経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

2-5.様々な取引とその仕訳

従って、一国の(閉鎖)経済を全体として捉えるならば、純金融資産は合計するとやはりゼロになる。

『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 138/553pp


当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

  

当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。

MMT現代貨幣理論入門

MMT現代貨幣理論入門

 

 

前説

今回はだいぶ具体的な話になります。

いろいろな経済活動(取引)を仕訳として表してみる回です。

ということで、申し訳ありませんが、今回は簿記が分からない方は置いてきぼりになってしまいます。その場合は、先に上記の複式簿記の解説記事を読んでいただければと思います。

 

企業から家計への支払

まずは企業から家計への支払です。ここでは代表例として、労働賃金の支払を用います。

労働者(家計)が働いて、月に1回の給料日に銀行振込で企業が給与を支払うときの仕訳から見ていきましょう。企業と労働者は同一銀行に口座を持っているものとします。

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銀行間振込

A社がB社から請求を受けて、A社の■銀行の口座から、B社の▲銀行の口座にお金を振り込むときの仕訳です。これが意外となかなかややこしいプロセスになっています。

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税納付

企業・家計が政府から課税を受けて、それを納めるときの仕訳です。上記の銀行間振込がちょっと変形したような形です。

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政府支出

政府が企業に業務を発注して、代金を支払うときの仕訳です。全体としては"金融"純資産の増減はありませんが、企業が政府に納品した実物資産(成果)は、GDPとして計上されるとともに、公共財として国民の暮らしに役立てられます。

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まとめ

いかがだったでしょうか。恐ろしくつまらない記事ですね。まあ、たまにはこういうのも悪くないんじゃないでしょうか。 

とはいえ、このままではあんまりなので、ついでに気づいていただきたいことを2点挙げておきます。

 

動いているのは数字だけ

見返していただくと、全ての取引に"現金"が一度も登場していません。つまり、現代の取引決済は、全てネットワーク回線上で電子的に行うことが可能になっています。

このことからも、貨幣の本質は実体のない無限に存在しうるデータなのであって、実体のある有限な商品等ではないことが分かります。

 

マクロ会計恒等式の確認

今回挙げた4つ全ての取引の金融純資産の部分だけを抜き出してみると、

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全ての取引において、どこかで金融純資産が増加した分と同じだけ別のどこかで減少が起きていて、全体としての収支はゼロです。また、政府部門の純資産が増加したときには、必ず民間部門が純資産を減らしており、その逆についても同じことが言えます。

つまり、下記の記事で説明したマクロ会計の恒等式

政府部門収支+民間部門収支+国外部門収支=0

は、現実と矛盾せず、やはり正しいんだということが確認できますね。

xbtomoki.hatenablog.com

  

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

もうおなかいっぱいだと思いますので、デザートを用意しました。あと3つ、重要な取引の仕訳を紹介します。

銀行への現金預け入れ

企業・家計が銀行に現金を預けて、さらに銀行がその現金を日銀に持ち込んだときの仕訳です。市中銀行現金|銀行預金という資産|負債の取引があり、ここで銀行預金という貨幣が発行されているのがポイントです。

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銀行融資

銀行が企業・家計に貸し付けを行い、企業家計が借りたカネを即座に同じ銀行に預け入れたときの仕訳です。

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国債発行

政府が国債を発行して市中銀行の日銀預金を政府預金として吸い上げる取引の仕訳です。ここでは国債という貨幣が生まれています。

また、これだけを見ると、どんどんこれが続いたら市中銀行の日銀預金が枯れ果ててしまいそうですが、そうはならないことを前々回のおまけで説明しました。

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日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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