

2.中央銀行とは

さて、ここから先の話題に進むには中央銀行についての知識が必要になります。そこで中央銀行についてざっと説明をしておきましょう。

中央銀行は各国にそれぞれ1つだけある特別な銀行です。日本の中央銀行は「日本銀行」で、アメリカには「FRB」、イギリスには「BOE」があります。

ユーロ圏は特殊で、国と中央銀行が1:1の関係ではなく、「ECB」という1つの銀行が全ユーロ加盟国共通の中央銀行になっています。ECBはフランスの中央銀行であり、イタリアの中央銀行でもあり、ドイツ・スペイン・ギリシャ等々の中央銀行でもある、という仕組みになっています。

中央銀行と対になる用語に市中銀行があります。これはりそな銀行三菱UFJ銀行等の普通の銀行(中央銀行以外の銀行)のことです。なお、以降、単に「銀行」と言うときは市中銀行のことを指します。

以下、中央銀行の特徴をいくつか挙げていきましょう。

 

2.1 中央銀行の取引先

中央銀行は一般の個人や企業向けには預金口座を作ってくれません。中央銀行府と銀行等の金融機関だけに預金口座を作ります。

 

2.2 預金の呼称

市中銀行の預金は、保有者が大企業だろうが、個人だろうが、全てまとめて「銀行預金」と呼びますが、中央銀行の場合は政府保有の預金は《政府預金》で、金融機関保有の預金は《日銀当座預金と別々の呼称になっています。もちろん「日銀当座預金」は日本銀行だけが使っている呼称です。英語では金融機関が中央銀行保有する預金のことをreserve(=準備預金)と言います。

 

2.3 中央銀行の目的

中央銀行市中銀行のように利益を上げることを目的とする組織ではありません。大事なことなのでもう一度言います。 中央銀行は利益を目的とする組織ではありません。

中央銀行の目的は次の3つです。

  • 政府の財政活動(支出や徴税)に伴う政府預金口座の入出金を処理すること
  • 市中銀行の送金や融資等の業務が円滑に行われるようにすること
  • 各種の金利が適切な水準になるようにコントロールすること

 

2.4 中央銀行の位置付け

中央銀行建前上は政府から独立した機関ということになっています。

日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。

日本銀行法 第3条第1項

ですが、中央銀行実質的には紛れもなく政府の支配下にある組織の1つであり、実際には独立なんかしていません。この点については、財務省総務省といった一般的な国の官庁と何も違いはなく、「独立した組織だ」と捉えてしまうと今後のいろいろな部分の理解に支障をきたすことになります。こんな建前になっているのは歴史的な経緯によるものです。詳しいことは割愛します。

なぜこのように言えるかというと、政府は中央銀行のトップ(=日本銀行の場合は「総裁」)の人事権を握っている、すなわち政府は誰を総裁にするかを決める権限を持っているからです。

総裁及び副総裁は、両議院の同意を得て、内閣が任命する。

ー同法  第23条第1項

政府は自分の言うことを聞く人物しか総裁に選びませんので、中央銀行は政府の方針に忠実に動きます。

安倍さんが総理になってすぐに日銀は異次元緩和に動きましたし、岸田さんが総理になったら今度は利上げの方向に舵を切ったことはその証左です。

 

3.政府の支出は常にB払いである

政府は支出をするときには、常に通貨の支払によってこれを行います。ということは、「政府の支出は常にB払いである。」と言えます。

このことを確認するために通貨とはどんなものであるのかを少し詳しく見ていきましょう。

 

3.1 通貨とは

【G-3】のとおり、「通貨」とは「政府または中央銀行(以降、まとめて「政府部門」と言います。)が発行するカネ」のことです。

この定義に当てはまるもの(=通貨)にはいくつか種類があり、その主なものは次のとおりです。

( ゚д゚)<「国債」って何じゃい。

(´・ω・ `)<ざっと説明するとな、まずぼくが政府から「国債(コクサイ)」って書かれたチケットを買います。値段は例えば100万円です。

( ゚д゚)<ほんほん。えらい高ぇの。

(´・ω・ `)<100万ってのは例えばの額じゃけ、気にせんでええよ。

( ゚д゚)<そか、で?

(´・ω・ `)<このチケットには「10年後に政府はこれを101万円で買い取ります。」って書いてあります。

( ゚д゚)<100万円で買ったら、10年後に101万円になって返ってくるってこと?

(´・ω・ `)<そういうことや。国債を買うと、10年間は手持ちが100万円だけ少なくなってしまうけど、10年後には確実に1万円の儲けが出る。

( ゚д゚)<なんやそれ。お金が余っとる人やったら買えば買うほどお得やんけ。そんなええ話があるんやったら、ぼくも欲しいんじゃけど。

(´・ω・ `)<国債は誰でも買えるで。銀行か証券会社に行って「国債を買いたいです」って言えば、きみでも買える。実際の返ってくる金額は今やと100万分買ったら、10年後に100万5000円くらいやけどな。あと、割は下がるけど3年とか5年で返ってくるやつもあるし、100万円分も買わんでも1万円から買えるで。

( ゚д゚)<ほーん。ほいで、政府はなんでそんなもんをせっせと作っとんの?金持ちにカネを配りたいんか?にしては、えらい回りくどい方法じゃの。

(´・ω・ `)<なかなかええとこ突いとるけど、そのへんはもうちょっと複雑じゃけー、また今度にしよう。とりあえず今のところは国債ってのはそんな感じのもんって話だけにしとこか。

( ゚д゚)<ほーい。

(´・ω・ `)<ああ、あと、後から「債券(サイケン)」と「償還(ショウカン)」っていうワードが出てくるけー、説明しとくな。

( ゚д゚)<ほいほい、どうぞ。

(´・ω・ `)<「債券」は国債みたいな「買ったら、買ったときの値段よりちょっと上乗せされた額が後で返ってくる」っていう仕組みのチケット全般のことや。国債は債券の一種ってことやな。債券には企業が発行する「社債」とか、自治体が発行する「地方債」とか、国債以外にもいろいろ種類があるよ。ちなみに上乗せ分を最後にまとめてじゃなくて、1年ごととかで分割払いしてもらえるやつもある。

( ゚д゚)<ほんほん。

(´・ω・ `)<「償還」は債券の発行者が期限が到来した債券を買い取る行為のことや。さっきの話なら、10年後の「101万円で買い取る」っていう行為のことやな。この2つは覚えといてや。

( ゚д゚)<まかしときー。

 

3.2 通貨は全て政府部門の負債

日銀当座預金国債・硬貨・紙幣 (以降、硬貨と紙幣はまとめて「現金」と言います。)といった通貨はいずれの種類のものも全て政府部門にとっては負債です。

 

3.2.1 日銀当座預金が負債である理由

日本銀行市中銀行から「日銀当座預金と引き換えに現金をください」と言われたら、それに応じなければなりません。よって、市中銀行の銀行預金が負債であるのと同じ理由(【G-3】参照)で、日銀当座預金は政府部門にとっては負債であると言えます。

 

3.2.2 国債が負債である理由

政府は国債の発行から5年や10年といった期間が経てば、国債保有者へ所定の金額を支払わなければなりませんので、これが政府部門にとって負債であることは明らかです。

 

3.2.3 現金が負債である理由

残るは現金ですが、これが「政府部門にとっては負債である」というのはいまいちピンと来ないかもしれません。なぜ現金も日銀当座預金国債と同じく負債なのでしょうか。

それは政府が国民から現金を差し出されたときに、それと引き換えにその国民が負っている税債務を政府の帳簿から削除しなければならない(税の徴収を放棄しなければならない)からです。

( ゚д゚)<分からん分からん。

(´・ω・ `)<借入金が負債なのはもう覚えたじゃろ?

( ゚д゚)<うい。きみがぼくからカネを借りとったら、きみはぼくにカネを払わなあかんけー、そりゃ負債やな。

(´・ω・ `)<せや。そしたら、きみがぼくからカネを借りとる場合のことを考えてみよう。

( ゚д゚)<いやです。

(´・ω・ `)<・・・そしたらぼくがきみにカネを貸しとる場合のことを考えてみようか。

( ゚д゚)<おう。それならええで。

(´・ω・ `)<よし、金額は例えば100円にしよか。ぼくはきみに100円の貸付金があって、てことは、きみはぼくに100円の借入金があるわけやな。

( ゚д゚)<てめえ、騙しやがったな。

(´・ω・ `)<きみがアホなだけじゃ。

( ゚д゚)<まあそういうことにしといたるわ。で?

(´・ω・ `)<ここでやな、ぼくもきみから100円を借りとったらどうやろうか。お互いに100円を貸し合っとる状態や。

( ゚д゚)<え?そんな状況あります?

(´・ω・ `)<その疑問はもっともやけど、ここではあることにしといてくれるか。

( ゚д゚)<そか、しゃーないの。それやったら、ぼくはきみに返済なんかせんでええじゃろ。お互いの借金を相殺して帳消しじゃ。

(´・ω・ `)<ざっつらいと。じゃあ今度はきみが100円分の「ポンポン券」を持っとったらどうや。ポンポン券はそれを持っとれば、ぼくからの借金をその額面分だけ帳消しにしてもらえる便利なチケットや。

( ゚д゚)<それもおんなじことや。ぼくはポンポン券をきみに渡して、借金はチャラや。

(´・ω・ `)<てことは?

( ゚д゚)<相手にポンポン券を持たれとることは借入金があるのと同じってことになるな。

(´・ω・ `)<てことや。じゃけー、国民が税債務を帳消しにできるチケットである現金は政府部門にとっては負債なんよ。

( ゚д゚)<んー、なんか分かったような分からんような…

(´・ω・ `)<まあまだ始めの始めじゃけ、そんなもんじゃろ。話が進んでいったら自然と分かってくるけー。とりあえず現金は政府にとっては負債なんやって無理やり叩きこんどきんしゃい。

 

3.3 政府支出=B払いについてのまとめ

以上のとおり、通貨(現金・日銀当座預金国債)はいずれも政府自身にとっては負債です。そして政府は支出をするときには必ず通貨を発行して支払をします。

ということは、政府の支出は常に負債の発行による支払であり、「負債の発行による支払」とはすなわちB払いのことですから、ここから「政府の支出は常にB払いである」という重要な結論を導き出すことができます。

 

4.まとめ

政府は通貨の単位を決め、その単位を使って課税と支出をします。なお、この支出は常にB払いで行われます。

課税によって国民は通貨を入手しなければならなくなり、政府は国民に対して支出をする(仕事の対価として国民に通貨を受け取ってもらう)ことが可能になります。

そして、政府が様々な仕事にそれぞれの額の支出をすることでカネの量の基準が定まります。

ここに「政府が課税という前提を敷き、それから通貨を支出して、徴税のときにその通貨を回収する」という、この循環的なプロセスが成立します。そしてこのプロセスは国民経済に貨幣システムの基礎を与えます。私たち国民が行っている様々な経済活動はその基礎の上に成り立っているのです。

従来の経済学は貨幣システムを空気とか引力とか、そんなものと同じように"初めからそこにあるもの"として考えますが、MMTの考え方はそうではありません。

貨幣システムは自然に成立しているものではなく、政府からその基礎を与えられています。

貨幣システムにおいて、政府は企業や個人と横並びに語るべき存在ではありません。政府はその基礎の部分の仕組みを決定する力を持つ、という特別かつ最も重要な存在です。

 

それでは本日ここまで。

 

 

 

おまけ

最近、車通勤中に「MMTを知ってほしい会」さんの動画をラジオみたいにして聞いています。

www.youtube.com

特にzoomで勉強会形式でやっているやつをよく聞いてまして、nyunさんの回も第1回から第4回まで聞きました。さすがnyunさんというか、しっかり準備されているのが分かりますし、説明も正確だし、聞きごたえがありますね。次回以降も楽しみです。

ただ、第4回の終盤のヒサノさんの質問のくだりでうまくやり取りがなされていなかった感じだったのが残念だったので、ヒサノさんがこの記事を読んでくれるかは分かりませんが、ここで私なりに答えてみようかと思います。

www.youtube.com

ヒサノさんのご質問は、私の理解できたものだと「特定の相手に向けられて発行された債務証書が、どのようにして一般に通用する決済手段としての"貨幣"に変化するのか」ということだったようです。

これは例えば、Aさんが「今度、お魚を渡しますね」という債務証書をBさんに向けて発行し、Bさんがこれを受け取ったとします。ここで、BさんはAさんがお魚を釣って来てくれるまで債務証書を持っておかずに、例えばお肉の代金としてCさんへ渡し、そこからさらにC→D→E→F→・・・と債務証書が渡っていくような状況をイメージされているものと考えます。

つまり、ヒサノさんはこういうことを言われていたのでしょう。

  1. 貨幣は「お魚を渡す」や「お肉を渡す」といったいろんな仕事と等価のもの、すなわち交換できるものだ。
  2. その貨幣はもともとは債務証書だったという説明があった。
  3. しかし債務証書は"いろんな"仕事ではなく、特定の仕事との交換しか約束されていないものだ。
  4. ということは、「もともとは債務証書だった」という説明が正しいならば、どこかに債務証書(特定の仕事と交換できるもの)から貨幣(あらゆる仕事と交換できるもの)に変化する瞬間が存在しなければ辻褄が合わない。
  5. では、その"瞬間"とはいったいどのようなものであるか。

動画のやり取りの中ではこの質問に対して、"債務ヒエラルキー"や"課税による通貨需要創出"ということで説明しようとされている場面もありましたが、それではヒサノさんの言われるとおり、答えには行きつかないでしょう。

これに対する私の答えをここから書いていこうと思ったのですが、ちょっとパパっと答えるのは無理そうだと気づきまして、それにたまたまですが、次回に予定している内容にも関わってくるところですので、次回のおまけで書くことにします。乞うご期待。

( ゚д゚)<なんじゃそら。

(´・ω・ `)<ほっほっ、すまんの。

( ゚д゚)<すまんで済んだら、警察はいらんのんじゃ。

(´・ω・ `)<それ、よー言われるけど、すまんで済んでいらんのは警察やなくて裁判所ちゃうかな。

 

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

( ゚д゚)<最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!!

応援コメント、指摘コメント、お待ちしております!当ブログの拡散も大歓迎です!

よろしくお願いします!

 

 

 

 

【G-3】B払い

 

目次 

 

1.本日のお題

(´・ω・ `)<さて、B払いなんやけど、

( ゚д゚)<なんかもうちょっと、こう、入りのトークとか無いんか。

(´・ω・ `)<んー、そういうのは後にしようや。

( ゚д゚)<後にしてもうたら入りのトークじゃなくて終わりのトークになってまうやないか。

(´・ω・ `)<おお、うまいこと言うの。

( ゚д゚)<いや、うまいとかじゃなくて。だいたいうまくもないじゃろ。

(´・ω・ `)<よし、ほいだらさっさとその入りのなんとか言うやつを済ませようや。ほれ、はよ。ほれ。

( ゚д゚)<どしたん。なんかえらい急かしてくるやんけ。

(´・ω・ `)<ちょっと今日の話は長くなるけーの。さっさと始めたいんじゃ。

( ゚д゚)<そか。ほいだらさっさと始めよか。

(´・ω・ `)<っしゃ、はじめよー。

 

2.説明の前に

B払いの説明の前にお断り・約束ごとをお話ししておきます。

 

2.1 B払いは私の造語です

これから説明する「B払い」は私の造語です。経済学や簿記・会計の用語ではありません。

( ゚д゚)<なんでわざわざ造語とかしとん。中二病か?

(´・ω・ `)<ぼくが中二病なのはたしかにそうなんやけど、理由はそれではないな。

( ゚д゚)<ほう。と言いますと?

(´・ω・ `)<MMTをちゃんと理解するにはB払いの概念を理解しとかな無理なんよ。ところが、この「B払い」を意味する言葉ってのが存在せんのんじゃ。

( ゚д゚)<え、そんなことあるん?

(´・ω・ `)<あるんや。

( ゚д゚)<あるんか。

(´・ω・ `)<おう。ある。あるったらある。

( ゚д゚)<まあええわ、あるってことにしよか。

(´・ω・ `)<よろしい。でも概念はあるのに、言葉が無いのは不便じゃろ。

( ゚д゚)<まあそれはたしかに不便やの。

(´・ω・ `)<で、もう仕方ないけー、言葉を作ってしまうことにしたんじゃ。でも、いきなり造語を使われても意味不明なだけやろうから、先に説明しとこうっちゅう話よ。

( ゚д゚)<ほんほん、なるほど。なんで「B払い」って名前にしたん?

(´・ω・ `)<そのへんは最後に説明したる。ほいだらいってみよー。

 

2.2 「貨幣」はカネと呼びます

「お金」とか「貨幣」とか「money」とか、そんな名前で呼ばれているもののことを「カネ」と呼ぶことにします。

最初からそうしてましたが、ここで改めてお断りを入れておきます。

当ブログはMMTを解説するものでして、MMTマクロ経済学の一派ですので、当然ながら、この先からはこの言葉を使うタイミングがたくさん出てくるようになります。

しかし、「お金」だと「お」が文章の中に埋もれてしまって読みづらくなりがちです。かと言って「金」では金属のゴールドと見分けられない。それから、後述のとおり、当ブログでは「通貨」はカネとは別のものとして明確に区別しますので、そのときに「貨幣と通貨」と書くより「カネと通貨」の方が違いが際立って良いだろう、という理由もあります。

 

2.3 「貨幣」と「通貨」の使い分け

当ブログでは、MMTの流儀に従って、「カネのうち、政府または中央銀行が発行する/したもの(で、かつ政府または中央銀行以外保有する/しているもの)」のことを《通貨》と呼びます。カッコ内は正確を期すためです。いまは無視してもらって構いません。

なので、銀行預金は、「カネ」ではありますが、「通貨」ではないことになります。

「カネ」と「通貨」は、日常会話では同義で用いられますし、法律上では「通貨のうちの硬貨を貨幣という」となっていたりしますが、当ブログにおいては、上記の定義でやっていきます。

この点の理解が抜けていると本編の説明で混乱をきたすことになりますので、しっかり押さえておいてください。

 

2.4 仕訳の一部の短縮形

「借方に資産が計上されている仕訳の借方の部分」を「借方資産」と呼ぶことにします。

その他についても同じく「借方負債」や「貸方収益」のように呼びます。

 

2.5 金融資産と実物資産

当ブログでは、MMTの流儀にならい、資産を《金融資産》《実物資産》の2種類に分けて考えます。簿記の世界では流動資産・固定資産・繰延資産の3つに分けますが、当ブログでは、この分け方は使いません。

 

2.5.1 金融資産・実物資産の例

金融資産とは、例えば、次のような資産のことです。

  • 現金
  • 銀行預金
  • 貸付金

実物資産の例は、次のとおりです。

  • 建物
  • 機械
  • ソフトウェア

 

2.5.2 両者の違い

実物資産の例に「ソフトウェア」が含まれるとおり、金融資産と実物資産を分ける基準は「実体があるかどうか」ではありません。

2つを分ける基準は、正確に言えば「誰かの負債である資産は金融資産で、そうでない資産は実物資産」なのですが、

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いきなり「誰かの負債である資産」とか言われても訳が分からないと思いますので、いまの時点ではひとまず、次のように捉えてください。

  • 金融資産→カネとして利用できるもの
  • 実物資産→金融資産以外の資産

 

3.「支払」の定義

それではいよいよ本題に入ります。B払いとは何かについて説明していきます。

まず《支払》の定義を「それを受ける人に借方金融資産を発生させる(=金融資産を増加させる)行為」とします。

 

3.1 支払の例1:給与支給

とあるカフェの店長Xが店員Yに給料を銀行振込で支払うときの仕訳はこのように↓なります。

このとき、給与を支給されるYに借方金融資産が発生しているので、これは「支払」に該当します。一般的な感覚から言っても、これを「支払」と呼ぶことに違和感は無いと思います。

 

3.2 支払の例2:代金振込

今度はYがメルカリの出品者でXが購入者という場合を考えてみましょう。Yの出品物は例えば家具として、Xが代金を振り込む場合、仕訳はこう↓なります。

この場合もYに借方金融資産が発生していますので、Xの行為(家具|預金)は「支払」です。

一方、Xの借方にも資産(家具)が発生していますが、これは実物資産なので、Yの行為(預金|家具)は「支払」ではありません。

 

3.3 支払の例3:借金返済

もうひとつ別のパターンの例を見てみましょう。

今度は「XがYにカネを借りていて、それを返済する」という場合です。

ここでもYには借方金融資産が発生していますので、Xの行為(借入金|預金)は「支払」です。

 

3.4 ここまでのまとめ

このように、

様々な仕訳の形はあれども、これらは全て「支払」です。

そしてこれらには「支払をされる側に借方金融資産が発生している」ということ以外に、「支払をする側に貸方金融資産が発生している」という共通点もあります。

つまり、先で挙げた例は全て、


の形になっていて、金融資産が支払をする側では減り、支払を受ける側では増えています。

( ゚д゚)<ほんほん、なるほど。要するに、「支払」ってのは「支払をする側からされる側への金融資産の移動」のことを言うとるんやな。

(´・ω・ `)<それがそうとは限らんのよ。

( ゚д゚)<お?なんでや。

(´・ω・ `)<なんでか言うたらな、する側が貸方金融資産とはならん「支払」が存在するからや。

 

4.A払いとは

当ブログでは、この形↓の支払を《A払い》と呼びます。


一般的に「支払」と言えば、イメージされるのはA払いでしょう。

A払いでは、支払をする側の金融資産が減り、支払を受ける側の金融資産が増えます。なお、これはあくまで、一方の金融資産が減り、もう一方の金融資産が増えているだけであり、金融資産が"移動"しているわけではありません。ここの区別はかなり大事なことなのですが、いまの時点でなぜ大事なのか、なぜ移動ではないのかを理解していただくのはだいぶ先の議論なので、とりあえず今のところは"移動"のイメージで捉えてもらっても大丈夫です。

 

5.B払いとは

そして、次の形の支払を《B払い》と呼びます。


B払いでは、支払をする側が貸方負債となります。その点はA払いと異なっていますが、支払を受ける側は同じく借方金融資産になっていますので、これもれっきとした「支払」です。

 

5.1 B払いの例1:ツケ払い

イメージをしやすくするためにB払いについても例を挙げてみましょう。

ここでもう1人、Zさんを登場させます。ZがXの店に客としてやって来て、代金をツケにしてもらった場合、ZとXの仕訳はこう↓なります。


これはXが借方金融資産になっているので、先述の「支払」の定義に該当します。

(゚⊿゚)<いやいや!ツケ払いはたしかに名前に「払い」とは付いとるけれども!中身は単に支払の時期を延ばしてもらっとるだけじゃないか!これを「支払」だというのは無理があるぞ!

( ゚д゚)<なんだちみは。

(´・ω・ `)<見てのとおりの変なおじさんや。

(゚⊿゚)<そうです!私が変なおじさんです!
(゚⊿゚)<って、ちがーう!

( ゚д゚)<基本に忠実な返しじゃの。そういうの大事やで。

(゚⊿゚)<やかましい!茶化してないで私の批判に答えなさい!

(´・ω・ `)<ほいだら答えよか。あんな、いまぼくが言うとるのは、最初に決めた「支払」の定義に合うかどうかっちゅう話や。きみの言語感覚なんかに合うかどうかは関係ないよ。

(゚⊿゚)<なんだと!

(´・ω・ `)<勘違いしたらあかんのは、いまぼくは「『支払』の定義を『それを受ける人に借方金融資産を発生させる行為』としたならば、」っていう仮定を置いて、その仮定の下ではどういうことが言えるんかっちゅう話をしとるんよ。

(゚⊿゚)<あ!?だからどうした!?

(´・ω・ `)<じゃけー、きみの"時期がどーのこーの"とかいう定義と全然関係ない基準を持ってきて、それをもって「ツケ払いは支払というのは無理がある」とか言い出すのは、こんなん↓と同じレベルよ。

(´・ω・ `)<x=1ならば、x+1=2です。
( ゚д゚)<いや、x=5ならば、x+1=2ではない。あなたの言っていることは間違いだ。はい論破。

(´・ω・ `)<な?こんなん論破になっとらんじゃろ。

(´・ω・ `)<で、話を戻すと、いまぼくは「『支払』の定義を『それを受ける人に借方金融資産を発生させる行為』としたならば、『支払』にはA払いとB払いの2つのパターンがありますよ」ってことを説明したんや。ここまではよろしいか?

(゚⊿゚)<むむむむむ・・・にゃー!

( ゚д゚)<なんや。変なネコちゃんやったんか。

(゚⊿゚)<そうです!私が変なネコちゃんです!
(゚⊿゚)<って、ちがーう!

 

5.2 B払いの例2:銀行員の給与

とは言え、やはりツケ払いは通常、後でA払いが行われることが想定されるものですので、ツケ払いの例だけでは「B払いはれっきとした"支払"だ」という説明にピンと来ないかと思います。

(゚⊿゚)<おいちょっとお待ちなさいよ。

(´・ω・ `)<うるせえ黙れ。

そこでもうひとつ、銀行員の給与を例として挙げてみましょう。

 

5.2.1 銀行預金は銀行にとっては負債

と、その前に、「銀行預金は銀行にとっては負債である」ことを説明しておかなければいけません。

【G-1】で説明したとおり、預かり金の存在(いつかカネを返さなければならないという事実)は負債として計上されるものです。

そして、「銀行預金」という存在について、私たち(銀行の顧客)がこれを金融資産として計上するのは、私たちが「預けた側」の立場であり、これをいつでも引き出すことができるからです。

一方、銀行は「預かった側」の立場です。銀行にとって「銀行預金」は「預かり金」であり、銀行預金が存在することで顧客の「引き出したい」(=預金と引き換えに現金を支払ってほしい)という要求に応じる義務が生まれます。

であるからして、銀行にとって銀行預金は負債であるわけです。なお、厳密には銀行預金は「預けた/預かったカネ」ではありません。もしあなたが「預けた/預かったカネ」というイメージで凝り固まっていると、この後の説明がしっくり来ないかもしれません。ただ、これについても、ちゃんとした説明にはまだ材料が足りていない状態です。とりあえずは「銀行にとって銀行預金の存在は負債である」ということだけ理解してください。

以後、当ブログでは、読み手は「銀行預金は銀行にとっては負債である」ことを理解している前提で、話を進めていきます。

 

5.2.2 銀行員の給与支給の仕訳

いまどきは、世間一般のほとんどの会社は給与を銀行振込で支払っていて、現金払いというパターンはなかなか無いことでしょう。

銀行だってそうです。銀行は従業員(=銀行員)の給与を銀行振込で支払います。

さて、それでは、銀行Pが銀行員Qに給与を振り込むときの仕訳を考えてみましょう。

支払を受ける側である銀行員Qの仕訳は、先述のカフェ店員Yと同じでこう↓です。

続いて、支払をする側である銀行Pの仕訳です。

こちらは【G-2】で説明した横断合計ゼロ法則から逆算してみましょう。この↓合計がゼロになるような仕訳は何か、


という考え方で銀行Pの仕訳の借方貸方それぞれに入る勘定科目を求めるわけです。

まず、借方は「銀行員Qの貸方給与(収益)と相殺消去されるもの」でなければならないので、これは給与(費用)に他なりません。これは先述のカフェ店長Xと同じです。

次に貸方です。こちらは「銀行員Qの借方銀行預金(金融資産)と相殺消去されるもの」ですから、考えられるものは銀行預金(負債)しかありません。

つまり、正しい仕訳はこのように↓なります。


ここで、これは勘定科目の名前こそカフェ店長Xの場合と同じですが、こちらは銀行Pの負債の増加であって、資産の減少ではない、すなわち、カフェ店長Xの給与支払はA払いですが、銀行Pの給与支払はB払いであることに注意してください。

 

5.3 B払いについてのまとめ

B払いとは、このように、「支払をする側が貸方負債」となる支払(=負債の発行をもって支払とする行為)のことを言います。

さらに付け加えておきたいのは、支払をする側である銀行Pの仕訳の貸方に銀行預金(負債)が入ることは何らおかしなことではないということです。

「Pの貸方には銀行預金(負債)以外の勘定科目が入るはずだ」と考えることの方がむしろ横断合計ゼロ法則ひいては簿記の基礎を踏み外したおかしな考え方だと言えます。

 

6.決済性とA払い・B払いは無関係

ときどきB払いについていただく意見にこういうものがあります。

(´・ω・ `)<要するに、A払いは決済が成立する支払で、B払いは決済が成立しない中間的な支払ってことでしょ?

ですが、これは違います。

A払い/B払いの区別は決済が成立するかどうかとは関係ありません。

 

6.1 売買・決済とは

ここで《売買》《決済》について言葉の定義をしておきます。

《売買》とは二者が、財・サービス・労働力等々を提供する「売り手」と支払をする「買い手」に分かれてそれぞれの役割を果たす、という取引です。


そして《決済》とは、「売り手が『買い手は支払というこの売買取引における義務を完全に履行し終わった(=もうこれ以上何もしなくてよい)。』と認めること」を言います。

 

6.2 「決済性」の定義

決め手は「売り手が認めること」ですから、決済が成立するかどうかは、もちろん最終的には売り手の気持ち次第でどうとでもなる問題です。

ですが、ここではいったんその辺の厳密さを放棄して、支払について「売り手が決済成立を認める」と期待しても"普通は"おかしくないものを「決済性がある」、そうでないものを「決済性が無い」と表現することにします。

 

6.3 B払いの決済性

さて、銀行Pから給与を振り込まれた(=B払い)銀行員Qは決済成立を認めないことがあるでしょうか。

「決済成立を認めない」とは、すなわち「買い手(銀行)にはまだ果たすべき義務が残っている」と主張することです。

「給与を支払え」と言われて給与を振り込んだPとしては「これ以上どうしろと言うのか」という話ですし、一方のQも自身の口座に預金が振り込まれているわけですから、これ以上求めるべきものはありません。

よって、Qは普通は決済を認めますので銀行Pの給与振込には決済性があることになります。

一方で同じB払いでもツケ払いには決済性が無いことは言うまでもなく明らかです。

 

6.4 A払いの決済性

続いて、A払いの例には「コンビニで買い物をしたときの現金支払」がありますが、これは明らかに決済性があります。

ところが、同じA払いでも「ローンの頭金の支払」には決済性がありません。

 

6.5 決済性についてのまとめ

つまり、A払いには決済性があるものも無いものもあるし、それはB払いについても同様です。よって、支払の決済性の議論においてA払い/B払いの区別は全く意味を持たないと言えます。

してみるに、B払いはA払いの中間段階ではありませんし、代替手段でもありません。もちろん逆に、A払いがB払いの中間・代替であるということもありません。

A払い・B払い、この2つはどちらも「支払」のカテゴリに含まれはするものの、そこに優劣や主副といった関係はありません。

本記事は単に「私の言う「B払い』とは、こういう意味の言葉です。」ということを説明しているだけであって、次のような意図はありませんので、誤解なきよう、お願いいたします。

  • B払いはA払いより優れている。
  • B払いはA払いの代わりになるものである。
  • いままでに無かった全く新しい支払の方法としてB払いを提案したい。

 

7.B払いの重要な性質

B払いにはA払いには無い性質がいくつかあります。そのうち、特に重要な2つをここで説明しておきます。

 

7.1 B払いに原資は不要

A払いをするには支払の前に自己の金融資産を調達しておく必要があります。一方のB払いに事前の調達は必要ありません。

A払いとは自己の金融資産を減らして相手方の金融資産を増やす行為ですので、減らすべきカネを持っていなければ、当然実行することができません。

B払いのときに支払者が行うのは、新規の負債発行ですから、このときに何かを持っておく必要は無く、単に相手方へ負債発行の意思表示をして、その証拠を紙に書いたり電子データにしたりするだけで支払を実行することができます。

 

7.2 貨幣はB払いのときに生まれる

B払いのときには、支払をする側が負債の増加を計上し、支払を受ける側はその負債と対になる金融資産の増加を計上します。

よって、B払いのときには必ず、対となる負債と金融資産のセットが生まれます。

そして実はこの負債と金融資産のセットこそが私たちが「カネ」もしくは「貨幣」と呼んでいるものの正体であり、つまりB払いのときには新たな貨幣が誕生することになります。

さらに言うと、カネが誕生するのはこのB払いのときだけであり、いま存在しているカネは全て、過去の誰かのB払いによって誕生したものであるということも言うことができます。

 

8.おわりに

B払いの例はツケ払い・銀行員の給与以外にも銀行融資、手形発行、小切手発行、国債発行、掛け払い…と様々に"ありふれて"います。これらの具体的な中身は本編を進めていく中で順次説明していきます。

であるのに、B払いの概念が一般的でなく、「支払」と言えば、もっぱらA払いのことだけを指し、B払いには名前すら無いという状況です。

なぜこういうことになってしまったのかは計り知れないところですが、先述のとおり、MMTを説明するにはB払いの概念が欠かせません。それゆえ、このように長々とした説明をせざるを得なかったことをご理解いただければと思います。

 

9.「B払い」の由来

( ゚д゚)<で、なんで「B払い」って言うん?

(´・ω・ `)<おお、すまん。それの説明を忘れとったの。まあ【[番外3]B払い】を見てもらうのが手っ取り早いんやけど、「読んどけ」ってのは乱暴じゃけ、軽く説明しよか。

 

ーある日、私はとあるきっかけでB払いのことを思いつきました。

(´・ω・ `)<ん?あれ、「支払」っちゅうのは支払う側が貸方金融資産じゃなくても、貸方負債でも成り立つな。

(´・ω・ `)<あー、おー、そうかそうか。はいはいはいはい、そういうことならあれもこれも、なんだかモヤっとしとったところが全部スッキリ理解できるの。

(´・ω・ `)<よし、これを記事にしてシェアしよう。カタカタカタ(キーボードを叩く音)・・・

(´・ω・ `)<・・・名前が無いと説明が書きづれえの。とりあえず「A払い」「B払い」にしとくか。後でちゃんとした名前を考えてそれに書き換えたらええやろ。

(´・ω・ `)<カタカタカタ・・・よし、記事ができたぞ。A払いB払いに名前をつけて完成やな。

(´・ω・ `)<いくら考えても思いつかんな…

(´・ω・ `)<まあええか、「A払い」「B払い」のままで行ったれ。

 

 

それでは本日ここまで。
 

 

おまけ

前の更新からだいぶ空きましたね。

年度末で忙しかったのもあるんですが、実は私、学生の頃からの趣味がビリヤードなんですが、ここ数年とある事情で封印してたんです。それがこれまたとあるきっかけで再開をしまして、そっちに時間を割いてたのが理由です。

テキストはスマホで空き時間にチマチマ書けるんですが、図を作るのはやはりPCが無いと厳しくて、そうするとまとまった時間が必要になるわけで、その時間をビリヤードに使っていたと。

とは言え、後ろめたく感じるのもおかしな話ですし、マイペースでやっていこうかなと思っております。

こんなゆるい感じですが、当ブログを今後ともよろしくお願いいたします。 ガイダンス編はこの記事で終了で、次からは内容に入っていきますので、お楽しみに。

 

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

( ゚д゚)<最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!!

応援コメント、指摘コメント、お待ちしております!当ブログの拡散も大歓迎です!

よろしくお願いします!

 

【G-2】xb記法

 

目次 

 

(´・ω・ `)<ほいだら、続きをやるかの。

( ゚д゚)<うい。何やったっけ?

(´・ω・ `)<もう忘れたんかいな。

( ゚д゚)<そらあそういうこともあるがな。誰だってそうや。きみもそうやろ?

(´・ω・ `)<まあ、そういうこともあるけどさ。

( ゚д゚)<な?ほいだらさっさと複数の人や組織の一連の取引を第三者の視点から記述する方法ってのを説明しんさい。

(´・ω・ `)<だいぶちゃんと覚えとるやんけ。

 

前回の復習

まずは前回の復習から始めましょう。

「商社Aが仕入先のBから100円で商品を仕入れた。そして、その商品を顧客であるCに150円で売った。」

この取引におけるAの仕訳はこのように↓なります。

いかがでしょうか。分からなかった方は前回記事の【G-1】を再読いただければと思います。

 

xb記法とは

さて、もしも私たちの目的がAの帳簿作りなのであれば、話はここでおしまいです。

がしかし、当ブログの趣旨はそういうことではありません。マクロ経済つまり世の中全体の経済の仕組みを理解しようというものです。

そこで、Aだけではなくて、仕入先B・顧客Cのことも含めて「全体としてはどうなっているのか」を考える必要が出てきます。

つまりはこの4つ↓の仕訳をまとめて全部いっぺんに考えたいわけです。

しかし、このように単に仕訳を並べるだけだと、たったこれだけの取引量ですら「全体がどうなっているのか」をイメージするのはちょっとしんどいものがあります。

そこで、もう一歩進んだ「複数の会計主体による取引の全体をまとめて示せる記述法」が必要になってきます。なお、《会計主体》とはこのときのAやBやCのことです。

 

xb記法の書き方

この問題に対して私が「こうしたらいいんじゃなかろうか」と考え出したのが、こういう↓書き方です。なお、金額については以降無視します。

この書き方であれば、全体の動きをまとめて把握することができます。名前が無いのはいささか不便なので、僭越ながら、これを「xb記法」と呼ぶことにします。

 

ストック科目とフロー科目

ここで《ストック科目》《フロー科目》という2つのワードを追加しておきます。

【G-1】のとおり、全ての勘定科目は資産・負債・純資産・費用・収益の5つのグループのどれかに区分されます。

そのうち、資産・負債・純資産に区分されている科目が「ストック科目」で、費用・収益に区分されている科目が「フロー科目」です。

科目の相殺消去

xb記法で各主体の仕訳の合計を示すときは、次の2パターンに当てはまる箇所があれば、できるだけ相殺消去をして示すことにします。

  1. ストック科目については、借方と貸方に同じ科目が1つずつあるとき
  2. フロー科目については、借方と貸方に費用と収益が1つずつあるとき

なお、この相殺消去は単純に見やすくするための処置です。別に「これをやらないと、仕訳が成り立たなくなる」とか、そういった実際上の問題が起こるわけではありません。

ですが、相殺消去をした方が見やすいので、当ブログでは、消せるものは出来るだけ消すようにします。

 

横断合計ゼロ法則

さて、上記の各主体の仕訳の合計は、言わば「縦方向の合計」です。

xb記法の利点は何と言っても、複数の会計主体の仕訳を横断的に一覧できることですので、今度は「方向の合計」についても考えてみましょう。

つまり、最初に示したA,B,Cの仕訳について、1行目のAとB、2行目のAとCの仕訳をまとめて1つのものとして考える、ということをやってみるわけです。

以下、この複数の会計主体の仕訳をまとめて1つのものと考えたときの1行目・2行目のことを《横断仕訳》と呼ぶことにします。

 

横断合計における科目の相殺消去

ここでも縦方向の合計のときと同じように相殺消去を考えてみます。但し、こちらはストック科目について少しだけ対象が広がります

  1. ストック科目については、借方と貸方に同じ科目(例:現金-現金)または対となる科目(例:貸付金-借入金)が1つずつあるとき
  2. フロー科目については、借方と貸方に費用と収益が1つずつあるとき

すると、1行目の横断仕訳も、2行目の横断仕訳も全ての科目が相殺消去されることになります。

これは偶然ではありません。

どんな取引の横断仕訳であっても、上記のルールで相殺できるものを全て相殺していくと必ず最後には全ての科目が消去されることになります。

つまり、横断仕訳の中の各仕訳を全て足し合わせた合計は、それがどんなに複雑な取引であっても、必ずゼロになります。

例えば銀行間振込は、

  • 振込みをする人
  • 振込み元の銀行
  • 日本銀行
  • 振込み先の銀行
  • 振込みを受ける人

という五者が関連する複雑な取引ですが、やはり横断仕訳の合計はゼロになります。

今は仕訳自体の意味まで理解する必要はありません。合計がゼロになることだけ確認してもらえればOKです。

こちらも名前が無いのは不便ですので、上記の法則のことを《横断合計ゼロ法則》と呼ぶことにします。

 

なぜ横断合計はゼロになるのか

さて、横断合計ゼロ法則はなぜ成り立つのでしょうか。

もちろんxb記法だから成り立つ、ということではありません。xb記法は単なる表現方法の工夫ですので、xb記法で書くかどうかによって取引の内容が変化することは無いからです。

それでは以下で横断合計ゼロ法則が成り立つ理由を説明していきましょう。

 

二者間取引の横断合計はゼロになる

まず、あらゆる二者間取引の横断合計はゼロになることを示します。

ただ、"あらゆる"とは言っても、実際のところ、二者間取引のパターンは、基本的には次の2つしかありません。

  • 資産を渡す(受け取る)取引
  • 負債を発行する(受け取る)取引

これに費用・収益の発生を伴うパターンも加えるとパターンは3つとなります。

なお、純資産は「資産と負債の差額」ですので、これは渡したり受け取ったりするものではありませんから、「純資産を渡す(受け取る)取引」というパターンはありません。

同様に、「費用を渡す(受け取る)取引」や「収益を渡す(受け取る)取引」というパターンもありません。

 

資産受け渡し取引の横断合計

まずは資産を渡す(受け取る)取引を考えてみます。例えば、「AがBから現金(資産)で家具(資産)を買う」という取引です。

  • Aは家具(資産)を得て、現金(資産)を減らした。
  • Bは現金(資産)を得て、家具(資産)を減らした。

ということですので、この取引の仕訳はこう↓なります。

  • Aの貸方・Bの借方に同じ資産(=現金)があるので相殺消去できる。
  • Aの借方・Bの貸方にも同じ資産(=家具)があるので、これも相殺消去できる。

よって、この取引の横断合計はゼロです。

 

負債受け渡し取引の横断合計

続いて負債を発行する(受け取る)取引を考えてみます。例えば、「AがBから現金(資産)を借りて、借用書を書いて渡した。」という取引です。

ここで、借用書の存在はAにとっては「カネを借りた」という事実であり、Bにとっては「カネを貸した」という事実ですから、Aが計上するのは「借入金(負債)」であり、Bが計上するのは「貸付金(資産)」と科目が異なることに注意してください。

つまり、

  • Aは現金(資産)を増やして、借入金(負債)を増やした。
  • Bは貸付金(資産)を増やして、現金(資産)を減らした。

ということですので、この取引の仕訳はこう↓なります。

  • Aの貸方には「借入金(負債)」が、Bの借方には「貸付金(資産)」があり、この2つは対になっているので相殺消去できる。
  • Aの借方・Bの貸方に同じ資産(=現金)があるので、これも相殺消去できる。

よって、この取引の横断合計もゼロです。

 

費用・収益の発生を伴う取引の横断合計

最後に費用・収益の発生を伴うパターンを考えてみます。例えば、「AがBに借金の利息として現金を支払う」という取引です。

この取引では、AがBへ現金を単に渡すだけですので、

  • Aは現金(資産)を減らした。
  • Bは現金(資産)を増やした。

ということになります。いったんこのような↓仕訳を書いておきましょう。

Aの借方とBの貸方が空白ですので、Aの借方に費用を、Bの貸方に収益を入れて仕訳が完成します。

  • Aの貸方・Bの借方に同じ資産(=現金)があるので相殺消去できる。
  • Aの借方の費用・Bの貸方の収益も相殺消去できる。

よって、この取引の横断合計もやはりゼロです。

 

二者間の横断合計に関するまとめ

つまり、

  • 資産受け渡し取引の横断合計はゼロである。
  • 負債受け渡し取引の横断合計はゼロである。
  • 費用・収益の発生が伴う取引の横断合計はゼロである。

ということですから、二者間取引は全てのパターンにおいて横断合計がゼロになることが分かります。

これは、

  • 資産の受け渡しは資産が移動しただけだから、全体としての変化は無い。
  • 発行された負債は受け取り側にとっては資産なので、対になる資産の発生を必ず伴う。

と考えれば、当然のことと理解できるかと思いますし、また、費用・収益を伴う取引については、

  1. A-Bの二者間取引でAが収益を得たということは、
  2. Aが「資産を増やした」または「負債を減らした」ということなので、
  3. それは一方でBが「資産を減らした」または「負債を増やした」ということであり、
  4. それはBが費用を計上するということである。
  5. つまり、Aが収益を得れば、Bは必ず費用を計上することになる。

と考えれば、これも理解できると思います。

 

全ての取引は二者間取引の重ね合わせ

続いて、実はあらゆる取引は複数の単純な二者間取引に分解することができます。

銀行間振込の仕訳は先述のとおり複雑なものですが、

これも4つの単純な二者間取引に分解することが可能であり、上記の仕訳はそれらを重ね合わせて縦方向の相殺消去をしたものです。

分解した個別の仕訳についても現段階では仕訳の意味まで理解する必要はありません。見ていただきたいのは4つの二者間取引の仕訳の重ね合わせが元の仕訳と同じになっていることです。

 

横断合計ゼロ法則が成り立つ理由のまとめ

  • 全ての二者間取引の横断合計はゼロになる。
  • 全ての取引は二者間取引の重ね合わせである。

ゼロにいくらゼロを重ね合わせても、その合計はもちろんゼロになります。

であるからして、全ての取引の横断合計はゼロになるというわけです。

 

横断合計ゼロ法則の応用

「全ての取引は横断合計はゼロになる」ということは、「ある仕訳が取引の内容を正しく記述したものであるならば、その横断合計は必ずゼロになる」ということです。

そして、ある命題が真ならばその対偶も真です。

よって、「ある仕訳の横断合計がゼロにならなければ、それは取引の内容を正しく記述したものではない」という命題も導き出すことができます。

私は経理業務をやっているときにこの知識をよく使います。自分の切った仕訳が正解かどうかをチェックしたいときは、その取引に関連する全ての会計主体の仕訳を考えてみて、その横断合計を求めてみればよいのです。

横断合計を求めて、それがゼロにならなかったら、自分の仕訳は間違いだと分かります。

もしかしたら簿記検定の試験でも使えるテクニックなのかもしれません。なお、ゼロになったからと言って必ずしも正解であるとは限らないことには注意してください。

 

次回予告

(´・ω・ `)<うし、ここまでで簿記の説明はおしまいや。おつかれさん。

( ゚д゚)<うい。おつかれさん。ほいだら次からMMT解説の本編スタートか?

(´・ω・ `)<うんにゃ。まだあと1つ説明しとかなあかんことがあるんよ。

( ゚д゚)<ほう、と言いますと?

(´・ω・ `)<B払いや。

( ゚д゚)<なんやそれ。しばくぞ。

(´・ω・ `)<しばくな。短気か。

( ゚д゚)<おう、そこそこな。

(´・ω・ `)<困ったやっちゃの。

( ゚д゚)<おう、そこそこな。

(´・ω・ `)<んーと、B払いは一言で説明するのはちょっと難しいんやけど、複式簿記とこれは覚えといてもらわんとMMTの説明はなかなかしんどくての。今日のところはとりあえず名前だけっちゅうことで。

( ゚д゚)<ういー。

 

 

それでは本日ここまで。
 

 

おまけ

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。今年初の更新になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

今後もこんな感じで、だいたい毎月後半に、月1くらいの更新になると思います。

さて、それでは皆さん気になってると思いますので、最近の私の朝ごはんの定番を公開しようと思います。

こちらです。どん。

www.youtube.com

最近は週末にこの動画の食べるラー油を作り置きしといて、平日の朝に卵かけご飯に乗っけて食ってます。いや、もうね、実にうまい。

よろしければお試しください。

 

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

( ゚д゚)<最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!!

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【G-1】複式簿記とは ver.3

 

目次 

 

まずは複式簿記

さて、まずは本記事で複式簿記の基礎を覚えていただこうと思います。

( ゚д゚)<なんでや。

(´・ω・ `)<んと、そもそもMMTってのは何なんかっちゅう話からしよかの。

( ゚д゚)<なんでや。

(´・ω・ `)<その方が分かりやすいからや。

( ゚д゚)<なんでや。

(´・ω・ `)<やめろっ。

( ゚д゚)<うい。

(´・ω・ `)<よし。じゃあ、説明するで。

( ゚д゚)<なんでや。

(´・ω・ `)<しばくぞ。

( ゚д゚)<うい。

(´・ω・ `)<よし。MMTってのはマクロ経済学の一派や。マクロ経済学ってのは、世の中全体の経済について、どういう仕組みになっとるか、今後はどういう仕組みにしたらええんか、ってのを研究する学問やな。

( ゚д゚)<ほんほん。

(´・ω・ `)<そういう話をするってことは、ここから先、「●●の場合、カネの動きはこんな風になります。」っていう話がたくさん出てくる。で、そのカネの動きを説明するときに、複式簿記の手法を使うのが分かりやすいんよ。

( ゚д゚)<それはきみにとっては分かりやすいかもしれんけどさ、ぼくにはボキとか言われてもおちんぷんなんじゃけど。

(´・ω・ `)<じゃけー、まずいちばん最初に説明しようて言うとんじゃ。

( ゚д゚)<なるほど、理屈が通っとるの。

(´・ω・ `)<じゃろ。

( ゚д゚)<しかしそこをいかにしてまぜっ返すのかってのがぼくの腕の見せ所なわけでして。

(´・ω・ `)<やめろっ。

( ゚д゚)<うい。

(´・ω・ `)<ほいだら、まずは複式簿記をしっかり説明して、以降は分かってもらっとる前提で遠慮なくバンバン複式簿記を使うスタイルでやってくけーの。

( ゚д゚)<ういー。

(´・ω・ `)<それに複式簿記MMT関係なしに役に立つ知識じゃけ、この複式簿記の話だけでも見ていって損は無いと思うで。

 

簿記とは

複式簿記の前に、そもそも「簿記」とは何かという話をしておきましょう。簿記とは端的に言えば、「カネの動きを記述すること」です。

「カネの動き」とは、身近なものだと、例えばこういった↓ことです。

  • 会社から給料が20万円振り込まれた。
  • 家賃を5万円振り込んだ。
  • 預金から2万円の現金を引き出した。
  • 友人から1万円を借りた。

簿記の世界では「カネの動き」のことを《取引》と呼びます。「現金の引出し」や「友人との貸し借り」のような、一般的な感覚では「取引」とは呼びそうにない行為もカネが動きさえすれば、全て「取引」に含みます。

つまり、簿記とは何か、これを噛み砕いて言えば「たくさんの取引を紙の帳票やエクセルや会計ソフト等々に書き留めて整理すること」となります。

さらに、簿記で整理したデータを取りまとめたものを《帳簿》と呼びます。簿記の最終的なゴールは帳簿を作り上げることです。

帳簿作りの主な目的は、管理会計》《財務会計》《税務会計の3つです。

これは1つの帳簿で3つ全部を同時に満たそうとする場合もありますし、目的別に複数の帳簿を作ることもあります。

但し、当ブログの目的は上記3つのどれでもなくて、MMT解説が目的ですので、当ブログで帳簿作りはやりません。個別の取引を記述するだけです。

 

単式簿記複式簿記

さて、簿記の手法には2つの種類があります。

単式簿記複式簿記です。

 

単式簿記とは

単式簿記は「何があったか」を文章で書きます。普通はその横に増減や残高も書き加えます。

さっきの例を単式簿記で書くとこう↓なります。

 

複式簿記とは

複式簿記は「何があったか」を《仕訳(しわけ)》で書きます。「仕分け」ではないので注意してください。

さっきの例を複式簿記で書くとこう↓なります。

複式簿記でも<摘要>の欄はありますが、これはあくまで補足説明に過ぎません。仕訳の本体は、次の3要素です。

  • 《借方(かりかた)》
  • 《貸方(かしかた)》
  • 金額

基本のフォーマットはこう↓です。仕訳を書く(普通は「仕訳を切る」と言います。)とは、この3つの「●●●」のところに適切な語句や数字を書き込んでいくということです。

ここでは<金額>を貸方の右側にしてますが、借方の左側にしてもいいです。好きな方に書いてください。借方と貸方の真ん中に書いてもダメではないと思います。私は見たこと無いですが。

但し、借方・貸方の左右を逆にすることはできません。必ず左が借方で、右が貸方です。

( ゚д゚)<なんでカリカタ、カシカタって言うん?

(´・ω・ `)<知らん。

( ゚д゚)<えええ。

(´・ω・ `)<知らんものは知らん。

( ゚д゚)<「左方」「右方」とかじゃなくて、わざわざ変な名前付けとるってことは、なんかそうじゃないと不都合なことがあるから、とかじゃないん?

(´・ω・ `)<いや、特に。

( ゚д゚)<えええ。

(´・ω・ `)<「左方」「右方」でも都合悪いことは何もないよ。なんならそうしてくれた方が分かりやすかったのにな。

f:id:xbtomoki:20231124064214p:image 

( ゚д゚)<なんやこのおじさん。

f:id:xbtomoki:20231219173908p:image

( ゚д゚)<なんやねんなwwww

(´・ω・ `)<訳が分からないときにぼくらの代わりに「訳が分からないよな」って言ってくれるありがたいおじさんや。

( ゚д゚)<ほー、そりゃありがてえの。

(´・ω・ `)<ま、これはもう暗記するしかない。左が借方、右が貸方。以上や。

 

勘定科目リストを作る

複式簿記による帳簿作りは勘定科目のリストを作ることから始まります。

《勘定科目(かんじょうかもく)》(略して「科目」と呼ぶこともあります。)とは、預金・現金・借入金・給与・家賃等の「何が」の具体的な中身を示すワードです。仕訳を切るときには、これらを借方・貸方に書き込むことになります。

科目リストに入れるのは帳簿の作成者が「それに関連する取引を記録・整理して、それの残高や年間合計を集計したい」と思うものだけでOKです。どうでもいいものはリストから外してもかまいません。

( ゚д゚)<リストを作る?決まったやつがあるわけじゃないってこと?

(´・ω・ `)<そういうことや。まあ「現金」とか「預金」とか「借入金」とか、そういう"定番"はあるし、それだけで事足りることが多いけどの。

( ゚д゚)<ほんほん。

(´・ω・ `)<とは言え、原則は自由やし、極端な話、「現金の残高なんかどうでもいいし、現金が関連する取引は全無視する。」って言うなら現金を科目リストから外してもええよ。

( ゚д゚)<ほんほん。

(´・ω・ `)<あと、科目の名前も自由やで。銀行預金のことを「預金」じゃなくて「預け金」っていう科目名にしてもOKやし、極端な話をしたら、「アレ」っていう名前にしてもええよ。

( ゚д゚)<そんなことするやつおるんか。

(´・ω・ `)<「アレ」はさすがに聞いたことないけど、「預かり金」と区別しやすくするために「預け金」にしとるのはときどき見るかな。

 

勘定科目の5区分

勘定科目リストができたら、全ての科目を次の5つの科目区分のどれかに分けていきます。

  • 《資産》
  • 《負債》
  • 《純資産》
  • 《費用》
  • 《収益》

例えば、「預金は資産」「借入金は負債」「給与は収益」等です。

1つの勘定科目に与えることができる区分は1つだけです。また、一度与えた区分は変更できません。

例えば「預金は資産であり、負債でもある」とか、「去年までは預金を資産科目としていたけど、今年からは負債科目とする」とかは不可です。これらをやってしまうと複式簿記は崩壊します。

( ゚д゚)<科目は自由やけど、区分の方はこの5つって決められとるん?

(´・ω・ `)<せやな。区分がこの5つなのは絶対や。

( ゚д゚)<ほんほん、ワンモアクエスチョン。

(´・ω・ `)<はいどうぞ。

( ゚д゚)<後から「あいたー、これ資産にしてもうたけど、負債にした方がよかったやん。」みたいになったらどうするん?全部やり直しか?

(´・ω・ `)<いや、ちゃんと区分の仕方にはルールがあるけー、そんなことにはならんよ。

 

勘定科目区分の決め方

何が資産か
  • 金融資産(=誰かが発行した負債)
  • 実物資産(=使ったり売ったりできる物)

この2つのいずれかに該当する勘定科目は資産です。

ただ、いきなり金融資産とか実物資産とか言われてもピンと来ないと思いますので、いまはとりあえず「カネとモノ」のことだというくらいの理解で問題ありません。一般的な簿記の教科書では資産を流動資産・固定資産・繰延資産に分けます。これとはだいぶ違う説明に見えると思いますが、MMTの理解には、また「何が資産か」という説明には、こっちの方が適切だと思います。

「カネ」とは貨幣のことです。何が貨幣であり、何が貨幣でないかは、MMTをある程度理解してもらわないとなかなか説明が難しいのですが、今はとりあえず「素朴な感覚で『お金』として捉えているもの」と考えてもらえれば問題ありません。

「モノ」とは、例えば建物・機械・車・器具・家畜・ソフトウェア…等々のことです。ソフトウェアのように実体が無いものも含みます。

 

何が負債か
  • 将来における「その負債を資産として持つ者へのカネの支払」の約束
  • 将来における「その負債を資産として持つ者の債務の消去」の約束

この2つのどちらかに該当するものは負債です。

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もちろんこの説明では訳が分からないと思います。ただ、これはさっきの「貨幣とは何か」の議論とも関わってくるので、こちらについても今はまだ説明の材料が足りていない状態です。

ここではとりあえず「将来カネの支払をしなければならないことを示す事実」くらいに理解してください。例えば、借入金や預かり金等です。

( ゚д゚)<預かり金は負債なんか?

(´・ω・ `)<カネを預かったら、いつかは返さなあかんじゃろ。

( ゚д゚)<ん?ぼくがきみから1万円預かるとするじゃろ?ぼくが手元に持っとる1万円はカネじゃろ。そりゃ資産ちゃうん?

(´・ω・ `)<きみの手元にある1万円は資産やで。ここで言っとる「預かり金」ってのは、きみの手元にある1万円のことじゃなくて、「"1万円を預かっとる"っていう事実」のことを言うとんじゃ。じゃけー、その場合、きみは1万円の資産を得て、同時に1万円の負債も抱えたことになるんじゃ。

( ゚д゚)<は?

(´・ω・ `)<まあ分かりにくいよな。慣れたらそのうち分かってくるけー、いまはそのくらいでも大丈夫や。

 

何が純資産か

「資産の合計額と負債の合計額の差額を指し示すもの」は純資産科目です。

ここでちょっと問題なのが、純資産は身近な科目の例が無くて、例えば「資本金」や「利益剰余金」なんですが、( ゚д゚)<なんやそれって感じですよね。

なので、今の段階ではとりあえず「『純資産』ってのが意味しているのは、特定の科目じゃなくて、資産と負債の差額のことなんだな」くらいの理解をしておいてください。少なくともMMTを理解する上ではそれで十分です。

 

何が費用か
  • 資産が減ったことを示すもの
  • 負債が増えたことを示すもの

この2つのどちらかに該当するものは費用です。例えば「家賃」は預金や現金(資産)の減少を示すので費用科目です。

 

何が収益か
  • 資産が増えたことを示すもの
  • 負債が減ったことを示すもの

この2つのどちらかに該当するものは収益です。例えば「売上」は預金(資産)の増加を示すので収益科目ですし、「借入金免除」は借入金(負債)の減少を示すので、これも収益科目です。

( ゚д゚)<これ、区分しようとした科目が5区分のどれにも該当せんかったらどうするん?

(´・ω・ `)<そんな科目は無い。

( ゚д゚)<絶対?

(´・ω・ `)<絶対や。カネの動きに関連するものは5区分のどれかには絶対に入る。どれにも入らん科目て、例えばどんなんよ。

( ゚д゚)<いや、パッとは思いつかんけど。

(´・ω・ `)<じゃろ。そりゃそんなもん無いからや。まー、簿記を実際にやっとるうちに、もしかしたらそんなんが見つかるかもしれんの。そんときにまた言うてきんさい。

( ゚д゚)<むう。

 

預金が必ず資産とは限らない

ここで注意していただきたいのが、それぞれの勘定科目がどの区分に該当するかは、簿記を行う人や組織(=会計主体)によって異なる、という点です。

「給与」は、家計簿上では(受け取る側なので)収益に区分しますが、一方、企業経理では(支払う側なので)費用に区分することになります。

他の例には「預金」があります。銀行預金は家計簿や企業経理では資産科目ですが、預かる側である銀行の帳簿上では負債科目になります。

 

通貨単位を選ぶ

勘定科目リストができあがったら、次は帳簿で用いる通貨単位を決めます。

これも原則としては自由で、円でもドルでもペソでも、好きなものでOK・・・なんですが、普通は居住地の通貨(日本なら「円」)を選びます。

これは一言で言うと、「そうしないとめんどくさいから」です。

 

日常業務上の問題

まず、普段の取引について仕訳を切るときがめんどくさいことになります。

「選択通貨以外の通貨(外貨)で取引をしたときは、"取引時点における為替レートを調べて、取引に使った外貨の額を選択通貨の額に換算して仕訳を切らなければいけない"」という決まりがあるからです。

自分が最もよく使う通貨を選ばないと、何度も何度も為替レートを調べて換算、というとんでもない手間がかかってしまいます。

 

税務会計上の問題

さらに、一般的に税金はその国の通貨建てで計算することを強制されます。よって、帳簿の通貨単位に居住地通貨以外を選ぶと、税金の計算でも多大な苦労をすることになります。

 

仕訳の書き方・読み方

さて、いよいよ仕訳の書き方(切り方)を説明しましょう。

複式簿記では仕訳で「何があったか」を記録します。例えば、「預金が増えて、現金が減った。」はこのような仕訳↓で示します。

【預金(資産)|現金(資産)】という仕訳が示すのは
「預金が増えた&現金が減った」です。

「預金が増えた&現金も増えた」ではないし、
「預金が減った&現金が増えた」でもないし、
「預金が減った&現金も減った」でもありません。

【預金(資産)|現金(資産)】が示すのは必ず
「預金が増えた&現金が減った」です。この仕訳はそうとしか読むことができません。

このように言えるのは複式簿記の書き方には決められたルールがあるからです。

 

借方・貸方の書き方

借方・貸方の書き方のルールは次のとおりです。

  • 資産が増えたときはその資産を借方に書く。資産が減ったときはその資産を貸方に書く。
  • 負債が増えたときはその負債を貸方に書く。負債が減ったときはその負債を借方に書く。
  • 純資産が増えたときはその純資産を貸方に書く。純資産が減ったときはその純資産を借方に書く(⇒負債と同じ)。
  • 資産が減っただけ、または負債が増えただけのときは空いている借方に費用を書きこむ。
  • 負債が減っただけ、または資産が増えただけのときは空いている貸方に収益を書きこむ。

 

仕訳の作成例

ルール説明だけではイメージが難しいと思いますので、試しに仕訳をいくつか書いてみましょう。

例えば、「預金が増えて、現金が減った」を示す仕訳は、こう↓なります。

ここで、ルールに従って仕訳を書けば、「預金が増えて、現金が減った」は必ず
【預金(資産)|現金(資産)】になることに注目してください。

そうであるからこそ、【預金(資産)|現金(資産)】は「預金が増えて、現金が減った」と読むことができるわけです。

その他の例も見ておきましょう。

 

金額の書き方

借方・貸方が埋まったら、次は<金額>欄に動いたカネの金額を書きこみます。通貨単位は既に決まっているので、「100円」のように単位まで書くことはせず、「100」と数値だけを書きます。

 

ちなみに、こんなふうに↓

借方・貸方両方の外側に金額を書きこむのが正式な作法らしいのですが、見やすくするために当ブログでは1つしか書きません。

また、説明内容的に金額が重要でない場合には、金額欄も省略して、こう↓書くことがあります。

 

複式簿記のメリット

単式簿記複式簿記を比べたときの複式簿記のメリットは、次の2つです。

  1. 取引を簡潔に、明瞭に、誤解の余地無く記述することができる。
  2. 複数の取引を簡単に合計することができる。

 

簡潔・明瞭

1.のメリットはもはや説明不要かと思います。この2つ↓を見比べてみてください。

  • (単式)「500万円を借り入れた。そのお金は預金口座に振り込んでもらって、銀行には借用書を差し入れた。」
  • (複式)【預金|借入金】500万

 

合計の容易さ

これは例えば、次の一連の取引があったとします。

  1. 給与30万円が振り込まれた。
  2. 家賃5万円が引き落とされた。
  3. 現金を3万円を引き出した。
  4. スーパーで5000円の買い物をした。

これを複式簿記で記述すると、このように↓、

仕訳ごとにそれぞれの勘定科目がいくら増減したかを書き出せるので、それを合計することで勘定科目ごとの残高を容易に算出することができます。この合計作業がいわゆる「決算」で、通常は1年ごとに行います。

単に「1つ1つの取引を紙に書き留める」というだけなら単式簿記でも事足りますが、「1年間書き溜めた取引の記録を取りまとめる」となると複式簿記が必須になることは想像に難くないかと思います。

 

動画でおさらいを

ここで中締めとして、私の簿記の師匠であるふくしままさゆきさん(私が簿記をふくしまさんの本で勉強したってだけなんですが)の簿記入門動画を見ていただきたいと思います。

私とは違ったやり方で簿記を説明されてますので、少し戸惑うかもしれませんが、実はどちらも同じことを言っています。

同じであることが飲みこめたら、もう理解度は十分だと確信してもらって大丈夫です。

www.youtube.com

 

次回予告

( ゚д゚)<中締めって、まだ説明することあるんか?

(´・ω・ `)<ここまでが普通の簿記の説明やな。会社で経理の仕事をしようっちゅうんなら、入門編としてはこんだけで十分や。けど、MMTを理解する前提知識としてはこれだけじゃあちょっと足りんのんよ。

( ゚д゚)<ほんほん…と言いますと?

(´・ω・ `)<これだけやと、「自分」とか「自社」の取引は記述できるけど、「複数の人や組織の一連の取引を第三者の視点から記述する」となるとちょっと難しいんじゃ。

( ゚д゚)<あー・・・あ?

(´・ω・ `)<ああ、すまんの。分かりにくいな。ま、ちょっと長くなってきたけー、今日のところはこの辺にしとこや。続きはまた次回じゃ。

( ゚д゚)<ういー。

 

 

それでは本日ここまで。
 

 

おまけ

お久しぶりの更新となりました。

やる気を無くしていたわけではありません。ちょっとリアル生活の方で変化がありまして、ブログを書く時間と場所を失ってたのが理由です。

がしかし、いろいろと試行錯誤の末、準備が整いましたので、タイトルも新しくして、金ピカ本を再度イチから読み直していこうと思います。

長い記事になってしまいましたが、次回更新は年明けになりますので、お正月の手持ち無沙汰にでもゆっくり読んでいただければ幸いです。では、良いお年を。

 

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

( ゚д゚)<最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!!

応援コメント、指摘コメント、お待ちしております!当ブログの拡散も大歓迎です!

よろしくお願いします!

 

10-16.実物資源の視点から見たJGPとBI

失業の嵐が吹き荒れている。最も簡単で直接的な解決策は、社会に対して生産的に貢献したいと思うすべての人が公的部門でそれなりの生活費が稼げるように、政府が保証することである。

MMT現代貨幣理論入門』kindle版 509/553pp

 

当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

 

当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

xbtomoki.hatenablog.com

 

目次 

 

本日のお題

(´・ω・ `)<ほいだらこの図を使って、

(´・ω・ `)<JGPってのはどういうことなんか、それからベーシックインカムってのはどういうことなんかを説明してこかの。

( ゚д゚)<なんでや。

(´・ω・ `)<なんとなく思いついて面白いネタになりそうやなと思ったからや。

( ゚д゚)<ほう…見せてもらおうか!!そのMMTの真髄とやらをな!!!

(´・ω・ `)<は?

( ゚д゚)<をなっっ!!!

(´・ω・ `)<なんやねんなwwww

ということで、今回のお題は、

【実物資源の視点から見たJGPとは】
【実物資源の視点から見たベーシックインカムとは】

の2本立てです。

(´・ω・ `)<よろしゅうな。

( ゚д゚)<まかしときー。

(´・ω・ `)<ちゃうちゃう。ぼくが教える側よ。

( ゚д゚)<ええっっっ!!!

(´・ω・ `)<なんやねんなwwww

 

実物資源の視点から見たJGP

[8-1]のとおり、JGP:Job Guarantee Program(就業保証プログラム)とは、

  • 働く意思がある。
  • 働く能力がある。

この2つの条件を満たす人が申し出れば、政府は必ずいつでも誰でも何人でも雇用契約を結ぶことを保証する、という政策です。(JGPによる雇用契約を結んで働く人をJGP労働者》と呼ぶことにします。)

なお、本記事はJGPの理念・目的を説明する趣旨ですので、「JGPでは具体的にはどんな仕事をするのか」といったことには立ち入りません。

 

JGPはカネの問題ではない

これに対して、一時期ツイッターではベーシックインカム(以下、「BI」と言います。)を支持する方々から

( ゚д゚)<所得を保障したいんならBIでカネだけ渡せばいいじゃないか。
( ゚д゚)<なんでそんなに労働をさせたがるのか。

といった批判が多く見られました。

これらは誤解に基づく、言ってしまえば藁人形論法みたいなもので、反論に値しません。

( ゚д゚)<誤解?JGPって「働く意思と能力がある人はみんな雇用します」ってだけのことやろ。誤解のしようなんかあるん?

(´・ω・ `)<その基本設計すら誤解されとるときもあるけど、まあそれはさすがに除外して考えよう。で、誤解しとるのは、JGPを「政府がどうやって国民にカネを渡すか」っていう政策やと考えとるところよ。

( ゚д゚)<違うんか。

(´・ω・ `)<違うな。問題はカネじゃないんよ。たしかにカネの視点で見れば、この↓とおり、政府が給与を払うのもBIを払うのも同じや。

 

(´・ω・ `)<けれども、もっかい言うけど、問題はカネじゃないんよ。JGPの本質を理解するのに必要なのは仕訳じゃなくてこっち↓や。

 

JGPの本質

結論から言いましょう。
【失業者をJGP労働者に置き換えること】
これがJGPの本質です。

 

JGPは失業を根絶する

「失業者」とは「働く意思と能力はあるのに、働く機会(雇用)を得ていない人」のことです。

一方、JGPは「働く意思と能力がある全ての人に、働く機会(雇用)を提供する政策」です。

この2つを組み合わせて考えると、JGPを実施すれば世の中からは失業者が(理屈上は)全くいなくなって、JGP労働者に置き換わることになります。つまり、JGPとは「失業の根絶」であるわけです。働く意思と能力があるのに、「でも、JGPはイヤなんよ。どうしても民間でしか働きたくないんよ。」とか「JGP?なにそれ知らんかったわー。そんなんあるんやったら何年も職無し生活なんかせんでよかったやん。はよ教えてよー。」とかいう人が出てくる可能性はあって、それを失業者としてカウントするかどうかの問題はありますが、それはいったん置いときます。

 

失業者→JGP労働者

[10-15]のとおり、「失業者」は「遊休状態のヒト資源」と捉えることもできます。なお、政府部門が利用するヒト資源は「公務員」であり、民間部門が利用するのは「民間人」です。

よって、JGPによる全ての失業者のJGP労働者への置き換えは、このような図↓で描くことが可能であるわけです。

 

JGPが必要な理由

もひとつ結論から行きましょう。

政府にはJGPを実施する責任があります。

なぜならば、政府が税を取れば、そこに一定の失業が生まれることは避けられないからです。

[10-15]のとおり、政府が税を取れば、民間部門の支出が減ります。その減った支出の中身が誰かの労働への支出であれば、そこには失業者が生まれます。

( ゚д゚)<それやったらもう税を取らんでええんちゃう?前回でいろいろ役に立つのは分かったけど、人を失業させてまでやらなあかんことでもないじゃろ。

(´・ω・ `)<いや、そういうわけにはいかんのんよ。

( ゚д゚)<なんでや。

(´・ω・ `)<税には貨幣を動かす役割があるけーの。

 

税は貨幣を動かすとは

[10-4]のとおり、税は貨幣を動かします。すなわち、政府が支出した(発行した)通貨を徴税によって回収することで、誰もが通貨を必要とするようになる(貨幣需要を創る)わけです。

ここで間違ってはいけないのは、これは単に「税は貨幣の概念が存在しない原始的な社会にそれを植え付ける力がある」というだけの話ではありません。

税が貨幣需要を創る働きには、既に貨幣化した経済においても、貨幣の秩序と円滑なやり取りを維持する効果があります。

 

なぜ通貨以外も受け取られるのか

[10-3]のとおり、世の中には通貨以外にも手形や小切手や銀行預金やPayPay等、さまざまな貨幣がありますが、政府に徴収されるわけでもないのに人々はそれらの貨幣を受け取ります。

(´・ω・ `)<さて、なぜでしょう。

( ゚д゚)<なんでかねえ。

(´・ω・ `)<なんでいっつも答える気ゼロなん?

( ゚д゚)<なんでかねえ。

(´・ω・ `)<しゃーないのー、なんでか言うたらな、手形やら小切手やらPayPayやらは銀行預金に交換してもらえることが約束されとるし、その銀行預金は通貨に交換してもらえることが約束されとるじゃろ。

( ゚д゚)<え?約束されとるとは限らんくない?

(´・ω・ `)<それぞれの発行者は約束しとるじゃろ。手形の発行者なら「将来これを銀行預金に交換します」てな。他のも同じや。そもそも約束しとるけー、それが負債・貨幣として成立しとんじゃ。もちろんその約束が絶対に果たされるとは限らんけどな。

( ゚д゚)<ああ、約束されとるって必ずそうなるって意味ちゃうくて、文字通りの「約束されとる」ってことか。

(´・ω・ `)<せや。ほいで、その約束が果たされる前提なら、どれを受け取っても実質は通貨を受け取っとるのと同じじゃろ。

( ゚д゚)<ほんほん。じゃけー、通貨以外も受け取られるわけか。

(´・ω・ `)<いえすざっつらいとや。

 

貨幣ピラミッド

つまり、貨幣にはこのような↓序列が存在しているわけです。

  1. 通貨
  2. 銀行預金
  3. 手形・小切手・PayPay・・・
  4. ツケ、住宅ローン、未支給賃金・・・

MMTではこれを《貨幣ピラミッド》と呼びます。「貨幣ヒエラルキー」や「債務ヒエラルキー」と呼ぶ人もいます。

この序列を決めるのは通貨への交換のしやすさです。すなわち、通貨への交換が容易な貨幣ほど、序列の上位に立つことになります。

 

なぜ通貨を頂点とする序列になるのか

このような序列が形づくられるのは、(政府を除き)誰でも貨幣を発行するときには、より上位の貨幣への交換を約束して発行するからです。私たちは、そうしなければ自らが発行した貨幣を誰も受け取ってくれないことを(なぜか)知っています。

政府は税によって通貨需要を創り出せるので、上位貨幣との交換の約束なしに自らの発行した貨幣(=通貨)を受け取らせることができます。だから、通貨はピラミッドの最上位に立てるわけです。

また、通貨以外の全ての貨幣に上位貨幣への交換が約束されていることは、「この序列に含まれる全ての貨幣が通貨の単位と同じ単位で発行されること」も意味します。単位の統一が貨幣のやり取りを大いに助けるのは明らかでしょう。

 

税は貨幣秩序という前提を与える

このようにして、税は貨幣の秩序(貨幣ピラミッド)を形づくり、貨幣のやり取りを円滑にして、貨幣経済の基礎を支えています。

[10-10]のとおり、貨幣経済とは、すなわち貨幣を使って仕事をやり取りすることで、支え合いを実現する社会です。

まとめると、「税は『貨幣を通じて仕事をやり取りし、互いに支え合う』という社会の仕組みに貨幣秩序という前提を与えるものである」と言えるでしょう。

 

余談:無税国家の話

(゚⊿゚)<ゼロになるまで減税すれば無税になる。政府は税を財源に支出しているわけではないから、無税でも支出できる。よって無税国家は可能。ハイロンパ!

"雑な議論"で話題になった無税国家論ですが、ここには貨幣秩序という視点が抜け落ちています。

無税国家とは税によって形づくられた貨幣秩序が存在しない世界です。

そこには、

  • 税によらない新たな秩序が生まれるのか
  • それとも無秩序になってしまうのか
  • 税による需要が無い通貨は受け取られるのか

といった様々な未知の要素があるのに、そういう考察はゼロ。言いたいことは(゚⊿゚)<ハイロンパ!だけ。
これが雑でなくて何なんですか。池戸さん(´・ω・ `)

 

結論

国民の暮らしを"良く"するために存在している政府には税を徴収する責務があります。

それは徴税が貨幣の秩序を保つために、また、[10-15]のとおり、格差是正等の問題を解決するために必要な手段であるからです。

しかし、それは一方で失業を作り出してしまいます。

多くの国民の暮らしを"良く"するために必要な税は、一方で少数の暮らしを"悪く"してしまう。

このジレンマの解決策として、MMTの中で提唱されているのがJGP(失業の根絶)です。そして、私はこのジレンマは解決するべきものであり、JGP以上の解決策は無いと思います。

であるからして、政府にはJGPを実施する責任がある、と私は考えるわけです。

 

実物資源の視点から見たBI

今度はBI(ベーシックインカム)を実物資源の視点から見てみましょう。

と、その前に、そもそもBIとはどんな制度なのかについての私の理解は次のとおりです。

  • 全国民に通貨を給付する。
  • 永久に行う。
  • 給付間隔は定期的(例えば毎月)である。
  • 金額は基本的に一定である。(長期的には見直しが行われる)

これ以外の「引き換えに既存の社会保障は撤廃するかどうか」とか、そういった話はここでは考えず、シンプルに「全国民に毎月定額を永久に給付する」という政策として捉えることにします。

そして、BIを実物資源の視点から捉えれば、BIはこのような図↓で表すことができるでしょう。

民間部門にカネを渡すわけですから、民間部門の支出が増えて、民間資源が増えて、遊休資源が減ります。つまりは、徴税と真逆の効果です。

 

JGPと比較できるものではない

まず、BIによって起こる変化とJGPによって起こる変化はこの図↓のとおり、全然違います。なので、「どちらが優れているか」という議論には意味がありません。そもそも比較対象になるものではないのです。

 

それほんとに大丈夫(´・ω・ `)?

次に、BIは徴税と真逆の効果を持ちます。これは、BIを実施したときには税が貨幣を動かせなくなってしまうかもしれない、ということです。

私がBIについて懸念することはいろいろあるっちゃあるんですが、とにかくいちばん大きいのはここです。

( ゚д゚)<どういうことや。

(´・ω・ `)<何回も言うとるけど、貨幣を稼ぐために誰かのために仕事をする、その稼いだ貨幣で誰かに仕事をしてもらう、そのやり取りがいろんなところで行われて、それで社会全体としてはみんながみんなを支え合う仕組みになっとるわけやな。

( ゚д゚)<ぼくの質問に答えい。

(´・ω・ `)<答えとる途中や。

( ゚д゚)<誰が。

(´・ω・ `)<ぼくが。

( ゚д゚)<なんで。

(´・ω・ `)<質問されたからや。ちょい黙っとけ。

( ゚д゚)<うい。

(´・ω・ `)<で、その貨幣を通じた仕事のやり取りの仕組みの基礎になっとるのが税による通貨需要の創出から形づくられる貨幣秩序、貨幣ピラミッドや。で、税が通貨需要を創れるのは、人々が「なんとかしてどこかから通貨を入手しなければならなくなるから」やったじゃろ?

( ゚д゚)<せやの。で?

(´・ω・ `)<それがBIで誰でも何もしなくても通貨が入手できるようになったらどうなるかっちゅう話や。

( ゚д゚)<おお、貨幣ピラミッドが成り立たんようになってしまうわけか。

(´・ω・ `)<せや。そうなったら、いまある支え合いの仕組みをぶち壊すことになってしまうかもしれん。まあ、とは言え、そこまでなるかどうかは給付する金額にもよるやろうし、何事もやってみらんと分からんけー、実際やってみたら何の問題もなかったりするかもしれんけどな。

つまり、私がBIについて懸念しているのは、「働くことで生活の糧を得る」という社会の基本的なルールを変革してしまうことの危うさです。「働けない人を無視するのか」とかいうツッコミはお控えください。いまここでは基本的な、世の中の大多数に適用されるルールの話をしています。

( ゚д゚)<その基本的なルールをぶち壊そう!
( ゚д゚)<働かなくても暮らせる社会にしよう!
というのがBIの理念であると思うのですが、それほんとに大丈夫(´・ω・ `)?

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おわりに

ということで、いったん本記事にて『国債乱発派のMMT解説』は完結となります。次回記事は予告どおり、ブログタイトルも変更して、いちばんはじめから、まずは「複式簿記とは」からですね。書き直していこうと考えています。

もともとはMMTを勉強し始めて、「これはノートに整理せんと無理やな」と思ってたところ、「でも紙を管理するの面倒だな。いまどきもっと便利な方法ないかな」と考えて、「ブログにしたらいいんじゃなかろうか。それならもしかしたら誰かの役に立てるかもしれんし。」と思いついて書き出したブログなのですが、思いがけずいろんな方から反応をいただきまして、いや、やってよかったなと感じております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

さて、新しいタイトルは何にしようかなあ(´・ω・ `)

 

 

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

( ゚д゚)<最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!!

応援コメント、指摘コメント、お待ちしております!当ブログの拡散も大歓迎です!

よろしくお願いします!

 

10-15.実物資源の視点から見た税

民間支出が物価の安定を脅かす危険性はあるが、政府は、インフレを寄せ付けないために思うように使える、様々な政策手段を有している。必要ならば、政府は、民間支出を冷やすために増税などの対策を講じることができ、超過需要を取り除く必要に応じて自らの支出を減らすことができる。

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当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

 

当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

xbtomoki.hatenablog.com

 

目次 

 

本日のお題

(´・ω・ `)<ほいだらこの図を使って、

(´・ω・ `)<「政府が徴税をする」ってのはどういうことなんかを説明してくで。

( ゚д゚)<なんでや。

(´・ω・ `)<みんなに知ってほしいことやからや。

( ゚д゚)<そんならもっと早よ言うてくれや。

(´・ω・ `)<何事も順序ちゅうもんがあるんじゃ。

( ゚д゚)<ほー。そーゆーもんか。

(´・ω・ `)<せや。そーゆーもんなんじゃ。

ということで、今回のお題はこちらです。

【徴税が実物資源に与える影響とは】

(´・ω・ `)<よろしゅうな。

( ゚д゚)<まかしときー。

(´・ω・ `)<ちゃうちゃう。ぼくが教える側よ。

( ゚д゚)<きみ、よー飽きひんな。

(´・ω・ `)<こっちのセリフじゃ。

 

貨幣の視点から見た税

まずは徴税に関する会計上の仕組みをおさらいしておきましょう。

仕訳はこう↓で、


図にするとこう↓です。

 

[10-4]のとおり、税は貨幣を動かします。

すなわち、政府が自身の発行した貨幣(=負債)を民間部門から徴収することで、民間部門は誰もが貨幣を必要とするようになり、経済が貨幣化します。

貨幣化した経済、つまり貨幣経済とは、[10-10]のとおり、カネを支払えば見返りに社会から仕事の成果を提供してもらえて、社会に仕事の成果を提供すれば貨幣が得られる社会です。

 

実物資源の視点から見た税

以上が貨幣の視点から見た税の役割です。

それでは、税が実物資源に対してどのような影響を与えるかを見ていきましょう。

政府が徴税を加えると、民間部門は、

  1. 保有する貨幣が減り、
  2. 支出を減らし、
  3. 民間資源の割合が減り、
  4. 遊休資源の割合が増えます。

つまり、
【民間部門による資源利用を減らし、遊休状態の資源を増やす。】
これが実物資源の視点から見た税の本質です。

 

よって、政府が同額の支出と徴税をした場合、仕訳の合計はゼロ、つまり貨幣の視点で見たときには正味の変化はゼロですが、

 

実物資源の視点で見れば、元どおりにはなっていません。この点には注意が必要です。

 

実物資源の視点から見た税の機能

[第5章]のとおり、税には「租税は貨幣を動かす」以外にも次の3つの機能があります。

  • 格差の是正
  • 需要の安定化
  • "悪行"の抑制

これらを実物資源の視点から見直してみることにしましょう。

 

格差の是正

実物資源の視点で見ると、「貧困層と富裕層の格差」とは、こういうこと↓です。

つまり、「貧困層が利用できる資源がほとんど存在しない一方で、富裕層はたくさんの資源を利用できている」という状態です。

ここで考えられる原因は、次の3つです。

  1. 富裕層の支出が多過ぎることで貧困層に利用できる資源が残っていない。
  2. 政府の支出が多過ぎることで貧困層に利用できる資源が残っていない。
  3. 貧困層が十分な貨幣を持っていないので支出できない状態にある。

よって、富裕層を狙い撃ちで増税し、貧困層が利用可能な遊休資源を作り出すことは格差是正に役立つかもしれません。

( ゚д゚)<「かもしれません」てなんじゃい。煮えきらんこと言うやっちゃの。しばくぞ。

(´・ω・ `)<しばくな。

( ゚д゚)<うい。

(´・ω・ `)<3つのうちのどれか1つだけしか起きてへんとは限らんけーの。単に遊休資源が増えただけに終わったら貧困層の救済にはならへん。

(´・ω・ `)<例えば、富裕層の支出過多と貧困層が貨幣を持ってないことが同時に起こっとったら、富裕層に増税しただけじゃ貧困層は十分な資源を利用できるようにはならへんやろ。その場合は、富裕層増税に加えて、給付金やったり、貧困層向けの減税やったりが必要になるわけよ。

 

需要の安定化

《需要》とは「人が他人の仕事の成果を欲しがったり、必要としたりする程度」と言えます。一方で、貨幣経済において他者の仕事の成果を得るには支出をしなければなりません。

これらを合わせて考えれば、「貨幣経済における需要」とは、「人々がどれだけ支出をするか」であり、【需要≒支出】("需要"と"支出"はだいたい同じ意味である)とシンプルに表現することができます。

冒頭のとおり、税は民間部門の支出を減らします。【需要≒支出】ですから、これは「税は民間部門の需要を減らす」ということでもあります。

ということは、政府は、次のようにして、税の民間部門の需要を減らす作用を利用して需要を安定化させることができるわけです。

  1. あらかじめ民間部門へいくらかの税をかけて、自然状態よりもいくらか需要が減った状態にしておく。(これは貨幣を動かすためにも必要なことです)
  2. 不景気によって需要が減ったときは、減税をして需要を増やして、それを打ち消す。
  3. 好景気によって需要が増えたときは、増税をして需要を減らして、それを打ち消す。

 

なぜ需要の安定化が必要なのか

民間部門の支出(≒需要)が増えたり減ったりするということは、実物資源の一部が稼働状態になったり遊休状態になったりする、ということですから、需要が安定化させれば、遊休状態⇔稼働状態の行ったり来たりを防ぐことになります。

(´・ω・ `)<さて、ここで問題です。

( ゚д゚)<ばちりと来んしゃーい。

(´・ω・ `)<「遊休状態のヒト資源」のことを一般的には何と呼ぶでしょう?

( ゚д゚)<失業者!

(`・ω・´)<いえすざっつらいと!てことは?

( ゚д゚)<てことは?知りません!

(`・ω・´)<元気があってよろしい!元気があるのはよろしいけれども、なにがしか答えてみてもええんちゃうかな!

( ゚д゚)<知りませんって答えました!

(`・ω・´)<あいたこりゃこりゃ!一本とられた!

( ゚д゚)<はい!じゃあ答えをどうぞ!

(´・ω・ `)<しゃーないのー。てことはな、需要が安定させれば失業者数が急に増えたり減ったりするのを防ぐことができるわけよ

( ゚д゚)<失業者数が急に増えたり減ったりしたらいかんのんか?

(´・ω・ `)<そこは[10-13]の公益の議論で決めることじゃけー、一概に良し悪しは決められんけど、労働者の人たちの立場を不安定にさせることが「良い」ことやとは、ぼくには思えんな。

( ゚д゚)<ほんほん。

(´・ω・ `)<ただ、それを防ぐことができるってのは客観的な事実じゃけ、そこは公益の議論とは別次元の話やで。

 

"悪行"の抑制

[5-5]のとおり、ここで言う"悪行"とは、殺人とか窃盗とかのリアルガチ悪行のことではありません。

( ゚д゚)<例えば?

(´・ω・ `)<よく例に出されるのは喫煙に対するタバコ税とか、飲酒に対する酒税とかやな。タバコ税とか酒税が増税されたら、それまでよりカネがかかるようになるけー、みんなタバコとかお酒を減らすようになったりするじゃろ。

( ゚д゚)<ほんほん。そのへんは悪行抑制のための税なんやな。

(´・ω・ `)<ああ、いや、それは違うな。違うっていうか、全部の税が何らかの行為を対象にしとるわけじゃけ、「●●税は悪行抑制のための税、▲▲税は悪行抑制とは無関係の税。」ってことはなくて、どんな税も何らかの"悪行"を抑制する機能を持っとるよ。

 

税が"悪行"を抑制する仕組み

全資源を次の4つに分けたとき、

  • 政府資源
  • 遊休資源
  • 悪行資源(悪行のために利用される民間資源)
  • 善行資源(悪行以外のために利用される民間資源)

 

政府が悪行に課税をすると、民間部門は悪行資源を以前と同じように利用するためには、より多くの支出をしなければならなくなります。

そのときに民間部門が取れる対応をパターン分けすると、このように↓なります。

そして、人々は思い思いにパターンA、BまたはCの対応をして、全体としては、民間資源(善行資源+悪行資源)が減り、遊休資源が増えることになります

なお、パターンBで支出を減らされる善行は具体的には様々であるのに対して、パターンAで支出を減らされる悪行の方は課税対象とされたものだけに限定されますので、政府が課税をすれば、

  • いろんな善行への支出が少しずつ減り、
  • ターゲットの悪行への支出が大きく減り、
  • それぞれの分だけ遊休資源が増えて、
  • 全体としては【民間資源が減り、遊休資源が増える】ということになる。

 

まとめ

【租税は貨幣を動かす】
これは貨幣の視点から見た税の本質であると言えるでしょう。しかし、これが税の意味・役割の全てではありません。

 

【民間資源を減らし、遊休資源を増やす。】

実物資源の視点から考えれば、税にはこのようなもう1つの意味・役割があることが見えてきます。

政府はこれを利用して、次の政策目標を実現することができます。

  • 格差是正:富裕層への課税で、貧困層が資源にアクセスしやすくなる。
  • 需要の安定化:民間部門の需要の増減を打ち消すように税を上げ下げすることで、需要を安定化させることができる。
  • "悪行"の抑制:悪行への課税で、資源が悪行のために利用されるのを抑えることができる。

 

次回予告

( ゚д゚)<おつかれさん。これにて完結やな。

(´・ω・ `)<いや、もすこしあとちょっと。

( ゚д゚)<えええ。

(´・ω・ `)<まあまあ、次がほんまに最後じゃけ。JGPベーシックインカムもこのグラフ↓で説明したら分かりやすいなと思っての。その話だけさせてや。

( ゚д゚)<そか。まあ好きにしたらええがな。

(´・ω・ `)<ういー。

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

前回記事からだいぶ更新間隔が空きましたが、ちょっと年明けからおかげさまでいろいろと忙しくしておりまして。次回はそれほど間隔は空かないと思います。とはいえ、まあ、マイペースでやらせてもらおうかなとは思っていますが。

 

それはそうと、

f:id:xbtomoki:20230310151506j:image

ねんがんのメカニカルキーボードをてにいれたぞ!

 

ということで、MX Mechanical Mini(logicool)を先月下旬に買いました。

これの左側にテンキーを置いて、

こんな配置で使ってます。テンキーは作業によっては右側に置くこともあります。

キーボードはずっと会社支給のPCに付属してたフルサイズのキーボード(Enterの右側に方向キーとかhomeキーとかのエリアがあって、そのさらに右にテンキーがあるタイプ)を使ってたんですが、

前にトラックボールマウスを買ってから[10-11おまけ]、「やっぱりええやつはええなあ」というのを感じまして、日に日に「キーボードもええやつ行っときたいのう」という気持ちが湧き上がり、

  • 75%サイズ(方向キーとかhomeキーとかも全部ギュってなってるタイプ)←フルサイズだとマウスを持とうとしたときの距離がなんか最近気にくわなくなってきまして。
  • ファンクションキーあり
  • ロープロファイル(薄型タイプ)

この条件に合うやつってことでこれに決めました。決めたというか、意外とこの条件に合うやつがこれとあと1つ(Keychron社のK3)しか見つからなくて、K3は方向キーの配置が無理そうだったので実際には選択肢なしだったんですが。

で、1ヵ月弱使っての使用感は、

  • 打ち心地:良し。とても良し。
  • 75%サイズ:キーボードからマウスが近いのはええっすわ。なんていうか、スピード感?的な?そういうやつが出ますよね。やっぱり。
  • 方向キーとかhomeキーとかも全部ギュってなってる:まだ慣れてなくて、よく打ち間違えますけど、使い始めの不慣れ具合からの1ヵ月弱で到達した慣れ上昇速度で考えると、たぶんもう2,3ヵ月くらいで克服できそう。
  • 唯一の問題点:右のctrlキーが無い。これはそこそこ不便感あります。けど、右にctrlキーがある75%サイズだとUS配列のやつしかないし、さすがにカスタムは高すぎるし・・・ま、しゃーなしかなあ。そのうち慣れるっしょ。

定価が2万円超えてるので、気軽にはおすすめはできないんですが、使ってて「ええやつ」感は間違いなくあります。よければお試しください。

 

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

( ゚д゚)<最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!!

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よろしくお願いします!

 

10-14.政府支出の本質

貨幣制度は素晴らしい創造物である。貨幣制度は、我々が公正な社会を実現するように政府を機能させるために必要な資源へのアクセスを政府に与える一方で、個人の選択をも可能にする。

MMT現代貨幣理論入門』kindle版 522/553pp

 

当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

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当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

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目次 

 

本日のお題

( ゚д゚)<前回のおさらい〜

(´・ω・ `)<まず何を公益とするかを決める。んで、やろうとしとる政策がその公益に資するかを議論する。資する政策ならやるべき、反する政策ならやらないべき。このときに重要なのは経済学よりむしろ哲学とか法学とか文化とか歴史の知識や。

( ゚д゚)<ほんほん。

(´・ω・ `)<「世の中を良くしたい」っていう気持ちが無いとか、雑談に夢中とか、そういうのはそれ以前の話やけどな。

( ゚д゚)<ほんほん。

(´・ω・ `)<んで、何らかの政策が「やるべき」っていう結論になったらそれが実際にやれるかどうか、つまり実行可能性の議論に進むことになる。経済学、ていうかMMTに出番が回ってくるのはここからや。

( ゚д゚)<ほんほん。

(´・ω・ `)<MMTが示すのは、まず「実行可能性の議論にはカネは全く関係ない。なぜなら▲ボタンをポチポチするだけだから。」ってことやな。

( ゚д゚)<ほんほん。

(´・ω・ `)<それともうひとつ、MMTは【何が政府支出の実行可能性を制限するものなのか】ってことも説明しとる。

( ゚д゚)<ほんほん。と言いますと?

(´・ω・ `)<その辺はまた次回にしよか。

( ゚д゚)<ういー。

(´・ω・ `)<今日はちゃんとおさらいしてくれたの。

( ゚д゚)<おうよ。必殺おさらい人と呼んでくれ。

ということで、今回のお題は、

【政府はどのような財政政策を行うべきか】

からの派生のこちらになります。

【政府支出の実行可能性を制限するものは何か】

(´・ω・ `)<よろしゅうな。

( ゚д゚)<まかしときー。

(´・ω・ `)<ちゃうちゃう。ぼくが教える側よ。

( ゚д゚)<そか。そしたらきみは何をする側なんや。

(´・ω・ `)<教える側やて言うとるじゃろ。

( ゚д゚)<ほう。そかそか。そしたらきみは何をする側なんや。

(´・ω・ `)<どうした。眠たいんか。

 

結論

まずはもう一度結論をおさらいしておきましょう。

政府は、それが公益に資する限り、実行可能な全ての財政政策を実施するべきである。

実行可能であるかどうかは、その政策に必要な実物資源が利用可能かどうかで決まる。

よって、財政政策に関する議論に必要な論点は、

  • 公益に資するか。
  • 実物資源は足りるか。

この2つだけである。

(´・ω・ `)<ほいで、【政府支出の実行可能性を制限するものは何か】の方も結論からやっとこうかの。

( ゚д゚)<ういうい。

 

実行可能性に関する結論

「政府支出の実行可能性を制限するもの」とは、実物資源である。政府支出がカネによって制限されることは決して無い。

例えば、公益に資すると評価したダム建設事業が何らかの理由で「実行不可能である」とき、その理由は、

  1. 作業員が足りないから
  2. 重機が足りないから
  3. コンクリートが足りないから
  4. カネが足りないから

これらのうちの1.〜3.であることは考えられますが、4.が理由になることはありません。[10-5]のとおり、政府はいくらでもカネを支払うことができるからです。*1

(´・ω・ `)<カネが政策実行の制限にならんことはもうこれ以上詳しく説明せんでも分かるじゃろ?

( ゚д゚)<うい。そらそうやろな。政府はいくらでも支出できるけーの。

(´・ω・ `)<ざっつらいと。ほいだら、【政府支出は実物資源によって制限される】に的を絞ってこれの詳しいところを説明してくで。

( ゚д゚)<ういー。

(´・ω・ `)<ほいだらやってこかー。

( ゚д゚)<ういー。

 

支出の本質

[10-10]のとおり、貨幣経済とは、カネを支払えば見返りに社会から仕事の成果を提供してもらえて、社会に仕事の成果を提供すれば貨幣が得られる社会です。

以降、A払い・B払いを区別せず「カネを支払うこと」をまとめて《支出》と呼ぶことにします。

 

実物資源とは

ここで、社会が仕事の成果を提供するには、当たり前ですが、仕事を遂行する必要があり、仕事を遂行するには次の要素が必要になります。

  • 仕事をする人
  • 製品の材料
  • 仕事に使う道具や消耗品

すなわちヒトとモノです。これら「仕事を遂行するために必要なヒトやモノ」のことを《実物資源》と呼びます。つまり、「仕事をする」とは、「実物資源を利用する」ことであると言えます。

 

支出と実物資源

ここでもうひとつ、仕事の成果は必ず支出をした人が受け取るとは限りません。

例えば、友人に食事をおごれば、「支出をして、他者に仕事をお願いするけど、その仕事の成果は自分以外の誰かに譲る」ということになります。

つまり、支出は仕事の成果と直接結びついているわけではなく、「貨幣経済では、支出をすれば仕事の成果を得られる。」というのは、実のところ完全には正確な言い方ではありません。

貨幣経済では、支出をすれば誰かに仕事をさせることができる。」または「貨幣経済では、支出をすれば、支出した分だけ実物資源の利用方法を決める権利を得られる。」というのがより正確な表現です。*2

 

政府支出の本質

実物資源は、いくらでも作れるカネとは違い、数や量に限りがあります。よって、社会が実行できる仕事の量には限りがあります。

但し、人は休めばまた働けますし、材料は搬入を待てば調達されますので、時間経過によって実物資源は回復するものと考えられます。なので、これもより正確に表現するなら「一定期間に実行できる仕事の量には限りがある」となるでしょう。

 

政府支出の効果

ところで、貨幣経済には政府も参加することができます。政府が支出をすれば、一部の実物資源の利用方法を政府が決めることになります。

 

用語の整理

ここで、以降の説明を読みやすいものにするために用語とついでに図を整理しておきましょう。

「政府が利用方法を決める資源」のことを「政府資源」、同様に「民間資源」、「人々」は「民間部門」、「利用方法が決められておらず、利用されていない資源」は「遊休資源」と呼ぶことにします。

 

政府支出の限界

さて、ということは、「政府が支出を増やす」とは、政府がより多くの実物資源の利用方法を決定するということであり、これを言い換えれば、民間資源または遊休資源であった資源を政府資源に置き換えるということです。

 

よって、極端なことを言えば、政府が際限なく支出を増やし続ければ、いつかは全ての民間資源と遊休資源が政府資源に置き換わってしまいます。

 

そして、この「これ以上は政府が利用方法を決められる実物資源が無い、支出する対象が消失してしまっている状態」が「政府支出の限界」です。

この状態では政府がいくら支出を増やしても何も起きません。政府はいくらでも支出できるので、ここからさらに支出を増やそうと思えば増やせますが、いくら増やしたところで何も起こすことはできません。

 

政府支出の現実的な限界

但し、実際にはここに至るもっと前の段階で民間部門が悲鳴を上げることになるでしょう。

実物資源にはヒトとモノがありますが、ひとまずヒトについて考えてみます。例えば、政府が公務員を増やすために好待遇を約束して大量に中途採用の募集を行ったとしましょう。

民間部門で働いていた人々が次々と公務員に転職していきます。あらゆる会社から1人、また1人と社員が減っていきます。社員の半分もいなくなれば廃業寸前でしょう。

好待遇を求めて辞めていった社員に戻ってきてもらうためには、会社は政府以上の好待遇を提示しなければなりません。政府が提示した条件が月給50万であったなら、会社は月給60万を提示することになるわけです。

これはもちろん辞めた社員を連れ戻すのではなく、遊休資源(=失業者)を雇って欠員を補充する場合でも同じです。また、他社も同じく政府に社員を奪われています。そこに競争が生まれたら、もしかすると60万では済まないかもしれません。

さらにこの人件費アップが会社の商品価格に転嫁されたときには物価が上昇します。この現象は一般に"インフレ"と呼ばれます。これは「あらゆるインフレはこのようにして起こる」という意味ではありません。インフレが発生する原因・きっかけ・経路には様々なものが考えられます。これはそれらのうちの1つに過ぎません。

 

実物資源の視点から見た政府支出

つまり、政府支出の仕組みはこのような↓ものであることは間違いありませんが、

 

政府支出の本質はそこではありません。政府支出の本質を捉えるには【実物資源】の視点に立つ必要があります。つまり、政府支出の本質とは「民間資源または遊休資源もしくはその両方を政府資源に置き換えること」です。

これは、政府支出には必ず民間部門の実物資源へのアクセスを阻害してしまうという悪影響が伴うことを意味します。

だとすれば、世の中を良くするために存在する政府には支出に際して常にその悪影響を考慮する責任があると言えるでしょう。

よって、政府が自身の責任を果たすためには、政府は[10-13]の公益に関する議論で支出を肯定する結論を出したとしても、それだけで支出を決定することはできません。必ずその次のステップとして、「その支出によって民間資源・遊休資源が減ることを民間部門は許容できるか」を議論することが求められます。

 

まとめ

  • 仕事とは「実物資源を利用すること」である。
  • 支出とは「支出先に仕事をさせること」であり、それはつまり「実物資源の利用方法を決めること」ということである。
  • カネを支払うこと自体はいくらでもできるが、実物資源には限りがあるので、"いくらでも仕事をさせる"ことはできない。
  • 支出を増やすことは「限りある実物資源のうち、支出者が利用方法を決める分の割合を増やすこと」である。
  • 政府が支出を増やせば、政府資源が増えて、民間資源・遊休資源が減る。
  • 政府は"世の中を良くする"ことを目的として支出をするならば、民間資源・遊休資源の減少という悪影響を十分に考慮した上で支出の是非を判断するべきだ。

これは「政府支出は悪いものだ」「政府支出はできるだけ少ない方が良い」という意味ではありません。

公益に資する支出がやはり公益に資するものであることは間違いありません。但し、政府支出には必ず民間資源・遊休資源の減少という悪影響が伴うので、【公益に資することだけをもって、「政府はその支出を行うべきだ」とは言えない】ということです。

以上を端的に言い表せば【政府支出の実行可能性を制限するものは実物資源である】となり、政府はいくらでもカネを支払うことができることを併せて考えれば、次の結論に至ることになります。

「政府支出の実行可能性を制限するもの」とは、実物資源である。政府支出がカネによって制限されることは決して無い。

 

そして、これを[10-13]の内容とまとめて考えれば、このように↓なります。

政府は、それが公益に資する限り、実行可能な全ての財政政策を実施するべきである。

実行可能であるかどうかは、その政策に必要な実物資源が利用可能かどうかで決まる。

よって、財政政策に関する議論に必要な論点は、

  • 公益に資するか。
  • 実物資源は足りるか。

この2つだけである。

 

次回予告

( ゚д゚)<おつかれさん。これにて完結か?

(´・ω・ `)<いや、あとちょい。この図を使って、

(´・ω・ `)<税と実物資源の話、それから実物資源の観点から見たときにJGPってのは何なのかって話をしときたいんよ。たぶんそれでおしまいかの。

( ゚д゚)<そかそか。

(´・ω・ `)<せやせや。

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

おそらく本記事が今年最後の更新になると思います。今年も1年間お世話になりました。

来年は年明けに第10章の最後の記事をアップして、その後はまた[1-1]から(イントロダクションからだったら[0-1]からですね。いや、「複式簿記とは」から書き直したいな。)、また書いていこうと考えています。そのタイミングで、ときどき誤解を招いているらしい『国債乱発派の〜』というタイトルも変更の予定です。

それでは、また来年もよろしくお願いいたします。

(゚⊿゚)( ゚д゚)< 良いお年を! >(´・ω・ `)

 

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

( ゚д゚)<最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!!

応援コメント、指摘コメント、お待ちしております!当ブログの拡散も大歓迎です!

よろしくお願いします!

 

*1:これ以外にも「建設する技術が無い」等の理由も考えられます。技術は後述の《実物資源》に含める考え方もありますが、話がややこしくなり過ぎるので、本記事では含まずに考えることにしました。

*2:「あれはウソでした」というわけではなく、「貨幣経済という社会の仕組みは貨幣を媒介に仕事の成果を持ち寄り分け合う仕組みだ」ということを説明するには、「貨幣経済では、カネを支払えば誰かに仕事をさせることができる。それによってカネを支払った人はその仕事の成果を得られる」だと、無駄にくどくて分かりにくくなるので、過不足無い表現にしたということです。