本記事は、MMT解説ではありません。
思うところを[番外]ということで記事にしてみた次第です。
当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。
当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。
こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。
本記事における税制の説明はこちらのwebページで公開されているPDFの内容に基づいています。
目次
本日のお題
前回までで、これらの説明をしてきました。
( ゚д゚)<ほいじゃあ、前々回の予告どおり消費税の計算方法を教えてくれるか。
(´・ω・ `)<おけ。まず、消費税の納付税額は、次の式で計算します。
( ゚д゚)<うい。これはもうさすがに覚えたで。
(´・ω・ `)<ほいじゃ、今日はこの式の中の《消費税額》の計算方法を説明していこか。《仕入税額控除》の計算は次回になるかの。
ということで、続きましてこれをやっていきます。
【消費税額の計算方法】
(´・ω・ `)<よろしゅう。
消費税額の計算方法
消費税額は、1年ごとに決算(1年間で積み上げた仕訳のとりまとめ)のタイミングで、これら↓の作業を行うことで算出します。
- 全仕訳を売上だけに絞り込む。
- 売上を不課税・非課税・免税・8%課税・10%課税の区分ごとにまとめる。
- 区分ごとに金額を合計する。
- 区分ごとの合計金額をこの↓式の「取引価格」のところに当てはめる。
-
区分ごとの消費税額を合計する。
( ゚д゚)<そんなペラペラしゃべり倒されても、それだけじゃあ、よー分からんぞ。
(´・ω・ `)<せやな。実際にやってみよ。
それでは実際にやってみましょう。
例えば、1年間でこれだけの↓仕訳を積み上げたとします。
1.売上だけに絞り込みます。
2.不課税・非課税・免税・8%課税・10%課税の区分ごとにまとめます。
3.ここから新しく表を作って、区分ごとの合計金額を計算します。
4.区分ごとの金額合計をこの↓式の「取引価格」のところに当てはめて、区分ごとの消費税額を計算します。
5.区分ごとの消費税額を合計します。
ということで、「消費税額は270円」と求まりました。めでたしめでたし。
(´・ω・ `)<どや。これはそんなに難しくないやろ。
( ゚д゚)<せやな。実際やるとなったら大変そうやけどな。
(´・ω・ `)<いや、そうでもないで。
( ゚д゚)<あれ、そうなんか。
(´・ω・ `)<まあ、そのへんはおまけで話すわ。次の話題に行こか。
消費税の価格転嫁
続きまして、事業者がこの消費税をどうやって価格転嫁するかを見ていきます。
ガソリン税の価格転嫁
と、その前に、[番外5-1]のガソリン税の価格転嫁の仕組みを復習しておきましょう。
1.まず、ガソリン税の存在を無視して価格を考えます。ここでは、ガソリンメーカーは、原油を100円で仕入れて、製造したガソリンを150円で売り、50円の利益を得ようとしているとします。
2.ここでガソリンメーカーにガソリン税53.8円が掛かってくると、ガソリンメーカーの利益は-3.8円つまり3.8円の赤字になります。
3.ガソリンメーカーは、ガソリン税を払いつつ、元々の50円の利益をキープするためにガソリンの販売価格を53.8円値上げして、203.8円にします。
このように自身の売り物に課税される分だけ、その売り物の販売価格を値上げすることで実質の負担を買い手に転嫁し、元々見込んでいた利益をキープすることを《価格転嫁》と言います。
消費税の価格転嫁
(´・ω・ `)<ほいじゃあ、これと同じ要領で消費税を価格転嫁してみよか。
1.まず、消費税の存在を無視して価格(="本体価格")を考えます。ある事業者が何らかの商品を100円で仕入れて、150円で売り、50円の利益を得ようとしているとします。
2.ここで150円の売上にかかる消費税は、この↓式より、150×10%/(100%+10%)=13.636363…で、端数を切り捨てて13円です。
3.よって、事業者に消費税13円が掛かり、事業者の利益は37円に減ります。
4.事業者は、消費税を払いつつ、元々の50円の利益をキープしようと、販売価格を13円値上げして、163円にします。
(´・ω・ `)<ところが、ここで問題発生や。
( ゚д゚)<と言いますと?
(´・ω・ `)<事業者が価格を163円に値上げすると、その163円で消費税が再計算される。163円で再計算すると、消費税は163×10%/(100%+10%)=14.818181…になる。ほいで164円に値上げしたら、また164円で再計算することになる。
( ゚д゚)<おお、そういうことか。キリが無いな。そら困ったの。
(´・ω・ `)<いや、キリが無いわけじゃないで。
( ゚д゚)<せやな、キリが無いわけじゃないな。
(´・ω・ `)<あのさあ。
( ゚д゚)<なんじゃい。
(´・ω・ `)<まあええわ。でな、このループは165円でキレイに収まる。165×10%/(100%+10%)=15円ぴったしや。
( ゚д゚)<ほんほん。それはよかったけど、でも毎回こんなんやってたら事業者さんはたいへんやな。
(´・ω・ `)<いや、実際には、一発で165円つまり「15円乗せたらええんや」って見つける方法があるで。
( ゚д゚)<えっ、そんなんあるんか。
(´・ω・ `)<元々の金額の150円に税率(10%)を掛けた額を乗せればええんや。てか、普段そうしとるやろ。試しに他の金額でも同じように計算してみよか。
( ゚д゚)<おお、おお、全部うまいこと税引き後も元々の利益がキープされとるの。よーこんなもん見つけたな。かしこい人ってのはおるもんじゃのー。
(´・ω・ `)<ああ、いや、たぶんやけど、逆や。
( ゚д゚)<逆って、何がよ。
(´・ω・ `)<これはあくまで、ただのぼくの推測やけどな。「いくら乗せたらいいかをこうやって簡単に計算できるようにする」ってのが先にあって、そこから逆算してこんな↓ややこしい計算式を作ったんやと思うで。
イートイン脱税の話
こちらの動画、ぜひとも全編見ていただきたい良動画なのですが、
ただ・・・11:25のところの「イートイン脱税」のくだりが、若干"分かってる人にしか分からない"説明になってるかな、という気がして、そこが残念だったので、僭越ながら補足の説明をしてみようと思います。
"イートイン脱税"とは
森井さんが言われてた"イートイン脱税"とは、どういう場面かというと…
( ゚д゚)<ハンバーガー屋さん。こにゃにゃちわ。
(´・ω・ `)<いらっしゃーせー。
( ゚д゚)<ハンバーガー1つくださいな。
(´・ω・ `)<店内?持ち帰り?
( ゚д゚)<持ち帰りで。
(´・ω・ `)<ほいじゃあ、500円と消費税8%で540円になります。
( ゚д゚)つ[540]
■⊂(´・ω・ `)<まいど。ハンバーガーどぞー。
( ゚д゚)つ■<あんがと。むしゃむしゃ。
(´・ω・ `)<ちょいちょいちょいw
( ゚д゚)<あ?なんやねんな。むしゃむしゃ。
(´・ω・ `)<むしゃむしゃやめろ。きみ、「持ち帰り」言うたやん。
( ゚д゚)<言うたよ。でも気が変わってん。
(´・ω・ `)<えええ・・・
( ゚д゚)<大丈夫。ほんのちょっとの勇気さえあれば、きみだって変われるんやで。むしゃむしゃ。
(´・ω・ `)<そういうのええから。店内で食うなら、消費税は10%じゃけー、550円や。10円足りひんぞ。あと、むしゃむしゃやめろて。せめて席に座って食えや。
( ゚д゚)<げぷー。もう食い終わってもうたがな。ごっそさん。
(´・ω・ `)<ほんま、しばいたろかこいつ。
( ゚д゚)つ■<なんちゃってー。まだ食い終わってませーん。むしゃむしゃ。
(´・ω・ `)<ほんまこいつ。出てけー。
( ゚д゚)<言われんでも出てったらあ。
(´・ω・ `)<おとといきやがれー。
( ゚д゚)ノシ<明日も来るでー。
・
・
・
(´・ω・ `)!!!
(´・ω・ `)<あいつ!10円払ってへんやんけ!
脱税なんかないぞ
まずは、2人のやり取りからエッセンスを抜き出してみましょう。
- (´・ω・ `)は、「持ち帰りハンバーガーの販売」の取引区分は《8%課税売上》だから、500円に8%を掛けた40円を乗せて、540円請求した。
- ( ゚д゚)は、540円を払って、ハンバーガーをその場で食った。
- (´・ω・ `)は、その場で食うなら、この取引は「外食用ハンバーガーの販売」で、取引区分は《10%課税売上》になるから、500円に10%を掛けた50円を乗せた550円を請求し直して、差額の10円を払うように求めた。
- ( ゚д゚)は、550円の支払いを拒否した。
これについて、
(゚⊿゚)<( ゚д゚)は、消費税を50円払わないといけないのに40円しか払ってない!脱税だ!
と言われる方がよくいらっしゃいますが、森井さんのおっしゃるとおり、このやり取りの中に脱税行為は存在していません。
消費者は脱税できない
まず第一に、しつこいようですが、消費税は、消費に掛かるものではないし、消費者が払うものでもありません。事業者が払うものであって、消費税の税務処理は、[番外5-1]のガソリン税と同じく、政府と事業者の間だけで完結しています。
よって、消費者である( ゚д゚)には、消費税を支払う義務も手段も無いわけですから、そもそも脱する税が無く、脱税というものが成り立たないわけです。
(´・ω・ `)と( ゚д゚)との間に存在する事実は、これ↓(「ハンバーガーが540円で売買された。」)だけです。2人の間に消費税のやり取りは存在していません。
"イートイン脱税"の税務処理
それでは、この取引が消費税の計算上では、どのように処理されるかというと…
(´・ω・ `)<ほいじゃあ、500円と消費税8%で540円になります。
この時点では、(´・ω・ `)は、この取引について、こういう↓仕訳を作成することと、40円の消費税が課税されることを見込んでいたわけですが、
( ゚д゚)がその場で食ってしまったので、こういう↓仕訳を作成することになり、消費税が49円課税されることになります。
結果、(´・ω・ `)は、消費税49円のうち、9円は価格転嫁できず、元々見込んでいた利益を削られることになってしまいます。
要するに、「(´・ω・ `)が見込みを誤って、価格転嫁の計算を間違えただけ」という処理になります。
以上が森井さんが動画内で言われていた
「そしたら、『税込みで108円でした』という処理で、事業者は申告をしなければいけないだけなんですね。」の意味です。
"預かり金"ではない
(´・ω・ `)<おかわりいただけるだろうか…
( ゚д゚)<お持ち帰りですか?
(´・ω・ `)<てめえはさっさと10円払え。
「事業者と消費者の実際の取引場面で、事業者が消費者から『消費税分』としていくら受け取ったか」ということは、消費税額の計算において全く考慮されません。
事業者がどれだけ価格転嫁したか、消費者が"本体価格"にどれだけ上乗せして支払ったかは、消費税の計算に関係ないわけです。
ということは、つまり、消費税法のシステムは「事業者が消費者から本体価格とは別個に消費税を預かり、その預かったカネを税務署に納める」という仕組みにはなっていません。
そういうふうに説明する人もいますが、ウソです。もしくは勉強不足による間違いです。
橋下氏はれいわが反対するインボイス制度にテーマを変え「インボイスは廃止だ、と。インボイスが導入されると、中小、零細企業の人が消費税を奪われます、と言うけれど、事業者が預かっている消費税というのは、我々の税金なわけです。いま実質1000万の方々は免税、となっていますけれど、よく考えたら消費者、サラリーマンの方は源泉徴収で一銭たりとも税金をもらすことは許されない、サラリーマンの方々が事業者に預けている消費税をインボイス制度で納税するのは当たり前じゃないですか。税金の不公正を正すのが政治の役割でしょう。預かっている税金をある意味ポケットに入れてもいいよ、なんていうことを、インボイス廃止だと言うことは、多くのサラリーマンを、納税をしている人たちを馬鹿にしている話だと思いますよ」と投げかけた。
橋下さん・・・(´・ω・ `)
違うぞ(笑)
勉強しろ(笑)
この件について、詳しくはcargoさんのブログで詳細に解説されています。ぜひご覧ください。
こんなもんさっさと廃止したらええねん(´・ω・ `)
おまけ
エクセルに《配列数式》という機能があるのをご存じでしょうか。
こいつが慣れるまではなんとも使いづらいんですが、使えるようになると革命的にエクセルが便利になります。少なくとも、初めてこれを知った昔の私にとっては革命的でした。
どう便利になるかというと、例えば、本記事で消費税額の計算の際に、
- 全仕訳を売上だけに絞り込む。
- 取引区分ごとにまとめる。
- 区分ごとの金額を合計する。
という作業をすると説明しましたが・・・
これらを全部まとめて自動化できます(`・ω・´)
絞り込みも並べ替えも不要です。さらに、仕訳を記録する表をテーブルに指定しておけば、仕訳を日々追加していくだけで、追加するたびに自動で再計算されていきます。
その他にもいろいろ便利な使い方がありますので、ご興味を持たれた方は「エクセル 配列数式」でググってみてください。
日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。
私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。
( ゚д゚)<最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!!
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