経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

10-16.実物資源の視点から見たJGPとBI

失業の嵐が吹き荒れている。最も簡単で直接的な解決策は、社会に対して生産的に貢献したいと思うすべての人が公的部門でそれなりの生活費が稼げるように、政府が保証することである。

MMT現代貨幣理論入門』kindle版 509/553pp

 

当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

 

当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

xbtomoki.hatenablog.com

 

目次 

 

本日のお題

(´・ω・ `)<ほいだらこの図を使って、

(´・ω・ `)<JGPってのはどういうことなんか、それからベーシックインカムってのはどういうことなんかを説明してこかの。

( ゚д゚)<なんでや。

(´・ω・ `)<なんとなく思いついて面白いネタになりそうやなと思ったからや。

( ゚д゚)<ほう…見せてもらおうか!!そのMMTの真髄とやらをな!!!

(´・ω・ `)<は?

( ゚д゚)<をなっっ!!!

(´・ω・ `)<なんやねんなwwww

ということで、今回のお題は、

【実物資源の視点から見たJGPとは】
【実物資源の視点から見たベーシックインカムとは】

の2本立てです。

(´・ω・ `)<よろしゅうな。

( ゚д゚)<まかしときー。

(´・ω・ `)<ちゃうちゃう。ぼくが教える側よ。

( ゚д゚)<ええっっっ!!!

(´・ω・ `)<なんやねんなwwww

 

実物資源の視点から見たJGP

[8-1]のとおり、JGP:Job Guarantee Program(就業保証プログラム)とは、

  • 働く意思がある。
  • 働く能力がある。

この2つの条件を満たす人が申し出れば、政府は必ずいつでも誰でも何人でも雇用契約を結ぶことを保証する、という政策です。(JGPによる雇用契約を結んで働く人をJGP労働者》と呼ぶことにします。)

なお、本記事はJGPの理念・目的を説明する趣旨ですので、「JGPでは具体的にはどんな仕事をするのか」といったことには立ち入りません。

 

JGPはカネの問題ではない

これに対して、一時期ツイッターではベーシックインカム(以下、「BI」と言います。)を支持する方々から

( ゚д゚)<所得を保障したいんならBIでカネだけ渡せばいいじゃないか。
( ゚д゚)<なんでそんなに労働をさせたがるのか。

といった批判が多く見られました。

これらは誤解に基づく、言ってしまえば藁人形論法みたいなもので、反論に値しません。

( ゚д゚)<誤解?JGPって「働く意思と能力がある人はみんな雇用します」ってだけのことやろ。誤解のしようなんかあるん?

(´・ω・ `)<その基本設計すら誤解されとるときもあるけど、まあそれはさすがに除外して考えよう。で、誤解しとるのは、JGPを「政府がどうやって国民にカネを渡すか」っていう政策やと考えとるところよ。

( ゚д゚)<違うんか。

(´・ω・ `)<違うな。問題はカネじゃないんよ。たしかにカネの視点で見れば、この↓とおり、政府が給与を払うのもBIを払うのも同じや。

 

(´・ω・ `)<けれども、もっかい言うけど、問題はカネじゃないんよ。JGPの本質を理解するのに必要なのは仕訳じゃなくてこっち↓や。

 

JGPの本質

結論から言いましょう。
【失業者をJGP労働者に置き換えること】
これがJGPの本質です。

 

JGPは失業を根絶する

「失業者」とは「働く意思と能力はあるのに、働く機会(雇用)を得ていない人」のことです。

一方、JGPは「働く意思と能力がある全ての人に、働く機会(雇用)を提供する政策」です。

この2つを組み合わせて考えると、JGPを実施すれば世の中からは失業者が(理屈上は)全くいなくなって、JGP労働者に置き換わることになります。つまり、JGPとは「失業の根絶」であるわけです。働く意思と能力があるのに、「でも、JGPはイヤなんよ。どうしても民間でしか働きたくないんよ。」とか「JGP?なにそれ知らんかったわー。そんなんあるんやったら何年も職無し生活なんかせんでよかったやん。はよ教えてよー。」とかいう人が出てくる可能性はあって、それを失業者としてカウントするかどうかの問題はありますが、それはいったん置いときます。

 

失業者→JGP労働者

[10-15]のとおり、「失業者」は「遊休状態のヒト資源」と捉えることもできます。なお、政府部門が利用するヒト資源は「公務員」であり、民間部門が利用するのは「民間人」です。

よって、JGPによる全ての失業者のJGP労働者への置き換えは、このような図↓で描くことが可能であるわけです。

 

JGPが必要な理由

もひとつ結論から行きましょう。

政府にはJGPを実施する責任があります。

なぜならば、政府が税を取れば、そこに一定の失業が生まれることは避けられないからです。

[10-15]のとおり、政府が税を取れば、民間部門の支出が減ります。その減った支出の中身が誰かの労働への支出であれば、そこには失業者が生まれます。

( ゚д゚)<それやったらもう税を取らんでええんちゃう?前回でいろいろ役に立つのは分かったけど、人を失業させてまでやらなあかんことでもないじゃろ。

(´・ω・ `)<いや、そういうわけにはいかんのんよ。

( ゚д゚)<なんでや。

(´・ω・ `)<税には貨幣を動かす役割があるけーの。

 

税は貨幣を動かすとは

[10-4]のとおり、税は貨幣を動かします。すなわち、政府が支出した(発行した)通貨を徴税によって回収することで、誰もが通貨を必要とするようになる(貨幣需要を創る)わけです。

ここで間違ってはいけないのは、これは単に「税は貨幣の概念が存在しない原始的な社会にそれを植え付ける力がある」というだけの話ではありません。

税が貨幣需要を創る働きには、既に貨幣化した経済においても、貨幣の秩序と円滑なやり取りを維持する効果があります。

 

なぜ通貨以外も受け取られるのか

[10-3]のとおり、世の中には通貨以外にも手形や小切手や銀行預金やPayPay等、さまざまな貨幣がありますが、政府に徴収されるわけでもないのに人々はそれらの貨幣を受け取ります。

(´・ω・ `)<さて、なぜでしょう。

( ゚д゚)<なんでかねえ。

(´・ω・ `)<なんでいっつも答える気ゼロなん?

( ゚д゚)<なんでかねえ。

(´・ω・ `)<しゃーないのー、なんでか言うたらな、手形やら小切手やらPayPayやらは銀行預金に交換してもらえることが約束されとるし、その銀行預金は通貨に交換してもらえることが約束されとるじゃろ。

( ゚д゚)<え?約束されとるとは限らんくない?

(´・ω・ `)<それぞれの発行者は約束しとるじゃろ。手形の発行者なら「将来これを銀行預金に交換します」てな。他のも同じや。そもそも約束しとるけー、それが負債・貨幣として成立しとんじゃ。もちろんその約束が絶対に果たされるとは限らんけどな。

( ゚д゚)<ああ、約束されとるって必ずそうなるって意味ちゃうくて、文字通りの「約束されとる」ってことか。

(´・ω・ `)<せや。ほいで、その約束が果たされる前提なら、どれを受け取っても実質は通貨を受け取っとるのと同じじゃろ。

( ゚д゚)<ほんほん。じゃけー、通貨以外も受け取られるわけか。

(´・ω・ `)<いえすざっつらいとや。

 

貨幣ピラミッド

つまり、貨幣にはこのような↓序列が存在しているわけです。

  1. 通貨
  2. 銀行預金
  3. 手形・小切手・PayPay・・・
  4. ツケ、住宅ローン、未支給賃金・・・

MMTではこれを《貨幣ピラミッド》と呼びます。「貨幣ヒエラルキー」や「債務ヒエラルキー」と呼ぶ人もいます。

この序列を決めるのは通貨への交換のしやすさです。すなわち、通貨への交換が容易な貨幣ほど、序列の上位に立つことになります。

 

なぜ通貨を頂点とする序列になるのか

このような序列が形づくられるのは、(政府を除き)誰でも貨幣を発行するときには、より上位の貨幣への交換を約束して発行するからです。私たちは、そうしなければ自らが発行した貨幣を誰も受け取ってくれないことを(なぜか)知っています。

政府は税によって通貨需要を創り出せるので、上位貨幣との交換の約束なしに自らの発行した貨幣(=通貨)を受け取らせることができます。だから、通貨はピラミッドの最上位に立てるわけです。

また、通貨以外の全ての貨幣に上位貨幣への交換が約束されていることは、「この序列に含まれる全ての貨幣が通貨の単位と同じ単位で発行されること」も意味します。単位の統一が貨幣のやり取りを大いに助けるのは明らかでしょう。

 

税は貨幣秩序という前提を与える

このようにして、税は貨幣の秩序(貨幣ピラミッド)を形づくり、貨幣のやり取りを円滑にして、貨幣経済の基礎を支えています。

[10-10]のとおり、貨幣経済とは、すなわち貨幣を使って仕事をやり取りすることで、支え合いを実現する社会です。

まとめると、「税は『貨幣を通じて仕事をやり取りし、互いに支え合う』という社会の仕組みに貨幣秩序という前提を与えるものである」と言えるでしょう。

 

余談:無税国家の話

(゚⊿゚)<ゼロになるまで減税すれば無税になる。政府は税を財源に支出しているわけではないから、無税でも支出できる。よって無税国家は可能。ハイロンパ!

"雑な議論"で話題になった無税国家論ですが、ここには貨幣秩序という視点が抜け落ちています。

無税国家とは税によって形づくられた貨幣秩序が存在しない世界です。

そこには、

  • 税によらない新たな秩序が生まれるのか
  • それとも無秩序になってしまうのか
  • 税による需要が無い通貨は受け取られるのか

といった様々な未知の要素があるのに、そういう考察はゼロ。言いたいことは(゚⊿゚)<ハイロンパ!だけ。
これが雑でなくて何なんですか。池戸さん(´・ω・ `)

 

結論

国民の暮らしを"良く"するために存在している政府には税を徴収する責務があります。

それは徴税が貨幣の秩序を保つために、また、[10-15]のとおり、格差是正等の問題を解決するために必要な手段であるからです。

しかし、それは一方で失業を作り出してしまいます。

多くの国民の暮らしを"良く"するために必要な税は、一方で少数の暮らしを"悪く"してしまう。

このジレンマの解決策として、MMTの中で提唱されているのがJGP(失業の根絶)です。そして、私はこのジレンマは解決するべきものであり、JGP以上の解決策は無いと思います。

であるからして、政府にはJGPを実施する責任がある、と私は考えるわけです。

 

実物資源の視点から見たBI

今度はBI(ベーシックインカム)を実物資源の視点から見てみましょう。

と、その前に、そもそもBIとはどんな制度なのかについての私の理解は次のとおりです。

  • 全国民に通貨を給付する。
  • 永久に行う。
  • 給付間隔は定期的(例えば毎月)である。
  • 金額は基本的に一定である。(長期的には見直しが行われる)

これ以外の「引き換えに既存の社会保障は撤廃するかどうか」とか、そういった話はここでは考えず、シンプルに「全国民に毎月定額を永久に給付する」という政策として捉えることにします。

そして、BIを実物資源の視点から捉えれば、BIはこのような図↓で表すことができるでしょう。

民間部門にカネを渡すわけですから、民間部門の支出が増えて、民間資源が増えて、遊休資源が減ります。つまりは、徴税と真逆の効果です。

 

JGPと比較できるものではない

まず、BIによって起こる変化とJGPによって起こる変化はこの図↓のとおり、全然違います。なので、「どちらが優れているか」という議論には意味がありません。そもそも比較対象になるものではないのです。

 

それほんとに大丈夫(´・ω・ `)?

次に、BIは徴税と真逆の効果を持ちます。これは、BIを実施したときには税が貨幣を動かせなくなってしまうかもしれない、ということです。

私がBIについて懸念することはいろいろあるっちゃあるんですが、とにかくいちばん大きいのはここです。

( ゚д゚)<どういうことや。

(´・ω・ `)<何回も言うとるけど、貨幣を稼ぐために誰かのために仕事をする、その稼いだ貨幣で誰かに仕事をしてもらう、そのやり取りがいろんなところで行われて、それで社会全体としてはみんながみんなを支え合う仕組みになっとるわけやな。

( ゚д゚)<ぼくの質問に答えい。

(´・ω・ `)<答えとる途中や。

( ゚д゚)<誰が。

(´・ω・ `)<ぼくが。

( ゚д゚)<なんで。

(´・ω・ `)<質問されたからや。ちょい黙っとけ。

( ゚д゚)<うい。

(´・ω・ `)<で、その貨幣を通じた仕事のやり取りの仕組みの基礎になっとるのが税による通貨需要の創出から形づくられる貨幣秩序、貨幣ピラミッドや。で、税が通貨需要を創れるのは、人々が「なんとかしてどこかから通貨を入手しなければならなくなるから」やったじゃろ?

( ゚д゚)<せやの。で?

(´・ω・ `)<それがBIで誰でも何もしなくても通貨が入手できるようになったらどうなるかっちゅう話や。

( ゚д゚)<おお、貨幣ピラミッドが成り立たんようになってしまうわけか。

(´・ω・ `)<せや。そうなったら、いまある支え合いの仕組みをぶち壊すことになってしまうかもしれん。まあ、とは言え、そこまでなるかどうかは給付する金額にもよるやろうし、何事もやってみらんと分からんけー、実際やってみたら何の問題もなかったりするかもしれんけどな。

つまり、私がBIについて懸念しているのは、「働くことで生活の糧を得る」という社会の基本的なルールを変革してしまうことの危うさです。「働けない人を無視するのか」とかいうツッコミはお控えください。いまここでは基本的な、世の中の大多数に適用されるルールの話をしています。

( ゚д゚)<その基本的なルールをぶち壊そう!
( ゚д゚)<働かなくても暮らせる社会にしよう!
というのがBIの理念であると思うのですが、それほんとに大丈夫(´・ω・ `)?

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おわりに

ということで、いったん本記事にて『国債乱発派のMMT解説』は完結となります。次回記事は予告どおり、ブログタイトルも変更して、いちばんはじめから、まずは「複式簿記とは」からですね。書き直していこうと考えています。

もともとはMMTを勉強し始めて、「これはノートに整理せんと無理やな」と思ってたところ、「でも紙を管理するの面倒だな。いまどきもっと便利な方法ないかな」と考えて、「ブログにしたらいいんじゃなかろうか。それならもしかしたら誰かの役に立てるかもしれんし。」と思いついて書き出したブログなのですが、思いがけずいろんな方から反応をいただきまして、いや、やってよかったなと感じております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

さて、新しいタイトルは何にしようかなあ(´・ω・ `)

 

 

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

( ゚д゚)<最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!!

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