経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

8-1.就業保証プログラム

就業保証プログラムは、働く用意と意欲がある適格な個人なら、誰でも職に就けるように政府が約束するプログラムである。

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当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

 

当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

xbtomoki.hatenablog.com

  

当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。

MMT現代貨幣理論入門

MMT現代貨幣理論入門

 

 

目次 

 

本日のお題

本記事から第8章「完全雇用と物価安定のための政策ー就業保証プログラムという土台」に入ります。

( ゚д゚)<しゅうぎょうほしょうぷろぐらむ?

(´・ω・ `)<せや。英語で言ったらJob Guarantee Program やな。略してJGPや。

( ゚д゚)<ほんほん。なんなんそれ?

(´・ω・ `)<それが第8章のテーマや。第8章では、このJGPの説明をしていくで。

第1章〜第6章までの内容は、いま現在の貨幣や財政オペレーションの仕組みの説明で、言うなれば基礎研究的なものでした。

続いて、第7章の内容は、主権通貨国の政府の経済政策がどうあるべきかという議論で、少し応用編気味ですが、それでも具体的な政策にまでは踏み込みませんでした。

(´・ω・ `)<そして!ついに!第8章にして!具体的な政策提言であるJGPにたどり着いたのであります!パンパカパンパンパーン!

( ゚д゚)<そか。はよ。

(´・ω・ `)<うい。

 

目的と目標の違い

(´・ω・ `)<さて、JGPの前にやな。《目的》と《目標》の違いって分かる?

( ゚д゚)<なんやねんな、急やな。そんなもんいっしょやろ。

(´・ω・ `)<ノンノン。てかいっしょなら聞くわけないやろ。ノンノンよ。

( ゚д゚)<うっとうしいのう。で、何が違うん?

(´・ω・ `)<まず、目的ってのは、最終的に達成したいゴールのことや。だいたい抽象的な内容であることが多いな。んで、目標ってのは、目的を達成するための通過点っちゅうか、抽象的な目的を達成するための道筋を具体的な数値とか状態に落とし込んだもののことや。まず《目的》があって、それに《目標》が付いてくるわけやな。

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(´・ω・ `)<こんな感じってことや。

( ゚д゚)<ほんほん。それがどうしたん。

(´・ω・ `)<これを踏まえとかんと、次の話がやりづらくての。どぅーゆーあんだすたん?

( ゚д゚)<にわかジョジョネタはやめときんしゃい。ちゃんと読んだことないやろ、きみ。てか、はよ。

(´・ω・ `)<うい。

 

JGPとは

[7-3][7-5]の内容を一部抜粋して箇条書きにしてみます。

  • 経済政策の目的は、国民生活向上である。
  • 国民生活向上という目的を達成するためには、実物資源をいかに有効活用するかがキモになる。
  • 実物資源にはヒトとモノの2種類があり、そのうちヒトがフル活用されている、つまり労働力人口(働く意思と能力がある人)の全員が就業している状態を《完全雇用》と呼ぶ。

よって、国民生活向上》という目的を達成するためには、《完全雇用》を経済政策目標の1つとするべきだと言えるでしょう

そこで、MMT派の経済学者は、こう考えました。
「全員が雇用されている状態にしたいのであれば、全員雇用すればいいじゃないか。」

このシンプルな考え方から生まれた政策提言が《JGP》(就業保証プログラム)であり、JGPとは、働く意思と能力がある人が申し出れば、政府は必ずいつでも誰でも何人でも採用して雇用契約を結ぶことを約束する、という政策です。

(´・ω・ `)<これがJGPでございます。

( ゚д゚)<なるほど、理にかなっとるな。え?以上?本日もう終わり?

(´・ω・ `)<まあ、基本的な内容はこれだけや。ただ、いくつか副次的な効果も考えられるから、それを説明していこか。

 

JGPは最低労働条件を決める

[7-1]のとおり、主権通貨国の政府はいくらでも支出することができますので、JGPを実施する上で障害になるものは何もありません。

( ゚д゚)<あれ?[7-2]で政府は手加減するべきや。スーパー子ども食堂はあかんて言うとったやないか。

(´・ω・ `)<JGPとスーパー子ども食堂は違うで。スーパー子ども食堂は、民間部門で活用されとった人まで政府部門がかっぱいでしもうとるけど、JGPで雇うのは、民間部門で働き口が無くて、活用されずにおる人だけや。

但し、政府が手加減をするべきであることはJGPにおいても変わりません。

労働者は、いつでもJGPに転職することができますので、JGPで示される雇用条件以下の条件で働くことにはメリットがありません。例えば、JGPが時給1000円なのに、わざわざ民間で時給900円で雇われたいと考える労働者は、ほとんどいないでしょう。

ということは、民間部門は、少なくともJGP以上の条件を提示しなければ労働者を雇うことができなくなりますので、JGPの労働条件は、事実上の最低限労働条件になります。ここで設定される条件が高過ぎれば、JGPは途端にスーパー子ども食堂と大差ないものになってしまうでしょう。

しかし、これは一方で、JGPがいわゆるブラック企業対策としても機能することを意味しています。労働者は、もはや失業を恐れる必要がなくなるので、我慢してブラック労働を続ける必要もなくなります。

 

JGPはビルトインスタビライザーになる

JGPには[1-8]で解説した《ビルトインスタビライザー》としての効果も期待することができます。

JGPが実施されると、失業者は1人もいなくなるので、もし企業が社員を増やしたいと思ったら、企業はJGPで雇われている労働者に、JGP以上の条件を提示して、転職を持ちかけることになります。

よって、好景気のときには、民間雇用が増えてJGP労働者が減るので、JGP労働者への賃金という政府支出が減ります。不景気のときは、その逆でJGP労働者が増えるので、政府支出が増えます。この動きは政府収支を反景気循環的にするので、景気を安定させる効果があります

 

JGPは物価を上げて為替レートを下げる

JGPは、インフレと通貨安を招く可能性があります。

JGPが存在しない世界における最低賃金は、常にゼロ円です。失業者には賃金が支払われないからです。ところが、JGPが実施されれば、失業者はいなくなりますので、国民全体の所得が確実に増加します。

細かい説明は省きますが、国民全体が金持ちになれば、通常、物価上昇(インフレ)が起きることになります。また、国民全体が金持ちになれば、たくさんの財・サービスを買えるようになりますので、輸入が増えて、為替レートが通貨安(円安)に傾きます。

但し、30年近くデフレに苦しむ日本ではインフレはむしろ歓迎されるべきですし、変動相場制を採用する主権通貨国の政府である日本政府が円安を恐れる必要は全くありません。

 

第8章は以上になります

(´・ω・ `)<よし、第8章は以上になります。

( ゚д゚)<えっ、もう終わり?

(´・ω・ `)<うん、まあ、"具体的にはどんな仕事をさせるんか"とか、"ベーシックインカムでええやんけ"とか、ほんとは論点はいっぱいあるんやけど、ぶっちゃけ、JGPネタは多分やけど荒れるからあんまり掘り下げたくないんよ。やから、ほんとにさわりのとこだけにしとくわ。あくまで事実を淡々と解説するのがこのブログの趣旨やしな。

( ゚д゚)<そか。

 

業種と規模に応じて政府が決めた人数の労働者を企業に派遣するとかどうかなぁ。

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(´○ω○ `)<まるちゃん、掘り下げたいのか掘り下げたくないのかはっきりしないと賛成派からも反対派からも叩かれちゃうよ。 

  

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

本日のおまけはお勧め動画です。


www.youtube.com


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最近大流行のSDGsですが、室伏謙一さん・森井じゅんさんが対談形式でSDGsの何が問題なのかをがっつり解説されています。

前後編合わせて1時間以上ありますが、ぜひ多くの方に見ていただきたい内容でした。

 

言いたいことはだいたい動画の中で代弁されているんですが、ここで私のSDGsに対する考え方を一応述べたいと思います。

 

まず、個人がSDGsの17の目標のどれかに共感したりして、それを自分の目標にしたり、同じ目標を志向する企業や団体を応援することを否定するつもりは全くありません。そうしたい方はどうぞご自由にされたらいいと思います。

それに「貧困をなくそう」とか、具体的な中身の部分では、私も共感できるものが無いわけではありません。ただ、私はとにかくこれ↓に嫌悪感があるんです。

(゚⊿゚)<SDGsは誰一人取り残さないことを誓った全人類共通の目標です!

(´・ω・ `)<"全人類"ってぼくも入ってます?勝手にぼくの目標、決めないでほしいんですけど。誰一人取り残さないって言いますけど、要するに世界中の価値観を統一しようって話でしょ?なにそれ、ガチファッショやんけ。おお、こわ。みんな違ってみんな良いんじゃなかったん?

それと、SDGsウォッシュなんていう言葉もあるそうですが、結局、実際にはどう利用されてるかというところにも大きな疑問があります。

(゚⊿゚)<SDGsのためにレジ袋を有料化します!SDGsのために電気自動車を作らない自動車メーカーはつぶします!これに反対するやつはSDGsに反対ということですから、人類の敵です!

(´・ω・ `)<なんかもうSDGsが目標じゃなくて、反論を封殺するための魔法の言葉っちゅうか、水戸黄門の印籠みたいに「これ出しとけば理屈はいらねえ」便利アイテムになっとるやん。誰一人取り残さないんじゃなかったん?"人類の敵"は別なんか?

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

‪最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^

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