経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

7-1.政府はいくらでも支出することができる

本章では、政府には自国通貨で売られるものなら何でも購入できる「支出能力」があることを前提として、政府の適切な役割について一般通念とは異なる考え方を検討する。

MMT現代貨幣理論入門』kindle版 355/553pp


当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

 

当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事の途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

xbtomoki.hatenablog.com

  

当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。

MMT現代貨幣理論入門

MMT現代貨幣理論入門

 

 

目次 

 

第7章を始めます

さて、今回から第7章「主権通貨の金融政策と財政政策」を始めていきます。

( ゚д゚)<よろしゅう!>(´・ω・ `)

 

さて、それでは、主権通貨国に立ち帰りましょう。

第7章では、特に日本政府を想定して、"主権通貨国の政府は、どんな金融政策・財政政策を行うべきか"をテーマに解説していきます。

( ゚д゚)<消費税を廃止せよ、みたいな話?
(´・ω・ `)<ああ、いや、そこまで具体的な話をするつもりじゃないのよ。もうちょっと手前の、例えば「政府はどんなときに支出を増やすべきか、もしくは減らすべきか」とか、そんな感じよ。
( ゚д゚)<ああ、そゆこと。
(´・ω・ `)<ほいじゃあ、始めよか。
( ゚д゚)・・・・・・
(´・ω・ `)・・・よろしゅうな。
( ゚д゚)<まかしときー。
(´・ω・ `)<ちゃうちゃう、ぼくが教える側よ。あのさ、これ、いつまでやるん?
( ゚д゚)<ぼくが飽きるまでや。
(´・ω・ `)<赤ちゃんか。
( ゚д゚)<こんなかわええ赤ちゃんがおるかいな。
(´・ω・ `)<もうええから。始めるで。
( ゚д゚)<うい。

 

日本政府はいくらでも支出できる

(´・ω・ `)<まず、「主権通貨国の政府は、いくらでも支出することができる。」これはええね?
( ゚д゚)<なんでや。
(´・ω・ `)<こっちのセリフや。なんでや。
( ゚д゚)<なんじゃー、すずさん。
(´・ω・ `)<すずさん誰やねんな。こんだけ何回も説明しとるのに、どうして初耳みたいな顔するんよ。
( ゚д゚)<なんとなくは覚えとるよ。覚えとるけど、もっかい説明して。
(´・ω・ `)<しゃーないのー。

 

主権通貨国の政府は、いくらでも支出をすることができます。
なお、ここで言う"主権通貨国"とは、"独自の計算貨幣・大きな供給能力・大きな内需が全て揃っていて、かつ政府が変動相場制を採用している国"のことであり、日本はこの条件に該当する主権通貨国ですので、日本政府は、いくらでも支出をすることができます。

日本政府の場合の具体的な支出のプロセスを説明しますと、まず"国庫短期証券"という短期債券を発行して売却し、日銀預金を増やした後、支払相手が口座を持つ銀行へ政府の日銀預金を振り込みます。政府からの振込を受けた銀行は、政府の支払相手の口座残高をその分だけ増やします。ここで支出自体は完了です。その後、国庫短期証券を"国債"という長期債券に振り替えて、その国債の償還・利払いが必要な時期が到来したら、償還・利払いをするためのカネを調達するためにさらに借換債という名目の国債を発行します。その借換債の償還・利払いは、さらなる借換債発行で賄い、以下無限ループとなります。国庫短期証券及び国債発行における売却先は入札で主に民間金融機関から選びます。国庫短期証券の入札が不調に終わった場合は日銀が引き受けることになっていますが、国債の入札不調の場合は日銀引き受けが禁止されていますので、再入札等で対応します。但し、徴税等によって政府預金の残高に余裕があるときは、国庫短期証券による借り入れを行わず、預金残高からA払いをするだけというプロセスになります。

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訳が分からないと思いますので、かいつまみましょう。こういうことです。

政府支出のプロセスは、B払いつまり「カネを自分で作って渡す」という仕組みになっています。自分でカネを作ることができますので、もし支払うカネが手元に無くても問題ありません。無いものは作る、これで済みます。よって、いくらでも支出することができる、というわけです。

B払いってナニ(´・ω・ `)?という方は、先に↓こちらの記事をご覧ください。

xbtomoki.hatenablog.com

 

ここで政府のB払いの仕訳を確認しておきます。
国債発行も含めて考えると、途中がややこしくなりますが、合計がちょっとだけスッキリします。これの詳しい説明については、[4-3][4-7]をご覧ください。

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カネの作り方

( ゚д゚)<カネを自分で作る?どゆこと?
(´・ω・ `)<政府が日銀に「うちの残高増やしといて」って指示するんや。
( ゚д゚)<そんなんできるんなら、いくらでもカネ作れるやんけ。

(´・ω・ `)<じゃけん、いくらでも作って払えるて言うとるやないか。
( ゚д゚)<おお、せやったな。

政府は、日銀に預金口座を持っていて、支出をするときはその口座から支出先の口座へ振込をします。このときに、もし口座の残高が1兆円足りなかったら、政府は日銀に「政府の残高を1兆円増やしなさい」と指示します。すると、日銀の担当職員さんが日銀の預金管理システムにログインして、キーボードを叩き、政府の入出金明細に

[入金・1兆円]

と打ち込みます。

(´・ω・ `)<ほらね。増えたでしょ。
( ゚д゚)<いや、そりゃ増えるけど、こんなんでええんか?
(´・ω・ `)<ええとかあかんとかじゃなくて、いまある仕組みがこうなっとんのやっていう説明をしとんのやないか。
( ゚д゚)<ほんまにこんなんやっとんの?これって"財政ファイナンス"とかいうやつやん。財政ファイナンスて禁止されとるんじゃないん?
(´・ω・ `)<そら主流派経済学の人が勝手に禁じ手とか言うとるだけや。たしかに日銀が政府から直で国債を買うのを禁止する法律はあるけど、国庫短期証券なら直買いOKやで。
( ゚д゚)<国債国庫短期証券って何が違うん?
(´・ω・ `)<名前が違う。
( ゚д゚)<え?そんだけ?
(´・ω・ `)<そんだけじゃないけど、本質の部分はおんなじもんや。
( ゚д゚)<名前が違えばOKて、それじゃ意味無いやんけ。そしたら実際には財政ファイナンスは、全然禁止なんかされとらんちゅうこと?
(´・ω・ `)<せやで。財政ファイナンスは普通に行われとるよ。てか、そもそも神様に禁止されとるわけじゃないんやし、禁止されとるからできひんていう理屈おかしいやろ。
( ゚д゚)<そらたしかにそうやな。

というわけで、政府は、キーボードと日銀の預金管理システムがあればいくらでもカネを作ることができます。もし日銀がサイバー攻撃を受けてしまったときには、紙とペンでも構いません。

( ゚д゚)<これ、日銀がカネ作るの拒否ったらどうするん?
(´・ω・ `)<政府が日銀総裁をクビにする。んで、拒否せんような人を連れてきて新総裁に任命する。
( ゚д゚)<ほいじゃあ、実質拒否権無しか。
(´・ω・ `)<そういうこっちゃ。

 

政府のB払いは拒否されない

( ゚д゚)<えーと、そしたら、なんかないん?
(´・ω・ `)<なんかないってなんやねんな。
( ゚д゚)<B払いは無敵なんか?政府はいつでもいくらでもB払いができてしまうんか?
(´・ω・ `)<ああ、そういうこと。

B払いは支払先が受容さえすれば、いくらでも可能です。しかし、これは逆に言えば、支払先が拒否するときは、政府といえどもB払いができなくなってしまうということです。ただ、政府のB払いでは、銀行預金という形でカネが支払われますので、これが拒否されることは考えられません。

(゚⊿゚)<代金を支払ってください。但し、私の銀行預金が増えないような方法でお願いします。

(´・ω・ `)<↑こんなやつおるか?
( ゚д゚)<おらんな。てことは、無敵っちゅうことか。
(´・ω・ `)<無敵かどうかは知らんけどもやな。政府はいつでもいくらでもB払いができるっちゅうのはそのとおりやで。

 

固定相場制国のB払い

なお、B払いは、支払先が受容するという条件さえクリアしてしまえば可能になりますから、もちろん固定相場制国の政府でも、B払いによって支出をすること自体は可能です。但し、そこには"外貨準備がある限り"という条件が付きます。

というのは、B払いをすると自国通貨の量が増えますので、自国通貨安になります。[6-1]のとおり、政府が自国通貨安になった為替レートを元に戻すには、外貨準備を消費して自国通貨を買い戻さなければなりません。よって、固定相場制を維持しようとするなら、B払いのたびに外貨準備が削られていきます。

要するに、固定相場制国の政府でもB払い自体はいくらでも可能ですが、外貨準備の範囲を超えてしまうと固定相場制の方が破綻してしまうわけです。但し、経常収支黒字によって政府がほぼ無限と言えるくらい大量の外貨準備を既に持っていて、いまも外貨準備を増やし続けている、例えば中国のような国であれば、この制約は実質的な意味を持ちません。

 

( ゚д゚)<主権通貨国ではB払いをしても自国通貨安にはならんのん?
(´・ω・ `)<ちょっとは安くなるよ。ちょっとは安くなるけど、国内の供給能力と需要がデカいから、少々のB払いで為替レートが大きく下がったりはせんのよ。ていうか、国内の供給能力と需要がデカくて為替レートが安定しとるからこそ変動相場制の採用が可能になって、変動相場制を採用すれば外貨準備が必須じゃなくなるから、いくらでもB払いができるっちゅうわけや。

つまり、政府がB払いでいくらでも支出することが可能である理由の大元をたどれば、「国内の供給能力と需要が十分に大きいこと」に行き着きます。

( ゚д゚)<じゃあずっとデフレが続いて供給能力も需要もしぼんでいったら、いつか日本が主権通貨国じゃなくなって、"いくらでも支出"ができなくなるかもしれんってことか?
(´・ω・ `)<そういうこっちゃな。そうならんように、ぼくらにできることをやっていこうな。
( ゚д゚)<うい。

 

まとめ

( ゚д゚)<あのさ。
(´・ω・ `)<どしたん。
( ゚д゚)<もうお腹いっぱいなんやけど。
(´・ω・ `)<まだ本日のお題にも行っとらんで。
( ゚д゚)<せやかて。お腹いっぱいなんやもん。
(´・ω・ `)<赤ちゃんか。
( ゚д゚)<こんなにかわええ赤ちゃんがおるかいな。
(´・ω・ `)<もうそれええっちゅうに。ほいじゃあ、ここまでのところをまとめて、続きはまた次回にしよか。

 

というわけで、まとめます。

  • 日本は主権通貨国なので、日本政府はB払いでいくらでも支出することができます。
  • 政府のB払いとは、具体的には①日銀がキーボードを叩いて、数字を打ち込み、政府預金の残高を増やす②政府預金を支払先に振り込む、というものです。これは、主流派経済学がよく言う"財政ファイナンス"そのものですが、実際には普通に行われているプロセスです。
  • B払いが成立しなくなる唯一の条件は、支払先がB払いを拒否することですが、政府のB払いで支払先に振り込まれるのは銀行預金ですから、これが拒否されることはあり得ません。
  • 固定相場制国の政府も、いくらでもB払いをすること自体は可能ですが、そうすると固定相場制が破綻してしまいます。
  • 変動相場制国の政府がB払いでいくらでも支出することが可能な理由の大元は、「国内の供給能力と需要が十分に大きいこと」にあります。
そして、"いくらでも支出することができる"わけですから、第7章のテーマである"主権通貨国の政府はどんな金融政策・財政政策を行うべきか"を考えるにあたって、財源不足や債務増加を心配することには何の意味もありません。

第7章では以降、これを当然の前提として、いちいち「財源のことはこれこれこういうわけで心配ないです」みたいな説明は無しで話を進めていこうと思います。

( ゚д゚)<よろしゅう!>(´・ω・ `)

 

 

 

それでは本日ここまで。

  

 

おまけ

いままでざっくり月1ペースで配信されてた安藤先生のyoutubeライブが毎週土曜夜9時からの定期配信になりました!


www.youtube.com

質問コメントは、安藤先生が「書いてください。」と言ってから書いてくださいね!

 

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

‪最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^

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