財務省口座がFRBにとって負債だとすれば、この口座への流出入は準備預金の残高に影響を与える。例えば、財務省の支出は銀行の準備預金残高を増加させ、租税の受領は残高を減らす。通常、銀行システムの準備預金の増減は翌日物金利に影響を与える。そのため、財務省のオペレーションは、誘導目標レートの設定・維持に関するFRBの金融政策オペレーションと切り離すことができない。
当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。
当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。
目次
日銀の買いオペ・売りオペ
過去に政府が発行して銀行に売った国債を、日銀が銀行から買い上げることを"買いオペレーション"(買いオペ)と言い、その逆を"売りオペレーション"(売りオペ)と言います。実際には、日銀と銀行で直接やり取りするわけではなく、国債市場を通じて取引されますが、本質には影響ないので、直接買い上げるイメージでも構いません。
買いオペの仕訳
前回にも説明しましたが、"貨幣は資産|負債の取引の記録"ですので、資産|負債の仕訳があるところには必ず貨幣発行があるわけですが、買いオペのプロセスには日銀に 資産|負債 の仕訳がありますので、貨幣が発行されています。ここで発行されている貨幣は日銀預金です。
ちなみに、このプロセスは[3-1]で説明した企業・家計が銀行に現金を預け入れるプロセスにそっくりです。銀行への現金預け入れはこちらです。
ね?そっくりでしょ?
だからどうしたって聞かれたら何もないんですけどね。
売りオペの仕訳
こっちでは日銀に負債|資産の仕訳があり、日銀預金が消滅しています。そして、現金引き出しとの類似が見られます。
金利への影響
[3-4]で翌日物金利は、日銀預金利息 < 翌日物金利 < 基準貸付金利、となることを説明しました。翌日物金利の上限・下限は、日銀がコントロールしているわけです。
さて、翌日物金利は、日銀預金利息~基準貸付利率の間を上がったり下がったりするわけですが、これはどういうときに上がって、どういうときに下がるのでしょうか?
まずはデータを確認
まずは、データを確認しましょう。2000年からの翌日物金利の推移はこちらです。
2010~2015あたりが微妙に日銀預金利息 > 翌日物金利 になっとるんですが、それ以外の部分はしっかりと、日銀預金利息 < 翌日物金利 < 基準貸付金利 になっています。
現在、いわゆるマイナス金利政策によって、銀行は日銀預金を増やし過ぎると、その増やし過ぎた分の日銀預金利息が-0.1%になります。つまり、預金者が利息を払ってもらうのではなく、逆に利息を取られます。
その結果、いまの翌日物金利は-0.05%くらいになっています。貸す側が金利を払っているわけですね。日銀預金として持っておくと-0.1%の金利が取られるので、それ以下であれば、利息を払ってでも誰かに借りてもらった方が得だからです。
日銀預金残高と翌日物金利の関係
それではデータが確認できたところで、本題にいきます。
銀行が翌日物市場へ日銀預金を借りに行くのは、手持ちの日銀預金が不足してしまったときです。なので、何らかの理由で多くの市中銀行が潤沢に日銀預金を持つようになると・・・
こういった仕組みが働いて金利が下がります。日銀預金保有残高が減れば、これが逆に働くので、翌日物金利は上がります。
【銀行の日銀預金保有残高が増える(減る)→翌日物金利が下がる(上がる)】
買いオペ・売りオペと翌日物金利の関係
ここで、買いオペでは日銀預金が発行されて、売りオペでは日銀預金が消滅することを思い出してください。 そして銀行の日銀預金保有残高と翌日物金利には上記の関係がありました。
つまり、
よって、日銀は、翌日物金利を下げる目標を立てたときには、買いオペを行い、逆に上げるときには売りオペを行えば、その目標を達成できるということになります。
翌日物金利は日銀の掌の上
とすると、ですよ。
日銀は、翌日物金利について、その上限・下限の決定権を持っていて、さらにその上限・下限の範囲内で上がるか下がるかの決定権も持っている。
ということになるわけですから、日銀には翌日物金利をいかようにでもコントロールする権限と能力を(本来は)持っていることになります。翌日物金利は日銀の掌の上っちゅうことですわ。
異次元緩和とは
「アベノミクスだー!」ってはしゃいでた頃に"異次元緩和"とか"黒田バズーカ"とか"QE"とか言われてたのは何だったのかと言いますと、要するに"超巨額の買いオペ"です。バカみたいに買いオペしまくって銀行の日銀預金を増やしまくったんです。
安倍政権発足の2012年の40兆から、それまではほぼ横ばいだったのが、どんどん増えて2020年には430兆になっています。それと完全に並行して日銀の国債保有残高も増えています。「買いオペではこの2つが同時に増える」と上で説明したとおりです。
その結果、銀行は日銀預金が不足するということがなくなったので、翌日物市場からは借り手がいなくなり、翌日物金利はダダ下がりとなり、少々買いオペ・売りオペをしたくらいでは、ピクリともしなくなりました。
上記で日銀は買いオペ・売りオペで翌日物金利をコントロールできる、と言いましたが、実は安部さんのおかげで、その仕組みは現在のところ機能不全状態になっています。
なんで安部さんはそんなことしたのかって?一言で言えば「政府が貨幣と経済の仕組みを理解してないから」なんですけど、もうちょっと言うと「銀行の日銀預金が増えると景気が良くなる」という謎理論を信じちゃったからです。
長くなってしまうので詳しいことはまた今度にしましょう。
おまけ
このデータの2010~2015あたりが日銀預金利息 > 翌日物金利になっとった理由は、いろいろ調べましたが分かりませんでした。日銀の買いオペが影響してるのは間違いないと思いますが、なんで預金利息より低いところまで下がったのか・・・
過去に例が無いほど日銀預金残高があふれかえって、さすがに損するとは分かっていても、パニック起こして放置しとくわけにいかない空気になったから・・・?そんなに銀行ってバカかなあ・・・?
誰かご存じの方がいらっしゃいましたら、ご教示いただければありがたいです。
日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。
私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。
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