経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

まずはざっくりと-MMT概論

まずはMMTをざっくりと

この記事ではMMTのざっくりとした全体像を説明します。

 

当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。

複式簿記とは? - 国際乱発派のMMT解説

 

MMTとは

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MMTとはModern Money Theoryの略で、

日本語訳は"現代貨幣理論"です。

大きなくくりとしては、経済学なのですが、仏教にも浄土真宗やら日蓮宗やら、いろんな派閥があるように、経済学にもいくつか派閥があって、MMTはその中の1つです。

 

MMTは主流派?異端?

現在、経済学の世界でいわゆる"主流派"と呼ばれる派閥は、"新古典派"です。MMTは、新古典派を根本的に誤っていると批判するので、特に日本の主流派からは蛇蝎の如く嫌われているようです。"異端"とか"トンデモ"とか言われることが多いです。

しかし、私は主流派とMMTの両方の主張を把握した上で、以下の点で比較して、完全にMMTの方が正しい理論であるという結論に至りました。

論理的な正しさ

主流派の説明には、全く現実味がない前提・または明確に誤りである理論が用いられています。

例えば、"ホモエコノミクス"という前提:「人間は行動選択をするとき、『どれを選べば自分の財産が最大になるか』だけを基準にする」・・・そんなわけがないでしょう。もちろん、ときと場合によってはそういうこともありますよ。でも、いつもそんな基準で行動選択するなら、なんでこんなに多くの人が結婚、子育てをしますか?多くの人は何らか趣味を持ってますけど、それはお金を稼ぐためでしょうか?

MMTには、こういう意味不明な前提はありません。全ての主張は現実のデータ、事実から出発しています。

実際のデータとの整合性

主流派の説明には実際のデータと噛み合わないものがいくつもあります。例えばこんなの…

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主流派は消費税に大した影響はない、とずっと言い続けてきました。10%に上げる直前、土井丈朗さんはGDPで+0.4%程度でプラスをキープできるだろうと言ってました。

でも実際は-7.1%でした。

f:id:xbtomoki:20200510113541j:image出典:19年10~12月期GDP改定値、年率7.1%減に下方修正 :日本経済新聞

 

MMT派の藤井聡先生は、消費税増税は日本経済に壊滅的な影響を与える。そもそも消費税は百害あって一利なし、廃止するべきだと主張されています。

また、土井氏が言う"消費税に大した影響が無い"という主張は現実のデータと噛み合わないことも藤井先生は明確に説明しています。

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実際、グラフから明らかなように、消費税率を上げるたびに消費の伸びは(当たり前なんですが)抑制されました。その影響は、毎日毎日・あらゆる消費の場面で現れます。リーマンショック東日本大震災は一時的に大きな影響を与えましたが、消費税は全体として、それらとは比べ物にならないほどの悪影響を日本経済に及ぼしています。

 

提案している政策の妥当性

例えば、このニュースに対する見解

https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20200509-00000013-jnn-bus_all

 

主流派なら、こう言うでしょう。

"この借金を返済するためには、将来、増税や歳出削減をしなければならない。これらは国民の負担を強いることになるが、財政破綻を避けるためには、みんなで我慢するしかない。"

 

MMT派なら、こう言います。

"全く問題無い。むしろ政府支出は、これでも全く不足している。政府の財政が破綻するリスクは存在しないのであるから、国民の助けになる支出を躊躇する意味は無い。国民全員がコロナ自粛を強いられている状況下では、生活の不安を抱かずに休業できるように、さらに多くの現金給付を行うべきだ。"

そして主流派の主張にこう反論します。

"借金してカネを用意して配り、その後、増税して配ったカネを回収する?そんなことして何になる?"

"そもそも「国の借金」という言葉が正確じゃない。「政府の借金」だ。政府と国民は経済主体として、全く別のものである。なので政府の借金を国民1人あたりで考えても意味が無い。企業の借金を考えるとき、社員1人あたりの金額でいくらなのか、そんなこと考える人がいたらどう思う?その数字に何の意味があるんだってツッコミいれるだろ。"

"さらに言えば、政府の借金は清算する必要が無い。延々と借り換え、新規発行を続け、残高が増え続けていくのが普通である。そして政府の借金は経済成長の源泉であり、これを消していくということは経済成長を阻害し、国民を貧困化させていく政策である。現に世界中で政府の借金を減らそうとしているのは日本だけであり、世界中で経済成長が完全に停滞しているのも日本だけである。"

"「国の借金」などというわけのわからん言葉を勝手に作って、それにこだわって日本国民全員で貧しくなろう、仕方がないんだよ、なんていう主張はどうかしてるとしか言いようがない。"

"正しい貨幣観に基づく政策によって、誰も苦しまずに、全国民を貧困から救うことができる。MMTは国民全員を救う方法を模索する。一方、主流派は、政府が財政破綻とかいう幽霊と戦うために、どの国民を犠牲にするべきか、また、どうやって犠牲にするべきか、そんな議論をしている。"

文字数がアンバランスで、蛇足的なのも含まれてて読者を誘導する気マンマンですが、ま、そこはご愛嬌ということで・・・説得力があるのはどちらでしょうか?

 

経済学って難しいんでしょう?

経済学といえば、

こういうのとか

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こういう感じのイメージでしょうか

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当ブログではこういうのは使いません。こういうのを理解してなくてもMMTは理解できます。必要な前提知識はこちらの記事に書いたものだけです。

複式簿記とは? - 国際乱発派のMMT解説

難解な数式やグラフは必要ありません。

 

MMTのあらすじ

まずは、詳しい内容の説明に入る前に、ここでMMTとはどういった理論なのかをざっと説明すると、以下の疑問について説明しているものです。

  • "貨幣"とは何か?
  • 貨幣はどこから生まれてどこへ消えていくのか?
  • 政府の財政はどんな仕組みなのか?
  • 政府の財政に日銀はどう関連しているのか?
  • 政府の財政赤字・債務残高にどういう意味があるのか?
  • 金融政策が経済にどんな影響を与えるのか?
  • インフレと失業率との間にどんな関係性があるのか?
  • 為替の固定相場制・変動相場制はそれぞれどんな意味があるのか?
  • 貿易黒字または貿易赤字は経済にどんな影響を与えるのか?

難しそうでしょう?でも大丈夫です。実際の中身はそんなに構えるほどのものではありません。

私でさえMMTを理解できました。きっと誰でも理解できます。

少しずつ噛み砕いて説明していきますから、ゆっくり理解してください。

 

MMTの4つの主張

MMTで分かることのうち、特に私が重要だと思うのは次の5つです。

  • 政府は税を徴収して、その後にカネを支出しているわけではない。実際の順番は逆だ。政府はカネを支出をして、その後に支出の一部を税の名の下に徴収している。
  • 日本政府がいわゆる"財政破綻"(非自発的な国債のデフォルト)に陥る可能性はゼロである。
  • 日本政府が財政政策を決定するときに"税収高"や"国債残高"は、指標としては全く意味が無い。ここで用いるべき指標は"インフレ率"と"国民の供給能力"である。
  • 政府の財政収支が赤字であるとき、政府以外の経済主体の収支を合計すれば、それは必ず黒字になっている。
  • 税が果たしている主な役割は次の3つである。なお、財政収支を黒字にするために増税するのは馬鹿げている。
  1. 貨幣に貨幣としての価値を持たせる
  2. 偏在する富を徴収してバランスを取る
  3. 景気を安定化させる

 

それでは今日はこのあたりで・・・また次の記事でお会いしましょう。

最後に、私が尊敬する京都大学院の藤井聡教授がどういった方なのかがよく分かるこちらの動画をぜひご覧ください。

https://youtu.be/1GfzyD92J2A

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最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^