経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

3-4.銀行の役割 その4 (借入・貸付)

銀行の総資産と総負債が、各々400ドルになっていることに注目しよう。銀行は200ドルの貨幣をまさに創造したのだ。

MMT現代貨幣理論入門』kindle版 186/553pp


当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

  

当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。

MMT現代貨幣理論入門

MMT現代貨幣理論入門

 

 

おさらい

まずは前々々回・前々回・前回の内容をおさらいしておきます。

xbtomoki.hatenablog.com

  • 銀行への預金行為の実質は銀行に貨幣を貸し付ける行為である。だから銀行は預金に利息を支払う。

  • 銀行預金は銀行の負債であって、「要求されたら、同額の現金通貨を支払う」という約束の証拠である。

  • マンキューは超スタンダード。
 

xbtomoki.hatenablog.com

  • 銀行融資とは、銀行が新たな貨幣を発行する(誕生させる)行為である。その貨幣は融資した銀行に預けられて、"銀行預金"になる。
  • 銀行は融資を行うにあたって、元手や原資といった何か"先立つもの"を用意する必要はない。
  • マンキューはワンダーランド。
 

xbtomoki.hatenablog.com

  • 現金引出し・他行振込・納税仲介のプロセスでは銀行の日銀当座預金が減る。
  • 銀行はこれらの取引を行うにあたって、"先立つもの"、つまり日銀当座預金を用意する必要がある。

 

銀行の借り入れ先

前回記事からの話を続けます。

銀行は、顧客からの現金引出し、他行振込または納税仲介の依頼を受けたとき、それを遂行するためには"先立つもの"、つまり日銀当座預金を用意しなければなりません。

銀行の日銀当座預金の残高が既に足りていれば粛々と前回記事で説明したような作業をこなせば済みますが、そうでなければどこかから借りてこなければいけません。

一応、手持ちの資産を売りに出す、という方法もありますが・・・

そこで、銀行は借入先を次の2つから選択することになります。

  • 日銀
  • 他の銀行

 

日銀から借りる場合

日銀から借り入れる場合の仕訳はこちらのとおりです。

f:id:xbtomoki:20201109115441p:plain

市中銀行が企業に融資をするときと同じ構造です。この取引では、日銀が"日銀預金"を創り出して、銀行に貸し付けます。

ちなみに、この貸付の利率は、日銀が自身の政策方針に従って決定する"基準貸付利率"(現行は年率0.3%)が適用されます(詳しくは下記リンク参照)。

以前の「公定歩合」は、現在、どのように位置づけられていますか? : 日本銀行 Bank of Japan

 

他の銀行から借りる場合

他の銀行から借り入れる場合の仕訳はこちらのとおりです。

f:id:xbtomoki:20201109140313p:plain

とても単純ですね。

A銀行がB銀行宛てに借用書を書いて、貸主の日銀預金が借主の口座に移動するだけです。新しい日銀預金が創出されるわけではありません。ここで創出されているのは、A銀行が発行した"借入金"だけです。

 

翌日物金利の話

そろそろ仕訳ばっかり見過ぎてお腹いっぱいですね。ここでちょっと話題を変えましょう。

銀行間の日銀預金の貸し借り(無担保コール翌日物)は、実際には直接やり取りするわけではなく、株式市場みたいに翌日物市場があって、市場が貸したい銀行と借りたい銀行を仲介します。

つまり、貸したい銀行が市場に「●%の金利で貸しますよー。誰か借りたい人はいませんかー」と貸し注文を出し、借りたい銀行が「誰か貸してくださいー。金利は★%まででお願いしますー」と借り注文を出します。●と★の金利条件がマッチする組み合わせが生まれたら市場が取り次ぐ、という仕組みです。

この「●%の金利で貸しますよー。」という貸し注文の金利がどうやって決まるのかを見てみましょう。

 

翌日物金利の上限

翌日物金利は、日銀が銀行へ貸し付けるときの"基準貸付利率"が上限になります。

もし翌日物金利が5%で、日銀の金利が3%だったら、借主となる銀行は翌日物市場から借りるメリットが無く、日銀から借りる方を選びますので、これでは永久に条件がマッチしません。貸し手は金利が高ければ高い方が得をしますが、高すぎて借りてもらえないと意味がありませんので、貸し注文は必ず基準貸付利率より低い金利で出されます。

 

翌日物金利の下限

翌日物金利は、日銀が銀行に支払う日銀預金の預金利息の利率が下限になります。

もし日銀預金の預金利息利率が1%だったら、貸主となる銀行は手持ちの日銀預金を例えば0.5%で貸し出すメリットがありません。貸し出すんじゃなくて、日銀に預けておいた方がより安全に、より多くの収益を得られるからです。よって、貸し注文は必ず日銀預金の預金利息より高い金利で出されます。

 

金融政策とは 

ということで、翌日物金利は、必ず日銀預金利息より高く、基準貸付金利より低くなり、次のようになります。

日銀預金利息 < 翌日物金利 < 基準貸付金利

つまり、翌日物取引は、それ自体は銀行同士の純粋な民間内部取引ですが、その金利は日銀がコントロールすることができます。

そして日銀は政策目的を達成するために、これがいい感じの所に収まるように日銀預金利息・基準貸付金利を調整するわけです。こういうのを"金融政策"と言います。

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

本日のおまけは、山本太郎を伝える動画のなるみさんが先日アップされた学術会議問題に関する質疑のまとめ動画です。菅さんの答弁の支離滅裂っぷりがよく分かります。エンタメ動画としても楽しめると思いますので、ぜひご覧ください。

 

 
『学術会議問題まとめ』全集中の呼吸『国会ハイライト』

本音を言えば学術会議より三次補正予算に力点を置いてほしいんですが、これはこれで時間をかけるべき問題であることもたしかだと思います。

どこが問題点かと言えば、学問の自由侵害・人事権濫用・アクロバット法解釈・"既得権"レッテル貼りからのごり押し・・等々いろいろありますが、私ならこうつっこむけどなあ、と思うのが、

いままで推薦されたらそのまま任命する慣例で事務処理を進めてたのを、官邸が土壇場でいきなり拒否してきたわけですよね?てことはですよ、その他にも似たようなのってたくさんあるはずなんですよ。実質の作業は下部組織でやっちゃって、形式だけ内閣が任命するみたいなやつ。

今後はそういうの全部いちいち総理大臣まで根回しして、内々のお墨付きをもらってからじゃないと、いつちゃぶ台ひっくり返されるか分からんし、なんならしっかり根回ししてても、ひっくり返されるかもしれないわけですよね。

こんなんで役所はちゃんと機能するんかなあ。菅さんも何でもかんでも持ってこられて、朝から晩まで書類にサインしてます、とかなるんちゃうかなあ・・・

 

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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3-3.銀行の役割 その3 (引出・振込・納税)

銀行の総資産と総負債が、各々400ドルになっていることに注目しよう。銀行は200ドルの貨幣をまさに創造したのだ。

MMT現代貨幣理論入門』kindle版 186/553pp


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おさらい

まずは前々回・前回の内容をおさらいしておきます。

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  • 銀行への預金行為の実質は銀行に貨幣を貸し付ける行為である。だから銀行は預金に利息を支払う。

  • 銀行預金は銀行の負債であって、「要求されたら、同額の現金通貨を支払う」という約束の証拠である。

  • マンキューは超スタンダード。
 

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  • 銀行融資とは、銀行が新たな貨幣を発行する(誕生させる)行為である。その貨幣は融資した銀行に預けられて、"銀行預金"になる。
  • 銀行は融資を行うにあたって、元手や原資といった何か"先立つもの"を用意する必要はない。
  • マンキューはワンダーランド。

 

預かり・融資以外の仕事

銀行屋さんは忙しい仕事です。貨幣を預かる、貨幣を貸し出す、それ以外にも日々、こんな業務も処理してくれています。

  • 現金引き出し
  • 預金振り込み
  • 納税の仲介

これらには共通点があるので一気に仕訳を見ていきましょう。

なお、ここでいう"振込"は他銀行口座への振込を考えます。自銀行内の振込はサザエさんの口座残高を減らして、マスオさんの残高を増やすだけなので解説は必要ないでしょう。

 

現金引出・他行振込・納税仲介

 

現金引出

顧客が現金を引き出すときの仕訳はこちらです。

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これは簡単ですね。特に解説の必要も無いと思います。

 

他行振込

A銀行の顧客のサザエさんが、タラちゃんのB銀行の預金口座にカネを振り込むときの仕訳はこちらです。ちょっとややこしいです。

ここでは、分かりやすくするために、サザエさんがタラちゃんに仕送りをするのを想定しています。

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他行振込では、カネの動きはA銀行とB銀行の間だけで完結せず、日銀が絡みます。

サザエとタラだけを見れば、振込額の分だけ、サザエの銀行預金が減って、タラの銀行預金が増える、ただそれだけなので、日銀をはさむ必要は一見なさそうですが、

  • A銀行は"サザエの銀行預金"という負債が減っている(利益を得ている)。
  • B銀行は"タラの銀行預金"という負債を増やしている(損失を受けている)。
  • 顧客の決済を手伝っただけでAが利益を得て、Bが損失を受けるのはフェアでないので、その分だけAがBに日銀預金を支払ってこれを清算する。

この最後の清算作業が必要なのでA銀行とB銀行がともに口座を持っている日銀が絡む必要が生まれます。

 

納税の仲介

顧客が自分の銀行預金で税を納めるときの仕訳はこちらです。他行振込が分かれば問題なく理解できると思います。

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政府は日銀に口座を持っているので、日銀がさっきの他行振込のB銀行の役割を兼ねています。政府は他行振込のときのタラちゃんに相当します。

 

3つの取引に共通すること

現金引出・他行振込・納税仲介の全てに共通することは"銀行の日銀預金が減る"ということです。(他行振込では振込元のA銀行の日銀預金が減り、振込先のB銀行の日銀預金が増える。)

 

融資は何も無い所から貨幣を誕生させるものですから、先立つものは不要です。しかし、これらの取引には元手となる銀行の日銀預金が必要になります。

 

元手の日銀預金が無かったら?

それでは、銀行が経営難だったり、もしくは一時的な資金繰り悪化で、例えば顧客の引き出し要求に応じるための日銀預金が不足してしまったとき、銀行はこのピンチをどう凌ぐでしょうか。

 

方法は2つあります。

  1. 日銀から借りる。
  2. 他銀行から借りる。

 

日銀から借りるパターンは銀行融資と同じ仕組みです。

他銀行から借りるパターンは、"無担保コール翌日物"なんていう大げさな名前が付いてます。これは銀行融資よりも個人間の貸し借りに似ています。また、この翌日物には金利に関する重要な構造があります。

次回は、このあたりを説明しようと思います。

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

本日のおまけは大阪市廃止の阻止達成について少しばかりコメントをしようと思います。

 

ひとまず、何にしても安心しました。選挙速報で思わずガッツポーズしたのなんて初めてです。

私の勝手な推測ですが、維新の思惑はこんなところだったんでしょう。

大阪市の市税として集まってくるカネをもっと都合のいいように使いたい。例えば橋下さんに講演料の名目で横流しとか。しかし、さすがに市税を大阪市の事業以外には使えない。そうだ!ええこと考えた!大阪市を廃止して、市の税収を府に吸い上げて、どれがどれだかよく分からないカネにしてしまおう。そうすれば、大阪府にちょっとでも関係があれば、どうとでもこじつけられる。
 
しかし、そんなことを馬鹿正直に言ったら票が取れません。そこでこういう作戦に出たわけです。
 

"大阪の成長を阻害する既得権益"とかいうどこにも存在しないオバケを描き出して、"庶民を苦しめる巨悪と戦う正義のヒーロー吉村さん・松井さん"を演出してB層の票を集めよう。

  

"B層"の意味が分からない方はこちらの動画をどうぞ
 
そもそもの目的が邪悪極まりないのも嫌気が差しますが、それ以上に今回の住民投票が反対多数になってほんとによかったと思うのは、この維新の(維新だけがやってくるわけじゃないですけど)オバケを描いてB層を煽る作戦が失敗に終わったことです。
 
もし、あれが可決されてたらどうなっていたでしょう。
存在していないオバケをやっつけたところで間違いなく大阪が成長することはありません。すると維新はきっとこう言い出します。
大阪市を廃止しても成長しないのは■■のせいだ!」
そして煽られた民衆は■■を叩きのめします。それでも大阪は成長しません。すると維新はまた別のオバケを描いて「▲▲のせいだ!」と言い出します。
 
『おおきなかぶ』っていう絵本がありましたね。あれってカブが抜けないのは抜く力が足りないからじゃないんです。おじいさんがカブを踏んづけてるからなんです。
維新が次々とターゲットを探し出して叩きのめせと煽る様子は次々に家族を呼び出すおじいさんにそっくりです。
大阪の成長に必要なのはオバケ退治ではありません。カブを踏んづけている足をどけることです。
 
大阪市民は終わりなき叩きあいを繰り広げ、最後に残るのは維新が生かしておいてメリットのある人だけでしょう。ナチスドイツと全く同じ構図です。
 
ひとまずそんな地獄絵図が回避されて、ほんとによかったです。

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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複式簿記とは? ver.2

まずは複式簿記を掴んでください

当ブログでは、お金の動きを複式簿記の方式で説明しますので、これを理解していただかないとチンプンカンプンになると思います。ぜひともご一読ください。

 

概説

"複式"というからには"単式"もあります。

単式簿記というのは、いわゆる普通のおこづかい帳とか家計簿の書き方です。

お金がいくら増えたか・減ったか、その理由と金額を記録します。

一方、複式簿記は帳簿のプロが使う記録方式です。下図のとおり、お金の動きに関する情報をストック・フローに、さらにストックを資産と負債に、フローを費用と収益に、さらにそれぞれを具体的な小分類に細分化して、1つ1つの取引を記録します。

※小分類を"勘定科目"または"科目"と呼びます。

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このとき、あらゆる取引は2面性があるので、その両方を記録するのが複式簿記の特徴です。

言葉だけで説明すると難しそうですね。

 

百聞は一見にしかず

例)100万円の給与収入があり、そこから30万円を引き出して、家賃30万円を現金で支払った。

これを単式・複式、それぞれの書き方で示すと次のようになります。

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なんとなく雰囲気は掴めたでしょうか?

 

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これが基本のフォーマットで、左を"借方"(カリカタ)、右を"貸方"(カシカタ)と言い、両方合わせて貸借(タイシャク)と呼びます。

借方と貸方のそれぞれに適切な勘定科目を書き込み、金額を書き込むという方式です。

中分類(資産・負債・費用・収益)を書く欄を設けてますが、この欄は自明だったり、暗記されてたりするので、普通はありません(勘定科目だけを書きます)。ただ、当ブログでは簿記初心者の方でも分かるように、中分類欄を設けて仕訳を書くことにします。

なぜ"借方貸方"と呼ぶのか?江戸時代の商人の慣習がどうのこうのみたいな理由らしいのですが、気にしてもしょうがないので、丸暗記してください。

100万円 預金|給与 100万円 のように貸借両側に金額を書くのが正しい作法らしいのですが、どうせ同じ金額ですから、意味が無いので、私は1つだけ書きます。企業合併とかのれん勘定とか出てくるようなややハイレベルなやつだと両側に書いた方が分かりやすかったりしますが、MMT解説でそのレベルの簿記が出てくることはありません。

ちなみに、この記録の一つ一つを"仕訳"と呼びます。

 

取引の2面性

"給与収入100万円"は預金の100万円増加であり、同時に給与収入100万円の発生でもあります。仕訳は次のとおり。

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"30万円引き出し"は現金30万円増加・預金30万円減少が同時に生じています。仕訳は次のとおり。

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"30万円家賃支払"は現金30万円減少・家賃費用30万円が同時に生じています。仕訳は次のとおり。

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このようにあらゆる取引には2つの側面があり、それが同時に生じます。その両方で捉えないと正確に内容を記録できません。

 

2つの大分類と4つの中分類

お金の動きの情報はストック情報とフロー情報の2つに大別できます。ストックは資産・負債に、フローは費用・収益に分かれて、中分類は合計4つになります。さっきの図をもう一度確認します。

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ストック情報

ストック情報とは資産(現金預金等)と負債(借入金等)で、その差額は純資産と呼びます(負債の方が多いときは"純負債"と呼ぶこともあります)。

ストック情報を整理すれば、"お金がいまいくらあるのか、その内訳はどうなっているか"が分かります。

ここで資産は増えたら借方に、負債は逆で増えたら貸方に書く決まりになっています。減ったときは、それぞれ逆側に書きます。

なぜ資産は増が借方で、負債は逆なのか?これはそういう決めごとです。これも丸暗記してください。

 

例1:現金を銀行口座へ入金

→現金(資産)が減って、預金(資産)が増えた。

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例2:現金でお金を借りた

→現金(資産)が増えて、借入金(負債)も増えた。

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フロー情報

フロー情報とは費用と収益です。

フロー情報を整理すれば、"一定期間のうちに外部とお金をいくらやり取りしたのか"が分かります。

ここで費用は発生したら借方に、収益は逆で発生したら貸方に書きます。取り消されたときは、それぞれ逆側に書きます。

 

例3:家賃を現金で支払った

→家賃(費用)が発生して、現金(資産)が減った

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例4:給与が銀行口座に振り込まれた

→給与(収益)が発生して、預金(資産)が増えた

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例5:買った食品を返品して、代金が現金で返ってきた

→食費(費用)が取消、現金(資産)が増えた

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ストックの合計はある瞬間の情報、フローの合計は一定期間の情報

ストック情報を合計して分かるのは、お金が"ある時点でいくらあるのか"です。

一方、フロー情報を合計して、収益から費用を差し引いて分かるのはお金が"ある期間でいくら動いたか"です。

 

しつこいようですが、さっきの例で各科目ごとに合計してみると、

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ストックの合計は、預金が+70万、現金は±0で、純資産は70万です。

フローの合計は、給与が+100万、家賃が+30万、収益から費用を差し引くと+70万の利益が出たことが分かり、これはストックの合計で出た純資産の+70万と一致しています。

これは必ず一致します。よくできとるもんだと感心します。

 

なぜ複式簿記を使うのか

理由は次の2つです。

  • 簡単に必要十分な情報を記述できて便利
  • 仕訳同士を合計することができて便利

上記のとおり、単式で取引の両面を記録しようとすると文章で書いたり、カッコ書きを駆使したり、たいへんなんですが、複式なら簡単・正確・綺麗に取引を記述できます。

 

また、既に見たとおり、仕訳を合計していけば、"結局全体としてどうなったのか"が簡単に分かります。単式簿記だと、こういうことはできません、

 

ただ、書き方を理解してない人にとっては意味不明という問題があります。

ですので、ぜひ、ここで複式簿記の仕組みを理解しておいてください。

 

 

最後に、ふくしままさゆき氏のこちらの動画を見ていただければ、おさらいはバッチリです。

全部見なくても27:00あたりまでで大丈夫です。


簿記3級独学応援っ!【入門!初心者の人が一番最初に見る動画:仕訳がメッチャわかる!】全24回(基礎18回+じっくり復習6回)

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

‪最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^

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3-2.銀行の役割 その2 (融資)

銀行の総資産と総負債が、各々400ドルになっていることに注目しよう。銀行は200ドルの貨幣をまさに創造したのだ。

『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 186/553pp


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おさらい

まずは前回記事の内容をおさらいしておきます。
  • 銀行への預金行為の実質は銀行に貨幣を貸し付ける行為である。だから銀行は預金に利息を支払う。

  • 銀行預金は銀行の負債であって、「要求されたら、同額の現金通貨を支払う」という約束の証拠である。

  • マンキューは超スタンダード。

 

銀行融資の仕訳

銀行の仕事は顧客の預金資産を管理するだけではありません。銀行には顧客にカネを貸す、つまり銀行融資という仕事もあります。それでは、銀行が融資をするときの仕訳を確認しましょう。何事も仕訳を確認することが大事です。なお、銀行融資は次の2段階に分けることができます。
  1. 銀行が顧客に貨幣を貸し付ける。
  2. 顧客が借りた貨幣を銀行に預け入れる。
2.の顧客の預け入れについては前回記事で説明しました。ただ、ちょっと違うところは、顧客が預けるのは現金ではなく、銀行から借りた貨幣である、ということです。
ここで、"銀行から借りた貨幣"って何よ?現金?手形?っちゅう疑問を持たれるかもしれませんが、これを気にする意味も必要もありません。何であろうと、借りた瞬間に銀行預金に振り替わって消え去りますから。現金でも何でも好きなようにイメージしてもらって構わないです。ここでは未収金・未払金とします。 

では、まずは貸付の仕訳がこちらf:id:xbtomoki:20201030162046p:plain続いて預け入れの仕訳がこちら
f:id:xbtomoki:20201030162130p:plain 
そして、まとめたのがこちら
f:id:xbtomoki:20201030163306p:plain
 

銀行融資に原資は必要ない

ここで、特に注意していただきたいのは、"銀行は融資をするときに、何の原資も必要としていない"ということです。

池上彰さんとかがよく言う"銀行は顧客からカネを集めて、それを貸し出す商売だ"という説明は誤りです。

f:id:xbtomoki:20201101121401p:image

なんでテレビ局の人は誰もつっこまないんですかね?

 

上の仕訳をもう一度確認してください。この一連の取引を行うために銀行が前もって何かを準備する必要はありません。もし、融資をする前の時点で銀行の日銀預金がすっからかんで、さらに金庫が空っぽであっても、この取引を行うのには何の支障もありません。

銀行は、融資の段階で新しく貨幣を誕生させて、それを預かるだけだからです。

 

別の角度からも銀行融資に原資が必要ないことが分かります。実際の銀行融資のとき、顧客と銀行が物理的にはどんな作業をするかイメージしてみてください。

「顧客は借用書を書く、銀行は顧客の通帳に融資分の金額を書き込む。」これだけです。

紙とペンと通帳があれば、取引はつつがなく完了します。しかもいまどき紙もペンも要りません。キーボードを叩くだけです。

 

さらに別の観点から言えば、

もし顧客から集めたカネを貸し出してるんなら、貸し出す前に一言断るのが筋でしょう。銀行業って他人のカネを無断で又貸しして儲ける商売なんですか?

そんなわけないでしょ。銀行なめんな。

 

マンキューさんの説明

前回記事で触れましたが、

xbtomoki.hatenablog.com

先日近所の図書館でマンキューさんの経済学テキストを借りてきました。

マンキュー マクロ経済学Ⅰ入門篇(第4版)

やっぱ"超スタンダード"ってなかなかのパワーワードやな、たしかにぶっ飛んでるもんな・・・

マンキューさんは銀行融資をこんな感じで説明しています。

 

まず、A銀行がサザエさんから例えば1000万円を預かって、さらにそれを日銀に預けます。

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次に貸し出しです。

ここで、銀行は日銀預金の銀行預金に対する割合をある一定以上に常にキープしなければならない、という謎ルールに従うものとします。ちなみにこの謎ルールを"預金準備制度"、その割合を"預金準備率"と言います。

ここでは、預金準備率を20%とします。

 

貸し出しの話に戻ります。

A銀行は日銀預金を800万円引き出して、現金を用意して🤔⁉️、マスオさんに800万円の現金を手渡します😦⁉️すると、マスオさんは現金800万円を紙袋に詰めて、A銀行を出て😟⁉️、B銀行に行き🤪⁉️、B銀行に預け入れます。

B銀行はそれを日銀に預けます。

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さらに貸し出しが続きます。B銀行も日銀預金を引き出して、カツオくんに640万円の現金を貸し付けます。すると、カツオくんは現金640万円を紙袋に詰めてC銀行に移動し、預け入れます🤯⁉️

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これが延々と続くと段々と金額が減っていって、いつかはゼロになり、それ以上は別途サザエさんみたいな全く新規の預け入れがないと貸し出しができなくなります。ゼロになった時点でのA銀行・B銀行・C銀行・・・の貸し出し額の合計は、最初のサザエさんの預金額を最初に設定した預金準備率の逆数倍(預金準備率が20%=1/5→これの逆数は5なので、貸し出しの合計は1000万円の5倍で5000万円が限界)した額になることが数学的に証明されています。数学好きの方はこちらをどうぞ。

よって、最初の原資(サザエさんの預金)が存在しなければ、ゼロに何をかけてもゼロですから、貸出額の限界はゼロになってしまい、銀行は貸出を行うことができません。

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かいつまむと、銀行は顧客から預かったカネを元手にして、それを預金準備率の逆数倍に膨らまして貸し出しているというのがマンキューさんの説明です。

池上さんは「預かったカネをそのまま貸し出す」という説明でしたが、マンキューさんは「預かったカネを膨らませて貸し出す」という説明です。ちょっとだけ違いますけど、基本は一緒です。

 

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

本日のおまけは、「マンキューさんを論破してみよう🤗」のコーナーです。ちょっと長いですが、ぜひご覧ください。

 

さて、マンキューさんの主張はこうです。「銀行は顧客から預かったカネを元手に貸し出し業務を行なっている。」

それに対してMMTの主張はこうです。「銀行は融資をするときに、何の原資も必要としていない

論点は銀行融資には元手や原資といったなにか"先立つもの"が必要かどうか、です。

 

とりあえず、マンキューさんの説明を訳が分からなくさせているマスオさんの奇行をやめさせてあげましょう。

いったんマンキューさんの説明に従って、A銀行がマスオさんに800万円を現金で貸し付ける、というユーチューバーみたいな嫌がらせをしてきた所までプロセスを進めます。そもそもこの時点であり得ないんですが…

f:id:xbtomoki:20201102103507p:plain

 

マンキュー説によれば、マスオさんは800万円の札束を持ってA銀行を後にしますが・・・そんなことするやつ絶対にいません。

ですので、マスオさんはその場でA銀行にその800万円を預け入れることにします。さらにA銀行はそれを日銀へ預けます。

f:id:xbtomoki:20201102111241p:plain

 

そうすると、貸借相殺できる部分がたくさん出てきます。

相殺できるのは、A銀行が日銀から800万を引出して、マスオさんに手渡し、それをマスオさんから預かって、再び日銀に預けなおす、という意味不明な儀式を執り行っている部分です。この分を消してみましょう。

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余計な部分が多すぎて草

なんということでしょう!私が最初にまとめたものと全く同じことになりました!再掲しますので比べてみてください。

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この取引に原資が不要なことは上述のとおりです。

はい論破。

 

論破ついでに遠慮なしに言わせていただくと、マンキュー説は、まさに過去記事『爆発の条件』のおまけで言及したワンダーランド論法です。

xbtomoki.hatenablog.com

マンキューさんは、いきなりマスオさんをA銀行から札束を受け取ってB銀行に持ち込むという奇行に走らせて、聞き手をパニックに陥れ、逆数倍とか数学的に証明とか畳みかけて、いつのまにか読者をワンダーランドに連れ込み、「この意味不明な儀式を執り行うには原資となる預金が必要だ」と主張します。

たしかにその預金準備制度っちゅう謎ルールに従って謎儀式をするためには必要なんでしょうね。それはもういいから、銀行融資の説明をしろよ。誰が振込手数料のケチり方を説明してくれって言ったよ。

バカか。

 

 

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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3-1.銀行の役割 その1 (預金)

銀行の総資産と総負債が、各々400ドルになっていることに注目しよう。銀行は200ドルの貨幣をまさに創造したのだ。

『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 186/553pp


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MMT現代貨幣理論入門

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金利息に関する疑問

銀行にカネを預けると利息がもらえます。

例えば、りそな銀行普通預金の預金年利率は0.001%です。100万円を1年預けてたら、10円の利息がもらえるわけです。改めて計算してみたらあまりの少なさにビックリしました。10円て。

円預金金利│口座を開きたい│りそな銀行

 

ところで、私たちが銀行にカネを預ける最大の理由は「現金だと管理が大変だから」だと思います。多くの人は銀行に管理手数料を払ってでも預かってほしいと考えるでしょう。

なのに、銀行は手数料を取るどころか利息を付けてくれます。

 

では、ここで問題です。

なぜ銀行は預金に対して手数料を取るのではなく、逆に利息を付けるのでしょうか?

 

マンキューさんに聞いてみよう

こないだ図書館でこんな本を借りてきました。マクロ経済学における超スタンダードです。すごいですね。スタンダードを超えています。

マンキュー マクロ経済学Ⅰ入門篇(第4版)

忙しくてなかなか読めないんですが、いつか

「マンキュー読めよ」

「読みましたよ」

「読んでないだろ」

「読んだし」

みたいなキャッキャウフフができたらいいですね。

ひととおり読んだら読書感想文の記事でも書こうかと考え中です。

 

で、この本には、「なんで預金に利息が付くの?」という問題に対してどういう回答してるかと言いますと・・・

 

残念ながら何にも書かれてありませんでした。ていうか、銀行預金に利息が付くことさえ書かれてませんでした。

「銀行は集めた預金を貸し出して利益を得ているから、その分け前を支払ってる。」とか言うのかなあ。

 

私の答え

さて、気を取り直しまして、なぜ銀行預金に利息が付くんでしょうか。

それは銀行が現金を預かるときの仕訳を書けば分かります。だいたいのことは仕訳を書くと分かるような気がします。

ここで気を付けたいポイントは、"銀行預金"は、預けた人にとっては資産ですが、預けられた銀行にとっては負債である、ということです。

 

では仕訳を書きましょう。

  • 銀行は、現金(資産)が増えると同時に銀行預金(負債)が増えます。
  • 顧客は、現金(資産)が銀行預金(資産)に振り替わります。

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続いて、銀行と顧客ではなく、普通の個人同士をお金の貸し借りの仕訳を書いてみます。

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そっくりですね。そうなんです。

銀行がカネを預かるという行為の実質は、カネを借りる行為なんです。カネを借りたら、利息が付くのは当たり前です。だから預金には利息が付くんです。

私たちは銀行にカネを預けているわけではありません。カネを貸してるんです。

 

なぜ銀行預金は銀行にとって負債なのか

以前の記事で、政府の通貨は「これを渡せば、同額の通貨を支払う」という政府の約束を示すものだと説明しました。負債というのは必ずこういうふうに、何らかの約束の証拠になっています。

xbtomoki.hatenablog.com

 

それに対して、銀行預金は「預金者が要求したら、その預金と同額の現金を支払う」という銀行の約束の証拠です。ですから、銀行預金は、間違いなく銀行の負債です。

 

返すことを約束して他者からカネを受け取ることを、普通は"カネを借りる"と呼びますが、なぜか銀行では"カネを預かる"と呼びます(こどものお年玉を取り上げる親の言い訳みたいですね)。それで分かりにくくなっているだけです。

 

ちなみに

ちなみに、銀行が顧客から預かった現金をさらに日銀に預けると、現金は日銀にとって負債なので、

  • 銀行は、現金(資産)が日銀預金(資産)に振り替わります。
  • 日銀は、現金(負債)が日銀預金(負債)に振り替わります。

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ちょっと様子が違いますね。

私たちが銀行に現金を預けるのは、実質的にはカネを貸す行為で、銀行側に資産|負債の仕訳が起きて、"銀行預金"という貨幣が生まれますが、

銀行が日銀に現金を預けたときは、日銀側に資産|負債の仕訳が起きず、負債が別の負債に振り替わるだけで新たな貨幣は生まれません。

つまり、銀行が日銀に現金を預けるのはカネを貸す行為ではありません。

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訳が分からなくなってもよくないので、いったんここまでにしておきましょう。
とりあえず、「私たちが銀行に預けた現金は、銀行の金庫で保管されるだけじゃなくて、日銀に預けられるパターンもある」ということだけ覚えておいてください。
詳しい説明は、また今度とします。
 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

本日のおまけは安藤裕先生のYouTube動画です。


〈コラボ企画〉第四弾★ハル山下(HAL YAMASHITAオーナー兼、エグゼクティブシェフ ) × 衆議院議員 あんどう裕「政府が今本当に行うべき政策」

 

こちらのシリーズは若干内容が今回記事からの『銀行の役割』シリーズのネタバレになっちゃうんですが、とても分かりやすく経済の仕組みを説明されていますので、シェアさせていただきたいと思います。

安藤先生の説明が分かりやすいのはいつもどおりなんですが、聞き役の山下さんがちょいちょいわざとらしい感はあるものの、いい感じで素朴な目線の質問をはさんだりしてくれてて、いままでのシリーズよりも相当とっつきやすくなっていると思います。

ぜひご覧いただいて、できれば周りの方へ拡散していただければと思います。

 

 

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2-7.章まとめ 自国通貨の発行者による支出

学生は皆、我々の通貨が「法定」-何も裏付けがない、単なる債権-だと知っている。通貨の裏側をのぞいてみよう。そこには何かあるのだろうか?

『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 114/553pp


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恒例の手抜き回です。

おつかれさまでした。第2章「自国通貨の発行者による支出」は、前回記事の「2-6.爆発の条件」までとなります。

 

本記事では、第3章に進む前に、第2章(2-1~2-6)のまとめをしておこうと思います。

 

2-1.「主権通貨」とは

xbtomoki.hatenablog.com

 

「計算貨幣」「自国通貨」「外貨」「主権通貨」の関係性を図に表すとこんな感じです。

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2-2.租税が貨幣を動かす その1

xbtomoki.hatenablog.com

日本に住んでいる限り、金額の多寡はあれども、誰もが必ず政府に税を納めなければなりません。そして政府は"円"で納めることを強制します。
その結果、私たちは日本国内の取引を"円"で行うようになります。それが最も便利で合理的だからです。

 

2-3.租税が貨幣を動かす その2

xbtomoki.hatenablog.com

つまり、ババ抜き理論だと、"カフェ屋さん"が"店員"、"コンビニ"に置き換わっただけで答えになっていません。はい論破。

しかし、日本にはそういった法律はありませんが、間違いなく貨幣経済が成立しています。はい論破。
そもそも"貨幣は資産|負債の取引の記録"です。金の代用品でも、特殊な商品でもありません。はい論破。

 

2-4.租税が貨幣を動かす その3

xbtomoki.hatenablog.com

よって、私たち煉獄の修羅は、政府によって強制的に課された租税債務を弁済するために敵を引き裂き、屠り、政府が発行した負債、つまり通貨を集めなければなりません。だから、カフェ屋さんは550円を喜んで受け取るのです。

 

番外.租税が貨幣を動かす その4

xbtomoki.hatenablog.com

人間社会は社会的分業をせざるを得ない。ただ、社会的分業には成果の分け合いという点で不便なところがある。それを解決するには、貨幣経済という仕組みが最も合理的だ。だから、誰もがそれに従うんだ。

さらに社会的分業に貨幣経済を組み合わせると、交換レート・発行者の信用・非生産能力者の救済という問題が生まれる。

これらを最も合理的に、そしていっぺんに、解決できる魔法のような方策が"政府による主権通貨制定"なんだろう、ここで租税通貨論の意義が出てくるんだろうと、私は考えます。

 

2-5.様々な取引とその仕訳 

xbtomoki.hatenablog.com

このことからも、貨幣の本質は実体のない無限に存在しうるデータなのであって、実体のある有限な商品等ではないことが分かります。

つまり、下記の記事で説明したマクロ会計の恒等式

政府部門収支+民間部門収支+国外部門収支=0

は、現実と矛盾せず、やはり正しいんだということが確認できますね。

 

2-6.爆発の条件

xbtomoki.hatenablog.com

詳しい説明はまた後日としますが、とりあえず、「爆発したらどうするんだ!?」と聞かれたら、私はこう答えます。「そもそも爆発しないし、爆発したところでどうもしなくていい。バカか。

 

 

それでは本日ここまで。

 

おまけ

本日のおまけは大阪市廃止構想(いわゆる大阪市都構想)に関する解説動画です。

www.city.osaka.lg.jp

この件、別に難しい話ではありません。

大阪市を廃止して、東京みたいな特別区を4つ設置する」

これの賛否を住民投票で問う、というものです。

ところが賛成派の維新の会が「大阪市が無くなるわけではありません」とか(最近はさすがに言わなくなりましたが・・・)とんでもない説明の仕方をするから訳が分からなくなっているだけです。

こちらの動画で、これが一体どういうことなのか(大阪市を廃止して4つの特別苦にすると、何が起こるのか)を分かりやすく説明されています。大阪市民の方にはもちろん、そうでない方にも投票日の11月1日までにぜひ見ていただきたい内容でした。


【都構想緊急対談Part1】二重行政撤廃で財源は浮かない!誰も得をしない都構想の真実が市民に伝わらないワケ 三橋貴明 × 柳本あきら(前大阪市会議員)

 


【都構想緊急対談Part2】現役市会議員が明かす“二重行政解消で経済発展”の嘘 三橋貴明 × 川嶋広稔(大阪市会議員)

 

ここからは勝手な私の推測になりますが、このいわゆる"都構想"で維新の会が何をしたいのか、というとおそらくは、

  • 大阪府知事の権限を大きくして、大阪府全体を府知事の意向次第で何でもできる独裁国家みたいにしたい。
  • そのためにはカネが必要だが、大阪府単体の収入では大阪府全体を掌握するには金額が足りない。
  • そこで大阪市のカネを府に吸い上げたいと思ったけれど、大阪市民が払った市税という名目があると、大阪市以外の所に使えなくて不便だ。
  • じゃあ大阪市を廃止して、府の直轄地にしてしまおう。

こんなところなんでしょう。

そうすると、維新の会がデタラメな説明でなりふり構わずこれを通したいと考えるのも納得できます。

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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2-6.爆発の条件

ジェームズ・ガルブレイスは、赤字支出の持続可能性を評価するための代表的なモデルを構築した。カギとなる公式は、こうだ。

Δd=-s+d*{(r-g)/(1+g)}

ここで、dは当初の債務額対GDP比率、sは「プライマリー黒字」(すなわち、純支払利息を控除した後の財政黒字)の対GDP比、rは実質金利、*は掛け算の記号、gはGDPの実質成長率を示す。

『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 145/553pp


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ガルブレイスの公式

なんと、財務省や主流派経済学者の方々が大嫌いな(大好きな?)債務残高対GDPを計算する公式があるそうです。

それが冒頭で引用したこちらです。

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これをちょっと書き直したのがこちらです。意味するところは同じです。

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グラフにしてみました

これでは訳が分からないと思いますので、グラフにしてみます。

dの初期値は100%として、

 それでは、こちらです。ドン!

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グラフから何が分かるか

数式とにらめっこするよりはいくぶんマシだと思いますが、グラフを作ってみてもまだまだ訳が分からないと思いますので、もう少し解説を加えます。

グラフからは、こんなことが読み解けます。

  • r > g のとき、債務残高対GDP比は爆発的に増える。
  • r = g のとき、債務残高対GDP比の増減は直線になる。
  • r < g のとき、債務残高対GDP比は減るものの、ある程度で限界を迎える。

右下の3本をまとめた右下のグラフを見てもらえば分かると思いますが、r = gr < g の違いは微々たるものです。

重要なのは、赤のr>gグラフです。

ガルブレイスの公式は"r > g なら、債務残高対GDP比が爆発的に増えていく"、という恐ろしく重大な事実を私たちに教えてくれているのです。

 

バクハツダー!

それでは r > g のグラフをピックアップしてみましょう。

さっきのグラフでは、s(PB対GDP)は-1%つまり1%の赤字、r(国債金利)は5%、g(GDP成長率)は3%と、適当な数字になっていましたが、もうちょっと実際のデータに近づけて描きなおしてみます。

1980年~2019年の平均で、s:r:g=-3.18%:3.16%:1.92%(国債は9年物)ですから、この数字を使います。

出典1:世界経済のネタ帳 - 世界の経済・統計 情報サイト

出典2:国債金利情報 : 財務省

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「爆発だー!破綻するー!」

これはたいへんなことです。なにしろ40000000%とか書いてあります。訳が分かりません。これがあのハイパーオンフレなのでしょうか。こんなことがたった30年後に起きるというのでしょうか。

 

 

 

 

 

安心してください。ハイパーオンフレは起こりません。

その証拠に少なくとも1980年~2019年の40年間の平均は実際に r > g であったのに、現在の債務残高対GDP比は237%程度にしかなっていません。

 

なぜハイパーはオンフレしないか

繰り返しますが、先のグラフのようなハイパーオンフレは起こりません。

先のグラフには、「s:r:g=-3.18%:3.16%:1.92%という状態が30年続いたら」という全くあり得ない仮定が含まれているからです。

つまり、「30年間もの間、sもrもgも変化しない」なんてあり得ないだろうっていう話です。これグラフにするとこういうことですから。

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実際のデータがこんなんになるわけありません。

 

実際のsとrとgの推移はこうでした。

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rが3.16%と高い値だったのは、バブル期の高利率に引っ張られていたからで、gの1.92%は、リーマンショック(2009)の強い落ち込みに引っ張られています。

「平均」は、一部の極端な値に引っ張られやすい性質があるので、ご利用には注意が必要です。「平均年収はあてにならない」なんてのは、よく使われる例です。

r > g だったのは2000年頃までで、リーマンショック(2009)の前後でちょっとガチャってなってますが、以降は基本的に r = gr < g  です。そして、rはもはやゼロまで下がりました。金融緩和とマイナス金利政策が続く限り、これが上がることはたぶんないでしょう。なんで金融緩和とかでrが上がらないのかの説明は長くなるのでまた今度に・・・

とすると、再び r > g になるなんてことは、g < 0 (マイナス成長)がずっと続く時代に突入しない限りありえません。

 

別の角度から

さっき述べたとおり、rがゼロになっているのは政府が金融緩和とマイナス金利を継続しているからです。つまり、rは政府がコントロールできます。r > g になって爆発しそうなら、r < g になるようにrを下げれば、それだけで爆発を回避できます。

 

もうひとつ、マクロ会計の恒等式

政府収支+民間収支+国外収支=0

より、政府の負債が増えるということは民間の黒字が増えるということですから、その黒字増が消費や投資の増につながれば、GDPが伸びていく、gが増えることになります。

すると、わざわざ政府がrを下げなくても、債務残高対GDP比が増えれば、自然とgが増えて r > g は解消されていくはずです。

 

つまり、なんかの拍子で爆発して、政府も民間も30年くらい爆発しているのをボケーっと眺め続けたら、ハイパーオンフレが起きるかもしれません。

が、そんなことあり得ないだろうっていう話ですよ。

 

おわりに

もし仮に政府も民間もどうかしてしまってハイパーオンフレが起きたとしましょう。

たとえそうなってしまったとしても、日本政府は、その債務が主権通貨である円建てで、円の変動為替相場制を保持できていれば、いつでもいくらでもそれを支払うことができます。日銀の職員がキーボードを叩くだけでいいんですから。

詳しい説明はまた後日としますが、とりあえず、「爆発したらどうするんだ!?」と聞かれたら、私はこう答えます。「そもそも爆発しないし、爆発したところでどうもしなくていい。バカか。

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ1

今回記事みたいな

  1. まずいきなり数式とか英文とかを突き付けて思考停止させる。
  2. 思考停止してるうちに、わけのわからん設定をコソっと差し込む。
  3. 謎設定に沿って話を展開する。
  4. ワンダーランドに連れていく。

こういうことをする人、結構います。気を付けてください。

 

おまけ2

最近ツイッターで知ったんですが、

【Shift+ウィンドウズボタン+s】

これでPC画面のスクリーンショットが取れるんです。

知ってました?これめっちゃ便利なんですよ。

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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