2-2.租税が貨幣を動かす その1
今や先の質問－なぜ誰もが政府の「法定不換通貨」を受け取るのか？－に答えることができる。それは、政府の通貨が、政府に対して負っている租税などの金銭債務の履行において、政府によって受け取られる主要な(たいていは唯一の)ものだからである。租税の不払いに対して課される罰(刑務所行きもある)を避けるために、納税者は政府の通貨を手に入れる必要があるのだ。
『ＭＭＴ現代貨幣理論入門』kindle版 120/553pp
当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。
当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。
まずは設例から
先日、カフェ屋さんに行ったんですよ。ほいでコーヒーを注文したんです。私はブラックコーヒー派なんですけど、ミルクと砂糖とスプーンも出てきて、そこはちょっとしゃーしいなと思ったんですが、コーヒー自体はとてもおいしくて、550円を払って店を出ました。
さて、ここで問題です。
「なぜカフェ屋さんは550円を受け取ってくれたのでしょうか？」
この問いは、2通りの解釈が可能です。
解釈1：なぜ"円"を受け取るのか
仮に為替相場が1ドル110円だったとします。
おそらく、私が差し出したものが550円ではなく、私のおいなりさんであったなら、カフェ屋さんは「それじゃ困るよ」と言ったでしょう。
なんか間違えましたね。もとい、
おそらく、私が差し出したものが550円ではなく、私のおいなりさん5ドルであったら、カフェ屋さんは「それじゃ困るよ」と言ったでしょう。
なぜカフェ屋さんは550円なら喜んで受け取るのに、5ドルは受け取らないのでしょうか？
解釈2：なぜ"貨幣"を受け取るのか
こっちの解釈は、より根本的な問いになります。
カフェ屋さんは、コーヒー(とミルクと砂糖とスプーン)を提供しました。そして私は、550円を提供しました。
売り手は財またはサービスを提供し、買い手は貨幣を提供する。
これは貨幣経済の基本ルールです。
誰もが当たり前と思っているであろうこのルールに疑問を持ってみましょう。
なぜ、このルールに誰もが従うのでしょう。言い換えれば、なぜカフェ屋さんは550円を喜んで受け取るのでしょうか？
今回は2本立て
本記事では、
解釈1：「なぜ"円"を受け取るのか」こっちに対する回答だけを示します。
解釈2：「なぜ"貨幣"を受け取るのか」については次回記事で説明します。
結局は円が必要になる
さて、なぜカフェ屋さんは550円なら喜んで受け取るのに、5ドルは受け取らないのでしょうか？
その答えは、記事タイトルの"租税が貨幣を動かす"にあります。
私が払った550円のうち、本体価格は500円で、残りの50円は消費税です。
政府は、カフェ屋さんに50"円"を納めることを強制します。もしこれを納めなければ、場合によっては刑務所行きです。
カフェ屋さんが前科持ちになるのを回避するためには、ドルがいくらあっても意味がありません。どうしても50"円"が必要なのです。
ですから、もしカフェ屋さんが私から550円ではなく、5ドルを受け取った場合、カフェ屋さんは、結局は後々それを円に両替しに行かなければなりません。
さすれば、カフェ屋さんは
- 両替に行く時間のコスト
- 両替手数料のコスト
- 為替相場変動のリスク
こういった余計なものをいっぱい抱えてしまうことになります。
これは、コーヒー代の支払のときだけに起きることではありません。日本には源泉徴収と年末調整っていうクソみたいな制度があって、いや日本だけじゃないみたいなんですけど、ほんとにめんどくさいし、会社にとって1円の得にもならないし、いい大人が「ゼイキン？ヨクワカンナイ」とか言い出しちゃうし、ちょっと間違えたら税務署から「貴社の税務処理に間違いがあるようです。どこが間違っているか当ててみてください。」とかいう謎のクイズメールが来るし、
いかん、脱線しとる。
カフェ屋さんが店員さんに給与を支払うときだって、カフェ屋さんは給与から所得税を天引きして、"円"で納めなければなりません。もし、その給与がドルだったら？いったんドルのままでざっくり天引きしといて、両替して、納税して、余りを円で渡す？
頭がおかしくなりそうです。考えたくもありません。
租税が貨幣を動かす
時間と手数料はただのコストで、カフェ屋さんはこんなものを欲しがりません。
為替リスクは、もしかしたらカフェ屋さんにボーナスをくれるかもしれませんが、ただのコストになる確率も同じだけありますし、そもそもカフェ屋さんは、たぶんそこで儲けることを狙っていません。
つまり、カフェ屋さんは代金をドルで受け取っても、ロクなことがありません。
だから、「カフェ屋さんは550円なら喜んで受け取るのに、5ドルは受け取らない」のです。
日本に住んでいる限り、金額の多寡はあれども、誰もが必ず政府に税を納めなければなりません。そして政府は"円"で納めることを強制します。
その結果、私たちは日本国内の取引を"円"で行うようになります。それが最も便利で合理的だからです。
これが「租税が貨幣を動かす」の意味その1です。
それでは本日ここまで。
おまけ
このマンガ、なかなか核心を突いとると思う pic.twitter.com/OkAyVMtszj
— xb (@xbtomoki) 2020年9月21日
何気なくツイートしたらバズりました。
いや、自慢したいわけではなくて、この演説のことを思い出しまして、ラストの17:30〜の所なんですけど、
山本太郎「偽善者と呼ばれて」 大分市 街頭記者会見 全国ツアー九州編
それで、なんでバズったの？と聞かれても、「たまたま」としか答えられないんですよ。
一応、ちょっとは気を使いましたよ。あんまり字数が多いと受けないだろうな、とか。他人様のマンガなんで勝手な解釈を書くのはやめとくかな、とか。
でもバズった理由は間違いなく、「たまたま」なんです。
マンガの写真になんかフワフワした言葉を乗っけただけですから。何も特別な所なんかありません。
ちょっと話が変わりますが、菅さんが総理になれた理由だって、「たまたま」だと思うんですよ。安倍さんが退陣したときに、なんかちょうど派閥の折り合いがいいポジションにいたからでしょう。もちろん、いろいろがんばってたことはあるんでしょうけどね。
総理大臣さえ「たまたま」で決まるんです。いわゆる"勝ち組"の人なんて、みんな「たまたま」そこにハマっただけなんじゃないかなあ。
パチンコって無数の玉のうち、ほんの一部だけがアタッカーに入って、そのうちのさらに一部だけが大当たりになりますよね。
その大当たりを引いた玉が特別な玉だとは、ぼくには思えないんですよね。
日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。
私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^
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