経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

番外4-6.インフレに関する考察 その6

 

本記事はMMT解説ではありません。私がMMTをベースに理屈をこねくり回して考えたことを記事にしたものです。


当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

 

当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

xbtomoki.hatenablog.com

  

目次 

 

本シリーズのお題

「インフレ・デフレがどういう仕組みで起きるのかがよく分からない。」

これが長いこと私の悩みのタネでした。

三橋貴明さんがよくこの図↓を使って「需要が供給より大きくなればインフレに、逆ならデフレになる。」と言われます。

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新世紀のビッグブラザーへ データ44

インフレデフレは需要と供給のバランスによって起こり、バランスが需要の方に傾いたときにはインフレが起こる。

たしかにそうです。実際にもそうなってますし、それは分かってるんです。

ただ、私がよく分からんと言ってるのは、そのもう一歩先というか、手前というか、「なんで需給バランスが需要側に傾いたら物価が上がるのか」ということなんです。

 

MMT現代貨幣理論入門を読みました。
需給バランスによって起こると書いてありました。

財政赤字の神話: MMTと国民のための経済の誕生も読みました。
需給バランスによって起こると書いてありました。

マンキュー マクロ経済学Ⅰ入門篇(第4版)も読みました。
紙幣をいっぱい刷ったらインフレが起きると書いてありました。ハイハイワロスワロス

 

仕方がないので、自分で考えてみることにしました。その考えが多少なりともまとまったので、ここで書いてみることにしました。もしよろしければ、感想や指摘等をいただけたらありがたいです。

ただ、とても長くなりそうなので、「インフレに関する考察」シリーズということで、数回に記事を分けようと思います。5本以上になりそうです。

ということで、シリーズ6本目やっていきましょう。よろしくお願いします。

 

前回までのまとめ

前回までのまとめを確認しておきます。

  • 《インフレ》とは、「任意の財・サービスの価格が上昇すること」である。なお、上昇するのは価格であって、価値ではないことに注意されたい。
  • 《価格》は、できるだけ安く買いたい買い手と、できるだけ高く売りたい売り手が、互いに交渉して、折り合いが付いた値段のことである。つまり、価格とは、人と人との売買交渉の合意点である。
  • 価格と価値の関係性はかなり薄い。価格が価値とは関係なく上下することはいくらでもある。
  • 価格は、人と人の合意さえあれば、何にでも、いくらでも付けることができる

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  • 価格の上昇は、良い買い手が多い【売り手有利】の状況、または良い売り手が少ない【買い手不利】の状況で起きる。

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  • 需給バランスが需要側に偏ることによってインフレが生じる仕組みは、次の図のとおりである。

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  • インフレ・デフレの本質は、需給バランスではなく、買い手側・売り手側それぞれの《競争》のバランスにある。
  • 要因は、需給バランス以外にも無数にあるが、その影響は買い手(売り手)の競争促進(競争阻害)の4パターンに集約できる。
  • 買い手の競争促進と売り手の競争阻害は価格上昇圧力になり、買い手の競争阻害と売り手の競争促進は価格下落圧力になる。
  • 上昇圧力と下落圧力が同時にかかり、大きい方の影響だけがインフレまたはデフレという目に見える現象として現れる。

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  • 株価以外の普通の財・サービスについても、プライスボードで価格変動を説明することができる。

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本日のお題

(´・ω・ `)<うし、じゃあ、前回予告したお題があるけー、早速始めよか。まずはこれやな。

【「政府支出の拡大が続くと、どこかで臨界点に達して、ある日突然ハイパーインフレが起きるかもしれない。」という緊縮派の意見を否定したい】

( ゚д゚)<そもそもハイパーインフレって何なん?ちょっとネーミングダサくない?

(´・ω・ `)<ネーミングはしゃーないがな。ハイパーインフレってのは、一応【毎月のインフレ率が50%を超えること】っていう定義はあるみたいけど、厳密な数字はあんまし気にせんでええ。要するに、尋常じゃないペースのインフレのことや。

( ゚д゚)<尋常じゃないってどんくらいよ。

(´・ω・ `)<気にせんでええて言うとるやろ。

( ゚д゚)<気になるんや。教えてちょんまげ。

(´・ω・ `)<しゃーないのー。んと、例えばインフレ率が年10%って相当高いねんけど、スーパーに行ってニンジンの値段が110円やったとしよう。

( ゚д゚)<なんでや。

(´・ω・ `)<にゃー!

( ゚д゚)<にゃー!

(´・ω・ `)<んでな、そんときに「去年の今ごろは100円やったのに、インフレしたなあ。」とか考えると思う?

( ゚д゚)<いや、気づかん可能性すらあるな。

(´・ω・ `)<ほんほん。ほいじゃあ、先月は100円やったのが今月は1.5倍の150円になってて、その次の月には230円に、またその次の月は340円になっとったら?ちなみにこれが1年続いたら8650円になるで。

( ゚д゚)<さすがにそれは気づくやろな。

(´・ω・ `)<そんくらいが"尋常じゃないペース"や。

( ゚д゚)<ほーん。なんとなくわかったわ。

 

ハイパーインフレの条件

前々回[番外4-4]の競争バランス仮説に従えば、価格上昇の要因には、この2つがあるわけですが、

  • 買い手の競争促進
  • 売り手の競争阻害

買い手の競争促進による価格上昇とは、買い手同士が「私の方が高く買います。」と競争することによる価格上昇です。

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売り手の競争阻害による価格上昇とは、売り手が値段を吊り上げようとしたときに、買い手がそれにOKを出すことによる価格上昇です。

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どちらのルートにしても不可欠なのが、【高値買いを容認する買い手】の存在です。もちろんタンゴは2人いなければ踊れませんから、【高値売りを容認する売り手】も必要なんですが、売り手はいつでも"できるだけ高く売りたい"と考えていますから、それは考えなくていいでしょう。

 

よって、ハイパーインフレ(尋常でないペースで価格上昇が継続する現象)の様子をプライスボードで表すと、こんな感じになるわけですが、

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こんな動きが起きるためには、高値買いをいくらでも容認する(高値の買い注文をいくらでも出し続ける意思と能力を持つ)買い手の存在が不可欠になります。そして、そんな買い手は、《政府》以外にあり得ません。

よって、ハイパーインフレとは、政府がどんどん高値買いをしているときにだけ起こる現象であると考えられます。つまり、「政府支出拡大が続くと、ある日突然、ハイパーインフレが起こるかもしれない」とは、

(゚⊿゚)<政府が支出拡大を続けてたら、「いつの間にかハイパーインフレになるくらい拡大しちゃってたΣ(゚д゚;) 」なんてことになるかもしれない!

と言ってるわけです。

 

やはりあり得ない

( ゚д゚)<さすがにそんなアホみたいなことになるわけないやんけ。てかよ、それ、「ある日突然」って言わへんやろ。インフレ自体はジワジワ進んでるのに気づかへんで、気づいた頃にはヤバいレベルになってたってだけやんけ。

(゚⊿゚)<そんなアホな、と思うでしょう!ところがこれが実際に起きたんだな!ジンバブエとかワイマールとか!

( ゚д゚)<ジンバブエ政府はなんでそんなに支出を拡大したん?

(゚⊿゚)<アホだったから!まあ、政府というものはえてしてそんなものだ!政府が正気を失うなんてのはよくあることよ!だからこそ我々は…

( ゚д゚)<あのさあ。

(゚⊿゚)<ん?どうした?

( ゚д゚)<とりあえずアホってのを取り消してもらえへんか。なんでジンバブエの人たちがきみにアホ呼ばわりされなあかんのや。その"正気を失ってた"っていう根拠は何やねんな。正気を失っとるんは、見ず知らずのジンバブエの人たちを平気でアホ呼ばわりするきみの方やろ。ジンバブエの人たちにはジンバブエの人たちなりの考えがあったんちゃうかな。

(゚⊿゚)<それは・・・たしかに、調子こきました・・・すみません。

( ゚д゚)<よし。ほいでやな、自分では気づいてないみたいやけー、きみのためを思って言うんやけどな。あんな、きみの説明な、いっつも「まず○○が発狂します。」から始まるんよ。(゚⊿゚)<政府が発狂して、ハイパーインフレになるまで支出拡大するかも。とか、(゚⊿゚)<日銀が発狂して、国債を叩き売って、会計基準変更して時価評価するようになるかも。とか。なんなんあれ?民間部門は"経済合理性"とかいうのに従って行動するのを前提にするのに、なんで政府部門は暇さえあれば発狂する前提なん?めちゃくちゃやがな。そーゆーのを荒唐無稽って言うねん。いくらでも支出できる政府に発狂させてもうたら、そらなんでもありやろ。

(´・ω・ `)<まあまあ、そのへんにしといてあげんしゃい。

 

まとめ

ということで、

やはり、【政府支出拡大によって、ある日突然、ハイパーインフレが起こる】なんてことはあり得ないと言っていいでしょう。

たしかに、政府が猛烈に支出を拡大してハイパーインフレが起きた例はあります。というより、過去にハイパーインフレが起きたときには、必ず政府の猛烈な支出拡大がありました。よって、よく「紙幣を大量に刷るとハイパーインフレが起きる」という説明がされますが、これは因果関係の捉え方が逆で、大量の紙幣は、ハイパーインフレの原因ではなく結果(猛烈に支出をする過程で大量の紙幣が刷られた)です。

但し、それらは、いずれも政府が訳もなく発狂して起きたことではなく、そうするだけの理由が、ジンバブエには食糧危機が、ワイマールには敗戦と巨額賠償債務がありました。

さらに、それらは、いずれも政府が食糧危機等の緊急事態に対応するために、高値で市場の商品を買い占めようとしたもので、公共事業や社会保障の過剰拡大によるものだったわけではありません。買い占めは最善の対応策ではなかったのかもしれませんが。

よって、「毎年インフラ投資を拡大してたら、いつの間にかハイパーインフレになってました。」なんてのは、政府がハイパーインフレになるほどの高値発注を続けて、ハイパーインフレになって、それでも無視して高値発注をし続けない限り、つまり、それこそ政府が発狂しない限りはあり得ませんし、少なくとも私は、そんな事例を1つも知りません。

もし仮にそんなことがあり得るのであれば、おそらく人類史上最大のペースで政府が支出拡大をした中国で、なぜハイパーインフレが起きていないのでしょうか。

( ゚д゚)<やっぱ、ハイパーインフレが起きるのは、政府が高値で買い占めみたいなことをしたときだけで、公共事業とか社会福祉の拡大でハイパーインフレなんか起こらへんっちゅうことやろ。

(´・ω・ `)<いえす!ざっつらいと!1個目だけで結構長くなってしもうたの。今日はここまでにしとこか。

( ゚д゚)<ういー

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

 

本日のおすすめは、安藤裕先生の消費税解説動画です。

www.youtube.com

www.youtube.com

www.youtube.com

3本に分けて、かなり丁寧に説明されてあると思いますが、それでもある程度分かってる人でないと一回見ただけではなかなか理解できないかもしれません。もうね、ほんと、よくこんだけわけのわからん仕組みを作ったもんです。

1回目で「ちょっとよくわからんな」と思っても、ちょっと休憩を入れて、もう2,3回、我慢して見てみてください。3回も見れば、これだけ丁寧に説明されているので、きっと理解できるはずです。

 

なお、動画内で「外形標準課税」というワードが出てきます。これの意味が分かりづらいかもしれないと思いましたので、補足しておきます。

外形標準課税とは、納税額を「消費税分のカネをいくら預かったのか・いくら支払ったのか」で算定するのではなく、利益額や非課税支出額などの"状況証拠"から納税額を推定する方式のことです。

例えば、所得税は、1年間の所得の合計に税率を掛けて税額を算定しますが、その所得を毎月の給与明細を合計して計算するんじゃなくて、1月1日の預金残高と12月31日の預金残高を比べていくら増えたかで所得を計算するようなものです。

預金が増えた理由が給与所得だけであれば、どちらでも問題ありませんが、もし貸していたカネが返ってきた分なんかが含まれていたら、所得が過大に計算されて、所得税も過大になってしまいます。

消費税も同じように、100%価格転嫁ができていれば、実際額で計算しても外形標準課税でも同じ結果になりますが、そうでない場合、外形標準課税だと、実際に預かった額より多く納税しなければならなくなります。

これについて、詳しくは[7-3]のおまけをご覧ください。

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

‪最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^

応援コメント、指摘コメント、お待ちしております!当ブログの拡散も大歓迎です!

よろしくお願いします!

 

 

番外4-5.インフレに関する考察 その5

 

本記事はMMT解説ではありません。私がMMTをベースに理屈をこねくり回して考えたことを記事にしたものです。


当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

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当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

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目次 

 

本シリーズのお題

「インフレ・デフレがどういう仕組みで起きるのかがよく分からない。」

これが長いこと私の悩みのタネでした。

三橋貴明さんがよくこの図↓を使って「需要が供給より大きくなればインフレに、逆ならデフレになる。」と言われます。

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新世紀のビッグブラザーへ データ44

インフレデフレは需要と供給のバランスによって起こり、バランスが需要の方に傾いたときにはインフレが起こる。

たしかにそうです。実際にもそうなってますし、それは分かってるんです。

ただ、私がよく分からんと言ってるのは、そのもう一歩先というか、手前というか、「なんで需給バランスが需要側に傾いたら物価が上がるのか」ということなんです。

 

MMT現代貨幣理論入門を読みました。
需給バランスによって起こると書いてありました。

財政赤字の神話: MMTと国民のための経済の誕生も読みました。
需給バランスによって起こると書いてありました。

マンキュー マクロ経済学Ⅰ入門篇(第4版)も読みました。
紙幣をいっぱい刷ったらインフレが起きると書いてありました。ハイハイワロスワロス

 

仕方がないので、自分で考えてみることにしました。その考えが多少なりともまとまったので、ここで書いてみることにしました。もしよろしければ、感想や指摘等をいただけたらありがたいです。

ただ、とても長くなりそうなので、「インフレに関する考察」シリーズということで、数回に記事を分けようと思います。5本以上になりそうです。

ということで、シリーズ5本目やっていきましょう。よろしくお願いします。

 

前回までのまとめ

前回までのまとめを確認しておきます。

  • 《インフレ》とは、「任意の財・サービスの価格が上昇すること」である。なお、上昇するのは価格であって、価値ではないことに注意されたい。
  • 《価格》は、できるだけ安く買いたい買い手と、できるだけ高く売りたい売り手が、互いに交渉して、折り合いが付いた値段のことである。つまり、価格とは、人と人との売買交渉の合意点である。
  • 価格と価値の関係性はかなり薄い。価格が価値とは関係なく上下することはいくらでもある。
  • 価格は、人と人の合意さえあれば、何にでも、いくらでも付けることができる

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  • 価格の上昇は、良い買い手が多い【売り手有利】の状況、または良い売り手が少ない【買い手不利】の状況で起きる。

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  • 需給バランスが需要側に偏ることによってインフレが生じる仕組みは、次の図のとおりである。

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  • インフレ・デフレの本質は、需給バランスではなく、買い手側・売り手側それぞれの《競争》のバランスにある。
  • 要因は、需給バランス以外にも無数にあるが、その影響は買い手(売り手)の競争促進(競争阻害)の4パターンに集約できる。
  • 買い手の競争促進と売り手の競争阻害は価格上昇圧力になり、買い手の競争阻害と売り手の競争促進は価格下落圧力になる。
  • 上昇圧力と下落圧力が同時にかかり、大きい方の影響だけがインフレまたはデフレという目に見える現象として現れる。

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本日のお題

前回、プライスボードを使い、株の値動きが競争バランス仮説で説明できることを示しました。

(´・ω・ `)<そこで私はひらめいたのです。

( ゚д゚)<なんじゃー、すずさん。

(´・ω・ `)<すずさん誰やねんて。まあええわ。ぼくは思いついてもうたんや。株価以外の普通の財・サービスの価格変動の仕組みもプライスボードで説明できるんちゃうか?ってな。

( ゚д゚)<ほんほん。逆に考えてみたわけやな。

(´・ω・ `)<そういうこっちゃ。よし、ほいじゃあ早速始めてみよか。

*プライスボードの見方が分からない方は、先に[4-5]をご覧ください。

 

プライスボードによる説明

それでは、前回話題に出した"市場独占"、"コンサート値上げ"、その他いろいろをプライスボードで説明できるか、やってみましょう。

 

市場独占

前回[番外4-4]で、市場独占について、このように説明しました。

独占は、売り手側の競争を阻害します。独占市場では、売り手が1つしか無いので、買い手は「嫌ならよそで買います。」が使えないからです。売り手側の競争が阻害されれば、価格は上昇します。

これをプライスボードで表現すると、こうなります。 

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コンサートチケット値上げ

続いて、コンサートチケットの値上げについては、このように説明しました。

よって、楽団の経営者は、定期的に楽団員の賃上げを実施しなければいけません。定期的に賃上げをしながら楽団の経営を維持するには、定期的にチケット代を上げなければなりません。これは、チケットを安く売ることができなくなっているわけですから、売り手側の競争が阻害されている、と解釈することができます。

つまり、クラシックコンサートのチケット代が上がっているのは、社会全体のインフレによって楽団員の賃上げが必要になったから(そしてクラシック愛好家が値上げを受け入れたから)です。

これもプライスボードで表現できます。 

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10万円一律給付

2020年の第1回緊急事態宣言のときに、政府は、「特別定額給付金」ということで、住民基本台帳に登録されている全員に一律で10万円を給付し、総額およそ13兆円が配られました。[出典]

一般論としては、買い手がカネ持ちになれば、買い手の競争が促進されて、買い注文の量が増えたり、高値の買い注文が出るようになったりして、価格上昇圧力が働き、インフレが生じるはずです。そして、特別定額給付金では13兆円という大きな金額が国民の手に渡ったわけですから、普通は、インフレ発生が予想されます。

ところが、ご存知のとおり、これっぽっちもインフレは起きませんでした。

これは、【原状が相当デフレに傾いてたから、この程度の圧力じゃインフレに傾くには全然足りなかった】ということなんだと思います。これもプライスボードを使って、次のように表現できます。

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超安値のところに大量に貯まった買い注文のうち、いくらかが少しばかり上がってきたとしても、相場価格には、全く影響を与えなかったということなのでしょう。

 

マスク不足

10万円給付では、これっぽっちもインフレは起きませんでしたが、その時期には、マスクの価格だけは高くなっていました。

このマスクインフレは、

  • 中国からの輸入が途絶えて供給が滞った。
  • 緊急事態宣言等によってマスク需要が高まった。

この2つの要因が重なったことによるものだと考えられますが、これもプライスボードで説明できます。

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10万円給付とマスク不足の違い

なぜ総額13兆円の10万円給付ではインフレが起きず、マスク不足では大きな価格上昇が起きたのかは、影響した市場の大きさ(売り注文・買い注文の量)の違いによって説明が付きます。

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( ゚д゚)<そしたら大きな市場ではどうなったら価格上昇が起きるん?

(´・ω・ `)<そら、140のところに買い注文が入ったときや。ほいで、140のところに買い注文が入るためには、130のところの売り注文が全部さばけてしまわんとあかんわけやな。

 

おわりに

というわけで、私は、インフレデフレを理解・表現するのには、プライスボードを使うのが分かりやすくて良いんじゃないかと思うわけですが、いかがでしょうか。

もちろん、このプライスボードは、商品の種類の数だけ無数に存在し、しかも刻一刻と動き続けるので、神様でもない限り、実際に把握することはできません。本記事の中で描いたプライスボードの中の数字は、全て適当なものですし、あくまでイメージを可視化しただけに過ぎないので、これを使ってインフレがいつ起こるかを予測したりすることはできません。

そういう何か画期的なツールを発明しましたとか、そういうつもりはありませんが、インフレデフレがどういう仕組みなのかを説明するときには、このプライスボード方式が便利なんじゃないかと思い、提案してみた次第でございます。

( ゚д゚)<うーし、長かったのー。おつかれさん。

(´・ω・ `)<まだあるで。

( ゚д゚)<まだあるんか。何よ。

(´・ω・ `)<たぶんあと1本か2本で最後やな。インフレ関連で答えを出しときたい具体的なテーマが4つあるんや。

( ゚д゚)<ほんほん。と言いますと?

(´・ω・ `)<こちらでござい。

  • 「政府支出の拡大が続くと、どこかで臨界点に達して、ある日突然ハイパーインフレが起きるかもしれない。」という緊縮派の意見を否定したい。
  • 「今後、日本は人口が減少していくんだから、需要は伸びていかない。需要が伸びないんだからデフレが続き、インフレは起きない。」という脱成長論を否定したい。
  • 配当金だけが増えて、賃金が全く増えない問題を政策的に解決できないか。
  • アメリカ株の価格は、今後も上がり続けるのか。

( ゚д゚)<ほんほん。なんか最後のやつだけだいぶん毛色が違うの。

(´・ω・ `)<ぼくが経済に興味を持ったきっかけの1つがこれやったけーの。ここでやっときたいねん。それに、きみもこういうの好きやろ。

( ゚д゚)<まあ、嫌いじゃないけどよ。

(´・ω・ `)<よーし、ほいじゃあ次行ってみよー。

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

ちょっと暗い話を・・・政府がワクチン接種の推進に一生懸命になってるようで、それ自体は否定するつもりはないのですが、一生懸命な割にはワクチン不足を隠しながら職域接種を急がせたりするんで訳が分からんなとも思うのですが、それは置いといて、不安なことがありまして。

というのは、ワクチン希望者全員接種完了の後の計画が見当たらないんです。

テレビニュースとかでも聞かないし、ググっても出て来ないし、たぶん政府内で考えてないんじゃないかと思うんですよね(´・ω・ `)

(゚⊿゚)<ワクチンが行きわたれば、なんとなくええ感じになってくれへんかな。いや、きっとなるやろ。そうじゃないと困るし、てことは、なんとかなるに違いない。おお、落ち着いて考えてみたら、なんとかなるに決まっとるやないか。いやー、よかったよかった。

とか考えてるんじゃないでしょうか。さすがにそこまでじゃないといいんですが。

 

で、私が何を心配しているかと言いますと、

どうやら重症化予防には効くけど、感染予防にはならないという話もありますし、希望者全員接種完了しても、陽性件数はそんなに減らない可能性もあるかと思うんですが、もし減らなかったときに、

(゚⊿゚)<ワクチン接種が足りない!

とか、「改革が足りない!」みたいなノリで言いださないか、ということなんです。

(゚⊿゚)<ワクチン接種が足りないから陽性件数が減らんのだ!とはいえ、ワクチン接種を希望してない国民に強制はできない・・・そうだ!接種をしてない奴らを悪者にする空気感を作って、接種しないと日本に住めなくしてやれば、自主的に接種するようになるだろう!

( ゚д゚)<それのいったいどこが"自主的"やねん。

私は、いまのところワクチン接種をしないつもりなんですが、こんなんやられたら、さすがにどうしようかな・・・いや、それでも打たんかな。こんなんで打たされたらむかつくし。

 

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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よろしくお願いします!

 

 

番外4-4.インフレに関する考察 その4

 

本記事はMMT解説ではありません。私がMMTをベースに理屈をこねくり回して考えたことを記事にしたものです。


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こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

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本シリーズのお題

「インフレ・デフレがどういう仕組みで起きるのかがよく分からない。」

これが長いこと私の悩みのタネでした。

三橋貴明さんがよくこの図↓を使って「需要が供給より大きくなればインフレに、逆ならデフレになる。」と言われます。

f:id:xbtomoki:20210703170843j:image
新世紀のビッグブラザーへ データ44

インフレデフレは需要と供給のバランスによって起こり、バランスが需要の方に傾いたときにはインフレが起こる。

たしかにそうです。実際にもそうなってますし、それは分かってるんです。

ただ、私がよく分からんと言ってるのは、そのもう一歩先というか、手前というか、「なんで需給バランスが需要側に傾いたら物価が上がるのか」ということなんです。

 

MMT現代貨幣理論入門を読みました。
需給バランスによって起こると書いてありました。

財政赤字の神話: MMTと国民のための経済の誕生も読みました。
需給バランスによって起こると書いてありました。

マンキュー マクロ経済学Ⅰ入門篇(第4版)も読みました。
紙幣をいっぱい刷ったらインフレが起きると書いてありました。ハイハイワロスワロス

 

仕方がないので、自分で考えてみることにしました。その考えが多少なりともまとまったので、ここで書いてみることにしました。もしよろしければ、感想や指摘等をいただけたらありがたいです。

ただ、とても長くなりそうなので、「インフレに関する考察」シリーズということで、数回に記事を分けようと思います。5本以上になりそうです。

ということで、シリーズ4本目やっていきましょう。よろしくお願いします。

 

前回までのまとめ

前回までのまとめを確認しておきます。

  • 《インフレ》とは、「任意の財・サービスの価格が上昇すること」である。なお、上昇するのは価格であって、価値ではないことに注意されたい。
  • 《価格》は、できるだけ安く買いたい買い手と、できるだけ高く売りたい売り手が、互いに交渉して、折り合いが付いた値段のことである。つまり、価格とは、人と人との売買交渉の合意点である。
  • 価格と価値の関係性はかなり薄い。価格が価値とは関係なく上下することはいくらでもある。
  • 価格は、人と人の合意さえあれば、何にでも、いくらでも付けることができる

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  • 価格の上昇は、良い買い手が多い【売り手有利】の状況、または良い売り手が少ない【買い手不利】の状況で起きる。

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  • 需給バランスが需要側に偏ることによってインフレが生じる仕組みは、次の図のとおりである。

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本日のお題

(´・ω・ `)<…というわけで、需給バランスが需要側に偏ってインフレが起きるわけであります。めでたしめでたし。

( ゚д゚)<質問があります!!

(´・ω・ `)<はいどうぞ。

( ゚д゚)<独占市場で価格が上がるのも需給バランスで説明つくんかい?独占企業が価格を吊り上げるときは、別に供給を減らしとるわけじゃなかろうもん。

( ゚д゚)<ボーモル病のクラシック業界は、クラシック愛好家がコンサートホールに入りきれんようになったから、チケット代を高くしたんかい?これは需給バランスで説明できるんか?

( ゚д゚)<[4-6]国債の価格は、日銀が決めるて言うとったやないか。これ、どう考えても需給バランスとか関係ないやん。

( ゚д゚)<株とかビットコインの価格変動は?投資家さんたちは、安く買って高く売ってカネ儲けをしたいだけで、株とかビットコイン自体に興味は無いやんけ。これは"需要"とか"供給"とかっていう考え方で捉えてええんか?

(´・ω・ `)<ほんほん。いっぱい出たね。

( ゚д゚)<その言い方なんかやーね。

このように、世の中には"需給バランス"では説明しきれない価格変動(インフレ・デフレ)が数多く存在します。そこで私は、ある仮説を思いつきました。こちらです。

( ゚д゚)<ババン!!

【インフレ・デフレの本質は、需給バランスではなく、買い手側・売り手側それぞれの《競争》のバランスにあるのではないか】

今回は、この競争バランス仮説を検証していきたいと思います。

 

競争バランス仮説とは

【インフレ・デフレの本質は、買い手側・売り手側それぞれの《競争》のバランスにあるのではないか】という仮説は、インフレ・デフレをこのように↓理解するのではなく、

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このような↓イメージで理解するのがよいのではないか、ということです。 

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  1. 需給バランスが価格変動に影響を与える重要な要因であることは間違いないが、価格変動に影響を与える要因は、独占や政府介入等、需給バランス以外にも無数に存在する。
  2. 要因は無数にあるが、その影響は買い手(売り手)の競争促進(競争阻害)の4パターンに集約できる。
  3. 買い手の競争促進と売り手の競争阻害は価格上昇圧力になり、買い手の競争阻害と売り手の競争促進は価格下落圧力になる。
  4. 上昇圧力と下落圧力が同時にかかり、大きい方の影響だけがインフレまたはデフレという目に見える現象として現れる。

なお、ここで言う《競争》とは、こういう意味です。

【何らかの有限のモノを買い(売り)たいと思う買い(売り)手同士が、そのモノを自分の買い(売り)たい分だけ買える(売れる)ように、つまり他の買い(売り)手に買われてしまって自分の分が確保できなくなってしまわないように、他の買い(売り)手より良い買い(売り)手になろうとすること】

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( ゚д゚)<文章がごちゃごちゃでわけわからんぞ。

(´・ω・ `)<せやな。こーゆーときは表にしとこ。

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一問一答

それでは、( ゚д゚)の疑問に1つずつ答えてみましょう。

 

独占について

( ゚д゚)<独占市場で価格が上がるのも需給バランスで説明つくんかい?独占企業が価格を吊り上げるときは、別に供給を減らしとるわけじゃなかろうもん。

独占は、売り手側の競争を阻害します。独占市場では、売り手が1つしか無いので、買い手は「嫌ならよそで買います。」が使えないからです。売り手側の競争が阻害されれば、価格は上昇します。

ということで、独占市場で価格が上がるのは、需給バランスでは説明できませんが、売り手側の競争が阻害されるから、ということで説明がつきます。

 

ボーモル病について

( ゚д゚)<ボーモル病のクラシック業界は、クラシック愛好家がコンサートホールに入りきれんようになったから、チケット代を高くしたんかい?これは需給バランスで説明できるんか?

世界中のほとんどの国が、20世紀に入って以降、ほとんどの期間でインフレの状態でした。この現象の原因についての考察は別記事にしますが、インフレが続いて、物価が上がり続けたということは、クラシック音楽に携わる楽団員は、いくら自身の生産効率が全く向上してなかろうが、インフレに合わせて賃金を上げてもらわなければ生活していけなくなってしまいます。

よって、楽団の経営者は、定期的に楽団員の賃上げを実施しなければいけません。定期的に賃上げをしながら楽団の経営を維持するには、定期的にチケット代を上げなければなりません。これは、チケットを安く売ることができなくなっているわけですから、売り手側の競争が阻害されている、と解釈することができます。

つまり、クラシックコンサートのチケット代が上がっているのは、社会全体のインフレによって楽団員の賃上げが必要になったから(そしてクラシック愛好家が値上げを受け入れたから)です。

社会全体のインフレの原因には需給バランスによるところもあるでしょうから、全く関係ないとは言えませんが、少なくともコンサート需要が満たされなくなったからチケット代が上がったわけではありません。

 

政府(日銀)介入について

( ゚д゚)<[4-6]国債の価格は、日銀が決めるて言うとったやないか。これ、どう考えても需給バランスとか関係ないやん。

[4-6]のとおり、国債の価格は、日銀が決めます。このとき需給バランスは、全く関係ありません。

日銀は、「いまの市場価格は安すぎる」と思ったら、価格を吊り上げる良い買い手として市場に参加します。これは買い手側の競争促進が起きて、価格が上昇したと解釈できます。

一方、「高すぎる」と思えば、安値で売りさばく良い売り手として市場に参加します。これは売り手側の競争促進が起きて、価格が下落したと解釈できます。

 

金融取引について

( ゚д゚)<株とかビットコインの価格変動は?投資家さんたちは、安く買って高く売ってカネ儲けをしたいだけで、株とかビットコイン自体に興味は無いやんけ。これは"需要"とか"供給"とかっていう考え方で捉えてええんか?

この質問にYes/Noで答えるには、《需要》《供給》を定義する必要がありますが、それはめんどくさいので置いといて、《競争》という考え方で株やビットコインの価格が上下する仕組みを説明します。

[4-5]のとおり、株取引の世界では、このような↓《板》または《プライスボード》と呼ばれる表が使われています。

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プライスボードにおける買い手側の競争促進(=より良い買い手の増加)とは、より高い値段のところに買い注文が入ることであり、これは価格を上昇させます。また、買い手側の競争阻害は、買い注文が減る、または安い値段のところにしか買い注文が入らなくなることで、この場合、(売り手が値下げに応じれば)価格は下落します。

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一方、売り手側の競争促進(=より良い売り手の増加)とは、より安い値段のところに売り注文が入ることであり、これは価格を下落させます。また、売り手側の競争阻害は、売り注文が減る、または高い値段のところにしか売り注文が入らなくなることで、この場合、(買い手が値上げに応じれば)価格は上昇します。

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おわりに

競争バランス仮説は、あくまで私の思いつきに過ぎませんし、上記の検証結果は、仮説が真理であることを証明するわけでもありません。

ただ、【インフレ・デフレが需給バランスだけで決まり、需要側に傾いたときはインフレ圧力だけが、供給側に傾いたときはデフレ圧力だけが存在している】というのが、私にはいまいち納得できなくて、それよりはこっち↓の方が実際の現象を説明できていると思うんですが、いかがなもんでしょうか。

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( ゚д゚)<いやー、おつかれさんでした。

(´・ω・ `)<まだまだ続くで。

( ゚д゚)<まだあるんかいな。

(´・ω・ `)<いっぱいあんねん。

( ゚д゚)<そか。ほいじゃあ次行ってみよう。

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

今回の競争バランス説で考えると、よくある(゚⊿゚)<規制緩和でデフレ脱却!とかいう理論のイミフぶりが際立ちます。

そもそも"規制緩和"とは、政府が国内の事業者または新規参入しようとする事業者に対して課している一定のルールを緩くする、または無くしてしまうことです。

例えば、かつてタクシーは台数制限が設けられていて、既に十分な台数がある地域では、既存事業者が増台することや、新しい会社が新規参入することは禁止されていました。しかし、2002年にこの制限が撤廃され、安全基準さえクリアしていれば、いくらでも参入できるようになりました。[出典]

このように、いままで禁止されていた事業活動が解禁されて、新規参入のハードルも下がるわけですから、規制緩和は、基本的に売り手側の競争を促進し、価格下落(デフレ)の方向に影響します。

いったいなぜ(゚⊿゚)<規制緩和でデフレ脱却!とかいう謎理論が出てくるんでしょうか。しかもこの謎理論を根拠に実際に法改正がされちゃってるってんだから、まじ半端ないんですが、こういうこと↓ですかね・・・(´・ω・ `)?

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さすがにこれはバカにしすぎかな。

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

‪最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^

応援コメント、指摘コメント、お待ちしております!当ブログの拡散も大歓迎です!

よろしくお願いします!

 

 

番外4-3.インフレに関する考察 その3

 

本記事はMMT解説ではありません。私がMMTをベースに理屈をこねくり回して考えたことを記事にしたものです。


当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

 

当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

xbtomoki.hatenablog.com

  

目次 

 

本シリーズのお題

「インフレ・デフレがどういう仕組みで起きるのかがよく分からない。」

これが長いこと私の悩みのタネでした。

三橋貴明さんがよくこの図↓を使って「需要が供給より大きくなればインフレに、逆ならデフレになる。」と言われます。

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新世紀のビッグブラザーへ データ44

インフレデフレは需要と供給のバランスによって起こり、バランスが需要の方に傾いたときにはインフレが起こる。

たしかにそうです。実際にもそうなってますし、それは分かってるんです。

ただ、私がよく分からんと言ってるのは、そのもう一歩先というか、手前というか、「なんで需給バランスが需要側に傾いたら物価が上がるのか」ということなんです。

 

MMT現代貨幣理論入門を読みました。
需給バランスによって起こると書いてありました。

財政赤字の神話: MMTと国民のための経済の誕生も読みました。
需給バランスによって起こると書いてありました。

マンキュー マクロ経済学Ⅰ入門篇(第4版)も読みました。
紙幣をいっぱい刷ったらインフレが起きると書いてありました。ハイハイワロスワロス

 

仕方がないので、自分で考えてみることにしました。その考えが多少なりともまとまったので、ここで書いてみることにしました。もしよろしければ、感想や指摘等をいただけたらありがたいです。

ただ、とても長くなりそうなので、「インフレに関する考察」シリーズということで、数回に記事を分けようと思います。3本か4本になりそうです。

ということで、シリーズ3本目やっていきましょう。よろしくお願いします。

 

前回までのまとめ

前回までのまとめを確認しておきます。

  • 《インフレ》とは、「任意の財・サービスの価格が上昇すること」である。なお、上昇するのは価格であって、価値ではないことに注意されたい。
  • 《価格》は、できるだけ安く買いたい買い手と、できるだけ高く売りたい売り手が、互いに交渉して、折り合いが付いた値段のことである。つまり、価格とは、人と人との売買交渉の合意点である。
  • 価格と価値の関係性はかなり薄い。価格が価値とは関係なく上下することはいくらでもある。
  • 価格は、人と人の合意さえあれば、何にでも、いくらでも付けることができる

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  • 価格の上昇は、良い買い手が多い【売り手有利】の状況、または良い売り手が少ない【買い手不利】の状況で起きる。

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コストプッシュ型と需要プル型

さて、三橋貴明さんは、「需給バランスが需要側に傾いたときにインフレが起きる。」と言われます。【需給バランスが需要側に傾く】とは、供給に比べての需要が大きくなることですから、これには2つのルートが考えられます。

  • 需要が増える《需要増加ルート》
  • 供給が減る《供給減少ルート》

 

財政赤字の神話 MMTと国民のための経済の誕生(ステファニー・ケルトン,2020)では、これがもうちょっと詳しく説明されています。

経済学者はインフレ圧力を「コストプッシュ型」と「需要プル型」に区別する。
財政赤字の神話 MMTと国民のための経済の誕生(946/6291)

インフレには、この2種類のパターンがあるそうです。

  • コストプッシュ型
  • 需要プル型

 

コストプッシュ型インフレとは

2種類のうち、まず、コストプッシュ型については、このように説明されています。

テキサス・クリスチャン大学のジョン・T・ハーベイ教授は、コストプッシュ型インフレは「神の御業」あるいは「影響力の行使」によって起こる、と表現する。たとえば深刻な干ばつが起これば、穀物の収穫量が急減し、供給が急減すれば食糧不足によって価格は急騰する。
財政赤字の神話 MMTと国民のための経済の誕生(946/6291)

つまり、「コストプッシュ型」のインフレとは、三橋さんの理論で言うところの供給減少ルートによるインフレと同じもので、こういうことを言われているのでしょう。

①何らかの要因による供給減少
②需要が満たされなくなる
③価格上昇が起こる

そして、私が解明したいのは、これの②から③への因果関係であるわけです。なんで需要が満たせなくなると価格が上がるのか。例えば、干ばつによって小麦が収穫できなかったからと言って、小麦農家がいままで100円で売っていた小麦を200円で売ろうとしても、パン屋が値上げを受け入れなければ、小麦が200円になることはありません。

しかし、現実には干ばつが起きるたびに、小麦の値段は毎回上がります。ということは、干ばつが起きるたびに、パン屋は農家との交渉に敗れていることになります。そうでなければ辻褄が合いません。なぜパン屋さんはいつも農家さんに負けてしまうのでしょうか。

 

私は、これについて、供給減少ルートでは、前回作成した↓この図の左上の現象が起きて、②から③へとつながっているのではないか、と考えました。

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つまり、上記の②の言葉足らずな部分を補うと、こうなるのではないでしょうか。

①供給が減少する
②-1)需要が満たされなくなる
②-2)買い手同士が競争する
②-3)良い買い手が増える
②-4)売り手有利になる
③価格が上昇する

 

パン屋同士の競争が始まる

( ゚д゚)<"買い手"ってうどん屋さんのことやんな?

(´・ω・ `)<パン屋さんや。いや、うどん屋さんでもええねんけどな。

( ゚д゚)<じゃあパン屋さんで。

(´・ω・ `)<「じゃあ」じゃなくて。はじめからパン屋さんや。で、何やねんな。

( ゚д゚)<②-2)のパン屋さん同士が競争するってどういうことや。

例えば、小麦農家のXさんは毎年10トンの小麦を生産して、パン屋さんAとパン屋さんBに5トンずつ50円(10円/トン)で売り、合計100円の売上を得ていたとします。

ここで、ある年、干ばつによって5トンしか収穫できなかったら、パン屋さんA・Bは、いつもどおりパン屋を営業するために必要な小麦5トンをどうやって確保するでしょうか。

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(´・ω・ `)<きみがパン屋さんAなら、どうする?

( ゚д゚)<農家さんに「5トン全部、Aに売ります。」って言わせるにはどうしたらええかってことやんな?

(´・ω・ `)<そういうこっちゃ。

( ゚д゚)<うーん・・・

(´・ω・ `)<大喜利ちゃうで。

( ゚д゚)<えっ?

AがBを出し抜く方法は、「小麦5トンを50円ではなく、100円で買います」と言う、つまりBより高い価格を提示して【Bより良い買い手になる】しかないでしょう。しかし、そうすれば、Bは、さらに高い価格をXに提示して、より良い買い手になろうとするでしょう。競争の始まりです。

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(´・ω・ `)<てなわけよ。

( ゚д゚)<Bに買われてもうとるやないかw

(´・ω・ `)<こまけえこたあ気にせんでええねん。

よって、供給減少ルートのパン屋さんは、必要なだけの小麦を手に入れるには、より良い買い手になり、同じ買い手との競争に勝たなくてはなりません。だから、干ばつのたびに農家さんとの交渉に敗れてしまうのです。

 

干ばつで困るのは農家ではないのか

( ゚д゚)<でもでも。

(´・ω・ `)<何よ。

( ゚д゚)<【干ばつが起きたら農家さんが有利になる】ってなんかおかしくない?干ばつが起きたら困るんは、普通、農家さんやろ。

(´・ω・ `)<何もおかしいことないで。小麦を必要としとるんはパン屋なんやから、小麦の収穫量が減って困るんはパン屋に決まっとるやんけ。まあ農家さんは立派な小麦を作れんくてプライドが傷付くかもしれんけど、そういうのはお題とは関係ないけー、ごっちゃにしたらあかんわ。

 

需要プル型インフレとは

続いて、需要プル型については、このように説明されています。

一方需要プル型のインフレは、購買行動の変化によって企業が価格を引き上げることで発生する。通常それは経済の新たな財やサービスの生産能力を上回る需要があるときに起こる。(中略)しかし経済が完全雇用という限界に近づくと、実物資源が次第に逼迫する。需要増加によって価格に圧力がかかり、最も生産能力が逼迫している産業ではボトルネックが生じる。インフレが加速する。
財政赤字の神話 MMTと国民のための経済の誕生(956/6291)

こっちは需要増加ルートによるインフレです。供給減少ルートでは、Xの生産量が10トンから5トンに落ちて需要が満たされなくなりましたが、需要増加ルートは、Xの生産量は変わらずに、パン屋さんA・Bが必要とする小麦の量が5トンずつから例えば10トンずつに増えて、需要が満たされなくなるルートです。

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①需要が増加する
②-1)需要が満たされなくなる
②-2)買い手同士が競争する
②-3)良い買い手が増える
②-4)売り手有利になる
③価格が上昇する

需要増加ルートでも、やはりパン屋さんたちは互いに「向こうより高く買うから私に売ってくれ」と競争を始めて、その結果、価格が上昇します。

 

まとめ

三橋貴明さんやMMT派経済学者の方々が主張される【需給バランスが需要側に偏るとインフレが起こる】とは、要するにこういうこと↓であると理解することができるでしょう。

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ということで、需給バランスの需要側への偏りが、自然な因果関係の流れで、たしかにインフレ発生に帰着することが分かりました。

 

供給減少ルートと需要増加ルートの違いは、最初の部分だけで、以降の内容は全く同じです。但し、その影響は、だいぶ異なってきますので、その点には注意が必要です。

供給減少ルートでは、Xは「来年はいつもどおり10トン生産できたらいいな。」と考えるでしょう。そして次の年は無事10トンの収穫ができて、A・Bの需要も5トンずつで変化していない場合、元の状況に戻っただけですから、Xは、いままでどおりの価格に戻して、A・Bに5トンずつ売ることになるでしょう。

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供給減少ルートのインフレは、一時的に価格が上がって生産量が減るだけで、国民生活向上に資するところはありません。このため、コストプッシュ型インフレは、一般的には、"悪い"インフレであると言えるでしょう。

 

一方の需要増加ルートで、A・Bの需要が10トンずつで変化しない場合、Xは「そしたら来年は小麦を20トン作って、A・Bに10トンずつ売ろう。そしたら売上がもっと増えるぞ。」と考えるでしょう。

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その結果、小麦の生産量もパンの生産量も増加し、経済全体の供給能力が成長し、国民生活が向上します。この意味で、需要プル型インフレは、"良い"インフレであると言えるでしょう。

 

まだまだ続きます

(´・ω・ `)<以上でございます。

( ゚д゚)<あら、意外とあっさり終わったの。

(´・ω・ `)<まだインフレ考察シリーズは終わりちゃうよ。

( ゚д゚)<まだなんかあるん?

(´・ω・ `)<書いとるうちにいろいろ思い浮かんできてての。3本か4本で終わるつもりやったけど、もっと続きそうやわ。

( ゚д゚)<そか。ま、やりたいだけやりんしゃい。

(´・ω・ `)<うい。ありがとナス。

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

安藤先生の一連の騒動について、こちらの動画の45分あたりからご本人が水島さんの質問に答える形で説明されています。安藤先生がピンの動画では言いづらそうだった話題で、私が気になっていたことも水島さんがしっかり聞いてくれていています。水島さん、これはファインプレーです。私がこんなこと言うのもおかしいのですが、ありがとうございます。

www.youtube.com

誰が仕掛けたスキャンダルなのかは分かりませんが、どうせ財務省なんでしょうけど、ひとまず、安藤先生が政治活動を継続されるということで安心しました。

残念だったのが西田さんの対応ですね。間違いなく正しい貨幣観は持たれてるし、死者の民主主義とか筋道の通った考えを持たれてるなー、という印象だったんですが・・・たしかに以前から、人の好き嫌いになると、やたら偏屈というか、"優先順位おかしくない?"と思ってしまうような一面はありましたが・・・んー、よく分かりません。

とにかく、これで「安藤先生は応援したいけど、自民党は応援したくないんだよなあ。」っていうねじれが解消されたということで前向きに受け取りたいと思います。こんなくだらないネタをいつまでもひっぱっててもしょうがありませんから。

ただ、アエラドット、てめえの記事は今後一切信用せんからな。なんかここって前にもダレノガレ明美さんが薬物やってるみたいな記事を何の証拠も無しに書いたとかで問題になってましたよね。どないなっとんねん。

 


 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

‪最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^

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番外4-2.インフレに関する考察 その2

 

本記事はMMT解説ではありません。私がMMTをベースに理屈をこねくり回して考えたことを記事にしたものです。


当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

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こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

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目次 

 

本シリーズのお題

「インフレ・デフレがどういう仕組みで起きるのかがよく分からない。」

これが長いこと私の悩みのタネでした。

三橋貴明さんがよくこの図↓を使って「需要が供給より大きくなればインフレに、逆ならデフレになる。」と言われます。

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新世紀のビッグブラザーへ データ44

インフレデフレは需要と供給のバランスによって起こり、バランスが需要の方に傾いたときにはインフレが起こる。

たしかにそうです。実際にもそうなってますし、それは分かってるんです。

ただ、私がよく分からんと言ってるのは、そのもう一歩先というか、手前というか、「なんで需給バランスが需要側に傾いたら物価が上がるのか」ということなんです。

 

MMT現代貨幣理論入門を読みました。
需給バランスによって起こると書いてありました。

財政赤字の神話: MMTと国民のための経済の誕生も読みました。
需給バランスによって起こると書いてありました。

マンキュー マクロ経済学Ⅰ入門篇(第4版)も読みました。
紙幣をいっぱい刷ったらインフレが起きると書いてありました。ハイハイワロスワロス

 

仕方がないので、自分で考えてみることにしました。その考えが多少なりともまとまったので、ここで書いてみることにしました。もしよろしければ、感想や指摘等をいただけたらありがたいです。

ただ、とても長くなりそうなので、「インフレに関する考察」シリーズということで、数回に記事を分けようと思います。3本か4本になりそうです。

ということで、シリーズ2本目やっていきましょう。よろしくお願いします。

 

前回のまとめ

前回までのまとめを確認しておきます。

  • 《インフレ》とは、「任意の財・サービスの価格が上昇すること」である。なお、上昇するのは価格であって、価値ではないことに注意されたい。
  • 《価格》は、できるだけ安く買いたい買い手と、できるだけ高く売りたい売り手が、互いに交渉して、折り合いが付いた値段のことである。つまり、価格とは、人と人との売買交渉の合意点である。
  • 価格と価値の関係性はかなり薄い。価格が価値とは関係なく上下することはいくらでもある。
  • 価格は、人と人の合意さえあれば、何にでも、いくらでも付けることができる。

 

価格はパワーバランスで決まる

前回、《価格》とは、できるだけ高く売りたい売り手と、できるだけ安く買いたい買い手による売買交渉の合意点であると言いました。

もしこれが正しいのであれば、つまり、価格は売り手と買い手の交渉の結果であるならば、価格を決めるのは両者のパワーバランスなのではないでしょうか。

( ゚д゚)<パワーバランス?

(´・ω・ `)<んとな、今日はいったんインフレの話は忘れよう。んで、シンプルに売買交渉ってのがどーゆーもんなんかを考えてみようか。

( ゚д゚)<なんでや。

(´・ω・ `)<その方が分かりやすいからや。

( ゚д゚)<なんでや。

(´・ω・ `)<物事を理解するときは、いきなり全部をいっぺんに理解しようとしたら逆に遠回りになるもんや。急がば回れて言うやろ。シンプルな事実理解を積み上げて、それから、組み合わせたときのことを考えるんがええねん。

( ゚д゚)<それあなたの感想ですよね。なんかそういうデータでもあるんですか?

(´・ω・ `)<にゃー!

( ゚д゚)<にゃー!

繰り返しになりますが、 売り手はできるだけ高い価格で合意したいと考えていますし、買い手はできるだけ安い価格で合意したいと考えています。

よって、例えば売り手が強くて、買い手が弱ければ、高い価格で合意される傾向があるはずです。逆に買い手の方が強ければ、安い価格で合意されることになるでしょう。

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(´・ω・ `)<「価格を決めるのは両者のパワーバランスなのではないでしょうか。」ってのはこういう意味や。絶対値っちゅうか、単に強いか弱いかじゃなくて、どっちに比べてどっちがっていう、相対的な強さやっちゅうのがミソやで。

( ゚д゚)<ああ、それで"バランス"なんやな。

 

売り手・買い手の"強さ"とは 

( ゚д゚)<おけ。パワーバランスで価格が決まるんはええとしよう。じゃあ、その売り手が強いとか弱いっちゅうのは、具体的にはどーゆーことなん。

 

さて、ある程度大きな金額の設備なり消耗品なりを購買するとき、ビジネスマンは必ず複数の業者から見積を取ります。少なくとも私はそうしています。たとえA社に発注することをはじめから決めていたとしても、B社からも見積を取ります。なぜなら、B社の見積が無ければ、A社と交渉のしようが無いからです。

(´・ω・ `)<A社さん、見積おなしゃす。

( ゚д゚)つ100万円。

(´・ω・ `)<え、高くない?

( ゚д゚)<そう言われましてもねえ。これがめいっぱいですわ。

A社の見積だけだと、交渉はこれでおしまいです。ところが、B社の見積があれば、話が変わってきます。

 

(´・ω・ `)<A社さん、B社さん、見積おなしゃす。

( ゚A゚)つ100万円。
( ゚B゚)つ50万円。

(´・ω・ `)<ほいじゃ、今回はB社さんにお願いするっちゅうことで・・・

( ゚A゚)<ちょっと待っておくんなはれ。ほいだら49万でどうでっしゃろ。

(´・ω・ `)<あら、ほいじゃあ、やっぱりA社さんに49万でお願いします。

こうなれば買い手の思う壺なわけですが、売り手もやられっぱなしでいる必要はありません。

 

( ゚A゚)つ100万円。
( ゚B゚)つ50万円。

(´・ω・ `)<ほいじゃ、今回はB社さんにお願いするっちゅうことで・・・

( ゚A゚)<あら、そうですか。残念ですけど、しゃーないですな。

(´・ω・ `)<えっ?

( ゚A゚)<えっ?いや、B社さんから買いたいならどうぞって言うとんですよ。他に100万で買ってくれる会社はいっぱいあるんで。かまわんっす。

(´・ω・ `)<ああ、いや、それは困るんですわ。

( ゚A゚)<えっ?B社さんの見積はハッタリやったんですか。

(´・ω・ `)<そのとおりです。参りましたわ。100万でお願いします。

 

実際だと、こんなにはうまくいかんのですが、『黒い匣』に、バルファキスさんがチーム内でトロイカとの交渉戦略を説明する場面で、こんな一節があります。

しかしまた皆さんは、必要とあらば、どんな脅迫を受けても、交渉の決裂をも辞さない覚悟があるということを、彼らの肝に銘じさせる必要があります。なぜなら、そういう覚悟がなければ、そもそも交渉の部屋に入る意味などないのですから。

黒い匣 (はこ) 密室の権力者たちが狂わせる世界の運命――元財相バルファキスが語る「ギリシャの春」鎮圧の深層 (2184/13887)

つまり「いざとなったら私はいつでもテーブルを立つ用意がありますよ。」というカードを持たずに臨む"交渉"は、相手の気まぐれにすがる"お願い"に過ぎません。

これを売買交渉に当てはめれば、売り手・買い手が売買交渉に持参するべきカードは「あなたが嫌なんだったらよそで売ります(買います)から、結構ですよ。」であり、そして、このカードの効果を裏付けるものは【目の前の交渉相手以外の、他のより良い条件を示してくれる交渉相手の存在】です。

よって、"他の交渉相手"が多ければ多いほど、また"他の交渉相手"の示す条件が良ければ良いほど、交渉は有利になります。もしくは、相手がそういった"他の交渉相手"を持たないことでも、交渉は有利になります。

つまり、売り手・買い手の"強さ"とは、【自分がどれだけ多くの良い交渉相手を持っているか、または相手がどれだけ多くの良い交渉相手を持っていないか】であると言えるでしょう。

これをマトリックスにすると、こう↓なります。

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まとめ

(´・ω・ `)<よし、ここまでの内容を前回の「《インフレ》とは、『任意の財・サービスの価格が上昇すること』」と組み合わせてみるで。

《インフレ》とは、任意の財・サービスの価格が上昇することである。価格上昇は、良い買い手が多い売り手有利の状況、または良い売り手が少ない買い手不利の状況で起きる。

( ゚д゚)<ほう。なんかだいぶ輪郭が見えてきた感じがするの。

(´・ω・ `)<よーし。ほいじゃ今日はこんなとこにしよか。次回あたりで「インフレデフレは需給バランスによって起こる」っていうのにつなげられたら、いったん完成かの。

 

それでは本日ここまで。

 

おまけ

素人なんで、あんまりワクチンの話題には触れたくないんですが・・・

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菅首相が米ファイザー直接交渉で赤っ恥 CEOとの対面が頓挫|日刊ゲンダイDIGITAL

「絶対買います。買えるだけ買います。どんだけ高くても買います。」って言いながら交渉に臨んだら、そら当然こうなりますよ・・・(´・ω・ `)


 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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番外4-1.インフレに関する考察 その1

 

本記事はMMT解説ではありません。私がMMTをベースに理屈をこねくり回して考えたことを記事にしたものです。


当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

xbtomoki.hatenablog.com

 

当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

xbtomoki.hatenablog.com

  

目次 

 

はじめに

「インフレ・デフレがどういう仕組みで起きるのかがよく分からない。」

これが長いこと私の悩みのタネでした。

三橋貴明さんがよくこの図↓を使って「需要が供給より大きくなればインフレに、逆ならデフレになる。」と言われます。

f:id:xbtomoki:20210703170843j:image
新世紀のビッグブラザーへ データ44

インフレデフレは需要と供給のバランスによって起こり、バランスが需要の方に傾いたときにはインフレが起こる。

たしかにそうです。実際にもそうなってますし、それは分かってるんです。

ただ、私がよく分からんと言ってるのは、そのもう一歩先というか、手前というか、「なんで需給バランスが需要側に傾いたら物価が上がるのか」ということなんです。

(´・ω・ `)<車が進む仕組みってどうなっとん?

( ゚д゚)<アクセル踏んだら進むよ。

(´・ω・ `)<いや、そうじゃなくて。

( ゚д゚)<なんやねんな。

(´・ω・ `)<それは分かっとんねん。ぼくが知りたいんは、なんでアクセル踏んだら車が進むんかっちゅうことや。

( ゚д゚)<そんなん知るかいな。

(´・ω・ `)<せやろな。

( ゚д゚)<しばくぞ。

 

MMT現代貨幣理論入門を読みました。
需給バランスによって起こると書いてありました。

財政赤字の神話: MMTと国民のための経済の誕生も読みました。
需給バランスによって起こると書いてありました。

マンキュー マクロ経済学Ⅰ入門篇(第4版)も読みました。
紙幣をいっぱい刷ったらインフレが起きると書いてありました。ハイハイワロスワロス

 

仕方がないので、自分で考えてみることにしました。

その考えが多少なりともまとまったので、ここで書いてみることにしました。

もしよろしければ、感想や指摘等をいただけたらありがたいです。

ただ、とても長くなりそうなので、「インフレに関する考察」シリーズということで、数回に記事を分けようと思います。3本か4本になりそうです。

ということで、やっていきましょう。よろしくお願いします。

 

《インフレ》の定義

まず、《インフレ》の定義を明確にしておきます。

《インフレ》とは、「物価が上昇すること」です。デフレはその逆で「物価が下落すること」です。

通常、インフレ・デフレとは、継続的な現象だけを指し、一時的な物価変動は含みませんが、本シリーズでは継続的かどうかにはあまり拘らないことにします。

 

続いて《物価》も定義しておきます。

《物価》とは、「任意の財・サービスの価格」のことです。特定の財・サービスの価格について述べるときは、「○○の物価」というような書き方をします。

よって、さっきの定義と組み合わせると、《インフレ》とは、「任意の財・サービスの価格が上昇すること」となります。

 

インフレ=貨幣下落ではない

また、上昇するのは財・サービスの価格であって、価値ではないことを強調しておきたいと思います。

というのは、ときどき、インフレを「貨幣の価値が下落すること」と説明しているのを目にすることがありますが、私、これには異議があるんですよね。それは違うんじゃないかと。

というのも、緊縮派からもそうなんですが、ひろゆきさんとか、三浦瑠麗さんとか、それから落合陽一さん、橋下徹さん、堀江貴文さん、イケダハヤトさん、高橋洋一さん、池上彰さん・・・

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あのあたりの、別に緊縮派というわけではないけど、全然知らないことを詳しく知ってる風にしゃべるのとか、中身のない話をとんでもなく長々としゃべるのとか、そーゆースキルを飯のタネにしてるあの辺の、なんていうか、闇堕ちした寅さんみたいな人たちから「インフレが起きると、円の価値が下がるから、円安になる。」という意見をよく聞く気がするんですよね。

と思ってたら、先日、カリンゴンさんまでそう言ってて驚いたのですが。
朝まで生テレビでの三浦瑠麗氏のMMT批判の反論(221)【経済の仕組み】 - YouTube

しかし、それが正しいなら日本のインフレ率がずーっと先進国最低の状況が続いているのだから、どんどん円高になっていかないとおかしいわけで、【インフレ=貨幣の価値下落】という図式は事実と反するのではないかと思うんです。

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まあ、この話はいったんここまでにしておきます。次の論点にいきましょう。

 

《価値》の定義

  • 「インフレ」とは、「任意の財・サービスの価格が上昇すること」である。
  • 上昇するのは価格であって、価値ではない。

と主張する上で、経済学における《価値》とは何かについて、私の考えを明確にしておきたいと思います。

私は、「Xに価値がある」とは、「Xには、何か特定の物理的な状態または状況を実現するのに役立つ性質が備わっている」という意味だと考えます。

例えば、ハンマーには価値があります。それはハンマーには、木材に釘を打ち込むのに役立つ【固い】という性質が備わっているからです。

ここで注意したいことが2つあります。

  • Xという存在に価値があるのではなく、Xに備わった性質に価値があること。
  • Xの価値は、"Xの持ち主が誰であるか"によって変わったりはしない。

 

価値は性質に宿る

禅問答のようになってしまうのですが、固くないハンマーに価値はあるのでしょうか。

固くないハンマーは、木材に釘を打ち込むのに役立ちません。それ以外の用途が何かあるかもしれませんが、少なくとも本来のハンマーとしての価値は無くなっていると言えるでしょう。

ということは、ハンマーの価値は、それがハンマーであることによって成立するものではなく、それが【固い】という性質を備えていることによって成立するものだと言えるのではないでしょうか。

 

使用価値・交換価値とは別の概念

ハンマーの価値は、ハンマーの【固い】という性質に宿るものです。そして、ハンマーは、いつでもどこでも【固い】ので、木材に釘を打ち込むのに役立ちます。よって、"ハンマーの持ち主に釘を打ち込む用事があるかどうか"と、"ハンマーに価値があるかどうか"は、関係がありません。

要するに、私が何を言いたいのかと言うと、いま述べている価値の概念は、商品貨幣論の説明に使われる《使用価値》や《交換価値》の概念とは別物であるということです。

そこをハッキリさせておきたいだけで、持ち主によって価値が変わったりしないことはこれから後の議論にはあまり関わってこないと思いますので、「商品貨幣論の使用価値・交換価値」について(´・ω・ `)<何言ってんのか分からないね、という方はこの部分は気にしないでもらって大丈夫です。

 

貨幣に価値は無い

「Xに価値がある」とは、「Xには、何か特定の物理的な状態または状況を実現するのに役立つ性質が備わっている」という意味だとした場合、《貨幣に価値は無い》ということも言っておきたいと思います。

そもそも貨幣とは、【B払いの記録】です。もうちょっと詳しく言えば、その発行者が発行した後、いまだに回収されていない(未回収の)負債です。つまり、貨幣の本質は負債であり、貨幣に実体はありません。貨幣は、"モノ"ではなく、"情報"に区分されるものです。

( ゚д゚)<貨幣に実体が無いてどーゆーことやねん。きみ、1万円札とか見たことないんか?

(´・ω・ `)<1万円札は貨幣ちゃうよ。1万円札に書いてある情報が貨幣なんよ。

( ゚д゚)<あ?

(´・ω・ `)<うん、まあ、いきなりピンと来んのは分からんこともないわ。貨幣って何なのかは、また今度詳しい記事にする予定じゃけー、とりあえず、いまはそういうもんなんやっちゅうことで納得してもろて次行こか。

( ゚д゚)<うい。

 

貨幣は実体の無い情報ですから、貨幣を使って何か物理的な特定の状態または状況を実現することはできません。

( ゚д゚)<お金使ったら食べ物とか手に入るやないか。

(´・ω・ `)<それはカネを支払うことを「カネを使う」って呼んどるだけや。そういうことじゃなくて、1万円札に書かれてある「日銀には1万円の負債がある」っていう情報で釘は打てへんやろって言うとんじゃ。

よって、「Xに価値がある」とは、「Xには、何か特定の状態または状況を実現するのに役立つ性質が備わっている」という意味だとするならば、X=貨幣とした場合、《貨幣に価値は無い》と言えます。

ここで【インフレ=貨幣の価値下落】という図式は事実と反するのではないかという、はじめの方の話を蒸し返します。

貨幣に価値が無いのであれば、無いものが下がるわけがありませんから、やはり【インフレ=貨幣の価値下落】という図式は成り立たないのではないのでしょうか。もちろん、これは私が勝手に定義した"価値"を貨幣に当てはめて論理展開して得た結論に過ぎないことは承知しています。

 

《価格》の定義

( ゚д゚)<貨幣に価値が無いとか言うけど、為替取引で円安とか円高とか言うとるやないか。

(´・ω・ `)<円安円高は価格の話や。価格は価値の有る無しに関係なく何にでも付けられるよ。「レターポット」で検索してみ?

レターポットとは?『個人の信頼』を可視化する新通貨を、イラストで解説 | Workship MAGAZINE(ワークシップマガジン)

( ゚д゚)<ほんほん・・・?これ、どういうこと?

(´・ω・ `)<テキストメッセージを送ることを西野様に許可してもらう権利を1文字5円で売っとるんや。

( ゚д゚)<ほう、すごい世界やな。

(´・ω・ `)<もちろんこんなんに価値なんか無いで。価値なんか無いけど、こんなんでも価格を付けることは可能やねん。

私は《価格》を次のように理解するのが適切ではないかと思います。

《価格》とは、できるだけ安く買いたい買い手と、できるだけ高く売りたい売り手が、互いに交渉して、折り合いが付いた値段(人と人との売買交渉の合意点)のことです。

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但し、レターポットの買い手は特別です。もっと高く買うことを望んでいるかもしれません。

 

価格と価値の関係性

冒頭で「インフレによって上昇するのは価格であって、価値ではない」ということを強調しました。ここで価格と価値の関係性は、かなり薄いものだということも言っておきたいと思います。

価格は、買い手と売り手の売買交渉によって決まります。売買の目的物の価値が交渉に全く影響を与えないわけではないでしょうが、目的物が全然変化していないのに価格が上下することはいくらでもあります。

また、価格は、人と人が合意さえすれば成立するので、極端なことを言えば、目的物が存在していなくても、頭脳で認識することさえできてしまえば、何にでも、例えばビットコインにでも、いくらでも価格を付けることは可能なわけです。最近はデジタルアートとかいうのにも何億円みたいな値段が付いてるそうですね。すごい。

もう1つ、価値と価格の関係がかなり薄いことを示すために《ボーモル病》と呼ばれる現象も例として挙げておきます。ボーモル病とは、いくつかの産業がどれだけ年月をかけても生産効率を高めることが不可能な構造を抱えている現象のことで、クラシック音楽業界は代表的なボーモル病患者です。

クラシックコンサートの価値は、おそらくですが、300年前からそこまで大きくは変わっていないでしょう。なのに、クラシックコンサートの価格、つまりチケット代は300年前とは比べ物にならないほど高くなっています。もし価値と価格に強い関係性があるのであれば、なぜ有名指揮者は工場作業員より多くの報酬を得ているのでしょうか。

 

まとめ

このへんでいったんまとめにしておきます。

  • 本シリーズ「インフレに関する考察」のお題は、「なぜ需給バランスが需要側に傾くと物価が上昇するのか」である。
  • 《インフレ》とは、「任意の財・サービスの価格が上昇すること」である。なお、上昇するのは価格であって、価値ではないことに注意されたい。
  • 「Xに価値がある」とは、「Xには、何か特定の物理的な状態または状況を実現するのに役立つ性質が備わっている」という意味である。
  • ここでいう《価値》は、Xという存在ではなく、Xの性質に宿るもので、商品貨幣論の説明に使われる《使用価値》や《交換価値》」とは別物である。
  • B払いの記録である貨幣は、情報であるから、貨幣に価値は無い。
  • 《価格》は、できるだけ安く買いたい買い手と、できるだけ高く売りたい売り手が、互いに交渉して、折り合いが付いた値段のことである。つまり、価格とは、人と人との売買交渉の合意点である。
  • 価格と価値の関係性はかなり薄い。価格が価値とは関係なく上下することはいくらでもある。
  • 価格は、人と人の合意さえあれば、何にでも、いくらでも付けることができる。

 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

先週、しょうもないレスバに多大な時間を浪費してしまったことをここに書き留め、大いに反省したいと思います(´・ω・ `)

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日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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8-1.就業保証プログラム

就業保証プログラムは、働く用意と意欲がある適格な個人なら、誰でも職に就けるように政府が約束するプログラムである。

MMT現代貨幣理論入門』kindle版 409/553pp


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当ブログの中で「B払い」という用語を使うことがあります。これは私の造語なので、ググってもd払いが出てくるだけです。ただ、使わせてもらわないと不便極まりないので、普通に使います。

こちらの記事で"B払い"って何かを説明していますので、記事途中で「B払いって何やねんな☹️」ってなったらご覧ください。

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MMT現代貨幣理論入門

MMT現代貨幣理論入門

 

 

目次 

 

本日のお題

本記事から第8章「完全雇用と物価安定のための政策ー就業保証プログラムという土台」に入ります。

( ゚д゚)<しゅうぎょうほしょうぷろぐらむ?

(´・ω・ `)<せや。英語で言ったらJob Guarantee Program やな。略してJGPや。

( ゚д゚)<ほんほん。なんなんそれ?

(´・ω・ `)<それが第8章のテーマや。第8章では、このJGPの説明をしていくで。

第1章〜第6章までの内容は、いま現在の貨幣や財政オペレーションの仕組みの説明で、言うなれば基礎研究的なものでした。

続いて、第7章の内容は、主権通貨国の政府の経済政策がどうあるべきかという議論で、少し応用編気味ですが、それでも具体的な政策にまでは踏み込みませんでした。

(´・ω・ `)<そして!ついに!第8章にして!具体的な政策提言であるJGPにたどり着いたのであります!パンパカパンパンパーン!

( ゚д゚)<そか。はよ。

(´・ω・ `)<うい。

 

目的と目標の違い

(´・ω・ `)<さて、JGPの前にやな。《目的》と《目標》の違いって分かる?

( ゚д゚)<なんやねんな、急やな。そんなもんいっしょやろ。

(´・ω・ `)<ノンノン。てかいっしょなら聞くわけないやろ。ノンノンよ。

( ゚д゚)<うっとうしいのう。で、何が違うん?

(´・ω・ `)<まず、目的ってのは、最終的に達成したいゴールのことや。だいたい抽象的な内容であることが多いな。んで、目標ってのは、目的を達成するための通過点っちゅうか、抽象的な目的を達成するための道筋を具体的な数値とか状態に落とし込んだもののことや。まず《目的》があって、それに《目標》が付いてくるわけやな。

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(´・ω・ `)<こんな感じってことや。

( ゚д゚)<ほんほん。それがどうしたん。

(´・ω・ `)<これを踏まえとかんと、次の話がやりづらくての。どぅーゆーあんだすたん?

( ゚д゚)<にわかジョジョネタはやめときんしゃい。ちゃんと読んだことないやろ、きみ。てか、はよ。

(´・ω・ `)<うい。

 

JGPとは

[7-3][7-5]の内容を一部抜粋して箇条書きにしてみます。

  • 経済政策の目的は、国民生活向上である。
  • 国民生活向上という目的を達成するためには、実物資源をいかに有効活用するかがキモになる。
  • 実物資源にはヒトとモノの2種類があり、そのうちヒトがフル活用されている、つまり労働力人口(働く意思と能力がある人)の全員が就業している状態を《完全雇用》と呼ぶ。

よって、国民生活向上》という目的を達成するためには、《完全雇用》を経済政策目標の1つとするべきだと言えるでしょう

そこで、MMT派の経済学者は、こう考えました。
「全員が雇用されている状態にしたいのであれば、全員雇用すればいいじゃないか。」

このシンプルな考え方から生まれた政策提言が《JGP》(就業保証プログラム)であり、JGPとは、働く意思と能力がある人が申し出れば、政府は必ずいつでも誰でも何人でも採用して雇用契約を結ぶことを約束する、という政策です。

(´・ω・ `)<これがJGPでございます。

( ゚д゚)<なるほど、理にかなっとるな。え?以上?本日もう終わり?

(´・ω・ `)<まあ、基本的な内容はこれだけや。ただ、いくつか副次的な効果も考えられるから、それを説明していこか。

 

JGPは最低労働条件を決める

[7-1]のとおり、主権通貨国の政府はいくらでも支出することができますので、JGPを実施する上で障害になるものは何もありません。

( ゚д゚)<あれ?[7-2]で政府は手加減するべきや。スーパー子ども食堂はあかんて言うとったやないか。

(´・ω・ `)<JGPとスーパー子ども食堂は違うで。スーパー子ども食堂は、民間部門で活用されとった人まで政府部門がかっぱいでしもうとるけど、JGPで雇うのは、民間部門で働き口が無くて、活用されずにおる人だけや。

但し、政府が手加減をするべきであることはJGPにおいても変わりません。

労働者は、いつでもJGPに転職することができますので、JGPで示される雇用条件以下の条件で働くことにはメリットがありません。例えば、JGPが時給1000円なのに、わざわざ民間で時給900円で雇われたいと考える労働者は、ほとんどいないでしょう。

ということは、民間部門は、少なくともJGP以上の条件を提示しなければ労働者を雇うことができなくなりますので、JGPの労働条件は、事実上の最低限労働条件になります。ここで設定される条件が高過ぎれば、JGPは途端にスーパー子ども食堂と大差ないものになってしまうでしょう。

しかし、これは一方で、JGPがいわゆるブラック企業対策としても機能することを意味しています。労働者は、もはや失業を恐れる必要がなくなるので、我慢してブラック労働を続ける必要もなくなります。

 

JGPはビルトインスタビライザーになる

JGPには[1-8]で解説した《ビルトインスタビライザー》としての効果も期待することができます。

JGPが実施されると、失業者は1人もいなくなるので、もし企業が社員を増やしたいと思ったら、企業はJGPで雇われている労働者に、JGP以上の条件を提示して、転職を持ちかけることになります。

よって、好景気のときには、民間雇用が増えてJGP労働者が減るので、JGP労働者への賃金という政府支出が減ります。不景気のときは、その逆でJGP労働者が増えるので、政府支出が増えます。この動きは政府収支を反景気循環的にするので、景気を安定させる効果があります

 

JGPは物価を上げて為替レートを下げる

JGPは、インフレと通貨安を招く可能性があります。

JGPが存在しない世界における最低賃金は、常にゼロ円です。失業者には賃金が支払われないからです。ところが、JGPが実施されれば、失業者はいなくなりますので、国民全体の所得が確実に増加します。

細かい説明は省きますが、国民全体が金持ちになれば、通常、物価上昇(インフレ)が起きることになります。また、国民全体が金持ちになれば、たくさんの財・サービスを買えるようになりますので、輸入が増えて、為替レートが通貨安(円安)に傾きます。

但し、30年近くデフレに苦しむ日本ではインフレはむしろ歓迎されるべきですし、変動相場制を採用する主権通貨国の政府である日本政府が円安を恐れる必要は全くありません。

 

第8章は以上になります

(´・ω・ `)<よし、第8章は以上になります。

( ゚д゚)<えっ、もう終わり?

(´・ω・ `)<うん、まあ、"具体的にはどんな仕事をさせるんか"とか、"ベーシックインカムでええやんけ"とか、ほんとは論点はいっぱいあるんやけど、ぶっちゃけ、JGPネタは多分やけど荒れるからあんまり掘り下げたくないんよ。やから、ほんとにさわりのとこだけにしとくわ。あくまで事実を淡々と解説するのがこのブログの趣旨やしな。

( ゚д゚)<そか。

 

業種と規模に応じて政府が決めた人数の労働者を企業に派遣するとかどうかなぁ。

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(´○ω○ `)<まるちゃん、掘り下げたいのか掘り下げたくないのかはっきりしないと賛成派からも反対派からも叩かれちゃうよ。 

  

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

本日のおまけはお勧め動画です。


www.youtube.com


www.youtube.com

最近大流行のSDGsですが、室伏謙一さん・森井じゅんさんが対談形式でSDGsの何が問題なのかをがっつり解説されています。

前後編合わせて1時間以上ありますが、ぜひ多くの方に見ていただきたい内容でした。

 

言いたいことはだいたい動画の中で代弁されているんですが、ここで私のSDGsに対する考え方を一応述べたいと思います。

 

まず、個人がSDGsの17の目標のどれかに共感したりして、それを自分の目標にしたり、同じ目標を志向する企業や団体を応援することを否定するつもりは全くありません。そうしたい方はどうぞご自由にされたらいいと思います。

それに「貧困をなくそう」とか、具体的な中身の部分では、私も共感できるものが無いわけではありません。ただ、私はとにかくこれ↓に嫌悪感があるんです。

(゚⊿゚)<SDGsは誰一人取り残さないことを誓った全人類共通の目標です!

(´・ω・ `)<"全人類"ってぼくも入ってます?勝手にぼくの目標、決めないでほしいんですけど。誰一人取り残さないって言いますけど、要するに世界中の価値観を統一しようって話でしょ?なにそれ、ガチファッショやんけ。おお、こわ。みんな違ってみんな良いんじゃなかったん?

それと、SDGsウォッシュなんていう言葉もあるそうですが、結局、実際にはどう利用されてるかというところにも大きな疑問があります。

(゚⊿゚)<SDGsのためにレジ袋を有料化します!SDGsのために電気自動車を作らない自動車メーカーはつぶします!これに反対するやつはSDGsに反対ということですから、人類の敵です!

(´・ω・ `)<なんかもうSDGsが目標じゃなくて、反論を封殺するための魔法の言葉っちゅうか、水戸黄門の印籠みたいに「これ出しとけば理屈はいらねえ」便利アイテムになっとるやん。誰一人取り残さないんじゃなかったん?"人類の敵"は別なんか?

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

‪最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^

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