経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

4-8.財政赤字と国債金利 その5

本節では、財政赤字と貯蓄の関係、さらには財政赤字が準備預金と金利に与える影響を確認する。以下の議論は、一般的な性質に関するものである。

MMT現代貨幣理論入門』kindle版 220/553pp


当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

 

当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事の途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

xbtomoki.hatenablog.com

  

当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。

MMT現代貨幣理論入門

MMT現代貨幣理論入門

 

 

目次 

 

おかげさまでシリーズ完結です

1ヵ月くらいかかりましたが、財政赤字国債金利シリーズは、これで完結となります。

本シリーズのテーマ

財政赤字が増えると(減ると)、国債金利はどうなるか」

への解答は、こうでした。

財政赤字がいくら増えようが減ろうが、国債金利はどうもなりません。上がりも下がりもしません。」

なぜこう言えるのかと言えば、国債金利は、[4-6]で解説したとおり、日銀が決めたとおりに決まるものだからです。

 

やっぱりクラウディングアウトなんかなかった

( ゚д゚)<じゃあ「財政赤字が増えると(減ると)、国債金利はどうなるか」とか言わなくても、普通に「国債金利は日銀がこうこうこうやって目標を決めて操作します。」だけでよかったんちゃうんか。

それはおっしゃるとおりです。シリーズの途中で、変な風呂敷広げてもうたな・・・と何度か思いましたが、よかろうもんの精神でここまでやってきました。ただ、何の考えも無しに広げた風呂敷ではなくて、もちろん財政赤字国債金利国債発行の仕組み・国債の意義を解説するのが第一の目標だったのですが、

もうひとつ言いたかったのは「やっぱりクラウディングアウトなんてありえんよな」っちゅうことなんです。クラウディングアウトっちゃあ何かと申しますと、主流派経済学者が唱えている、こういう仮説です。

  • 貯蓄が減ると、金利が上がる。
  • 財政赤字が増えると、民間が使える貨幣(貯蓄)が減る。
  • よって、財政赤字が増えると、金利が上がる。
詳しい中身は下記リンクで解説しました。もしよかったらどうぞ。

xbtomoki.hatenablog.com

まず、"貯蓄が減ると、金利が上がる。" これは間違いです。さっきも言いましたが、[4-6]のとおり、国債金利は、日銀が決めたとおりに決まります。

続いて、 "財政赤字が増えると、民間が使える貨幣(貯蓄)が減る" これも間違いです。真実は逆です。[4-2]のとおり、政府の財政赤字は、民間部門の貯蓄を増やします。

よって、"財政赤字が増えると金利が上がる。" これは間違いです。

ということで、クラウディングアウト仮説は、初めから終わりまで間違っています。当然、実際のデータにも合致しません。

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1990年~1995年の財政赤字の伸びに対して、国債金利はぐんぐん下がっていきました。1995年以降の財政赤字の横ばいっぷりに対して、国債金利はさらに下がっていきました。全然関係ない動きをしています。もともと全然関係ないんだから当たり前です。

ところが、主流派経済学者は、いまだにクラウディングアウトありきで経済を語り、こんな記事を書いています。普通の人なら1995年の時点で"あれ?変だな?"ってなりそうなもんですけどね・・・

www.tkfd.or.jp

なぜ彼らは、いつまで経っても自分たちの理論が間違っていることが理解できないのでしょうか。

それは主流派経済学の二大トンデモ理論

を信じ込んでいるため、根本的な部分で貨幣というものを誤解していることが原因なのではないかと思います。

 

お金のプール論とは

プールというのは、こういうのじゃなくて、

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こういう溜め池とか貯水池とかをイメージしてもらった方がいいかと思います。

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三橋貴明さんの新経世済民新聞にも記事がありますが、

【三橋貴明】「おカネのプールは存在しない」という恐怖 | 「新」経世済民新聞

この理論は、理論とすら呼べるようなものじゃないんですが「この世の中に存在する貨幣の量は一定で有限である。」という教義で、「その一定で有限の貨幣を政府と民間が取り合うことでバランスが成り立っている。だから、政府が取り過ぎてしまうと民間が使える貨幣が減ってしまう。これをクラウディングアウトと呼ぶ。」となってしまうわけです。

もちろん間違いです。

貨幣は、B払いの記録ですから、B払いが成立すれば、いくらでも増えます。

 

お金のアバター論とは

Aさんの資産がこうなってたとします。

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現金が50、銀行預金が100、合計は150です。

ところが、主流派はこう考えます。

「お金が150ある。そのうち50は現金として持っている。残りの100は銀行預金として持っている。」

一見同じことを言ってるようですが、全然違います。

どう違うかと言うと、もしもAさんが現金50をX銀行に預けたら、現金が0・銀行預金が150になりますが、現金は消えるわけではなくて、X銀行の手元に移るわけなので、こうなって、

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Aさんが現金を銀行に預けると、貨幣の総量が増えます。現金預け入れの本質は貸付ですから当たり前ですね。[3-1]

ところが、主流派にはこれが理解できません。

( ゚д゚)<A→Xにお金が移動したらお金が増える???んなわけないだろう!!バカ言ってんじゃないよ!おととい来やがれってんだ!こんちくしょうめってなもんだよ!!!いいか?"お金"という本質的なモノが存在するんだよ。それが時と場合によって現金や銀行預金に姿形を変えるんだ。天照大神様と大日如来様だって元々はおんなじもんだろう?それと同じことよ。現金も銀行預金も"オカネ様"のアバター(化身)なんだ。要するにだよ、"お金のプール"ってもんがあってさ、オカネ様は一定で有限なんだよ。それだってえのに、オカネ様が現金から預金に姿を変えたら増えちまうってじゃあ、世の中のオカネ様がどんどん増えちまうじゃあないかい。何を言ってんだか意味不明だよ!!

これも間違いです。

主流派にとっては意味不明かもしれませんが、貨幣総量が増えるのは事実ですから、その現象が意味不明なんじゃなくて、それは主流派が理解できていないだけです。

"お金"というモノは存在しません。実際に存在するのは、現金や銀行預金であって、"お金"は、それらの総称に過ぎないわけです。

 

貨幣観を正さないといけない

しかし、主流派経済学者は、この二大トンデモ理論を基本原則くらいのノリで語ってきます。彼らは間違った理論を基本原則と思い込んで、そこを出発点にしているので、全部間違います。

クラウディングアウトは、その一例ですが、それ以外にも、主流派は数々のトンデモ理論を打ち立ててきました。

  • 国債は国の借金論
  • 又貸し論
  • 貨幣数量説
  • マンデルフレミングモデル
  • 税は会費論
  • 均衡財政論

貨幣とは何か、ここを正さないと国債は国の借金論をやっつけたところで次は又貸し論、その次は貨幣数量説で…キリがありません。

大事なことなので、貨幣とは何かを再確認しておきます。

貨幣とは、B払いの記録です。その所有者にとっては金融資産であり、その発行者にとっては金融負債です。

 

 
それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

小黒一正さんの2020年財政破綻論ってあったじゃないですか。あの訳の分からんやつ。おまけコーナーなので言葉は選ばずにいきます。先日ツイッターで朴先生が本人につっこみをされてたアレです。

訳が分からなすぎて、仮にも大学教授が、いったい何を考えてこんなトンデモに至ったのかが、長らく分からなかったんですが、やっと分かった気がするので、勝手に解説してみます。

 

まず、小黒さんは、毎年の経済収支をこんな感じで考えてあるんでしょう。

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この2段目の"国債発行でAの預金が減る"っていうのが、壊滅的に間違ってるんですよね。減りませんからね。「減りませんからね」って反論するのもばかばかしいレベルなんですが・・・ 

で、これ(国債残高だけが毎年1円増える)に基づいてシミュレーションをしてみます。試しに、政府に1円、A社に9円を持たせて、年数を進めていくと、

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10年目で国債残高がAの預金を超えてしまいました!財政破綻ダー!クニノシャッキンガー!

 

 

小黒さん、正しくはこうですよ。

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これも違うんですけどね。やっぱり単式簿記では表現に限界があります。

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ですから、国債残高がAの預金を超えることは永久にありません。これに懲りたら二度とクニノシャッキンガーって言わないでください。迷惑なんですよ。

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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