経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

3-9.貨幣オペレーションに関する注意点 その2

ここで、現在流通している国債は、政府による過去の財政赤字の結果として発行されたものなので、国債購入に必要な準備預金残高は間違いなく、過去の政府赤字やFRBの非政府部門に対する貸出の結果である。

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当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

  

当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。

MMT現代貨幣理論入門

MMT現代貨幣理論入門

 

 

目次 

 

前回記事より

前回記事でこんなことを書きましたが、 

本記事では、銀行・財政・国債のオペレーションに関して、最後に3つの注意点を挙げて、第3章を締めくくろうと思います。

3-8.貨幣オペレーションに関する注意点 - 国債乱発派のMMT解説

3つの注意点のうち1つ目(貨幣はどこからやってくるのか)だけで結構なボリュームになってしまったので、残り2つを今回記事に回していました。

 

それでは残り2つ、行ってみましょう。 

 

と、その前に、

古典派・緊縮派の経済学や新自由主義の立場からよく言われる財政破綻ストーリーを紹介しておきます。

  1. 政府は国債発行で銀行の日銀預金を借りて、そのカネで公共事業の代金や公務員の給料を払っている。
  2. これをどんどんやっていくと、いつかは銀行の日銀預金が底をつく。
  3. 政府は国債発行でカネを調達できなくなる。
  4. クニノシャッキンガー
  5. ザイセイハタンスルー
一見するともっともらしいですが、間違いです。まー、クニノシャッキンガーって言いだしたら、だいたい話半分で大丈夫だと思います。銀行の日銀預金じゃなくて家計の銀行預金を借りてるっていうパターンのやつもありますが、それの話はまた今度にします。
実際にはこんなことは100%起こりません。

これがなぜ起こらないのかを示すのが本記事のメインテーマです。

 

国債発行には預金準備が必要

まずは国債発行[3-5参照]の仕訳を確認しておきましょう。

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この取引では、銀行の日銀預金が国債に振り替わります。この振替の分だけ、政府の日銀預金と国債が増えることになります。

ですので、国債を発行する前に、銀行が日銀預金を準備できていないと、この取引はできません。これが注意点その2です。

なので、財政破綻ストーリーの"銀行の日銀預金が底をつくと、国債発行ができなくなる"、これ自体は間違いではありません。

 

日銀当座預金は減らない

それでは、まだ銀行の日銀預金は底をついていないものとして、"政府が国債発行で銀行の日銀預金を借りて、そのカネで公共事業の代金や公務員の給料を払う"と、どうなるのかを見てみましょう。

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注目していただきたいのは銀行です。

国債発行の時点では、たしかに日銀預金が減ります。しかし、政府支出[3-5参照]の時点では逆に増えます。結局、合計では相殺されて、日銀当座預金は増えも減りもしない、ということになっています。これが注意点その3です。

"これをどんどんやっていくと、銀行の日銀預金が底をつく"ようなことはありません。

増減するのは、国債と銀行預金です。それぞれが増えることになります。

 

買いオペが入るとどうなる?

国債発行+政府支出では、日銀当座預金は増減無し、国債と銀行預金が増えると分かりました。ここでさらに増えた国債を日銀が買い上げる(買いオペ[3-6参照]をする)と、どうなるかを見てみましょう。

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ここでも注目していただきたいのは銀行です。買いオペで銀行の持つ国債が日銀預金に振り替わり、日銀預金が増えます。

買いオペが入ると、底をつくどころか増えました。

 

どうやったら底をつくか

底をつくどころか増えてしまいました。銀行の日銀預金は一体どうやったら底をつくんでしょうか。

理屈上で考えられるのは次の2つです。

  • 現金引き出し
  • 国債発行(政府支出なし)

 

現金引き出し

現金引き出し[3-3参照]では、現金が引き出された分だけ、銀行預金と日銀預金が減ります。

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そして、[3-7]で作ったグラフのとおり、銀行預金の残高 > 日銀当座預金の残高 になってますので、銀行預金が半分くらい引き出されたら、日銀当座預金は底をつきます。

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ということで、例えば、大量の金持ちが一斉に銀行に駆け込んで、預金を全部引き出して、自宅の金庫に詰め込んで、今後は支払のたびに金庫から札束を取り出すことに決めた場合なんかですね。

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国債発行(政府支出なし)

国債発行の時点では、たしかに日銀当座預金が減るんです。ただ、政府支出が伴うと、行って来いになって、結局は増減無しになることを説明しました。

"じゃあ、政府が支出をせずに、ひたすら国債発行だけをやっていれば、いずれ底をつくじゃないか"

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売りオペ

"売りオペ(日銀が銀行に国債を売る)[3-6参照]によって日銀当座預金が減る"、これは普通にあり得ます。

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但し、日銀が国債を売るためには、その前に国債を買っておかなければなりません。

ということは、売りオペで日銀当座預金が減っても、それは過去の買いオペで増えた分ですから、"売りオペによって日銀当座預金が底をつく"ということは考えられません。

 

結論

冒頭の財政破綻ストーリーは、やはり間違っています。

特に2.の「これ(国債発行+政府支出)をどんどんやっていくと、いつかは銀行の日銀預金が底をつく。」ここが完全な間違いです。

これをいくらやっても銀行の日銀預金は増えも減りもしません。むしろ買いオペが加わって増えることはあっても、減ることは考えられません。

どーにかこーにかして底をつくようにするためには、金持ちか政府が奇行に走るしかなく、そんなことが起きる心配をしてもしょうがありません。

 

 

 
それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

ツイッターでもちょっと話題になっていましたが、この動画の2:33:00あたりからの議論を取り上げたいと思います。


【討論】世界激変と日本の野党[桜R2/11/26]

話題の中心は、直接的には言明されていませんが、れいわ新選組の舩後議員だと推測します。

論点は

  1. れいわ新選組は、山本太郎知名度を利用して障がい者議席を与えた。また、逆に障がい者を客寄せパンダにして票を稼いだ側面もある。これは不適切ではないか。
  2. 舩後議員は自分の口で言葉を話せない。彼には議員としての資格が無いのではないか。
ざっくりした議論の構図としては、
森口朗さん・渡辺哲也さん・水島総さんの3名がこのように主張し、
室伏謙一さんが3名の主張の中で事実と異なる部分を指摘するとともに、その意見は健常者と障がい者の分断を煽るものだと述べていました。
 
これについて私の所見を述べさせていただこうと思います。
 
1.の論点(障がいや知名度を利用して票を取った)について

これに尽きます。

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私はそうではないと思いますけどね。森口さんや渡辺さんはそうだと思うんでしょう。
誹謗中傷みたいなもんですから、議論の深めようも無いし、せめて明確なデータを出した上でないと水掛け論にしかなりません。
ただ、れいわに投票した有権者をバカにしすぎなんじゃなかろうか、とは思います。
 
2.の論点(自分の口で話せない)について

まず、事実として、動画の議論の中で室伏さんが指摘されているとおり、

舩後議員は、たしかに自分の口では話せませんが、コンピュータ利用と秘書の代読で、しっかりと国会議員としての職責を果たされています。


【字幕付き】舩後靖彦(れいわ新選組 参議院議員 ふなごやすひこ)2019.11.19 文教科学委員会参考人質問 大学入学共通テストにおける障害者の合理的配慮について

健常者よりは時間がかかるようですが、大した問題ではないと思います。
渡辺さんの発言がツイートにまとめられていたので紹介しておきます。
 
これに対して室伏さんは「頭は正常」なんだから差別される理由にはならない旨の意見を述べられていました。じゃあ、知的障がい者の頭は異常なんか?って揚げ足取られそうな発言ですが、議論がヒートアップ気味の場面だったので、言葉を選ぶ余裕が無かったんでしょう。
 
 
で、私の意見ですが、
 
まず、
比例名簿の順位について誤解をしてるし、舩後議員がコンピュータと秘書代読でちゃんと質疑応答をできてることも知らないし、事実を知らずに自分の思い込みとごっちゃにしてイメージだけで語ってるのが、言うたら完全にB層なんですよ。そんなんで野党ガーとか言ってんじゃないよ。その野党と大して変わらんじゃねえか。みっともない。
私は、特に渡辺哲也さんに強い不信感を持っています。いっつも"それあんたの妄想ちゃうか?"みたいな都市伝説まがいの話で毎回30分くらい時間取るし、10万円給付のときの"クレクレ乞食"発言もあったし、
なんか物知りさん枠で出てきますけど、知ったかぶりしとるだけなんじゃなかろうか。できれば出禁にしてほしい。
 
次に、
"私はレイシストじゃないですよ"アピールを一生懸命やってましたが、障がい者レイシストでないとは限らないし、障がい者の家族も同じことです。
水島さんは完全に障がい者だから議員の資格が無いって言ってますよ。アーカイブを見返してみてほしいです。
私は知的障がい者だろうが、日本人なら誰にでも議員の資格があると思いますけどね。
 
最後に、これはただの私の推測ですが、いちばん言いたいことは、
3名は、要するに、山本太郎さんが嫌いなんでしょ?
原発廃止論とか、斎藤まさしさんとのつながりとか、そのへんでサヨク感があるから。で、その嫌いな山本太郎さんのやることなすこと気に入らんってだけなんじゃないですか?
個人の好き嫌いは、それはそれで結構なんですけど、「何を言ったか」じゃなくて、「誰が言ったか」で意見や行為の是非を判断するってのは、それこそ、レイシストど真ん中なんじゃないかと思いますが、いかがなもんですかね。
 
私は竹中平蔵さんが大嫌いですけど、彼が財政均衡論が間違いだと言ったことについては肯定しますよ。正直、感情的には引っかかりますから、渡辺さんたちの気持ちは分からんでもないですけどね。
 
ちょっと長くなってしまいましたね。それでは、このへんで。

 

  

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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