ワイマールのハイパーインフレが単に政府の「紙幣印刷」によって生じたと言うのは、明らかに単純すぎる。
当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。
当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。
こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。
当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。
また、本記事の作成では、こちらの記事も参考にしました。
目次
前回のおさらい
まずは前回のおさらいから行きましょう。
今回も前回と同じく、貨幣の金(カネ)と、貴金属の金(ゴールド)がややこしいので、貨幣の方は「カネ」、貴金属の方を「金」と書き分けます。
( ゚д゚)<なんで外貨建て債務があるとハイパーインフレになるん?
(´・ω・ `)<外貨建て債務があったら必ずハイパーインフレになるわけちゃうよ。ワイマールでハイパーインフレが起きた仕組みはこんな感じよ。
( ゚д゚)<たしかに外貨建て債務は、原因っていうか、きっかけくらいの感じやな。そしたらハイパーインフレの原因は何やったん?
(´・ω・ `)<直接の原因は、政府が《金購入→マルク安→賃上げ→物価高》っていう一連の流れへの対応策に《猛烈な支出拡大》を選んでしまったことや。
【政府が高く買うから価格が上がる】
→【価格が上がったから政府が高く買う】
→【政府が高く買うから価格が上がる】
→・・・の無限ループが出来上がったわけやな。
( ゚д゚)<でもそれは大元・根本の原因じゃないって言うてたな。
(´・ω・ `)<おう。ほいじゃあ、そこから再開しよか。
本日のお題
ということで、本日のお題は、こちらです。
【ワイマールにおけるハイパーインフレの根本原因は何だったのか】
( ゚д゚)<よろしゅう!
供給能力が土台である
(´・ω・ `)<早速やけど、結論から行こか。
( ゚д゚)<ほう、珍しいの。
(´・ω・ `)<そこから先の話もいっぱいあるでの。ポイントはここや。
一方で、当時のワイマールは、国内の供給能力が低く、国内需要を満たすための一定の輸入が避けられない状況でした。
9-1.外貨建て債務とハイパーインフレ その1 - 国債乱発派のMMT解説
もしも、当時のワイマールに十分な供給能力があり、輸入に頼らなくても内需を満たすことができていれば、輸入品は贅沢品に過ぎず、それの価格が上がっても、生活物資全体の価格が上がることはありませんので、マルク安になって、それでおしまいです。賃金も物価も上がりません。
(´・ω・ `)<やっぱ、供給能力が経済の大元っちゅうか土台なわけよ。敗戦もあって、その土台となる供給能力が弱っとったワイマールの経済に連合国が賠償金っていう負荷をドカンと乗っけたもんやから壊れてもうたわけや。
( ゚д゚)<ほんほん。そういや、[6-6]でも、「ギリシャの財政破綻の大元は、ギリシャの供給能力の低さや」て言うてたな。それに、[7-1]でも「供給能力が弱くなると、主権通貨国でいられなくなるよ」て言うてたな。いろんな、それも結構重大な問題の原因になるってことは、やっぱそれが《土台》やからなんか。
(´・ω・ `)<いえす!ざっつらいと!
30年間自由競争を続けた結果…
供給能力は、その国の社会経済の土台です。
供給能力の弱さは、主権通貨国の地位を危うくし、ハイパーインフレや財政破綻のリスクを大きくし、国民生活を貧しくします。
なので、国民生活を守る責務を負う政府は、国内の供給能力をできる限り高めるような経済政策を選択するべきであると言えるでしょう。
(´・ω・ `)<ここまでは主流派もMMTも意見の相違は無いと思うんやけど・・・
(゚⊿゚)<供給能力を高めるためには・・・そうだね!自由競争だね!
( ゚д゚)<なんですぐそーなるかね、きみは。
(゚⊿゚)<自由競争は全てを解決するからだ!ハッハッハーッ!さて、自由競争を促すためには・・・規制緩和!富裕層優遇!政府支出削減!法人税減税!ん?減税?いかん、クニノシャッキンガー!代わりに消費税上げとくか。しゃーなしやな。
この主流派の主張に30年間従い続けてきた結果がこちらです。
( ゚д゚)<日本だけ、ぜんっぜん増えてへんやん。
(゚⊿゚)<そんなわけない!詐欺グラフだ!
( ゚д゚)<あ?どこがどう詐欺なんか言うてみ。
(゚⊿゚)<なんで1990年基準なんだ!恣意的だぞ!
( ゚д゚)<じゃあ、2000年基準をどうぞ。
( ゚д゚)<大して変わらんじゃん。
(゚⊿゚)<じゃあじゃあ!なんで比率で見るんだ!恣意的だぞ!生の値で見せてみろ!
( ゚д゚)<増えてるかどうかを見たいんやから、どこかを基準にして何倍になっとるかを見た方が分かりやすいやんけ。どーせ生データじゃあ計算貨幣がバラバラで比べられへんからドル換算せないかんし、そしたら為替変動が入り込むから余計分かりにくくなるで。まあ、そこまで言うなら、はいどうぞ。
( ゚д゚)<ほらー、見づらいー。
(゚⊿゚)<おかしいぞ!なんかズルしてるだろ!なんで日本代表のエースとクローザーと4番とセカンドがいるのに最下位なんだ!マエケンはそろそろ戻ってこい!
( ゚д゚)<何の話や。
自由競争が供給能力を伸ばす?
そもそもなんですが、自由競争で供給能力が高まることなんか無いんじゃないでしょうか。よく「自由な競争で生産性向上を促して、うんたらかんたら・・・」とか言う人がいますが、あれはいったいどういう理屈でそう言われてるのか。
競争による供給能力向上というと、こういうイメージなんでしょうが、
実際に起きてるのはこういうことでしょう。生き残った企業の伸びが、脱落する企業分のマイナスを超えない限り、トータルの供給能力は増えません。そもそも"競争による伸び"なんてのが実在するのかすら怪しいもんです。
私は、「自由競争こそが成長のエンジンだ!」という意見には懐疑的です。この2つ↓、どっちの方がより国内全体の供給能力を向上させるでしょうか。
(゚⊿゚)<いちばん出来の良い米を作った農家さんには賞金10億円を出しましょう!でも優勝者以外の田んぼは、全部つぶします!生き残るために、がんばって競争してください!
(´・ω・ `)<全国の農家さん!みんなで品種改良運動をやりましょう!政府がちゃんと参加者全員の所得を保障しますから、思い切ってチャレンジしてください!ええやつができたら、みんなでシェアしましょうね!
これは推測レベルで断言はしきらんのですが、自由競争は「誰がいちばん強いのか」を見えやすくするだけで、別に競争が供給能力を強くしてるわけではないんじゃないでしょうか。
日本とワイマールの違い
( ゚д゚)<あれ?でも日本だって食料自給率低いし、ガソリンとか100%輸入やん。円安で輸入品価格が上がったら困るのはいっしょやろ。ワイマールと何が違うん?
(´・ω・ `)<いちばんの違いは、特に自動車なんやけど、日本には供給能力が有り余っとる輸出産業があることや。それがあるけー、もし円安になっても、そしたら自動車が外国にバシバシ売れるようになる、バシバシ売れたら円高になる、ほいだら元どおりよ。
( ゚д゚)<ほんほん。ワイマールにはそーゆーのが無かったから、マルクが下がったら、そのまま下がりっぱなしやったっちゅうことか。
(´・ω・ `)<せやな。逆に、もしワイマールにそーゆー産業があったら、放っといたらマルク高になり過ぎてしんどかったのが、金購入でむしろバランスが取れとったかもしれん。
紙幣は原因ではない
主流派は、ワイマールのハイパーインフレを「たくさん紙幣を刷ったことが原因だ」と、このように↓説明しますが、
(゚⊿゚)<ワイマール政府が紙幣を大量に刷って、貨幣流通量が爆増したから、ハイパーインフレになったんや!MV=PT!どや!
これは間違いです。
少なくともワイマールのハイパーインフレには当てはまりません。
何が間違いか
冒頭で《金購入→マルク安→賃上げ→物価高》という流れを説明しました。
ここで、ワイマール政府が紙幣を刷るタイミングは、次の3つです。
- 賠償債務のために金を買うとき
- 公務員の賃金を支払うとき
- 民間の製品を買い上げるとき
これらのタイミングでの紙幣発行量は、上記の流れが起こるたびに増えます。
- マルク安→マルク建ての金価格上昇→紙幣発行量増加
- 公務員賃上げ→紙幣発行量増加
- 物価上昇→紙幣発行量増加
(´・ω・ `)<おかわりいただけるだろうか。
( ゚д゚)<私にもいただけるだろうか。
逆なんですよ。
「たくさん紙幣を刷ったこと」は、ハイパーインフレの原因ではなく、結果なんです。
ハイパー謎理論
【紙幣増刷→ハイパーインフレ】
こんな因果関係は存在しません。
【供給能力の弱さ→何らかのきっかけ→ハイパーインフレ→紙幣発行量増加】
これが正しい因果関係の流れです。
主流派経済学は、これ以外にも、
(゚⊿゚)<不況の原因は財政赤字だ!
(゚⊿゚)<政府支出増には税収増が必要だ!
こーゆー【事が起きた後の現場検証で見つけた"パッと目につきやすいもの"に飛びつき、それを原因と決めつけたものの、実はそれは原因ではなく結果であった。】という間違いを延々と繰り返してきました。そして「間違ってますよ」と指摘されても絶対に認めませんでした。
( ゚д゚)はい、捜査一課・・・なに!?殺人!?すぐに現場に向かう!
・
・
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( ゚д゚)<ここが事件現場か・・・これはっ!被害者が血だらけだ!分かったぞ!この大量の血が被害者の死因だ!間違いない!
(´・ω・ `)<なんでやねんwwwww
主流派の「紙幣増刷がハイパーインフレの原因」説は、これと言ってることは同じです。彼らは因果関係を逆に捉えてしまっているだけではなく、"供給能力の弱さ"という真犯人を見えなくしてしまっています。
その結果、生まれたのが、
(゚⊿゚)<紙幣の発行量が限界を超えるとハイパーインフレになるかもしれないから、普段から紙幣の発行量を抑えるためにとにかくできるだけ緊縮しておくのが良いんだ。緊縮財政は政府の市場への影響力を弱めるから自由競争を促す。そしたら供給能力も高まって一石二鳥だ。
とかいう1から10まで間違った謎理論です。
ハイパーインフレの原因は、紙幣発行量ではありません。供給能力の弱さです。
そして自由競争は供給能力を高めるとは限らないし、緊縮財政は明らかに供給能力を弱くします。主流派の謎理論が示しているのは、ハイパーインフレへの最短ルートです。
もうね、訳分かってないなら黙れよ、とは言わんけど、せめて「私、実は訳分かってなくて、いまから言うことは、当てずっぽうなんですけどね…」って断ってから言ってほしい(´・ω・ `)
でも、ここまで害悪撒き散らされると黙れって言いたくなってしまう・・・( ゚д゚)
おまけ
気になる記事がありましたので、ツッコミを入れていきたいと思います。
ブログ更新:民営化の否定や「脱成長」論の誤謬。市場や経済はみんなが得できる「プラスサムゲーム」である https://t.co/n3mjBkalC2
— 音喜多 駿💉💉(参議院議員 / 東京都選出) (@otokita) 2021年9月6日
Twitter上で埼玉維新のブルファイターこと中野たかゆき・蕨市議会議員 @TaKaNaKa_one 民営化を巡って熱い闘いを繰り広げているので、参戦します。
勝手ながら要約すると、
- 民営化アンチは、経済や市場を【誰かの得は誰かの損】という《ゼロサムゲーム》だと思っているから、金儲けは悪だと思ってしまう。
- しかし、産業革命によって、経済や市場は、【誰かが得しても、誰も損しない】という《プラスサムゲーム》に転換した。柿埜真吾氏もそう言ってる。
- だから民営化によってどんどん金儲けをしてもらった方が、世の中の"得"がどんどん増えて、社会全体が豊かになる。
ツッコミ編
とにかくですね・・・ふんわり"得"とか"損"とか言われてますけど、それって具体的には何のことを言ってるんですかね。そこが恐ろしくふんわりしとるから、記事全体がふわふわーっとしとって、何ともつかみどころが無いんですよ。わざとなんでしょうけど。
損益計算書の黒字赤字のことだったら、産業革命で転換なんかしてませんよ。昔からずーっと、いまでもゼロサムです。どちら様か存じませんが、柿埜真吾さんにも教えてあげといてください。
ちょっと脱線しますが、「プラスサムに転換したんだ」と言いたいのであれば、ちゃんと疑いようの無い原理原則から論述をスタートして、そこから合理的に論理を展開して、「プラスサムに転換したんだ」に導いてください。それをすっ飛ばして「■■先生がそう言ってますから、そうなんです」はあまりに不誠実な態度ではないかと思います。
で、戻りますと、プラスサムじゃないわけだから、【民営化してどんどん儲けてもらえば、みんなハッピー】理論は、前提が間違っていますので、成り立ちません。
ハイ論破(´・ω・ `)
ついでに・・・何個かツイート晒してますけど、「金儲けは悪だから反対」とか誰も言ってないですよ。
日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。
私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。
( ゚д゚)<最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!!
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よろしくお願いします!