経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

3-3.銀行の役割 その3 (引出・振込・納税)

銀行の総資産と総負債が、各々400ドルになっていることに注目しよう。銀行は200ドルの貨幣をまさに創造したのだ。

MMT現代貨幣理論入門』kindle版 186/553pp


当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

  

当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。

MMT現代貨幣理論入門

MMT現代貨幣理論入門

 

 

おさらい

まずは前々回・前回の内容をおさらいしておきます。

xbtomoki.hatenablog.com

  • 銀行への預金行為の実質は銀行に貨幣を貸し付ける行為である。だから銀行は預金に利息を支払う。

  • 銀行預金は銀行の負債であって、「要求されたら、同額の現金通貨を支払う」という約束の証拠である。

  • マンキューは超スタンダード。
 

xbtomoki.hatenablog.com

  • 銀行融資とは、銀行が新たな貨幣を発行する(誕生させる)行為である。その貨幣は融資した銀行に預けられて、"銀行預金"になる。
  • 銀行は融資を行うにあたって、元手や原資といった何か"先立つもの"を用意する必要はない。
  • マンキューはワンダーランド。

 

預かり・融資以外の仕事

銀行屋さんは忙しい仕事です。貨幣を預かる、貨幣を貸し出す、それ以外にも日々、こんな業務も処理してくれています。

  • 現金引き出し
  • 預金振り込み
  • 納税の仲介

これらには共通点があるので一気に仕訳を見ていきましょう。

なお、ここでいう"振込"は他銀行口座への振込を考えます。自銀行内の振込はサザエさんの口座残高を減らして、マスオさんの残高を増やすだけなので解説は必要ないでしょう。

 

現金引出・他行振込・納税仲介

 

現金引出

顧客が現金を引き出すときの仕訳はこちらです。

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これは簡単ですね。特に解説の必要も無いと思います。

 

他行振込

A銀行の顧客のサザエさんが、タラちゃんのB銀行の預金口座にカネを振り込むときの仕訳はこちらです。ちょっとややこしいです。

ここでは、分かりやすくするために、サザエさんがタラちゃんに仕送りをするのを想定しています。

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他行振込では、カネの動きはA銀行とB銀行の間だけで完結せず、日銀が絡みます。

サザエとタラだけを見れば、振込額の分だけ、サザエの銀行預金が減って、タラの銀行預金が増える、ただそれだけなので、日銀をはさむ必要は一見なさそうですが、

  • A銀行は"サザエの銀行預金"という負債が減っている(利益を得ている)。
  • B銀行は"タラの銀行預金"という負債を増やしている(損失を受けている)。
  • 顧客の決済を手伝っただけでAが利益を得て、Bが損失を受けるのはフェアでないので、その分だけAがBに日銀預金を支払ってこれを清算する。

この最後の清算作業が必要なのでA銀行とB銀行がともに口座を持っている日銀が絡む必要が生まれます。

 

納税の仲介

顧客が自分の銀行預金で税を納めるときの仕訳はこちらです。他行振込が分かれば問題なく理解できると思います。

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政府は日銀に口座を持っているので、日銀がさっきの他行振込のB銀行の役割を兼ねています。政府は他行振込のときのタラちゃんに相当します。

 

3つの取引に共通すること

現金引出・他行振込・納税仲介の全てに共通することは"銀行の日銀預金が減る"ということです。(他行振込では振込元のA銀行の日銀預金が減り、振込先のB銀行の日銀預金が増える。)

 

融資は何も無い所から貨幣を誕生させるものですから、先立つものは不要です。しかし、これらの取引には元手となる銀行の日銀預金が必要になります。

 

元手の日銀預金が無かったら?

それでは、銀行が経営難だったり、もしくは一時的な資金繰り悪化で、例えば顧客の引き出し要求に応じるための日銀預金が不足してしまったとき、銀行はこのピンチをどう凌ぐでしょうか。

 

方法は2つあります。

  1. 日銀から借りる。
  2. 他銀行から借りる。

 

日銀から借りるパターンは銀行融資と同じ仕組みです。

他銀行から借りるパターンは、"無担保コール翌日物"なんていう大げさな名前が付いてます。これは銀行融資よりも個人間の貸し借りに似ています。また、この翌日物には金利に関する重要な構造があります。

次回は、このあたりを説明しようと思います。

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

本日のおまけは大阪市廃止の阻止達成について少しばかりコメントをしようと思います。

 

ひとまず、何にしても安心しました。選挙速報で思わずガッツポーズしたのなんて初めてです。

私の勝手な推測ですが、維新の思惑はこんなところだったんでしょう。

大阪市の市税として集まってくるカネをもっと都合のいいように使いたい。例えば橋下さんに講演料の名目で横流しとか。しかし、さすがに市税を大阪市の事業以外には使えない。そうだ!ええこと考えた!大阪市を廃止して、市の税収を府に吸い上げて、どれがどれだかよく分からないカネにしてしまおう。そうすれば、大阪府にちょっとでも関係があれば、どうとでもこじつけられる。
 
しかし、そんなことを馬鹿正直に言ったら票が取れません。そこでこういう作戦に出たわけです。
 

"大阪の成長を阻害する既得権益"とかいうどこにも存在しないオバケを描き出して、"庶民を苦しめる巨悪と戦う正義のヒーロー吉村さん・松井さん"を演出してB層の票を集めよう。

  

"B層"の意味が分からない方はこちらの動画をどうぞ
 
そもそもの目的が邪悪極まりないのも嫌気が差しますが、それ以上に今回の住民投票が反対多数になってほんとによかったと思うのは、この維新の(維新だけがやってくるわけじゃないですけど)オバケを描いてB層を煽る作戦が失敗に終わったことです。
 
もし、あれが可決されてたらどうなっていたでしょう。
存在していないオバケをやっつけたところで間違いなく大阪が成長することはありません。すると維新はきっとこう言い出します。
大阪市を廃止しても成長しないのは■■のせいだ!」
そして煽られた民衆は■■を叩きのめします。それでも大阪は成長しません。すると維新はまた別のオバケを描いて「▲▲のせいだ!」と言い出します。
 
『おおきなかぶ』っていう絵本がありましたね。あれってカブが抜けないのは抜く力が足りないからじゃないんです。おじいさんがカブを踏んづけてるからなんです。
維新が次々とターゲットを探し出して叩きのめせと煽る様子は次々に家族を呼び出すおじいさんにそっくりです。
大阪の成長に必要なのはオバケ退治ではありません。カブを踏んづけている足をどけることです。
 
大阪市民は終わりなき叩きあいを繰り広げ、最後に残るのは維新が生かしておいてメリットのある人だけでしょう。ナチスドイツと全く同じ構図です。
 
ひとまずそんな地獄絵図が回避されて、ほんとによかったです。

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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