経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

税は何のためにあるのか

税は財源ではない

租税の本当の目的は、政府に支出の「財源」を供給することではない。

『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 44/553pp

当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。
複式簿記とは? - 国際乱発派のMMT解説

 

前回の記事"国債はデフォルトしない-MMT概論 - 国際乱発派のMMT解説"で述べたとおり、日本政府はゼロから貨幣を作り出すことができます。

そして政府の財政プロセスの順序は、支出が先であり、徴税が後です。さらに、政府は通常、支出した額の一部しか徴収できません。全部徴収してしまうと、国民が生活できなくなってしまうからです。

ですから、税は政府の事業財源として機能しません。"税は国民が負担を分かち合う仕組み"ではないのです。

f:id:xbtomoki:20200516115937j:imagehttps://twitter.com/akira_amari/status/1252784018107461633?s=21

ですからこのツイートみたいな"消費税は社会保障の財源"というのはウソです。控えめに言うと"勘違い"です。

"税は財源"と言う人には、

  • ウソだと分かっていながら、自分の都合でウソを突き通しているタイプ
  • 本気で勘違いをしているタイプ

の2種類がありますが、甘利さんは勘違いをしているタイプなんじゃないかと思います。世の中の大多数も勘違いタイプでしょう。ちなみに明らかなウソつきの代表はこの人です。

f:id:xbtomoki:20200516121049j:image

 

さて、本題に戻りましょう。例えば、ダムを作るという政策を実施するときの政府の仕訳を考えてみましょう。

 

ダム建設を100万円でゼネコンに発注しました。その後、ダムが完成したのでゼネコンから100万円を請求されました。

ダム|未払金 100万円

 

政府は国債で資金を用意しました。

預金|国債 100万円

 

ゼネコンへ100万円を支払いました。

未払金|預金 100万円

 

年度末になり、ゼネコンは決算をしました。100万円の売上から材料費・人件費・経費を差し引いて、この年度の損益は10万円のプラスと分かりました。決算の2ヵ月後に、10万円の30%(3万円)が法人税として納税されました。

預金|法人税 3万円

 

税が国庫に入るのは、事業が終わった年度の年度末に、企業が決算をして、その2ヵ月後です。

しかもたったの3万円です。

これが財源になるわけがありません。繰り返しますが、税は財源ではありません。

 

では、税は何のためにあるのでしょうか?不要なのでしょうか?そんなことはありません。税は、国民生活の中で複数の重要な役割を担っています。その中でも最も重要とされるのは次の役割です。

 

税は貨幣を動かす

MMTは、租税制度の主な目的は通貨を「動かす」ことであると主張する。

『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 44/553pp

税の第一の役割は"貨幣を動かす"ことです。"貨幣を動かす"とは?いったい何を言っているのでしょうか?

もう少し長い言葉で説明すると、"ある特定の貨幣(例えば'円')をカネとして機能させること"です。つまり、MMTは、「日本国内で商品やサービスの代金を支払うときに'円'を使うことが社会的に認められているのは、政府が税納付に使える貨幣として'円'を指定しているからだ」と説明するわけです。

 

まだちょっとピンと来てないかと思います。

例えば、コンビニや商店等のお店が客に商品を売って代金を受け取る場面を考えてみます。このとき、お店は本体価格と一緒に消費税も受け取ります。お店は預かった消費税を先々には税務署へ納めなければいけません。さて、ここで税務署は消費税を'円'で納めろ、と言うわけですね。であれば、お店は、代金を受け取るとき、絶対に'円'で払ってほしいと考えます。

なぜなら、ドルで払われても、消費税は円建てなので、結局は円に両替しなければなりません。そもそも両替が面倒くさいのも大きいですが、消費税は、お店にとっては消費者からいったんカネを預かって、そのまま納めるだけのはず。ところが、円以外の貨幣で支払をされてしまうと、為替レートによって損をしたり得をしたり、ということが起きるわけです。こんなリスクを取りたいというお店はあり得ません。それを取りたい人は、さっさとお店を閉めて、FXトレーダーをやるべきでしょう。

 

もうひとつ例を挙げましょう。

会社が社員に給与を支払うとき、会社は額面金額から税と社会保険料の分を天引きします。源泉徴収ってやつです。(厳密には「源泉徴収」は所得税だけに使われる用語ですけど)その後、会社は'円'で全社員分の税と社会保険料を、社員の代わりにまとめて納めます。

もしも会社がドルで給与を支払えば、源泉徴収はドルで行うしかないわけですが、ここでも同じく為替リスクが生まれることになります。そんなリスクは避けたいので、会社は円で給与を支払うことを望むわけです。

 

これが"税は貨幣を動かす"ということです。

つまり、日本に住む限り、金額は人によって大小ありますが、誰もが必ず日本政府から課税されます。そして政府が税を'円'で支払うことを要求する限り、'円'は全住民から絶対に必要とされます。さらに1回の取引で複数の貨幣を使うのは不便かつ無用のリスクを発生させるので、結局、国内における取引では'円'を使うことが最も便利で合理的ということになり、日本国内では'円'で取引をするのが基本となる、よって、'円'による課税によって'円'がカネとして機能するようになる。というわけです。

 

貨幣を動かすこと以外にも、税には重要な役割がいくつもあります。ここはまだ概論ですので、そのへんの詳しいお話はまた近いうちに書きたいと思います。

 

それでは今日はこのあたりで・・・また次の記事でお会いしましょう。

 

【本日のオススメ動画】

本日、私がオススメするのは三橋貴明氏が財政破綻論について説明されるこちらの動画です。ぜひご覧ください。

[https://youtu.be/DdqKjNat7Yg:title]

f:id:xbtomoki:20200516123613p:image

‪バカなの?それとも嘘つき?TV・新聞が垂れ流す大嘘【財政破綻論という殺人ウイルス】三橋貴明

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^

 

応援コメント、指摘コメント、お待ちしております!よろしくお願いします!