ここで、現在流通している国債は、政府による過去の財政赤字の結果として発行されたものなので、国債購入に必要な準備預金残高は間違いなく、過去の政府赤字やFRBの非政府部門に対する貸出の結果である。
当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。
当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。
目次
まずフラグを立てます
本記事では、銀行・財政・国債のオペレーションに関して、最後に3つの注意点を挙げて、第3章を締めくくろうと思います。
貨幣はどこからやって来るのか
前回記事の終わりに質問しっぱなしにしたやつです。
質問をおさらいしますと、
「私の銀行口座にはありがたいことに毎月、お給料が振り込まれます。さて、このカネは、どこからやって来ましたか?勤め先の会社の売上からですよね。じゃあ、その売上はどこから?会社の顧客の所得からです。じゃあ、その所得はどこから?・・・このどこからどこからゲームはいつどこで終わりますか?」
つまり、貨幣は元をたどっていったら、どこかに生誕の地があり、生みの親がいるはずですが、それはどこの誰なのか?という問題でした。
ここで、貨幣にはいろんな種類がありますが、当ブログのテーマはマクロ経済なので、考える対象は次の4つに絞ります。
- 銀行預金
- 日銀預金
- 国債
- 現金(紙幣)
そしてこれらは増え続けていますので、どこかで誰かが作り続けているのは間違いありません。
- 銀行預金:銀行が発行します。
- 日銀預金:日銀が発行します。
- 国債:政府が発行します。
- 現金紙幣:日銀が発行します。
さて、ほいだら、それぞれが生まれる様子をもうちょっと詳しく見ていきましょう。
貨幣は金融負債であり、金融資産
[1-1]で説明したとおり、貨幣は【資産|負債】の取引の記録であり、その発行者にとっては金融負債であり、その所有者にとっては金融資産です。
よって、貨幣が発行されたときには、必ず発行者が貸方に負債としてその貨幣を計上していて、所有者が借方に資産としてその貨幣を計上しているはずです。
前回記事[3-7]で作成した仕訳集からこれに当てはまる仕訳を探してみましょう。
銀行預金
銀行預金は、市中銀行が発行する負債で、企業・家計が所有する資産です。これに合う仕訳は、現金預け入れ・銀行融資・政府支出の3つです。
[3-1]で説明したとおり、現金預け入れの本質は銀行への貸付ですから、私が財布から万札を出して、ATMに入れると、銀行預金が誕生して、世の中の貨幣総量は間違いなく増えます。ところで、もうちょっと突っ込んだ話をすると、現金預け入れで貨幣総量は間違いなく増えるんですが、マネーストック・マネタリーベースの増減は起こりません。ややこしいでしょう^^マネタリーベース・・・どこかで聞いたような・・・うっ、頭が・・・っ!闇の力が目覚める・・・っ!という方は、この紫の小さい文字は読み飛ばしてください。
銀行融資で銀行預金が生まれる、というのは[3-2]で説明した内容ですね。さらに、[3-5]で政府支出でも銀行預金が生まれることを説明しました。
闇の力とか言ってふざけたせいで現金預け入れに文字数を割いてしまいましたが、現金預け入れで生まれる銀行預金は微々たるものです。銀行預金の重要な生誕地は銀行融資と政府支出です。
日銀当座預金(銀行の日銀預金)
日銀預金は、日本銀行が発行する負債で、政府または市中銀行が所有する資産です。そして、市中銀行が所有する分を特に"日銀当座預金"と呼びます(政府の分は"政府預金"です)。
「日本銀行が負債として発行して、市中銀行がそれを資産として所有」これに合う仕訳は、現金預け入れ・日銀借り入れ・政府支出・買いオペの4つです。
現金預け入れでは、銀行が企業・家計から受け取った現金をそのまま金庫に収納したら、それで終わりですが、日本銀行に又貸しすれば、日銀当座預金が生まれます。
日銀借り入れは[3-4]で説明したものです。銀行融資と同じ仕組みで日銀当座預金が生まれます。
政府支出の説明は[3-5]で、これは銀行預金も同時に増えます。
ここまでは"銀行融資"が"日銀借り入れ"に変わっただけで、銀行預金誕生の説明とほぼ同じですが、日銀当座預金には第4の故郷"買いオペ"があります。現残高のほとんどがここから生まれたものです。
但し、政府支出でも日銀当座預金が生まれることには重要な意味がありますので、そこんとこ、よろしゅうたのんます。
国債
国債は、政府が発行する負債で、一次的には市中銀行が所有する資産です。個人向け国債もありますけど、いまはマクロ経済の話をしていますので個人向け国債は無視します。これに合う仕訳は、国債発行だけです。
銀行預金や日銀当座預金はキクロテラみたいにいろんなところから生まれますが、国債の故郷はここだけです。
現金(紙幣)
現金(紙幣)は、日銀が発行する負債で、普通は企業・家計が所有する資産です。これに合う仕訳は、現金引き出しだけです。
現金も国債と同様に故郷が1つしかないわけですが、これは国債とは意味合いが少し違います。というのも、現金は"日銀の負債である"という点においては、日銀預金と全く同じです。
なので、日銀借り入れ・政府支出・買いオペのプロセスで日銀が市中銀行に支払をするときに日銀預金ではなく、現金を使う(何千億円とか何兆円とかを札束で送り付ける)ことも物理的には可能です。その場合は日銀預金ではなく、現金が生まれます。
しかし、そんな札束ドーンみたいなしょうもない嫌がらせをされても、銀行は即座にその現金を日銀に預け返すでしょう。例えば買いオペの代金を現金払いされて、それを即預け返した場合は、こうなります。
普通の買いオペはこうです。
全く同じことになります。札束ドーンしても手間が増えるだけです。なので、こんなことをする人はいません。よって、現金が生まれるのは、実質的には、現金引き出しのときだけ、ということになります。
次回予告
本記事では、銀行・財政・国債のオペレーションに関して、最後に3つの注意点を挙げて、第3章を締めくくろうと思います。
って冒頭に書きましたが、1つ目で意外とボリュームが出てしまったので、残り2つは次回にします。
おまけ
前回記事で付加価値説と外貨説を紹介しました。
なぜこんな間違った説を信じている人がいるかと考えたときに、たぶんこうなんじゃないかな、と勝手に考えたのが、
お金、カネ、マネー、貨幣・・・いろいろ呼び名はありますが、"お金"と呼ぶことにしますと、彼らの思考では、「お金とは水素とか砂糖とかと同じ並びにある、一種のモノであって、その実体は常に"お金"というモノなんだ。水素がガスだったり水の一部だったり見た目や用途が変化しても、その大元が水素原子であるのは変わらないのと同じように、"お金"が現金だったり、銀行預金だったり、日銀預金だったり、円だったり、ドルだったり、と誰がどのように持つかによって、"お金"がいろいろと姿形を変化させても、やはりその実体は常に"お金"というモノなんだ。見え方・捉え方が変わってるだけなんだ。」というような感覚で捉えているんじゃないでしょうか・・・
もしそうであるなら、これは全くの誤りです。
貨幣は【資産|負債】の取引の記録です。その発行者にとっては金融負債であり、その所有者にとっては金融資産です。貨幣はモノではありません。貨幣の根源的な本質は「発行者には返すべき "借り"があります。」という情報(データ)です。
日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。
私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^
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