経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

9-1.外貨建て債務とハイパーインフレ その1

ワイマールのハイパーインフレが単に政府の「紙幣印刷」によって生じたと言うのは、明らかに単純すぎる。

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当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

 

当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

xbtomoki.hatenablog.com

  

当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。

MMT現代貨幣理論入門

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また、本記事の作成では、こちらの記事も参考にしました。

econ101.jp

 

目次 

 

第9章を始めます

本記事より、第9章「インフレと主権通貨ー『紙幣印刷』がハイパーインフレを引き起こすわけではない」に入ります。

 

前回までの「インフレに関する考察」シリーズでインフレの話は、お腹いっぱいかもしれませんが、それだけ大事なテーマだということですので、どうぞお付き合いくださいますよう、よろしくお願いいたします。

 

本日のお題

( ゚д゚)<なあなあ。

(´・ω・ `)<あら美香さん、何かしら?

( ゚д゚)<なんで叶姉妹やねん。あの2人、最近テレビで見らんの。

(´・ω・ `)<で?叶姉妹がどうしたん。

( ゚д゚)<叶姉妹はどうでもええねん。だいたい叶姉妹を振ってきたのはきみや。

(´・ω・ `)<ぼくか。

( ゚д゚)<せやな。

(´・ω・ `)<全然話が進まんな。

( ゚д゚)<きみのせいやろ。

(´・ω・ `)<せやな。で?

( ゚д゚)<それ、自分がやられると腹立つな。まあええわ。でな、聞きたいことがあるやけど。

(´・ω・ `)<あらあら、何かしら?

( ゚д゚)<それやめて。

(´・ω・ `)<うい。

( ゚д゚)<なんで外貨建て債務があるとハイパーインフレになるん?

(´・ω・ `)<ほほう、そうきましたか。

ということで、本日のお題は、こちらです。

【外貨建て債務とハイパーインフレの関係】

( ゚д゚)<よろしゅう!

 

まずは実例を見てみよう

さて、ハイパーインフレといえば、ワイマールとジンバブエで起きたハイパーインフレが有名です。

( ゚д゚)<ワイマールて何や。

(´・ω・ `)<第一次世界大戦直後のドイツのことや。この写真のやつや。

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( ゚д゚)<ああ、これね。見たことあるわ。

ワイマールやジンバブエの政府は、たしかに多額の外貨建て債務を負っていましたし、その外貨建て債務がハイパーインフレの発生に重要な役割を果たしました。

但し、【外貨建て債務があると、必ずハイパーインフレになる】というわけではありません。

その証拠に、ユーロ加盟国は、どの国も外貨建て債務を負っていますが、(いまのところ)ユーロ加盟国にハイパーインフレは起きていません。

( ゚д゚)<ユーロ加盟国は外貨建て債務を負っとんの?

(´・ω・ `)<ユーロ加盟国の国債は、ユーロ建てや。ほいで、ユーロ加盟国にとってユーロは外貨やろ。[6-4]を見直しんさい。

( ゚д゚)<ああ、そうやったの。ほいだら、えーと・・・外貨建て債務があるからと言って、ハイパーインフレになるとは限らんけど、ハイパーインフレが起きたワイマールとかジンバブエには外貨建て債務がいっぱいあって、しかも外貨建て債務がそれらのハイパーインフレ発生に深く関わっとったっちゅうことは・・・えーと・・・

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この問題は、理屈だけで考えていると、このように訳が分からなくなるので、まずはいったん具体的な事例(ワイマールのハイパーインフレ)の中身を説明して、感覚を掴んでもらった方が話が早いと思います。

(´・ω・ `)<ほいじゃあ行ってみよー。

 

ワイマールのハイパーインフレ

第一次世界大戦で敗れたワイマール共和国は、連合国から多額の賠償金債務を負わされました。

ワイマール共和国の政府は、当時《マルク》という通貨(計算貨幣)を採用していましたが、その賠償金債務は、マルクではなく、「(貴金属の)金で支払うこと」とされました。*1

貨幣の金(カネ)と貴金属の金(ゴールド)がややこしいので、以後、貨幣の方は「カネ」、貴金属の方は「金」と書き分けることにします。

 

ワイマール政府が債務を弁済するためには、マルク紙幣をせっせと刷って、金市場に出かけて、金を買い込んで、連合国に献上しなければなりません。

( ゚д゚)<えっ、それでええの?

(´・ω・ `)<ええのっていうか、それしか方法が無いやんけ。

( ゚д゚)<いや、それでええならプリプリっと刷って、買って、おしまいやないか。楽勝やん。

(´・ω・ `)<日本やったらそうやな。ところがワイマールだと、そうはいかんのよ。

 

ハイパーインフレの仕組み

ワイマールで起きたハイパーインフレの流れは、以下のとおりです。

  1. ワイマール政府が刷ったマルク紙幣が為替市場に流れて、マルクが売られて、マルク安になります。
  2. マルク安になると、輸入品価格が上がります。一方で、当時のワイマールは、国内の供給能力が低く、国内需要を満たすための一定の輸入が避けられない状況でした。
  3. そのため、輸入品価格の上昇は、生活物資全体の価格上昇につながりました。
  4. そうすると、労働者から
    ( ゚д゚)<これだけ物価が上がったんだから、賃金を上げてもらわないと食っていけないよと不満が出るようになります。
  5. ワイマール政府は、それに応えて、公務員の賃金を上げました。
  6. 公務員の賃金上昇は、民間の労働者に
    ( ゚д゚)<賃金を上げないなら、ここをやめて公務員になってもいいんだぞという交渉カードを与えることになるので、民間の賃金も上がりました。
  7. 民間の賃金が上がり、原価が高くなると、国内の企業は、自社製品をより高い価格で売らないと利益を出せなくなります。
  8. そこで"いくらでも支出する能力のある"政府が、国内企業を守るために、その製品を高値で買う意思を示すと、国産品の価格も上昇します。

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《マルクの為替レート低下・賃金上昇・物価上昇》の3重苦に至る一連の流れは、ワイマール政府が賠償金債務を弁済するために金市場で金を買うたびに起こり続けます。

さらに悪いことに、1回目の流れによって、マルク安・賃上げ・物価高が進んでいるので、2回目の流れのとき、ワイマール政府は、より多くのマルク紙幣を刷ることになります。

そして一層のマルク安・賃上げ・物価高が起こり、2回目より3回目、3回目より4回目、と必要な紙幣の量はどんどん増えていきます。

これがワイマールのハイパーインフレの仕組みです。

 

"止められなくなった"わけではない

但し、誤解の無いようにしておきたいのが、

(゚⊿゚)<いったんハイパーインフレが始まったらワイマールみたいに止まらなくなるぞ!

と言う人もいますが、それは明確に間違いです。

ワイマールのハイパーインフレは、"止まらなくなった"というよりは、むしろ政府がこのように↓火に油を注ぎ続けました。

( ゚д゚)<賠償金を払うために金を買わなくちゃ!
( ゚д゚)<あれ、マルク安で公務員の生活が苦しくなってる…賃上げしなくちゃ!
( ゚д゚)<あれ、今度は賃上げで国内企業が赤字になってる…いつもより高値で買ってあげなくちゃ!
( ゚д゚)<あれ、金の価格が上がっとるな、いや、金が上がったんやなくてマルクが下がっとんか…まあどっちでもええわ、高いけど賠償金を払うために金を買わなくちゃ!

これが[番外4-6]で解説した「政府の猛烈な支出拡大」の中身です。

「賠償金を払う」「困っている国民を助ける」という目的を果たそうとしたことを批判する気はありませんが、手段がちょっと短絡的だったんじゃないかなとは思います。

せめてマルクから外貨への両替を規制してマルク安を防ぐ、くらいの工夫をしていれば・・・だいぶ違った結果になっていたかもしれません。

 

次回予告

( ゚д゚)<ほんほん。なるほどな。こんな具合で外貨建て債務がハイパーインフレに繋がるわけか。

(´・ω・ `)<おう、最初に言うた【外貨建て債務があると、必ずハイパーインフレになるわけじゃない】っていう意味は分かってくれたかの。

( ゚д゚)<たしかに外貨建て債務は、原因っていうか、きっかけくらいの感じやな。ほいだら、ハイパーインフレの原因は、猛烈な支出拡大をした"政府の短絡さ"ってことか?

(´・ω・ `)<いや、たしかに政府が支出をするときに上手に工夫を加えてたら避けられたかもしれんけど、"かもしれない"止まりや。大元の、根本の原因はそれやない。「どうなっとったら、そんな工夫をせんでもいいようになっとったんか」ってとこまで考察してみ。

( ゚д゚)<いやです。

(´・ω・ `)<えええ・・・

( ゚д゚)<もうお腹いっぱいやねん。続きは次回にしようや。

(´・ω・ `)<ああ、そういうことかい。急に反抗的になったかと思ってびっくりするやないの。ほいじゃあ、このへんでいったん切ろうかの。

( ゚д゚)<いやです。

(´・ω・ `)<えええ・・・

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

本日のおまけは独り言です。

 

正直、いままで意図的に距離を取ってたので、書くかどうか結構悩んだんですが・・・第三者にも石をぶつけられる人が出てきて、こりゃ我関せずの態度も卑怯な気がしましたので、どれだけの人にこれを読んでいただけるか分かりませんが、ここに自分の意見を書いておくことにしました。

それに、思い過ごしかもしれませんが、我関せずとか言ってても、そのうちたぶん私にも石飛んできそうな感じがしますし(´・ω・ `)

 

とりあえず、私は、ベーシックインカムのことはよく分からないので、いまのところ賛成も反対もする気はありません。「定期的に現預金を給付する政策」で上乗せ型とか社会保障代替型とかがあることくらいは分かりますよ。

ほんとによく分からないので、池戸さん、責任取れとは言いませんから、ぜひちょっとツイッターに費やす時間をいくらか削ってもらって、その時間で『ベーシックインカムとは』みたいな、ベーシックインカムの趣旨・仕組み・効果・歴史・データなんかをまとめた本を書き上げていただきたいなと願うばかりでございます。

 

それから、こっちの方が本題というか言いたいことなのですが、やっぱり議論をするときに人間を攻撃したらいかんですよ。それをやると成り立たなくなる。

とか、えらそうなこと言いながら、私だってついやっちゃうときはありますけどね。 

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

( ゚д゚)<最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!!

応援コメント、指摘コメント、お待ちしております!当ブログの拡散も大歓迎です!

よろしくお願いします!

 

*1:正確には「金との固定交換レートを約束したマルクで支払うこと」なんですが、ややこしいし、実質は「金で支払うこと」なので、このように記述しました。

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