経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

7-3.機能的財政論

1940年代、アバ・ラーナーは、彼が「政策に対する機能的財政アプローチ」と呼ぶものを考案した。そこで彼は2つの原則を提示した。

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当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

 

当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

xbtomoki.hatenablog.com

  

当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。

MMT現代貨幣理論入門

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目次 

 

[7-1]のおさらい

(´・ω・ `)<さて、今回もまずは[7-1]のおさらいから行こか。

( ゚д゚)<主権通貨国の政府は、B払いができるから、カネはいくらでも作れる。いくらでも作れるんやからいくらでも払える。せやから、財政政策・金融政策をどうするべきか考えるときに財源不足とか債務残高増加とかは気にせんでええ。

( ゚д゚)<どや。

(´・ω・ `)<話が早いの。助かるわ。

 

本日のお題

(´・ω・ `)<さて、本日は機能的財政論の説明をします。

( ゚д゚)<ほう、なんか難しそうなワードじゃの。

(´・ω・ `)<字面はそうやけど、中身はそうでもないけー、安心しんさい。

( ゚д゚)<うい。

というわけで、本記事では"機能的財政論"の解説をします。

(´・ω・ `)<よろしゅうな。

( ゚д゚)<まかしときー。

( ゚д゚)<ちゃうちゃう、ぼくが教わる側よ。

(´・ω・ `)<勝手にやっとれ。

( ゚д゚)<うい。

 

財政黒字と財政赤字

(´・ω・ `)<説明の前にちょいと用語の確認をしとくで。

( ゚д゚)<うい。

↓下の式のとおり、税収と政府支出の差し引きを"政府収支"と言います。

政府収支=税収-政府支出

税収>政府支出なら、政府収支はプラス(黒字)となり、この状態を"財政黒字"と呼びます。逆に税収<政府支出なら、"財政赤字"と呼びます。

 

機能的財政論の基本原則

  • 機能的財政論の第一原則
    政府は、財政赤字を増やすことで、民間部門の所得を増やすことができる。
  • 機能的財政論の第二原則
    日銀は、買いオペをすることで、翌日物金利を下げることができる。

これらはもちろん、その逆(財政黒字化→民間所得減少、売りオペ→金利上昇)も成り立ちます。これらを基本原則として、財政政策や金融政策を議論しようというのが"機能的財政論"です。

( ゚д゚)<え?こんなん当たり前とちゃうん?

(´・ω・ `)<ぼくもそう思うんやけどな。主流派経済学者さんたちにとっては、そうでもないみたいやねん。

( ゚д゚)<ほーん。そしたら主流派の人たちはどんな財政論なん?

(´・ω・ `)<その前にひとしきり機能的財政論を説明さしてもろてええか?主流派の財政論はその後で説明するわ。

( ゚д゚)<うい。

 

財政赤字はどこまで増やせるのか

(´・ω・ `)<前回の[7-2]で、政府支出が多すぎると実物資源が枯渇して良くないことになるよって言うたやろ?

( ゚д゚)<えっ?

(´・ω・ `)<はいはい。んでな、

( ゚д゚)<わしのボケをスルーするたぁ、偉くなったもんじゃの。

(´・ω・ `)<はいはい。んでな、これは逆に考えると、実物資源が枯渇する直前までは、財政赤字を増やしても、民間部門に迷惑は掛からんっちゅうことになるやろ。

( ゚д゚)<そしてそれを逆に考えれば、政府支出が多すぎると実物資源が枯渇してしまうってことになるな。

(´・ω・ `)<はいはい。んでな、ほいだら《実物資源が枯渇する直前》ってどうやったら分かるんかの?

( ゚д゚)<知らん!!

(´・ω・ `)<元気があってよろしい。機能的財政論では、そこで失業率に着目するんや。

[7-2]のとおり、実物資源とは、生産活動に必要なヒト・モノのことです。2つのうち、モノの枯渇を事前に察知することは難しいですが、ヒトについては分かりやすい指標があります。
それは"失業率"です。

失業率とは、労働力人口(就業する意思と能力の両方を備えている人)のうち、就業できていない人々が占める割合のことです。
労働力人口が全員就業している(失業者が1人もいない、失業率0%)状態を"完全雇用"と呼びます。

よって、「完全雇用が達成されていない」=「民間部門でヒトが余っている」ということになりますので、機能的財政論では「少なくとも完全雇用が達成されるまでは、ヒトの枯渇を起こさずに、財政赤字を増やせるはずだ。」と考えます。

 

金利はいくらが適切なのか

現在、日銀が本金利を金融調節の操作対象にしている理由として、無担保コール翌日物取引が金融機関の当日の資金過不足の最終調整の場であり、資金供給・吸収オペレーションによる誘導が比較的容易であること、他の取引のレートの判断基準になりやすいこと、また期間が長めの金利形成にも影響を与えやすいことなどが挙げられます。

無担保コール翌日物とは|金融経済用語集 - iFinance

日銀には金融経済の全体的な金利を適切な水準に誘導する責務があり、現在、日銀は、この責務を果たすための具体的な手段として、《翌日物金利を操作する》という手法を採用しています。

そして、[3-6]のとおり、翌日物金利は、日銀預金利息~基準貸付金利の範囲内であれば、買いオペで下げることが、売りオペによって上げることがいくらでも可能です。

 

では、どのくらいが適切なのかと言うと、まず、「金利が上がれば、借りるより貸した方が有利になり、金利が下がれば、借りる方が有利になる。」これが基本的な考え方です。

金利が上がると、家計がローンを組んだり、企業が融資を受けたりするときの条件が不利になり、むしろ支出を減らして貯蓄をして利息を稼ぐ方が有利になるので、需要が落ちます。金利が低い場合は、その逆です。但し、今後の所得が見込めないのに、低金利というだけでローンを組む人はいませんし、利益が見込めないのに融資を受けようとする企業もいないことには注意が必要です。

需要が多過ぎれば、実物資源が枯渇してしまいますし、少なすぎれば、余ってしまいます。機能的財政論では「そこがちょうどよい塩梅になるような金利が適切な金利である。」と考えます。

 

均衡財政論とその仲間たち

( ゚д゚)<よし、そいじゃ、機能的財政論じゃない主流派経済学の財政論ってやつも教えてや。

(´・ω・ `)<いくつかあるんやけど…まずは均衡財政論から行こか。

( ゚д゚)<ほんほん。その均衡財政論ってのは、どんなんなん?

(゚⊿゚)<税収と政府支出が同額になる(均衡する)のが理想的な財政状態じゃけん、均衡財政を目指そうってのが均衡財政論よ!

( ゚д゚)<なんで均衡財政が理想的なん?

(゚⊿゚)<家計や企業が収入よりたくさんの支出を続けてたら破綻するじゃろ!政府も同じように収入より支出の方が多い状態が続いたら破綻してまうやんけ!

( ゚д゚)<あー、家計簿脳のやつね、はいはい。

(゚⊿゚)<ハイは1回でよろしい!!

( ゚д゚)<やかましいわ。

均衡財政論の親戚で(゚⊿゚)<政府は財政黒字であるのが理想だ!という健全財政論もあります。ただ、[4-2]のとおり、主権通貨国では、財政赤字になるのが普通なので、均衡財政論と健全財政論に実質上の大した違いは無くて、要するに、結論はどちらも(゚⊿゚)<どんどん緊縮!どんどん緊縮!です。

それから、似てるようで少し路線が違う(゚⊿゚)税収も政府支出も少なければ少ないほど良いんだ!そもそも政府なんか無くしてしまうべきなんだ!という小さな政府論、これの逆(真逆ではないんですが)(゚⊿゚)税収も政府支出も多ければ多いほど良いんだ!という大きな政府もあります。

これらは、(゚⊿゚)<まず衡財政を達成して、均衡財政の範囲内でできるだけ小さな政府を目指そう!のように混ざることもあります。

これを表にまとめると↓こうなります。

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目指すものが違う

さて、均衡財政論とその仲間たちに共通しているのは、《財政収支の結果》を目標とするところです。一方、機能的財政論は、《民間部門における実物資源の過不足を最小にする》を目標とします。機能的財政論では、その結果が財政赤字だろうが財政黒字だろうが、そしてその赤字黒字が大きかろうが小さかろうが、

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均衡財政論の目指すものは、美しい決算書です。これはいくらでも支出することができない非主権通貨国の政府が有利な条件で借金をするためには、たしかに役立つかもしれません。

一方、機能的財政論が目指すものは、いくらでも支出することができる主権通貨国の政府を前提とした、実物資源が社会全体で適切に分配されるような財政です。

日本政府がどちらを採用するべきなのかは一目瞭然のように見えますが・・・

(´・ω・ `)<こちらは2021年5月25日に開かれた令和3年第7回経済財政諮問会議麻生太郎財務大臣が提出した資料からの抜粋です。

以上より、歳出・歳入両面の改革により、社会保障制度の持続可能性を高めるとともに、PBを黒字化し、新規国債発行額の総額を確実に減らすことが必要。

第7回会議資料 令和3年 会議結果- 経済財政諮問会議 - 内閣府

(´・ω・ `)・・・

( ゚д゚)・・・

 

均衡財政論における金融政策

( ゚д゚)<ところでよ、均衡財政論とかって金融政策のことは考えとらんの?

(´・ω・ `)<考えとるよ。えっとね、《買いオペをたくさんやると、失業者を減らせるけど、同時に物価が上がってしまう》…たしかこんな感じやったと思うわ。

( ゚д゚)<なんで買いオペで物価が上がるん?

(´・ω・ `)<いや、上がらんよ。

( ゚д゚)<えっ?失業者は?

(´・ω・ `)<減らんよ。

( ゚д゚)<えっ?どういうことなん?

(´・ω・ `)<主流派経済学者が言うにはな、まず、買いオペをする→貨幣の量が増える→物価が上がる+金利は下がる→銀行融資のハードルが下がる→新規事業や事業拡大をする人が増える→働き口が増える→失業者が減る。こんな感じや。

( ゚д゚)<なんやねんなその風が吹けば桶屋が儲かるみたいな理屈ww増えるのは貨幣は貨幣でも日銀当座預金やから物価には何の影響も無いやろ。金利はたしかに下がるやろうけど、金利が下がっただけで「金利が下がったから事業を起こすぞー」なんてやつおらんて言うとるやろ。ガバガバやないか。

(´・ω・ `)<おお、成長しとる…

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

 

おまけ

消費税のことで最近やっと理解したことがあったので、それを書いておこうと思います。

何を理解したのかと言いますと、消費税の納税額の計算方法のことです。

いままでは、

  1. 売上が上がるたびに、消費税分として何円を受け取ったのかを記録する。
  2. 費用が立つたびに、消費税分として何円を支払ったかを記録する。
  3. 決算のときに、受け取った消費税分・支払った消費税分それぞれを集計する。
  4. 受け取り消費税-支払い消費税=納税額

と思ってたんですが、違うんですね。

実際の計算方法は、こうでした。

  1. 売上が上がるたびに、それが消費税の課税対象かどうかを記録して、税込金額で記帳する。
  2. 費用が立つたびに、それが消費税の課税対象かどうかを記録して、税込金額で記帳する。
  3. 決算のときに、課税対象売上・課税対象費用だけを合計する(全体の売上・費用から課税対象外を除いて合計する)。
  4. (課税対象売上-課税対象費用)×税率=納税額

ぱっと見、両者は同じように見えます。たしかに、いわゆる"価格転嫁"が完全にできていれば、消費者から預かった消費税を右から左に納めるだけですから、両者は同じことになります。

しかし、そうでない場合は話が変わってきます。なぜなら、これは、実際にはいくら預かったのかは全く考慮しない方式になっているからです。

消費税法では、本体価格に消費税分を乗せるかどうかは事業者の任意という建前になっています。なのに、この方式は、事業者が消費税分を乗せないことを選択し、消費税を預かっていない場合でも、容赦なく価格転嫁が完全に為されているものとして納税額が計算されます。

(゚⊿゚)<消費税分はお客さんから取っても取らなくてもどっちでも好きにしてええで。どっちだろうが、うちらは取ったもんとして徴収するけーの。

ということですね。

まあ、徴税を確実にするためにわざとこういう方式にしてるんでしょうけど、
おかしいやろこれ(´・ω・ `)

もうひとつ問題なのが、この方式だと消費税分の価格転嫁が普通の値上げと区別されなくなるところです。その結果、CPI(消費者物価指数)が消費税分を含んだ数字になってしまい、デフレが見えにくくなっている現状があります。

 

それでは、消費税のことは安藤先生に聞け。ということで、以前にも紹介しましたが、安藤裕先生による消費税解説動画を紹介いたします。40分とちょっと長いですが、必見の内容です。


www.youtube.com

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

‪最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^

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