経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

番外5-12.消費税の仕組み【輸出戻し税】

本記事は、MMT解説ではありません。

思うところを[番外]ということで記事にしてみた次第です。

 

当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

 

当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

xbtomoki.hatenablog.com

 

本記事における税制の説明はこちらのwebページで公開されているPDFの内容に基づいています。

www.nta.go.jp

 

目次 

 

本日のお題

前回までで、これらの説明をしてきました。

(´・ω・ `)<ほいじゃ、早速はじめます。

本日のお題はこちらです。

【"輸出戻し税"とは】

( ゚д゚)<輸出戻し税・・・なんだか聞き覚えが・・・

(´・ω・ `)<せやろな。[番外5-6]でちょろっとだけやったけーの。

( ゚д゚)<そうか・・・ううっ!頭がっ!

(´・ω・ `)<えっ、どしたん?

( ゚д゚)<闇の力がっ・・・目覚めるっ・・・!

(´・ω・ `)<・・・始めるで。

( ゚д゚)<なんじゃー。機嫌悪いの。お腹痛いん?

(´・ω・ `)<はよ始めるで。だいたいきみ、そこからの展開とか考えてないやろ。

( ゚д゚)<たしかにそうかもしれん。

(´・ω・ `)<「そうかもしれん」ちゃうわ。きみのことや。

( ゚д゚)<たしかにそうかもしれん。

(´・ω・ `)<あーもう。

 

"輸出戻し税"とは

まず、[番外5-3]のとおり、ある取引が消費税の課税対象になるかどうかは、

  • 国内取引であること
  • 「資産の譲渡等」が事業者が事業として行うものであること
  • 「資産の譲渡等」に対する「対価」が支払われていること
  • 「資産の譲渡等」の内容が資産の譲渡または貸付もしくは役務の提供であること

の4要件を全て満たすかどうかで決まります。どれか1つでも満たさない場合、その取引は課税対象外で、《不課税取引》に区分されます。

 

[番外5-6]のとおり、輸出取引は《免税取引》に区分されます。というか、《免税取引》に区分されるための条件が「輸出取引であること」となっていますので、【免税取引≡輸出取引】です。

《免税取引》は、4要件全てに該当するので、消費税の課税対象であり、輸出取引による売上には消費税が課税されます。但し、適用される税率が0%となっているため、実質的には課税を免除されることになります。

 

消費税法上の取引区分には、《非課税取引》という区分もあります。《非課税取引》とは、【4要件全てに該当するので、本来なら課税対象だけれども、政府が政策的に課税対象外とする取引】です。代表的なものとしては、「健康保険が適用される医療提供」があります。

 

課税・非課税・免税の差

本日もこの【事業者が、110円で仕入れた商品を、165円で販売する。事業者の消費税引前利益は55円。】という設例をベースに説明していきます。

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165円の売上が10%課税売上に該当する場合、消費税額は15円で、仕入税額控除は10円なので、事業者の税引後利益は50円になります。

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事業者が病院で、165円が非課税売上の場合、消費税額がゼロになりますが、仕入税額控除もゼロになりますので、病院の税引後利益は元のパターンと同じ55円です。

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そして、165円が免税売上の場合、消費税額は適用税率が0%なのでゼロです。

ここまでは非課税売上の場合と同じですが、免税売上では、仕入税額控除を10%課税売上の場合と同様に受けることができますので、10円バックされて、輸出屋さんの税引後利益は65円になります。

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このように、《免税取引》という区分があることによって、輸出業者にとって、消費税は納めるものではなく、受け取るものになっています。

これがいわゆる"輸出戻し税問題"です。

(´・ω・ `)<これについて「ズルい」って言う人と、「ズルくない」って言う人がおるわけよ。

( ゚д゚)<パッと見、ズルいっぽい感じがするけどな。実際はそうでもないんか?

(´・ω・ `)<そしたら財務省さんに聞いてみよか。

 

財務省の意見

この問題について、[国税庁のホームページ]では、このように説明されています。

(´・ω・ `)<なんで輸出取引だけ免税するんですか?

(゚⊿゚)<消費税は国内の消費に掛かる税です。輸出品は外国で消費されます。よって、これに消費税を掛けることは妥当でないからです。

( ゚д゚)<いやいや、消費税は消費に掛かってへんやろ。

(゚⊿゚)<は?次の質問どうぞ。

( ゚д゚)<腹立つの、こいつ。

 

(´・ω・ `)<なんで輸出屋さんは免税されるのに、仕入税額控除が受けられるんですか?

(゚⊿゚)<輸出屋さんは仕入のときには消費税を払っていますから、仕入税額控除を受けることができます。

( ゚д゚)<消費税を払うのは仕入先であって、輸出屋さんは価格転嫁されとるだけやろ。

(゚⊿゚)<は?次の質問どうぞ。

( ゚д゚)<ほんまこいつ。てか、その理屈で言ったら病院も消費税払っとるやん。なんで病院はダメで輸出屋さんはOKなん。

(゚⊿゚)<仕入税額控除は課税売上割合に応じた額と決まっているからです。

( ゚д゚)<"決まっとる"んじゃなくて、君らがそう"決めとる"んじゃろ。じゃけん、「なんでそう決めとんのか」って聞いとんじゃろがい。

(´・ω・ `)<まあまあ、この人にいくら言うてもしゃーない。次行くで。

( ゚д゚)<ガルルル・・・

 

グレンさんの意見

続いて、輸出戻し税はズルくない派、つまり【輸出屋さんは輸出戻し税によって、得をしているわけではない。】という方の意見も見てみます。

note.com

(´・ω・ `)<きちんと説明されてあるけー、詳しくはちゃんとグレンさんの記事を読んでもらいたいんやけど、読んでもらってる前提で説明を進めるのは無理があるけー、ざっくり要約するで。

( ゚д゚)<おう、頼むわ。

(´・ω・ `)<まず、いったん消費税を無いものとして考えたら、こう↓なるじゃろ。

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(´・ω・ `)<で、消費税込みで考えたら、もし10%課税取引なら、販売価格に10%(15円)乗せるじゃろ。んで、このときに仕入も10%(10円)乗って110円になる。んで、事業者が消費税を差し引き5円納めて、こう↓なる。

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(´・ω・ `)<もしこれが免税取引なら、販売価格に10%を乗せへんから、こう↓なる。

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( ゚д゚)<ん?

(´・ω・ `)<まあ最後まで聞きんしゃい。

( ゚д゚)<うい。

(´・ω・ `)<よし。さて、事業者は、課税売上だろうが免税売上だろうが、どっちでも最終的な利益は50円や。ほいで、もし免税売上について仕入税額控除が認められへんかったら、それが40円になってもうて、事業者は免税売上の方が利益が少なくなってしまう。

( ゚д゚)<んー・・・まあええわ、続けて。

(´・ω・ `)<せやから、輸出戻し税は不公正なんかじゃない。むしろ免税によって輸出屋さんが不当に受けてしまう損失を補填するためのもんなんや。以上。*1

 

グレンさんの説明では、課税売上だろうが免税売上だろうが、事業者の最終的な利益は50円です。しかし、冒頭の説明だと、事業者の利益は、課税売上については50円で同じですが、免税売上については65円でグレンさんの説明より15円多くなっていました。

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(´・ω・ `)<さて、何が違うでしょう。

( ゚д゚)<そらグレンさんのは150円で売っとるもん。15円安く売っとるから利益が15円減っとるだけや。

(´・ω・ `)<そういうことや。

[番外5-8]のとおり、そもそも、"本体価格"なんてものは、政府が想定した架空の概念で、実在するものではありません。事業者と消費者の間に存在する取引事実は、「事業者が165円で売り、消費者が165円で買った。」これだけです。

課税売上については、55円の税引前利益が消費税によって15円削られて、仕入税額控除で10円回復し、最終利益が50円、というのはどちらも同じです。

一方、免税売上については、グレンさんの事業者は、わざわざ15円値引きすることで、自ら利益を15円削っています。

値引によって、課税取引の場合に消費税で削られる分と同じだけ利益を削ったわけですから、課税取引の場合と同じだけの仕入税額控除を受けないと、利益が小さくなってしまうのは当然であり、それを受ければ課税取引の場合と同じ利益になるのも当たり前です。

よって、「輸出屋さんは、仕入税額控除を受けられなかったら、不当な損失を受けてしまう」ということもありません。その損失は、ただ単に自分で値引きした分だけ利益が小さくなっただけです。

( ゚д゚)<じゃあやっぱり輸出戻し税はズルいんか?

(´・ω・ `)<輸出戻し税が輸出屋さんへの補助金っていうか、優遇政策になっとるのは確かやな。ただ、身も蓋も無いようやけど、これをズルいと思うかどうかは人それぞれじゃけー、何とも言えんよ。

政府が国益のためにあえて特定の産業を選択的に支援する政策を行うことはおかしなことではありません。限度はありますが(´・ω・ `)

それに、税は財源ではないので、輸出屋さんが補助金をもらったからと言って、誰かが損をするわけでもありませんし、輸出戻し税を無くしたら、私たちの暮らしが豊かになるわけでもありません。

 

まとめ

それが不当かどうかは置いといて、輸出戻し税は、輸出屋さんにとって、"お得"な優遇政策であることは客観的な間違いのない事実です。

一方で、私はこれに目くじら立てて「ズルいズルい」と非難する気もありません。私を含め日本国民が輸出戻し税によって損をしているわけではないからです。

但し、[7-5]のとおり、政府が輸出を支援することは、国民生活向上にとってはマイナスであることには注意が必要です。

 

ズルい派の皆様へ

消費税を廃止しましょう。そうすれば、輸出戻し税も一緒に廃止されて問題解決です。

 

ズルくない派の皆様へ

消費税を廃止しましょう。そうすれば、輸出屋さんがイチャモン付けられることがなくなります。

 

結論

こんなもんさっさと廃止したらええねん(´・ω・ `)

 

それでは本日ここまで。

 

2021.12.29 追記

グレンさんより、本記事について、このように指摘をいただいてます。こちらのツリーに書いていただいたグレンさんの意見も、記事内容と併せて読んでいただければと思います。

 

おまけ

2021年中の更新は、本記事で最後になります。

 

相変わらず政府も世論もガチガチのネオリベ緊縮財政主義が断然多数派で、大して明るいニュースも無いわけですが、下を向いてても仕方ありませんからね。たまにはそんな気分になることもありますが、今後も精一杯前を向いて、自分のやるべきことをやっていきたいと思います。

 

(´・ω・ `)<それでは、今年も1年間どうもありがとうございました!!

( ゚д゚)<また来年もよろしくお願いいたします!!

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

( ゚д゚)<最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!!

応援コメント、指摘コメント、お待ちしております!当ブログの拡散も大歓迎です!

よろしくお願いします!

 

*1:グレンさんへ:要約に間違いがあったらご指摘ください。