経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

4-10.国際金融のトリレンマ

有名なトリレンマに従えば、政府は次の3つのうち2つしか選ぶことができない。すなわち、国内政策の独立(通常は、金利の安定と表現される)、固定為替相場制、資本移動の自由の3つである。

MMT現代貨幣理論入門』kindle版 254/553pp


当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

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当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事の途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

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MMT現代貨幣理論入門

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目次 

 

本日のお題

国際金融のトリレンマという理論があります。あのマンデルさんが考えたらしいです。あの"マンデルフレミングモデル"なるトンデモ理論で有名なマンデルさんですね。"最適通貨圏理論"とかいうのも提唱されてて、"ユーロの父"とか呼ばれてるらしいです。ギリシャの人たちにごめんなさいって言え。あとイタリア人とスペイン人とフランス人とポルトガル人と・・・書ききれんけど、全員にごめんなさいって言え。

ja.wikipedia.org

とはいえ、何を言ったかではなく、誰が言ったかで判断するほど愚かなことはありません。国際金融のトリレンマ自体は、おそらく正しい理論であると考えられます。

 

ウィキペディアさんに聞いてみよう

で、国際金融のトリレンマとは、何なのかと言いますと、ウィキペディアさんには、こう書いてあります。

概説

以下の3つの政策は同時に実現することができず、同時に2つしか実現できない 。
・自由な資本移動
為替相場の安定(固定相場制)
・独立した金融政策

国際金融のトリレンマ - Wikipedia

f:id:xbtomoki:20201223195259p:plain

というわけで、本記事では、これをもうちょっと噛み砕いてみます。

 

ワード解説

まず、いちいちワードが分かりにくいので、それぞれを解説しましょう。

 

トリレンマとは

まず、「トリレンマ」って何やねんっちゅう話なんですが、

これは一言で言うと、"3つが全部同時には成り立たない現象"のことです。

中華屋さんとかで、

「ラーメンセットのサイドメニューを【唐揚げ・天津飯・餃子】のうちから2つ選んでください。」みたいなのがあるやないですか。あれはラーメンセットのトリレンマですね。

"3つのうち、2つまでしか選べない。" もしくは"3つのうち、1つは諦めなければならない。" とも表現できます。考え方をちょっとポジティブに変えれば、"1つを放棄すれば、残りの2つを同時に成立できる" ということにもなります。

 

自由な資本移動とは

"資本移動 自由"とかでググると、とにかく難しげなのがわんさか出てきますが、"資本移動"とは、要するに、為替取引のことで、"自由な資本移動"とは、為替取引を制限しないことと考えてもらえれば、たぶん9割くらいは問題ありません。

「日本円でアメリカの国債を買う」なんかがイメージしやすい資本移動の例じゃないかと思います。しかし、米国債はドル建てなので、日本円をいくら積み上げようが1口も買えないわけで、実際には、

  1. 日本円を米ドルに両替する。
  2. その米ドルで米国債を買う。

という2段階の手順を踏む必要があります。

このうち、2.の「米ドルで米国債を買う」は制限しようが無いわけで、もしアメリカ政府が「日本円でアメリカの国債を買う」という行為を制限したければ、1.の「日本円を米ドルに両替する。」を制限しなければなりません。

つまり、【資本移動の制限=為替取引の制限】であって、自由な資本移動=為替取引の制限無し ということになります。

 

為替相場の安定(固定相場制)とは

"固定相場制"とは、為替レートを政府が決めた価格に固定する政策のことです。固定相場制の逆は、"変動相場制"で、これは為替レートは市場に放任して政府はタッチしない政策です。

固定相場制を採用する政府がどうやって為替レートを固定しているかと言うと、[4-6]国債の価格・金利を日銀が決める仕組みを説明しましたが、これとちょっと似ています。

つまり、為替レートの目標を決めて、そこより安くなったら買い注文を入れて、高くなったら売り注文を入れるわけです。

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日銀の金利操作と勝手が違うのは、B払いが効かないところです。これは今後の記事で重要なポイントになってきます。売る分については、自国通貨を発行すればいくらでも売れますが、買う分については、買うための外貨を事前に準備しなければならず、"いくらでも買う" ができないので、宣言するだけで市場をコントロールしたりはできません。

 

独立した金融政策とは

"独立"とは、何らかの決定が外部からの影響を受けていないことです。

それから、主流派の性でしょうか。マンデルさんはなぜか金融政策に限定してますが、限定する意味は無いので、「国内政策」と表現するべきでしょう。

"独立した国内政策"の例は、いっぱいありますが、昨年の10万円一律給付が分かりやすいかと思います。あれは日本人が自分たちだけで決めた政策でした。できるだけ早く、2回目の給付を、今度は100万円に金額を上げてやるべきだと思います。声を上げていきたいです。

逆に、独立でない国内政策の例としては、[4-9]で紹介したギリシャEU・ECB・IMFから要求された増税・公務員削減・年金改革・民営化などなどの緊縮財政政策が挙げられます。ギリシャ危機をもっと詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。

www.akashi.co.jp

 

国際金融のトリレンマとは

さて、ワードの解説が済んだところで、冒頭のトリレンマ3兄弟をちょっと私なりに書き直してみます。

  • 為替取引を制限しない
  • 為替レートを固定する
  • 独立した国内政策決定

これが3つ同時には成り立たない、というわけです。本当でしょうか。

 

具体例で検証してみよう

試しに【為替取引を制限しない】【為替レート固定】の条件で、政府が全国民に毎月10万円を配ることを決めたとしてみましょう。

全国民の貯蓄が増えるので、中にはその10万円で国外の資産(例えば米国債)を買う人もいるでしょう。すると、円→ドルの両替(円売り)が行われるので、円安になります。

政府は為替レート固定のためにドル→円の両替(ドル売り)をしなければいけません。これが毎月ですので、政府はどんどん手持ちのドルを売り続けます。

てことは、政府は、手持ちのドルが尽きた時点で、次のどれか少なくとも1つを行わなければなりません。

  • 外資産購入を禁止する。
  • ドル売りを止める。
  • 毎月10万円給付を止める。(もしくは、アメリカに円を買ってもらう)

これは、

  • 「為替取引を制限しない」を諦める。
  • 「為替レートを固定する」を諦める。
  • 「独立した国内政策決定」を諦める。

ということです。

ほらね(´・ω・ `)

この3つは同時には成り立たんのです。

ただ、注意しておきたいのは、資本移動を完全に自由化してる国は存在しませんし、 変動相場制だからといって全く為替介入していない国もありませんし、外部から何の影響も受けずに政策決定している国も無いことです。全ての国が、0~100の間のどこかに位置しています。
 

じゃあどれがいいのか

じゃあどれを諦めるべきか、という点に話が進むわけですが、
MMTの回答は「国によってベストの選択肢は異なる。但し、最も政策余地を広げる選択肢が、為替レート固定を諦める(つまり、変動相場制を採用する)であることは間違いない。です。
 
表にして比べてみましょう。

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おかわりいただけるでしょうか。
"為替レート固定を諦める"(変動相場制を採用する)の選択肢は、為替取引制限もしないでいいし、為替介入もしないでいいし、政策決定の独立も保たれますから、もっとも政策余地を広く確保することができる、というわけです。 
 
 
それでは本日ここまで。

 

おまけ

ネットフリックスにオリジナルドラマで"TheGoodPlace"ってのがありまして、リスニング練習に使ってるんですが、このタハニさんの英語がめっちゃ聞き取りづらいんですが・・・これって私だけでしょうか?


The Good Place- Tahani's Best Moments

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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4-9.外国人の国債保有

海外の「国債自警団員」が米国債から逃げ出してしまうという懸念は、大したリスクをもたらさないというのが結論である。

MMT現代貨幣理論入門』kindle版 246/553pp


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こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事の途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

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目次 

 

本日のお題

"日本国債の90%以上が国内機関保有分だ。だから暴落したりしないんだ。"という議論があります。本当でしょうか。財務省のホームページに記載されてるデータを見てみましょう。

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"日本国債の90%以上が国内機関保有分だ。"これは間違ってないみたいです。

では、"だから暴落したりしないんだ。"はどうでしょう。

 

外国人はマジハンパねえ。リアルだ。

"だから暴落したりしないんだ"というのを、もうちょっとちゃんと説明すると、

  • 国債が投げ売りされて価格暴落なんかしたら、日本国内が大混乱になる。
  • 国内機関が自分からわざわざそんな自傷行為みたいなことをするわけがない。

ということです。なかなか説得力がありますね。ただ、問題があります。

何が問題かと言えば、この理屈が成り立つなら、こんなことも言えてしまうんです。

"ところが、外国人は日本国内が大混乱になろうが知ったこっちゃないから、めちゃくちゃやってくるかもしれん。てことは、海外機関の保有割合が増えたら、国債暴落からの財政破綻というシナリオが現実味を帯びてくる。マジハンパねえ。リアルだ。"

最近では、前回記事でも紹介した小黒さんもこんな記事を書いています。

news.yahoo.co.jp

なんつーかもうちょっと分かりやすく書けないんですかね・・・要するに言いたいことは、「まじやばいような感じがするかもしれない」でしょ?ええ年して、難しげなワードを次から次に出してきて、読み手が訳分からんくなって思考停止したところでワンダーランドに連れていくのやめなよ。みっともない。

 

検証してみましょう

この手の話題でよく例に挙げられるのが、いわゆるギリシャ危機です。たしかに、かつてギリシャでは外国人がめちゃくちゃやったせいで国債暴落が起きました。

ギリシャ経済危機(2015年)とは - コトバンク

それでは、外国人がたくさん日本国債保有したら日本はマジやばい説の真偽を検証してみましょう。

 

何がやばいのか

まずは、日本国債の海外保有率がいまは7%ちょいなわけですが、これが例えば30%とかになったら、具体的には何がやばいんでしょうか。そもそも誰がそんな大量の国債を売るんだ、すでにその時点で投げ売りされとるじゃねえかっちゅう話なんですが、それはいったん置いときます。よく言われるのは次の2つです。

  1. 金利を要求してくるかもしれない。
  2. 円安になるかもしれない。

金利要求説

これは大口保有者である外国人がこんなことを言い出すんじゃないか、という説です。

( ゚д゚)<もっといっぱい金利を払ってくれないと国債売っちゃうぞー。そしたら暴落して困っちゃうよね?ね?ほらほら!分かったらさっさと利率を上げる!あーげーろ!あーげーろ!さっさとあーげーろ!ひっこしー!

(´・ω・ `)<暴落?何を言っとん?国債の価格は日銀が決めるんよ。例えば下図の板をご覧なさい。これできみが"保有国債を全部売ります"って言い出すとするよね。そしたら日銀が全部130円で買い上げるわけよ。これ、1円も価格下がってへんよね。詳しくは[4-6]を読んで、どうぞ。

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円安説

続きましてー、これは大口保有者である外国人がこんなことも言い出すんじゃないか、という説です。

( ゚д゚)<国債売りまくってゲットした円を売りまくって円を暴落させちゃうぞー。そしたら困っちゃうよね?ね?ほれほれ!分かったらさっさと金利を上げる!あーげーろ!あーげーろ!さっさとあーげーろ!ひっこしー!

(´・ω・ `)<うっとうしいのう。変動相場制って分かるかな?円が暴落してあたふたするくらいなら最初っから変動相場制なんかやっとらんわけよ。売っちゃうぞーとか言われたところで、

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なぜギリシャは危機に陥ったのか

ということで、外国人がたくさん日本国債保有したら日本はマジやばい説はどうやら間違いで、外国人がたくさん日本国債保有しても大してやばくはないみたいです。

ひとまず安心なわけですが、じゃあなんでギリシャは危機に陥ったのでしょうか。

外国人が国債を大量保有するのが、日本ならOKなのに、ギリシャはピンチになりました。両者の違いは何だったのか。

( ゚д゚)<何だったのか!?

(´・ω・ `)<そういうのいらんから。ええか?端的に言うと、B払いができるかどうかってことなんよ。詳しい説明は別記事にするけど、"国債売っちゃうぞー"って言われても、日本国債は主権通貨の円建てやから、日銀が日銀預金のB払いで全部買ってハイハイワロスワロスってなもんや。ところが、ギリシャ国債は外貨のユーロ建てで、ギリシャ銀行にはユーロ建て貨幣の発行権が無いから、B払いがでけへん。ギリシャ銀行にできるのは、いま持っとるユーロ建て資産のA払いだけやから、それが尽きたらお手上げや。

※主権通貨"とか"外貨"とかの詳しい定義は[2-1]をどうぞ。

※「国債自警団」とは・・・いろいろイチャモンつけては、その国の国民の生活なんかおかまいなしに( ゚д゚)<金利をあーげーろ!って喚く人たちのこと。

 

 
それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

※「株ブタ」とは・・・いろいろイチャモンつけては、その会社の社員の生活なんかおかまいなしに( ゚д゚)<配当をあーげーろ!って喚く人たちのこと。 

 

 

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4-8.財政赤字と国債金利 その5

本節では、財政赤字と貯蓄の関係、さらには財政赤字が準備預金と金利に与える影響を確認する。以下の議論は、一般的な性質に関するものである。

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当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事の途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

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目次 

 

おかげさまでシリーズ完結です

1ヵ月くらいかかりましたが、財政赤字国債金利シリーズは、これで完結となります。

本シリーズのテーマ

財政赤字が増えると(減ると)、国債金利はどうなるか」

への解答は、こうでした。

財政赤字がいくら増えようが減ろうが、国債金利はどうもなりません。上がりも下がりもしません。」

なぜこう言えるのかと言えば、国債金利は、[4-6]で解説したとおり、日銀が決めたとおりに決まるものだからです。

 

やっぱりクラウディングアウトなんかなかった

( ゚д゚)<じゃあ「財政赤字が増えると(減ると)、国債金利はどうなるか」とか言わなくても、普通に「国債金利は日銀がこうこうこうやって目標を決めて操作します。」だけでよかったんちゃうんか。

それはおっしゃるとおりです。シリーズの途中で、変な風呂敷広げてもうたな・・・と何度か思いましたが、よかろうもんの精神でここまでやってきました。ただ、何の考えも無しに広げた風呂敷ではなくて、もちろん財政赤字国債金利国債発行の仕組み・国債の意義を解説するのが第一の目標だったのですが、

もうひとつ言いたかったのは「やっぱりクラウディングアウトなんてありえんよな」っちゅうことなんです。クラウディングアウトっちゃあ何かと申しますと、主流派経済学者が唱えている、こういう仮説です。

  • 貯蓄が減ると、金利が上がる。
  • 財政赤字が増えると、民間が使える貨幣(貯蓄)が減る。
  • よって、財政赤字が増えると、金利が上がる。
詳しい中身は下記リンクで解説しました。もしよかったらどうぞ。

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まず、"貯蓄が減ると、金利が上がる。" これは間違いです。さっきも言いましたが、[4-6]のとおり、国債金利は、日銀が決めたとおりに決まります。

続いて、 "財政赤字が増えると、民間が使える貨幣(貯蓄)が減る" これも間違いです。真実は逆です。[4-2]のとおり、政府の財政赤字は、民間部門の貯蓄を増やします。

よって、"財政赤字が増えると金利が上がる。" これは間違いです。

ということで、クラウディングアウト仮説は、初めから終わりまで間違っています。当然、実際のデータにも合致しません。

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1990年~1995年の財政赤字の伸びに対して、国債金利はぐんぐん下がっていきました。1995年以降の財政赤字の横ばいっぷりに対して、国債金利はさらに下がっていきました。全然関係ない動きをしています。もともと全然関係ないんだから当たり前です。

ところが、主流派経済学者は、いまだにクラウディングアウトありきで経済を語り、こんな記事を書いています。普通の人なら1995年の時点で"あれ?変だな?"ってなりそうなもんですけどね・・・

www.tkfd.or.jp

なぜ彼らは、いつまで経っても自分たちの理論が間違っていることが理解できないのでしょうか。

それは主流派経済学の二大トンデモ理論

を信じ込んでいるため、根本的な部分で貨幣というものを誤解していることが原因なのではないかと思います。

 

お金のプール論とは

プールというのは、こういうのじゃなくて、

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こういう溜め池とか貯水池とかをイメージしてもらった方がいいかと思います。

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三橋貴明さんの新経世済民新聞にも記事がありますが、

【三橋貴明】「おカネのプールは存在しない」という恐怖 | 「新」経世済民新聞

この理論は、理論とすら呼べるようなものじゃないんですが「この世の中に存在する貨幣の量は一定で有限である。」という教義で、「その一定で有限の貨幣を政府と民間が取り合うことでバランスが成り立っている。だから、政府が取り過ぎてしまうと民間が使える貨幣が減ってしまう。これをクラウディングアウトと呼ぶ。」となってしまうわけです。

もちろん間違いです。

貨幣は、B払いの記録ですから、B払いが成立すれば、いくらでも増えます。

 

お金のアバター論とは

Aさんの資産がこうなってたとします。

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現金が50、銀行預金が100、合計は150です。

ところが、主流派はこう考えます。

「お金が150ある。そのうち50は現金として持っている。残りの100は銀行預金として持っている。」

一見同じことを言ってるようですが、全然違います。

どう違うかと言うと、もしもAさんが現金50をX銀行に預けたら、現金が0・銀行預金が150になりますが、現金は消えるわけではなくて、X銀行の手元に移るわけなので、こうなって、

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Aさんが現金を銀行に預けると、貨幣の総量が増えます。現金預け入れの本質は貸付ですから当たり前ですね。[3-1]

ところが、主流派にはこれが理解できません。

( ゚д゚)<A→Xにお金が移動したらお金が増える???んなわけないだろう!!バカ言ってんじゃないよ!おととい来やがれってんだ!こんちくしょうめってなもんだよ!!!いいか?"お金"という本質的なモノが存在するんだよ。それが時と場合によって現金や銀行預金に姿形を変えるんだ。天照大神様と大日如来様だって元々はおんなじもんだろう?それと同じことよ。現金も銀行預金も"オカネ様"のアバター(化身)なんだ。要するにだよ、"お金のプール"ってもんがあってさ、オカネ様は一定で有限なんだよ。それだってえのに、オカネ様が現金から預金に姿を変えたら増えちまうってじゃあ、世の中のオカネ様がどんどん増えちまうじゃあないかい。何を言ってんだか意味不明だよ!!

これも間違いです。

主流派にとっては意味不明かもしれませんが、貨幣総量が増えるのは事実ですから、その現象が意味不明なんじゃなくて、それは主流派が理解できていないだけです。

"お金"というモノは存在しません。実際に存在するのは、現金や銀行預金であって、"お金"は、それらの総称に過ぎないわけです。

 

貨幣観を正さないといけない

しかし、主流派経済学者は、この二大トンデモ理論を基本原則くらいのノリで語ってきます。彼らは間違った理論を基本原則と思い込んで、そこを出発点にしているので、全部間違います。

クラウディングアウトは、その一例ですが、それ以外にも、主流派は数々のトンデモ理論を打ち立ててきました。

  • 国債は国の借金論
  • 又貸し論
  • 貨幣数量説
  • マンデルフレミングモデル
  • 税は会費論
  • 均衡財政論

貨幣とは何か、ここを正さないと国債は国の借金論をやっつけたところで次は又貸し論、その次は貨幣数量説で…キリがありません。

大事なことなので、貨幣とは何かを再確認しておきます。

貨幣とは、B払いの記録です。その所有者にとっては金融資産であり、その発行者にとっては金融負債です。

 

 
それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

小黒一正さんの2020年財政破綻論ってあったじゃないですか。あの訳の分からんやつ。おまけコーナーなので言葉は選ばずにいきます。先日ツイッターで朴先生が本人につっこみをされてたアレです。

訳が分からなすぎて、仮にも大学教授が、いったい何を考えてこんなトンデモに至ったのかが、長らく分からなかったんですが、やっと分かった気がするので、勝手に解説してみます。

 

まず、小黒さんは、毎年の経済収支をこんな感じで考えてあるんでしょう。

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この2段目の"国債発行でAの預金が減る"っていうのが、壊滅的に間違ってるんですよね。減りませんからね。「減りませんからね」って反論するのもばかばかしいレベルなんですが・・・ 

で、これ(国債残高だけが毎年1円増える)に基づいてシミュレーションをしてみます。試しに、政府に1円、A社に9円を持たせて、年数を進めていくと、

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10年目で国債残高がAの預金を超えてしまいました!財政破綻ダー!クニノシャッキンガー!

 

 

小黒さん、正しくはこうですよ。

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これも違うんですけどね。やっぱり単式簿記では表現に限界があります。

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ですから、国債残高がAの預金を超えることは永久にありません。これに懲りたら二度とクニノシャッキンガーって言わないでください。迷惑なんですよ。

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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4-7.財政赤字と国債金利 その4(国債の意義)

本節では、財政赤字と貯蓄の関係、さらには財政赤字が準備預金と金利に与える影響を確認する。以下の議論は、一般的な性質に関するものである。

MMT現代貨幣理論入門』kindle版 220/553pp


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目次 

 

政府支出のおさらい

まずは[4-3]で解説した政府支出の仕訳を確認してみます。

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途中経過も含めて示すと、こうです。

  1. 企業・家計が政府に請求する。
  2. 政府が国庫短期証券(T-Bill)を発行して、日銀から日銀預金を調達する。
  3. 政府が日銀と銀行を経由して企業・家計に請求額を振り込む。
  4. 政府が国債を発行して、銀行から日銀預金を調達する。
  5. 政府がT-Billを返済する。

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ちょっとややこしいですが、まず、この流れを頭に入れてください。そうしてもらえないと話が進まんのです。

 

謎かけ編

本日のお題はこちらです。

「政府は何のために国債を発行するのか?」

( ゚д゚)<どういうこと?

そりゃそうなりますよね。補足します。

 

国債がなくても政府支出はできる

もう一度仕訳図を見直してみましょう。

f:id:xbtomoki:20210112120419p:plain

これ、最後の4と5、つまり国債発行って無くてもよくないですか?

というのは、3まででいったん仕訳を合計してみると…

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これだけでも企業・家計はしっかりと請求しただけの銀行預金が振り込まれてますし、銀行は銀行預金(負債)が増えてますけど、その分は政府から日銀預金(資産)が振り込まれて増えてるので収支は±0です。

ということは、政府支出はこの3の時点で一応カタが付いとるわけであって、理屈上は、別に国債を発行しなくても、政府支出をつつがなく執り行うことは可能なはずです。

 

国債発行とは貸借関係の再構築

じゃあ、国債発行とはいったい何なのか。

3までの合計と5までの合計を比べてみましょう。

f:id:xbtomoki:20210112120914p:plain

[政府]-(T-Bill)-[日銀]-(日銀預金)-[銀行] が、

[政府]-(国債)-[銀行] こう変化しています。

政府-日銀間のT-Billと、日銀-銀行間の日銀預金を消し去って、政府-銀行間に新たに国債を作り出したわけですね。

要するに、この貸借関係の再構築が国債発行の本質であるわけです。

 

お題の趣旨

じゃあ、「なんでわざわざT-Billと日銀預金を消して国債を発行、なんていう面倒なことをやってるのか。」

こちらが本日のお題

「政府は何のために国債を発行するのか?」

の趣旨です。

 

解答編

「政府は何のために国債を発行するのか?」

まずは、これに対するMMTの解答を紹介します。

それに加えて、"こういう考え方もあるんじゃなかろうか"という私見も書かせていただこうかと思います。

 

MMTの解答

では、まずMMTの解答から行きましょう。

さっき見たとおり、国債発行をせずに、3でプロセスを終わらせたら、こうなるわけですね。

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ここで銀行に注目しますと、日銀預金が増えてます。

国債発行の目的は、これを解消することだ、というのがMMTの解答です。

( ゚д゚)<と言いますと?

国債発行をしないと仮定すると、政府支出をするたびに日銀預金総量が増えていきます。

もちろん徴税で減る分もあるわけですが、[4-2]で解説したとおり、政府収支は赤字(政府支出>徴税)が基本ですので、結局のところ、正味の増減量は増える方が優位になります。

銀行の日銀預金がどんどん増えると、[3-6]で解説したとおり、翌日物金利がどんどん下がります。

日銀には、"翌日物金利を適切な水準に保つ"という責務がありますので、下がった翌日物金利を上げ直して、適切な水準に戻すために売りオペをしなければなりません。ところが、国債が発行されてなければ、売る国債がありません。

もうおしまいです。銀行部門に日銀預金が溢れ返り、翌日物金利はただひたすらに下がっていきます。日銀の金利コントロールが効かなくなり、金融政策が破綻してしまいました。

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と、こんなことにならないように、政府は、政府支出の副産物として生まれた日銀預金を回収しなければなりません。

そこで、銀行にとって日銀預金よりもオイシイ金融資産である国債を発行して、それとの交換を持ちかけるわけです。

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銀行にとって国債購入とは

例えて言うと、銀行にとっての国債購入は、「当座預金から貯蓄性預金への振替」みたいなものです。当座預金って何(´・ω・ `)?っていう方は、「現金の銀行口座への預金」でもいいと思います。

さて、銀行が日銀預金を国債に振り替えたときのメリットは、利息収入が得られるようになることです。それに対してデメリットは、流動性が下がる(支払に使いづらくなる)ことです。でも、今なら日銀さんが「いつでも額面どおりの値段で買うよ」って宣言してるので、このデメリットは、あってないようなもんですね

でありますから、政府から「国債買わない?」なんていうお誘いがあれば、メリットしか無いので、銀行はこれを断る理由がありません。政府も首尾よく日銀預金を回収できて万々歳となります。

これが国債発行の目的であり本質だ、というのがMMTの解答です。これのどこが"借金"なんでしょうか。

 

これは私見なんですが・・・

"増えてしまった日銀預金の回収"が国債発行の本質であるのは疑いようが無いわけですが、ちょっと斜め方向から別の見方もしてみようかと思います。

( ゚д゚)<と言いますと?

しつこいようですが、国債発行をせずに、3でプロセスを終わらせたら、こうなるわけですね。

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ここでやはり銀行に注目すると、日銀預金と銀行預金が増えとるわけです。

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( ゚д゚)<それがどうした

ポイントは、(原則的には)日銀預金には利息が付かず、銀行預金には利息が付く、ということです。

 

さっきも言いましたが、政府収支は赤字(政府支出>徴税)が基本ですから、政府が国債を発行しないと、日銀預金と銀行預金はどんどん増えていきますので、このままでは、銀行の利息負担はどんどん重くなっていってしまいます。

これはさすがにフェアじゃない。銀行は政府支出を手伝わされて、その上、利息まで払わされてちゃあ、たまったもんじゃありません。

そんなこんなの原因を作った政府は、銀行預金の利息に見合うような利息が付く資産と交換してあげるのが筋っちゅうもんですよ。だから、国債っちゅうのは、銀行が政府にお情けで買ってあげるもんなんかじゃあない。逆だ。政府が銀行に「いつも世のため人のためにめんどくさい仕事を引き受けてくれてありがとよ」なんつって、感謝と労りの気持ちを持って渡してあげてるもんなんだと解釈するべきなんじゃないかと思います。

余談ですが、最近、銀行ってマイナス金利で日銀にシバかれて、半沢直樹で変なイメージ付けられて、総理大臣に「半分つぶすわw」とか言われて、可哀想すぎませんかね。菅さん、"地銀の生産性ガー"とか言うんだったら、さっさとマイナス金利やめようよ。あれ、何の意味があるんや。

 

 
それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

ときどき見かけるんですが、この手の財政破綻論ありますよね。

「銀行が国債を買わないって言い出したら、政府は資金調達ができなくなって財政破綻するー。クニノシャッキンガー。」

たしか小林慶一郎さんも言ってたかな。

www.tkfd.or.jp

 

まず、政府支出は、国債発行をしなくても政府支出のオペレーションをつつがなく執り行うことができます。ついでに言うと、政府支出は本質的にB払いなので、そもそも資金調達なんかする必要はありません。

よって、資金調達ができなくなって財政破綻するわけがありません。

 

もうひとつ、銀行が国債を買わないって言いだすわけがありません。

小林さんは、国債が特別に優良な金融商品であることを理解されていないのでしょう。そしてそれがどれだけ特別なことなのかも。

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「元本割れなし」ってデカデカと書いてありますけど、こんなん国債の広告じゃなかったら、絶対詐欺ですからね。

銀行にとっての国債は、言ってみれば、[1口100円・1等101円・2等100円・ハズレ無し]のくじ引きみたいなものです。

小林さんは、「いや、銀行にはそのカネを株式投資とかに回すという選択肢もある。」という反論をされるかもしれませんが、銀行がやってるのは、"株か国債か"なんていう二者択一じゃないんですよ。両方買うことも、先に国債を買って、後で株に振り替えることも可能なんです。

通常、銀行の最も合理的な行動は、「いったん国債を買って安全資産を確保しておいて、もし、その後にリスクを取って株を買いたくなったら国債を売って、株に振り替える。」でしょう。

政府としては、新規発行国債がいったん売れてしまえば、そこで日銀預金の回収は済んでしまいますので、その後、市場に売り出されても別に構いやしません。市場で銀行同士が売り買いしても、日銀預金の総量は変化しませんから。

よって、小林さんの描く財政破綻ストーリーは、まさに杞憂に過ぎないわけです。

なお、これは日本国債が円建てでデフォルトリスクがゼロであることが前提です。まかり間違って、政府が外貨建て国債を発行した場合は、[1口100円・1等101円・2等100円・ハズレ有り]になりますから、全然話が変わってきます。たぶん小林さんは、そこの区別ができてないのでしょう。

なんで日本国債が円建てである限り、デフォルトリスクはゼロなのかは、また後日、記事にしようと思います。

 

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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4-6.財政赤字と国債金利 その3(日銀の国債金利操作)

本節では、財政赤字と貯蓄の関係、さらには財政赤字が準備預金と金利に与える影響を確認する。以下の議論は、一般的な性質に関するものである。

MMT現代貨幣理論入門』kindle版 220/553pp


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こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事の途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

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MMT現代貨幣理論入門

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目次 

 

シリーズのテーマ

前々回[4-4]から始めた"財政赤字国債金利"シリーズでは「財政赤字が増えると(減ると)、国債金利はどうなるか」をテーマに解説をしていきます。

ただ、答えは先に言っちゃいますが、

財政赤字がいくら増えようが減ろうが、国債金利はどうもなりません。上がりも下がりもしません。

これは財政赤字国債金利には関係が無いという意味ではありません。関係なくはないけど、結果的には、上がりも下がりもしないんです。これがどういうことなのかをシリーズで解説していきます。

 

前々回のおさらい

前々回記事[4-4]では、債券の金利と価格の恒等式を説明しました。ざっとおさらいすると、

債券金利=総支払額-債券価格

よって、

  • 債券の金利が上がる
  • 債券の価格が下がる

この2つは同じ意味です。

 

前回のおさらい

前回記事[4-5]では、株価が上下する仕組みを説明しました。これもざっとおさらいすると、

  • 指値注文と成行注文がある。
  • 指値の売り注文が高値側に、買い注文が安値側に貯まる。
  • 成行の買い注文は価格を上げて、売り注文は価格を下げる。(但し、貯まっている注文が全部捌けてしまうくらいの注文数が必要)

こんな感じなのですが、

本記事は前々回前回の内容を理解されてないと間違いなくちんぷんかんぷんなので、未読の方は、先にそちらを読んでから、再度本記事を読んでいただければと思います。

 

債券市場も株式市場も基本は同じ

株式が売買される株式市場というものがあるわけですが、債券が売買される債券市場というものもあって、さらに債券市場の中に国債が売買される国債市場も存在します。

実は、この国債市場で国債の価格が上下する仕組みも基本は株式市場と同じです。

板に売りと買いの指値注文が貯まり、成行注文が出されることで価格が上下します。

 

国債市場には日銀が参加できる

ただ、国債市場と株式市場には、決定的に違うところがあります。それは"国債市場には日銀が参加することがある"という点です。

この日銀が国債市場にやって来て国債を買う、という行為こそが[3-6]で解説した"買いオペ"であり、売るのが"売りオペ"です。

日銀は市場参加者として別格というか異次元の存在です。どこが異次元なのかと言うと、

  • B払いができる(資金力が無限)。
  • 大量の国債保有している。
  • 儲けることを目的にしていない。
 
いくらでも買える

[3-6]で解説した買いオペの仕訳はこうでした。

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このように、日銀は、日銀預金のB払いで国債を買います。

日銀以外の一般の市場参加者は、A払いで国債を買いますので、手持ちの資金が尽きたらそれ以上は買えませんが、日銀は国債をいくらでも高く、いくらでもたくさん買うことができるわけです。

 

いくらでも売れる

2020年9月現在で、日銀は国債の全発行残高のうち、48%Σ(゚д゚;) を保有しているそうです。

これは、実質的には無限に持ってるようなもんですから、日銀は国債をいくらでも売ることができます。(売値については、売り手はそもそも保有額に関係なく好きな値段を付けられます。)

参考:国債等関係諸資料 : 財務省

 

利潤を目的にしていない

一般の市場参加者が国債市場にやって来る目的は、国債を安く買って高く売り、カネ儲けをすることです。

ところが、日銀はカネ儲けなんかに興味がありません。日銀が国債市場にやって来る目的は、国債の市場価格を自分の思いどおりに操作することです。

 

日銀による国債価格操作

  • いくらでも買える
  • いくらでも売れる
  • 儲ける気がない
3拍子揃った日銀にとって、国債の市場価格を操作することは朝飯前です。

例えば、こういう板を300円に操作したければ…

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日銀は「300円でいくらでも買うし、いくらでも売る」という指値注文を出せばいいわけです。

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こうなると、どれだけ売りor買いの成行注文が出ても値段は300円から動きません。

 

実際は宣言するだけでいい

しかも、日銀は、実際には注文する必要すらありません。目標価格を宣言するだけで目標どおりの価格に市場を操作することができます。

例えば、日銀が「300円にします。」と言えば、

まず、売り手は、"必ず日銀に300円で売れる"と知っているので、【300円より安い売り注文】を出さなくなります。買い手だってそれを知っているので、絶対に約定しない【300円より安い買い注文】も出なくなります。

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続いて、買い手も、"必ず日銀から300円で買える"と知っているので、【300円より高い買い注文】を出さなくなります。やはり、売り手だってそれを知っているので、絶対に約定しない【300円より高い売り注文】も出なくなります。

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そして結局は300円の売り注文・買い注文しか出なくなり、日銀が宣言するだけで、国債価格は300円に固定されてしまいました。めでたしめでたし。
 

国債の価格操作は金利操作

債券の価格と金利恒等式

債券金利=総支払額-債券価格

より、国債の価格を操作するということは、国債金利を操作することと同義であり、日銀は実際には目標金利を決めて、そこから目標価格を逆算して、国債の市場価格をそこに固定します。

ということで、日銀は自分だけで(もしくは政府・財務省と相談して)勝手に「日本経済のためには国債金利はこれくらいが良いと思う。」とか決めちゃって、市場にやって来ては、規格外の豪腕、もしくは目標宣言によって価格を操作しては去っていくわけです。

一般の市場参加者にとっては、たまったもんじゃありませんが、日銀の参加が許されてる以上、国債市場ってのはそういうもんだと割り切るしかありません。

 

データを確認

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2016年9月に日銀は「10年物国債金利が概ね現状程度(ゼロ%程度)で推移するよう、長期国債の買入れを行う。」という長期金利目標を設定しました。(https://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160921a.pdfより)

それまでの10年物国債の相対金利は上下しながら2008年くらいからは下がり続ける一方でしたが、長期金利目標の設定後は見事にゼロ%程度で安定推移するようになりました。 

やはり国債金利は、日銀が決めたとおりになるし、日銀にはその能力と権限があるわけです。

 

結論

日銀は、

  • いくらでも買える
  • いくらでも売れる
  • 儲ける気が無い
という異次元の存在ですので、国債金利を思うがままにコントロールできます。よって、「いつか国債の価格が暴落して、金利が急騰するかもしれない。」みたいな心配には意味がありません。国債の価格・金利がどうなるかは日銀が決めます。その心配は「いつか日銀が日本経済を破壊しようとするかもしれない。」と言っているようなものです。

そんなくだらない心配をしてる暇があったら中国が日本を侵略してくるのを心配するべきですね。

 

補足1

もちろん日銀以外の市場参加者も国債の価格・金利に影響を与えることはできます。しかし、その影響は日銀がちょっと宣言しただけで吹き飛ぶ程度のものです。

 

補足2

本記事の説明は、国債が主権通貨建て(円建て)であることが前提です。

日銀にはドル建ての日銀預金を発行する権限がありませんので、もし、国債がドル建てだったら、B払いが効きません。すると、「いくらでも買う」が成立しなくなり、日銀のコントロール能力は失われます。

ギリシャなんかがユーロ建て国債金利をコントロールできなかったのは、ギリシャ銀行にユーロ建ての通貨を発行する権限が無く、B払いが効かなかったからです。

 

補足3

新規発行の国債は、国債市場ではなく、政府主催の入札で価格が決まります。

政府が「国債を発行するよー。入札でいちばん高く札を入れてくれた人に売るよー。」と公告するわけですね。実際にはもうちょっと複雑な手順を踏みますが、割愛します。

この入札には日銀は参加できません。なので、日銀のコントロールが及ばないような気がしそうですが、そんなことはありません。

というのは、例えば、

入札の時点で市場価格が日銀が決めた300円だったら、入札参加者は300円より高く応札する意味がありません(市場に行けば300円で売ってるものをわざわざ310円で落札する意味が無い)。

そこでA銀行が290円、B銀行が280円で応札して、A銀行が落札したとします。すると、敗れたB銀行は、次回の入札では、291円で落札します。その次は292円でA銀行が落札します。その次は293円で、その次は294円で、その次は・・・

このように、入札という仕組みは、必ず、いわゆる"底辺への競争"に突入します。この底辺への競争を回避するために生まれた知恵が"談合"です。そして最終的には299.999円とかになって、結局は日銀が決めた300円に落ち着きます。

 

 
それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

今回のおまけはお勧めしない動画です。見なくていいです。


【経済討論】2021 どうなる?世界経済と日本[桜R3/1/2]

藤さん、他人が話してるときに割り込むのやめなよ。最後まで聞いてからにしな。どうしても割り込みたいなら、手ぇ上げて、司会者に許可されてから話し始める。そのくせ、他人が割り込もうとしたら断固拒否するし。小学生か。あと、いちいち話が長くて、何が言いたいのかわからん。水島さん、ちゃんと司会やって。

松田さん、デジタル人民元だとか松田プランだとか、訳が分からんのよ。松田プランて「いままで国債って呼んでたものを"デジタル円"って呼ぶことにします。」ってこと?それで何かが解決するの?なんで中国政府がドル建て通貨を発行し始めるの。そんなことやりだしたら戦争よ?と思ったら、日銀がペイペイの真似事を始めるとか言い出すし、中国が資本移動を自由化するとか言い出すし。

あとね、水島さん、「"武漢ウイルス"って言ったら広告はがされた。なんでだ。」いやいやいや、なんでって・・・武漢ウイルスって言うからやろ。ぼけとん?どうしても言いたいなら、言ったらええけど、そこってそんなに大事なとこかい?

 

 

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4-5.財政赤字と国債金利 その2(株価の仕組み)

本節では、財政赤字と貯蓄の関係、さらには財政赤字が準備預金と金利に与える影響を確認する。以下の議論は、一般的な性質に関するものである。

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目次 

 

シリーズのテーマ

前回[4-4]から始めた"財政赤字国債金利"シリーズでは「財政赤字が増えると(減ると)、国債金利はどうなるか」をテーマに解説をしていきます。

ただ、答えは先に言っちゃいますが、

財政赤字がいくら増えようが減ろうが、国債金利はどうもなりません。上がりも下がりもしません。

これは財政赤字国債金利には関係が無いという意味ではありません。関係なくはないけど、結果的には、上がりも下がりもしないんです。これがどういうことなのかをシリーズで解説していきます。

 

本記事のテーマ

本記事では、株価が上下する仕組みを解説します。国債はどこ行ったんやって?まあ、まあ、お控えなすって。

まずはデータを見てみましょう。

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上がったり下がったりガチャガチャしながら推移してますね。 
そしたらば、このガチャガチャがどーゆー仕組みになっとるのか、説明していきます。
 

株価の正体

ポイントは、"売り手はできるだけ高く売りたい"と思っているが、一方で"買い手はできるだけ安く買いたい"と思っている、ということです。
ところが、タンゴは2人いなければ踊れません。売り手がどんなに高く売りたいと願っても、買い手がウンと言ってくれなければ、売りようがなく、それは買い手にとっても同じことです。
 
そこで売り手と買い手は互いに歩み寄って落としどころを探ります。晴れて2人が手を取り合ってタンゴを踊れたとき、その着地点が"株価"と呼ばれる数字です。

売り手と買い手がある値段で合意して、めでたく売買成立となることを"約定(やくじょう)"と言いますが、その約定が果たされた値段こそが株価の正体です。

つまり、株価を決めるのは、発行企業でも、証券取引所でもありません。市場で株を売買する人々です。証券取引所は、約定がいついくらで発生したのかを記録して事務処理をするだけです。

 

株価の板

株価の「板」ってご存知でしょうか。
こんな感じの表です。

f:id:xbtomoki:20201230145151p:plain

売り注文,株価,買い注文 の3列で構成されています。現在株価は130円となっています。

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この表の読み方は後で説明します。今はこういうのがあるんだな〜、くらいの感じでOKです。
 

指値注文と成行注文

株の売買には2種類の注文方法があります。
  • 指値注文(さしねちゅうもん)
  • 成行注文(なりゆきちゅうもん)

 

指値注文とは

「この銘柄を●円で買いたい(売りたい)。」
こういう注文の仕方を指値注文といいます。例えば「100円で買いたい」という注文をするわけです。
もちろん「100円で買いたい」と注文しても、必ず100円で買えるとは限りません。
タンゴは2人いなければ踊れませんので、100円で買うためには100円で売ってくれる人が現れなければなりません。もしタンゴのパートナーが現れなければ、売買が成立せず、注文したままでずっと待ちぼうけです。
 

成行注文とは

「この銘柄を今すぐに、できるだけ安く買いたい(高く売りたい)。」

こういう注文の仕方を成行注文といいます。
成行注文は、注文をすれば基本的には必ず約定します。値段に関係なく、注文したときに指値注文をして待ってる人が1人でもいれば売買が成立するからです。
 

冒頭の板の説明

では冒頭の板に戻ります。

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売り注文・買い注文の列に入ってる数字は、その値段で買って(売って)くれる相手を待っている指値注文の株数を示しているわけですが、さらにここで説明を2つ加えておきます。

  • なぜ同じ値段のところに売り注文と買い注文が重ならないのか
  • なぜ売りは高値側に、買いは安値に貯まるのか

 

なぜ重ならないのか

例えば、当初の板の状態に、もし120円・100株の売り注文が出れば、すぐに120円で約定して、板はこうなります。

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ということで、重なる所に注文が入っても、即座に約定して消えるので、売りと買いが重なったままになることはありません。

 

なぜ売りが高値側で買いが安値側か

例えば120円の買い注文だけがある状態を考えてみます。このとき、売り注文を出そうとしていて、値段をいくらにしようかと考えている人がいたとします。

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"売り手はできるだけ高く売りたい"と思っていますので、この人が120円より安い売り注文を出すことはあり得ません。だって、120円の買い注文が入ってることを知ってるわけですから、この人は120円でいますぐに売ることができるのに、例えばわざわざ100円で買ってくれる人を待つメリットが無いからです。

よって、売り手は少なくとも120円以上の注文を出します。例えば140円で注文を出したとします。

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さらにそこで、買い注文を出そうとしていて値段を検討している人がいれば、同じ理屈で、その人は140円以下の値段で注文を出します。

結果、売り注文は高値側に、買い注文は安値側に貯まっていきます。

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成行注文が株価を動かす

株価が上がったり下がったりするのは成行注文が入ったときです。

それでは、冒頭の板に戻って、この仕組みを説明していきます。

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成行の買い注文が入ったとき

ここに300株の成行買い注文が入るとどうなるでしょうか。

まず、いちばん安い130円の売り注文100株が約定して、続いて140円の250株のうち200株が約定します。
結果、株価は140円に上がります。

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成行の売り注文が入ったとき

続いて500株の成行売り注文が入った場合は、いちばん高い120円の買い注文500株が約定して、株価は120円に下がります。

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まとめ

このように、成行の買い注文が入ると株価は上がり、成行の売り注文が入ると株価は下がります。

但し、注意しておきたいことがあります。それは、成行注文で株価が上下するには、その成行注文で今現在の株価のところに貯まっていた指値注文が約定しきって無くなってしまうことが条件であるということです。

例えば、さっきの300株の買い注文を入れた例で、注文数が300ではなく、100だったら、130円の売り注文が約定するだけで、株価は130円のままで変化しません。

 

 
それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

www.kurashiru.com

これ、簡単に作れてめっちゃうまかったです。米は入れずにただのスープにすれば作り置きもいけます。

 

 

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4-4.財政赤字と国債金利 その1(債券の金利と価格)

本節では、財政赤字と貯蓄の関係、さらには財政赤字が準備預金と金利に与える影響を確認する。以下の議論は、一般的な性質に関するものである。

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目次 

 

おさらい

前々回[4-2]と前回[4-3]では、財政赤字(政府の赤字収支)が民間貯蓄に与える影響を説明しました。

ざっくり復習すると、

  • 政府赤字→民間黒字=民間貯蓄が増える。
  • 政府支出は、国債のB払いが基本で、国債残高と銀行預金が増えることになる。

 

本シリーズのテーマ

本記事から始まる「財政赤字国債金利」シリーズでは、財政赤字が増えると(減ると)、国債金利はどうなるか」を解説していこうと思います。

ただ、答えは先に言っちゃいます。

財政赤字がいくら増えようが減ろうが、国債金利はどうもなりません。上がりも下がりもしません。」

"どうもならんの?関係ないってこと?それをシリーズで解説するの?"

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いや、あの、関係がないわけではないんです。関係なくはないんですが、結果的にはどうもならんのです。

 

これがどういうことなのかを理解していただくためには、

  • 債券の仕組み
  • モノの値段の決まり方

このへんの説明が必要になります。

その上で、

本シリーズでは、こういったところに展開していく予定です。

 

そしたらば、まず本記事では国債・債券のざっとした概要を確認していきましょう。

 

国債とは

国債の基本知識

前回記事までで国債ガー国債ガーって言っといてなんなんですが、ここで国債の基本的な仕組みを説明しておきます。

  • 政府の金融負債である。
  • 表面金額・満期期日・利率を定めて発行される。
  • 満期になるまで、発行時に定めた利率で半年ごとに利息が支払われる。
  • 満期になったら、額面の金額が支払われて、消滅する。
  • 平成15年からは、紙で発行されてない。口座の中だけで電子データとして発行されている。

例えば、表面金額100万円・年利率2%の1年国債を買ったら、政府から半年後に利息で1万円、1年後に100万円と利息で1万円、全部合わせて102万円が支払われます。

参考1:

ご存知ですか?国債 : 財務省

参考2:

国債のペーパーレス化とはどういうことですか : 財務省

 

国債は"国の借金"?

よく"国の借金みたいなものだ"とか言う人がいますが、

www.asahi.com

債券の債は、借金という意味です。借金をしたときの、借金のカタ、借金の念書、約束の証書、借金証書です。「たしかに借金をいたしました、満期が来たら、利子をつけてお返ししますよ」というものです。これが債券です。だから国債は国の借金。

違います。てかシャッキンシャッキンうるさいな。刷り込んでくるのやめろ。

 

( ゚д゚)「池上さんが言うにはな、債の字は借金という意味だから、国債は国の借金らしいねん。」

(´・ω・ `)「あのね。じゃあ、貧乳は貧しい乳か?ちゃうやろ?おっぱいはみな尊いのよ。池上さんはそんなことも知らんのん。てか、そんなん言うたら池上さんは池の上か?場所か?日当たり良さそうじゃの。で、あのおじさんは人間に見えるけど、実は場所やったんか?」

 

( ゚д゚)「池上さんが言うにはな、国債ってのは"たしかに借金をいたしました"ていうものらしいのよ。」

(´・ω・ `)「あのね。国債は電子データなのよ。そんなんどこに書いとんのよ。捏造ヨクナイヨ。池上さんに言うといて。」

 

( ゚д゚)「池上さんが言うにはな、国債ってのは"満期が来たら、利子をつけてお返しします"ていうものらしいのよ。だから借金なんやて。」

(´・ω・ `)「あのな。定期預金は?貯蓄型保険は?どっちも満期になったら利子付きで返ってくるでしょーが。"定期預金って銀行の借金ですか?"って池上さんに聞いてみて。」

 

どないなっとんねん。もうええわ。

 

国債は借金ではない

国債は借金ではありません。

ほんとは「AはBであるか?」ということを考えるには、Bの定義を明確にして、その定義の範囲にAが含まれるかどうか、みたいに論考すべきですが、それはまた今度にして、いまはただマウントだけ取りに行きます。

そもそも、借金とは何でしょう?

池上さんの貧乳理論に従ってみると、"借金"てのは"借りたカネ"てことになります。

けど、前回記事で説明したこちらの仕訳図をご覧ください。

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これ、何か借りてるように見えますか?

政府支出の基本はA払いではなく、B払いです。政府がカネを借りる必要なんかありません。

 

債券ってのは・・・

順番があべこべなようですが、続いて"債券"ってのが何なのかを説明します。

債券ってのは、

  • Xさんが紙きれに例えば「この紙を持ってる人に、毎月10万円(年間120万)を支払って、5年後に1000万円を支払うことを約束します。」と書く。
  • すると、ただの紙きれが表面金額1000万円・5年満期・表面利率年12%の債券になる。
  • Xさんが「この紙、誰か買いませんか〜。」と売りに出す。
  • それをAさんが例えば500万円で買う。
  • Xさんは約束どおり、毎月Aさんに10万円を(12ヶ月×5年=60回→総額600万円)、5年後には1000万円を支払う(総支払額1600万円)。債券に書かれた約束が果たされて、債券は元の紙きれに戻る。
  • 最後の表面金額1000万円の支払によって債券を紙きれに戻す手続を債券の"償還"と呼ぶ。
  • Aさんは、5年も待たずに途中で債券を別の誰かに売ることもできる。例えば500万円で買ってすぐに、Bさんに1000万円で売れば、Aさんは債券を右から左に流しただけで500万円の得だし、Bさんは1600万円がもらえて600万円の得だから、2人とも気持ちよくなれる🙃

こういうもんです。

で、Xさんが政府だったら、その債券は国債と呼ばれます。そんだけのことです。牛の丼は牛丼やし、鶏と卵なら親子丼なのと同じです。貧乳は関係ありません。

 

債券の金利とは

Aの買値(500万)とXの支払額(1600万)の差(1100万)を債券の"金利"と呼びます。債券の金利といえば、この差額のことで、表面利率の"年12%"のことではありません。

 

数式で表すと…

これを数式で表すと、こうなります。

Xの総支払額-Aの買値=債券の金利

Aの買値とは、つまりは債券が売買されたときの値段(債券価格)ですね。それでは、数式の左辺右辺を入れ替えて、名前をちょっといじります。

債券金利=総支払額-債券価格

この数式を"債券の価格と金利恒等式"と呼ぶことにします。これは、国債金利のことを理解するのに欠かせませんので、非常に重要です。

 

恒等式の意味

債券金利=総支払額-債券価格

ですから、Aさんが債券を5年間持ち続けたら、金利は 1600-500=1100万円です。

ところがBさんに1000万円で売られたら(価格が上がったら)、金利は 1600-1000=600万円に下がります。

 

つまり、

「債券の価格が上がる」

「債券の金利が下がる」

この2つの文の意味内容は全く同じです。

逆に債券の金利が上がった、ということは債券の価格が下がったことを意味します。

 

ややこしい話

債券の金利は"利回り"とも呼ばれます。

また、利回りを価格で割り算して、年あたりに換算した数値もまた、"金利"または"利回り"と呼ばれます。ややこしいですね。当ブログでは、どっちのことか誤解の無いように、こっちの意味で言うときには"相対金利"もしくは"相対利回り"と言うようにします。

上記の例では、価格500万円に対して、5年で1100万円の利回りですから

→1100/500=2.2 さらに5で割って→2.2/5=0.44=44%

ということで、上記の例の相対利回りは、44%です。

これを整理すると、こういう数式になります。

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日本銀行が「国債金利目標を●%にします。」とか言ってるときは、こっちの相対金利の方のことを言っています。

 

 
それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

おまけは、たぶん読者の誰も分からない内容の愚痴です。

 

拝啓

P社の審査員様へ

先日、「全ての変数について、標準不確かさをAタイプ・Bタイプそれぞれの方法で評価して、その2つの値を平方和の平方根を取って合成してますが、これって合成するんじゃなくて、Aタイプ・Bタイプどちらかの評価方法を選択するものじゃないですか?」

という私の質問に対して、

「合成するに決まってるじゃないですかww当たり前でしょうwwwww」みたいな口をききやがりましたね。

依頼者の質問を鼻で笑ってくるとは思いもしなかったので驚きました。

それでは、お元気で。

敬具



 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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