経理屋が読み解く『MMT入門』

『MMT入門』(L・ランダル・レイ,2019,東洋経済新報社)をベースにMMTを解説します。ときには自分の思うところを書き綴ったり。

落書き:クラウディングアウトとは

この記事はMMT解説ではありません。ふと思ったことがあったので、記事にしてみました。

 

きっかけ

ツイッターでマンキューという方の書いたテキストがどうやら主流派経済学のスタンダードらしい、と聞きまして、この本を近所の図書館で借りてきたんです。

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で、この中の第2部「古典派理論:長期の経済」の第3章「国民所得:どこから来てどこへ行くのか」の締めくくりに有名な"クラウディングアウト"が登場するんですが、

これが主流派経済学がどれだけ荒唐無稽かを如実に表してると思ったので、記事にしておこうと考えた次第です。

 

先に断っておきますと、長いです。

 

クラウディングアウトの概説

まずは、クラウディングアウトって何なのかをすんごいざっくり説明すると、

政府の赤字が増えることで企業の投資が抑制されて金利が上がる現象で、これを"クラウディングアウト"と呼ぶ。

これはとても悪いことである。

だから政府はできるだけ何もしない方がよろしい。

っていうものなんですが、これではあんまりなので、もうちょっと詳しくしますと、

 

元々の字義的な意味

クラウディングアウトとは、アルファベットで書くとCrowding Outで、crowdは"混雑する"という意味です。
イス取りゲームをイメージするのが分かりやすいかと思います。
例えば、プレーヤーが10人でイスが10個なら、平和なゲームができますが、
そこに新たに10人が参加してきて、20人のプレーヤーに対して、イスは10個のままだったら、元の参加者が締め出されてしまいます。
混雑して、元からいた人が締め出されたわけです。
 

経済に当てはめると

徴税と政府支出は真反対ですから、徴税を増やすのと、政府支出を減らすのは本質的には同じことです。 で、徴税を増やすと政府の収益が増えて、政府収支が黒字に傾きます。徴税を減らせば赤字化します。政府支出を増やすと費用が増えて赤字化し、減らせば黒字化します。

3-5.財政政策の仕訳 - 国債乱発派のMMT解説
[3-5]でこのように説明したとおり、政府の赤字が増えるということは、
  • 政府支出が増える
  • 税収が減る
この2つのいずれかが起きることです。
 
で、マンキューさんはここに1つの仮定を置きます。
「まず、企業が生産活動をして、一定量の生産物が出来上がる。そして、それを家計・企業・政府がカネを出して取り合うことで経済が成り立っている。」という仮定です。
ここで、生産物がイス取りゲームでいうところのイスで、家計・企業・政府の出すカネがプレーヤーに当たるわけです。
この仮定でいくと、
  • 政府支出増→政府がたくさんカネを出して、生産物を多く取ってしまう。ここで、家計はその影響を受けないので、結局、企業が座れるイス(生産物)が減ってしまう。
  • 税収減→家計のカネが増えるので、家計はたくさんカネを出すようになり、生産物を多く取ってしまう。ここで、政府はその影響を受けないので、結局、企業が座れるイス(生産物)が減ってしまう。

ということで、

政府の赤字が増えるとは、政府支出増・税収減のいずれかですが、いずれにしても企業は座れるイスが減ってしまって、締め出されてしまう(Crowding Out)という理屈です。

 

訳が分からんでしょう。

ところがまだ続きがあるんですな。

 

クラウディングアウトして利子率アップ

企業は、締め出された結果、投資を減らすことになります。

すると、銀行は企業へ貸出をする機会を失ってしまいますので、そのままでは利益が減ってしまいます。ややもすれば赤字になってしまう。

そこで、利子率を上げて、少ない貸出でも多くの利息を取れるようにします。

ということで、クラウディングアウトの最終的なオチは、金利上昇ということになります。

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訳が分からないと思いますので、結局は「訳が分からん」という感想になるのを承知の上で、なんとか分かるように、順を追って説明していこうと思います。

それではいってみましょう。

 

生産量Y

生産量Yは、生産のための資本の量Kと労働量Lによって決まるものとする。

これを数式で表すと、

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となる。この数式を生産関数と呼ぶことにする。

よって、KとLが不変なら、Yも不変である。さらに、この世に存在する資本と労働が最大限利用されていたら、Yはこれ以上増やせないということになる。

 

コブ=ダグラス生産関数

ちなみに、この生産関数は、具体的にはどんな関数なのか、コブさんとダグラスさんは、こんな数式なんじゃないかと考えた。

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これだとAとかαが変わったらKとLが不変でもYが変わるじゃねえかって?こまけぇこたぁ気にすんな。

消費C

消費Cは、家計所得Yと税収Tによって決まるものとする。

なお、家計所得は、世の中の総生産量に等しい(家計所得=総生産量)。違いますけどね。よって、家計所得を表す文字に総生産と同じYを使っても問題ない。

さらに言えば、消費は所得から税収を引いた可処分所得によって決まる(可処分所得が増えるほど消費は増える)ものとする。つまり、

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これはグラフにするとこんな感じになるはずだ。

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わたしゃこう↓だと思いますがね。可処分所得が増えたら増えただけ消費するなら金持ち父さんなんかおらんがな。

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さて、そろそろだいぶしんどいと思いますが、まだもうちょいお付き合いください。

 

投資I

投資Iは、利子率rによって決まるものとする。つまり、

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利子率とは、預金利息の利率のことか?融資利息か?国債?街金?マンキューさんはどれのことを言っているのか、と疑問を持つかもしれないが、

ここでは、預金利息から街金まで、全ての利子率は同じ数値であるものとする。よって、どれのことか?と考える必要は無い。だからこまけぇこたぁ気にすんなって

そして企業は銀行から借入をして、投資をする。利子率が高すぎると、投資して事業を起こしても、その事業の利益より借入の利息の方が多くなって投資をする意味がなくなる。rが増えるほどに投資は減るということである。

よって、I=f(r)をグラフにするとこういうふうになる。

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GDP三面等価の原則

これはまじめに聞いといてもらっても損しません。

GDPとは、収入の合計であり、支出の合計であり、生産の合計でもある。この3つは、必ず同じ数値になる。

これがざっくりとしたGDP三面等価原則の内容です。

なぜこんな奇跡みたいな一致が起きるのか。[2-2]で取り上げた例を使って説明します。

カフェ屋さんが私にコーヒーを提供して、私は550円を支払った。という例です。

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ここで、カフェ屋さんに550円の収入が発生し、私に550円の支出が発生しています。このように、発生する収入と支出は裏表の関係ですので、必ず一致します。タンゴは2人いなければ踊れません。

さらに、コーヒーは、私がコーヒーのために550円を支払った(カフェ屋さんがコーヒーの代金として550円を受け取った)瞬間にはじめて550円の生産としてカウントされますので、収入・支出と生産も毎回一致します。

1回1回の取引において、収入・支出・生産の3つは毎回一致しますから、これが全国規模とかになって、数えきれないほどの回数になっても合計はやっぱり一致するわけです。

これがGDP三面等価になる理屈です。

 

GDP三面等価原則の応用

GDP三面等価原則を応用すれば、「支出の合計を調べれば、生産の合計が分かる」っちゅうことになります。

そこで、輸出入は無視するものとして、世の中の支出者は、家計・企業・政府の3つで全てだとすれば、

総生産=総支出なので、総生産をY、家計支出をC、企業支出をI、政府支出をGとすると、こういう数式が成り立つ。

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数式を集約

いままでのY=f(K,L)とかを引っ張り出してきて、Y=C+I+Gに当てはめるとこうなる。

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これだと、どれが何を表してるのか分かりづらいので、fを元の文字に直す。

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クラウディングアウトします

長らくおつきあいいただきありがとうございました。

やっとこさクラウディングアウトの準備が整いました。

なお、Y=f(K,L)ですが、資本量Kも労働量Lも不変ということにしますので、Yは不変です。よって、Yは変化しない定数ですので、変化しないものに_を付けて、先の数式をこう書き直します。

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政府支出増のパターン

政府支出はGですね。政府支出が増加する(政府支出以外は変化しない)とき、C・Iはどうなるでしょう。

Cは、Y(所得)とT(税収)によって決まります。変化するのはGだけですので、Cは変化しません。よって、

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さらに変形して、

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CとYはどうせ定数なので、YーC=Zということでまとめます。Zは不変です。

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いよいよ政府支出を増やします。

例えばG=10、Z=50だとします。

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これがG=20に増えて、Z=50で不変なら、

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ということで、投資Iが減りました。ほらね、政府支出が増えると、投資が減るんですよ。

ここで、投資Iは利子率rによって決まる(利子率が増えるほど、投資が減る)ということにしたのを思い出してください。

このグラフです。

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ですから、投資が減ったということは、利子率が増えているはずです。

よって、結局は、政府支出が増えると、投資が減って、かつ、利子率が増えることが分かります。

 

税収減のパターン

今度は政府支出増ではなく、税収減のパターンを見てみましょう。

税収はTですね。税収が減少する(税収以外は変化しない)とき、C・Iはどうなるでしょう。

さっきと同じ要領で、今度はGに_が付きます。

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変形して、Y-G=Zと置くと、

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もうちょっと変形して、

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ここで、Y=50、T=10、Z=20として、このときのIをI10とすると、

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ここで税収Tを減らして、Y=50、T=5、Z=20として、このときのIをI5とすると、

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Cは( )内の数字(可処分所得)が増えるほどに増えることを思い出してください。

このグラフです。

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よって、C(40)<C(45)だから、

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ということで、やっぱり投資Iが減りました。これで、税収が減ると、投資が減ることが分かりました。

後はさっきと同じ考え方で、結局は、税収が減ると、投資が減り、かつ、利子率が増えることが分かります。

 

結論

政府支出増・税収減、いずれのパターンでも、その結果は、投資(企業支出)の減少及び利子率の上昇でした。

「政府支出増または税収減」とは、「財政赤字」という用語に集約できますので、冒頭のこれに落ち着くわけです。

政府の赤字が増えることで企業の投資が抑制されて金利が上がる現象で、これを"クラウディングアウト"と呼ぶ。

これはとても悪いことである。

だから政府はできるだけ何もしない方がよろしい。

 

しかし、こんな現象は起きません。

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てなもんです。

 

実際に起きていません。グラフで確認しましょう

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1989年~1995年にかけて、日本の財政赤字はどんどん伸びましたが、その間、国債金利はどんどん下がりました。そこから日本の財政赤字は2019年まで、ずーっと横ばいですが、 国債金利は下がり続けています。2020年はコロナショックで財政赤字が大きく増えましたが、国債金利はいまのところピクリともしていません。

 

"国民貯蓄"も減るらしい

ちなみに、クラウディングアウトの影響は、国民貯蓄なるものにも及ぶことになっています。

なお、"国民貯蓄"とは、政府部門の貯蓄と民間部門の貯蓄の合計のことです。ここでいう"貯蓄"とは(たぶん)純資産のことです。詳しい方なら、ここで「閉鎖経済なら、その国民貯蓄とかいうやつは常にゼロだろ」と気づかれると思いますが、マンキューさんの中ではそうではないみたいです。

財政赤字が増える→政府の貯蓄が減る→民間貯蓄は変化しない(!)→国民貯蓄が減る

こういう理屈のようで、マンキューさんは、これもクラウディングアウトの一側面だと言われています。

 

これが間違いなのは、下図だけでも分かりますが、もっと詳しく知りたい方は[3-9]をご覧ください。

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次回予告?

以上、「クラウディングアウトとは」でした。こんなに長い記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

記事の途中で、ちょいちょいつっこみを入れてますが、最初はもっとつっこみを書いてたんですけど、全部につっこんでたらキリがなかったので、だいぶ削りました。しばらくは本編に集中しますが、気が向いたら、『クラウディングアウトとは:つっこみ編』も書こうかなと考えています。

 

 

 それでは本日ここまで。

 

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

‪最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^

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よろしくお願いします!

 

 

 

 

 

3-10.章まとめ 国内の貨幣制度

本章では、今日の貨幣制度のオペレーション分析に立ち返り、国家の計算貨幣の下での負債の種類について検討する。

『MMT現代貨幣理論入門』kindle版 161/553pp


当ブログは、こちらの複式簿記を説明した記事を読んでいただいている前提で書いています。未読の方は是非ご一読ください。 

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当ブログは、私がこちらの書籍を読んで、理解したことや考えたことを記事にしたものです。

MMT現代貨幣理論入門

MMT現代貨幣理論入門

 

 

恒例の手抜き回です。

おつかれさまでした。第3章「国内の貨幣制度」は、前回記事の「3-9.貨幣オペレーションに関する注意点その2」までとなります。

 

本記事では、第4章に進む前に、第3章(3-1~3-9)のまとめをしておこうと思います。

 

3-1.銀行の役割 その1 (預金) 

xbtomoki.hatenablog.com

銀行がカネを預かるという行為の実質は、カネを借りる行為なんです。カネを借りたら、利息が付くのは当たり前です。だから預金には利息が付くんです。

3-1.銀行の役割 その1 (預金) - 国債乱発派のMMT解説

 

3-2.銀行の役割 その2 (融資) 

xbtomoki.hatenablog.com

ここで、特に注意していただきたいのは、"銀行は融資をするときに、何の原資も必要としていない"ということです。

3-2.銀行の役割 その2 (融資) - 国債乱発派のMMT解説

 

3-3.銀行の役割 その3 (引出・振込・納税) 

xbtomoki.hatenablog.com

現金引出・他行振込・納税仲介の全てに共通することは"銀行の日銀預金が減る"ということです。(他行振込では振込元のA銀行の日銀預金が減り、振込先のB銀行の日銀預金が増える。) 融資は何も無い所から貨幣を誕生させるものですから、先立つものは不要です。しかし、これらの取引には元手となる銀行の日銀預金が必要になります。

3-3.銀行の役割 その3 (引出・振込・納税) - 国債乱発派のMMT解説

 

3-4.銀行の役割 その4 (借入・貸付) 

xbtomoki.hatenablog.com

ということで、翌日物金利は、必ず日銀預金利息より高く、基準貸付金利より低くなり、次のようになります。 日銀預金利息 < 翌日物金利 < 基準貸付金利 つまり、翌日物取引は、それ自体は銀行同士の純粋な民間内部取引ですが、その金利は日銀がコントロールすることができます。

3-4.銀行の役割 その4 (借入・貸付) - 国債乱発派のMMT解説

 

3-5.財政政策の仕訳  

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つまり、財政政策というものは、突き詰めると、"政府収支を黒字にするか、赤字にするか、黒字(or赤字)にするならば、どのくらいの額にするのか"というものであるわけです。

3-5.財政政策の仕訳 - 国債乱発派のMMT解説

 

3-6.国債のオペレーション 

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前回にも説明しましたが、"貨幣は資産|負債の取引の記録"ですので、資産|負債の仕訳があるところには必ず貨幣発行があるわけですが、買いオペのプロセスには日銀に 資産|負債 の仕訳がありますので、貨幣が発行されています。ここで発行されている貨幣は日銀預金です。

3-6.国債のオペレーション - 国債乱発派のMMT解説

 

3-7.銀行・財政・国債の仕訳 

xbtomoki.hatenablog.com

[3-1]から[3-6]まで、たくさんの仕訳が出てきました。 いいかげん訳が分からなくなっていると思いますので、ここらでまとめておきましょう。

3-7.銀行・財政・国債の仕訳 - 国債乱発派のMMT解説

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3-8.貨幣オペレーションに関する注意点 

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銀行預金は銀行が発行します。私の口座に振り込まれる銀行預金は、元を辿っていけば必ずどこかの銀行が発行したものであって、絶対に日銀や政府が発行したものではありません。同じように日銀預金と現金紙幣は日銀が、国債は政府が発行したものです。

3-8.貨幣オペレーションに関する注意点 - 国債乱発派のMMT解説

 

3-9.貨幣オペレーションに関する注意点 その2 

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冒頭の財政破綻ストーリーは、やはり間違っています。 特に2.の「これ(国債発行+政府支出)をどんどんやっていくと、いつかは銀行の日銀預金が底をつく。」ここが完全な間違いです。 これをいくらやっても銀行の日銀預金は増えも減りもしません。むしろ買いオペが加わって増えることはあっても、減ることは考えられません。 どーにかこーにかして底をつくようにするためには、金持ちか政府が奇行に走るしかなく、そんなことが起きる心配をしてもしょうがありません。

3-9.貨幣オペレーションに関する注意点 その2 - 国債乱発派のMMT解説

 

 

それでは本日ここまで。

 

おまけ

本日は、独り言です。

しばらく前からウチの会社ではペーパーレス化の一環で、タイムカードじゃなくて、タブレットタイムレコーダーなるipadアプリを使ってるんですけど、ぶっちゃけ、これいる?状態になってて・・・

買っちゃったもんはしょうがないんですが、打刻するためだけにipad置いてるのってどうなん?というのと、これって打刻データを吸い出すのが結構めんどいんですよ。いや、良くできたアプリだとは思いますよ。別にネガキャンがしたいわけではありませんので・・・

ということで、ネットから現在時刻を持ってきて打刻するエクセルマクロでも作れば、お古のPCとかで事足りるし、データ吸い出しも楽になるなと思いまして、調べてみたら、こーゆーのって"webスクレイピング"って名前が付いてるんですね。

そこからさらに調べてみたら、webスクレイピングにはHTMLの理解が必要っちゅうことでHTMLもかじってみたんです。

 

で、HTMLをかじって、"そういやブログの編集画面にHTML編集のタブがあったな"と思って、開いてみたらこんな感じだったんですよ。

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でも、ちょっとかじった私にはだいたい分かっちゃうんですよ。そのおかげで、この章まとめの作業がすごく楽になりました。

勉強っちゅうのは食わず嫌いしたらいかんですな。

おしまい。

ちなみに、エクセルマクロは無事できあがりました。ただ、前例打破にはもうちょっと社内の議論が必要みたいです。菅さんのようにはいかないですね。

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

‪最後まで読んでいただき、ありがとうございます^^

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3-9.貨幣オペレーションに関する注意点 その2

ここで、現在流通している国債は、政府による過去の財政赤字の結果として発行されたものなので、国債購入に必要な準備預金残高は間違いなく、過去の政府赤字やFRBの非政府部門に対する貸出の結果である。

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目次 

 

前回記事より

前回記事でこんなことを書きましたが、 

本記事では、銀行・財政・国債のオペレーションに関して、最後に3つの注意点を挙げて、第3章を締めくくろうと思います。

3-8.貨幣オペレーションに関する注意点 - 国債乱発派のMMT解説

3つの注意点のうち1つ目(貨幣はどこからやってくるのか)だけで結構なボリュームになってしまったので、残り2つを今回記事に回していました。

 

それでは残り2つ、行ってみましょう。 

 

と、その前に、

古典派・緊縮派の経済学や新自由主義の立場からよく言われる財政破綻ストーリーを紹介しておきます。

  1. 政府は国債発行で銀行の日銀預金を借りて、そのカネで公共事業の代金や公務員の給料を払っている。
  2. これをどんどんやっていくと、いつかは銀行の日銀預金が底をつく。
  3. 政府は国債発行でカネを調達できなくなる。
  4. クニノシャッキンガー
  5. ザイセイハタンスルー
一見するともっともらしいですが、間違いです。まー、クニノシャッキンガーって言いだしたら、だいたい話半分で大丈夫だと思います。銀行の日銀預金じゃなくて家計の銀行預金を借りてるっていうパターンのやつもありますが、それの話はまた今度にします。
実際にはこんなことは100%起こりません。

これがなぜ起こらないのかを示すのが本記事のメインテーマです。

 

国債発行には預金準備が必要

まずは国債発行[3-5参照]の仕訳を確認しておきましょう。

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この取引では、銀行の日銀預金が国債に振り替わります。この振替の分だけ、政府の日銀預金と国債が増えることになります。

ですので、国債を発行する前に、銀行が日銀預金を準備できていないと、この取引はできません。これが注意点その2です。

なので、財政破綻ストーリーの"銀行の日銀預金が底をつくと、国債発行ができなくなる"、これ自体は間違いではありません。

 

日銀当座預金は減らない

それでは、まだ銀行の日銀預金は底をついていないものとして、"政府が国債発行で銀行の日銀預金を借りて、そのカネで公共事業の代金や公務員の給料を払う"と、どうなるのかを見てみましょう。

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注目していただきたいのは銀行です。

国債発行の時点では、たしかに日銀預金が減ります。しかし、政府支出[3-5参照]の時点では逆に増えます。結局、合計では相殺されて、日銀当座預金は増えも減りもしない、ということになっています。これが注意点その3です。

"これをどんどんやっていくと、銀行の日銀預金が底をつく"ようなことはありません。

増減するのは、国債と銀行預金です。それぞれが増えることになります。

 

買いオペが入るとどうなる?

国債発行+政府支出では、日銀当座預金は増減無し、国債と銀行預金が増えると分かりました。ここでさらに増えた国債を日銀が買い上げる(買いオペ[3-6参照]をする)と、どうなるかを見てみましょう。

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ここでも注目していただきたいのは銀行です。買いオペで銀行の持つ国債が日銀預金に振り替わり、日銀預金が増えます。

買いオペが入ると、底をつくどころか増えました。

 

どうやったら底をつくか

底をつくどころか増えてしまいました。銀行の日銀預金は一体どうやったら底をつくんでしょうか。

理屈上で考えられるのは次の2つです。

  • 現金引き出し
  • 国債発行(政府支出なし)

 

現金引き出し

現金引き出し[3-3参照]では、現金が引き出された分だけ、銀行預金と日銀預金が減ります。

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そして、[3-7]で作ったグラフのとおり、銀行預金の残高 > 日銀当座預金の残高 になってますので、銀行預金が半分くらい引き出されたら、日銀当座預金は底をつきます。

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ということで、例えば、大量の金持ちが一斉に銀行に駆け込んで、預金を全部引き出して、自宅の金庫に詰め込んで、今後は支払のたびに金庫から札束を取り出すことに決めた場合なんかですね。

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国債発行(政府支出なし)

国債発行の時点では、たしかに日銀当座預金が減るんです。ただ、政府支出が伴うと、行って来いになって、結局は増減無しになることを説明しました。

"じゃあ、政府が支出をせずに、ひたすら国債発行だけをやっていれば、いずれ底をつくじゃないか"

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売りオペ

"売りオペ(日銀が銀行に国債を売る)[3-6参照]によって日銀当座預金が減る"、これは普通にあり得ます。

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但し、日銀が国債を売るためには、その前に国債を買っておかなければなりません。

ということは、売りオペで日銀当座預金が減っても、それは過去の買いオペで増えた分ですから、"売りオペによって日銀当座預金が底をつく"ということは考えられません。

 

結論

冒頭の財政破綻ストーリーは、やはり間違っています。

特に2.の「これ(国債発行+政府支出)をどんどんやっていくと、いつかは銀行の日銀預金が底をつく。」ここが完全な間違いです。

これをいくらやっても銀行の日銀預金は増えも減りもしません。むしろ買いオペが加わって増えることはあっても、減ることは考えられません。

どーにかこーにかして底をつくようにするためには、金持ちか政府が奇行に走るしかなく、そんなことが起きる心配をしてもしょうがありません。

 

 

 
それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

ツイッターでもちょっと話題になっていましたが、この動画の2:33:00あたりからの議論を取り上げたいと思います。


【討論】世界激変と日本の野党[桜R2/11/26]

話題の中心は、直接的には言明されていませんが、れいわ新選組の舩後議員だと推測します。

論点は

  1. れいわ新選組は、山本太郎知名度を利用して障がい者議席を与えた。また、逆に障がい者を客寄せパンダにして票を稼いだ側面もある。これは不適切ではないか。
  2. 舩後議員は自分の口で言葉を話せない。彼には議員としての資格が無いのではないか。
ざっくりした議論の構図としては、
森口朗さん・渡辺哲也さん・水島総さんの3名がこのように主張し、
室伏謙一さんが3名の主張の中で事実と異なる部分を指摘するとともに、その意見は健常者と障がい者の分断を煽るものだと述べていました。
 
これについて私の所見を述べさせていただこうと思います。
 
1.の論点(障がいや知名度を利用して票を取った)について

これに尽きます。

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私はそうではないと思いますけどね。森口さんや渡辺さんはそうだと思うんでしょう。
誹謗中傷みたいなもんですから、議論の深めようも無いし、せめて明確なデータを出した上でないと水掛け論にしかなりません。
ただ、れいわに投票した有権者をバカにしすぎなんじゃなかろうか、とは思います。
 
2.の論点(自分の口で話せない)について

まず、事実として、動画の議論の中で室伏さんが指摘されているとおり、

舩後議員は、たしかに自分の口では話せませんが、コンピュータ利用と秘書の代読で、しっかりと国会議員としての職責を果たされています。


【字幕付き】舩後靖彦(れいわ新選組 参議院議員 ふなごやすひこ)2019.11.19 文教科学委員会参考人質問 大学入学共通テストにおける障害者の合理的配慮について

健常者よりは時間がかかるようですが、大した問題ではないと思います。
渡辺さんの発言がツイートにまとめられていたので紹介しておきます。
 
これに対して室伏さんは「頭は正常」なんだから差別される理由にはならない旨の意見を述べられていました。じゃあ、知的障がい者の頭は異常なんか?って揚げ足取られそうな発言ですが、議論がヒートアップ気味の場面だったので、言葉を選ぶ余裕が無かったんでしょう。
 
 
で、私の意見ですが、
 
まず、
比例名簿の順位について誤解をしてるし、舩後議員がコンピュータと秘書代読でちゃんと質疑応答をできてることも知らないし、事実を知らずに自分の思い込みとごっちゃにしてイメージだけで語ってるのが、言うたら完全にB層なんですよ。そんなんで野党ガーとか言ってんじゃないよ。その野党と大して変わらんじゃねえか。みっともない。
私は、特に渡辺哲也さんに強い不信感を持っています。いっつも"それあんたの妄想ちゃうか?"みたいな都市伝説まがいの話で毎回30分くらい時間取るし、10万円給付のときの"クレクレ乞食"発言もあったし、
なんか物知りさん枠で出てきますけど、知ったかぶりしとるだけなんじゃなかろうか。できれば出禁にしてほしい。
 
次に、
"私はレイシストじゃないですよ"アピールを一生懸命やってましたが、障がい者レイシストでないとは限らないし、障がい者の家族も同じことです。
水島さんは完全に障がい者だから議員の資格が無いって言ってますよ。アーカイブを見返してみてほしいです。
私は知的障がい者だろうが、日本人なら誰にでも議員の資格があると思いますけどね。
 
最後に、これはただの私の推測ですが、いちばん言いたいことは、
3名は、要するに、山本太郎さんが嫌いなんでしょ?
原発廃止論とか、斎藤まさしさんとのつながりとか、そのへんでサヨク感があるから。で、その嫌いな山本太郎さんのやることなすこと気に入らんってだけなんじゃないですか?
個人の好き嫌いは、それはそれで結構なんですけど、「何を言ったか」じゃなくて、「誰が言ったか」で意見や行為の是非を判断するってのは、それこそ、レイシストど真ん中なんじゃないかと思いますが、いかがなもんですかね。
 
私は竹中平蔵さんが大嫌いですけど、彼が財政均衡論が間違いだと言ったことについては肯定しますよ。正直、感情的には引っかかりますから、渡辺さんたちの気持ちは分からんでもないですけどね。
 
ちょっと長くなってしまいましたね。それでは、このへんで。

 

  

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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3-8.貨幣オペレーションに関する注意点

ここで、現在流通している国債は、政府による過去の財政赤字の結果として発行されたものなので、国債購入に必要な準備預金残高は間違いなく、過去の政府赤字やFRBの非政府部門に対する貸出の結果である。

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目次 

 

まずフラグを立てます

本記事では、銀行・財政・国債のオペレーションに関して、最後に3つの注意点を挙げて、第3章を締めくくろうと思います。

 

貨幣はどこからやって来るのか

前回記事の終わりに質問しっぱなしにしたやつです。

xbtomoki.hatenablog.com

 

質問をおさらいしますと、

「私の銀行口座にはありがたいことに毎月、お給料が振り込まれます。さて、このカネは、どこからやって来ましたか?勤め先の会社の売上からですよね。じゃあ、その売上はどこから?会社の顧客の所得からです。じゃあ、その所得はどこから?・・・このどこからどこからゲームはいつどこで終わりますか?

つまり、貨幣は元をたどっていったら、どこかに生誕の地があり、生みの親がいるはずですが、それはどこの誰なのか?という問題でした。

ここで、貨幣にはいろんな種類がありますが、当ブログのテーマはマクロ経済なので、考える対象は次の4つに絞ります。

  • 銀行預金
  • 日銀預金
  • 国債
  • 現金(紙幣)

そしてこれらは増え続けていますので、どこかで誰かが作り続けているのは間違いありません。

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まずは、「誰が」作ってるのかは、簡単なので先に言ってしまいましょう。
  • 銀行預金:銀行が発行します。
  • 日銀預金:日銀が発行します。
  • 国債:政府が発行します。
  • 現金紙幣:日銀が発行します。
銀行預金は銀行が発行します。私の口座に振り込まれる銀行預金は、元を辿っていけば必ずどこかの銀行が発行したものであって、絶対に日銀や政府が発行したものではありません。同じように日銀預金と現金紙幣は日銀が、国債は政府が発行したものです。
言われてみれば当たり前ですよね。でも、"私の銀行預金は元々はどこから生まれたんでしょうかね?"って、知ってる風の人に聞いてみたら結構答えられなかったりしますよ。たぶんですけど。私の1回だけ聞いてみた経験では答えてもらえませんでした。
 

さて、ほいだら、それぞれが生まれる様子をもうちょっと詳しく見ていきましょう。

 

貨幣は金融負債であり、金融資産

[1-1]で説明したとおり、貨幣は【資産|負債】の取引の記録であり、その発行者にとっては金融負債であり、その所有者にとっては金融資産です

よって、貨幣が発行されたときには、必ず発行者が貸方に負債としてその貨幣を計上していて、所有者が借方に資産としてその貨幣を計上しているはずです。

前回記事[3-7]で作成した仕訳集からこれに当てはまる仕訳を探してみましょう。

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銀行預金

銀行預金は、市中銀行が発行する負債で、企業・家計が所有する資産です。これに合う仕訳は、現金預け入れ・銀行融資・政府支出の3つです。

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[3-1]で説明したとおり、現金預け入れの本質は銀行への貸付ですから、私が財布から万札を出して、ATMに入れると、銀行預金が誕生して、世の中の貨幣総量は間違いなく増えます。ところで、もうちょっと突っ込んだ話をすると、現金預け入れで貨幣総量は間違いなく増えるんですが、マネーストック・マネタリーベースの増減は起こりません。ややこしいでしょう^^マネタリーベース・・・どこかで聞いたような・・・うっ、頭が・・・っ!闇の力が目覚める・・・っ!という方は、この紫の小さい文字は読み飛ばしてください。

銀行融資で銀行預金が生まれる、というのは[3-2]で説明した内容ですね。さらに、[3-5]で政府支出でも銀行預金が生まれることを説明しました。

闇の力とか言ってふざけたせいで現金預け入れに文字数を割いてしまいましたが、現金預け入れで生まれる銀行預金は微々たるものです。銀行預金の重要な生誕地は銀行融資と政府支出です。

 

日銀当座預金(銀行の日銀預金)

日銀預金は、日本銀行が発行する負債で、政府または市中銀行が所有する資産です。そして、市中銀行が所有する分を特に"日銀当座預金"と呼びます(政府の分は"政府預金"です)。

日本銀行が負債として発行して、市中銀行がそれを資産として所有」これに合う仕訳は、現金預け入れ・日銀借り入れ・政府支出・買いオペの4つです。 

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現金預け入れでは、銀行が企業・家計から受け取った現金をそのまま金庫に収納したら、それで終わりですが、日本銀行に又貸しすれば、日銀当座預金が生まれます。
日銀借り入れは[3-4]で説明したものです。銀行融資と同じ仕組みで日銀当座預金が生まれます。

政府支出の説明は[3-5]で、これは銀行預金も同時に増えます。

ここまでは"銀行融資"が"日銀借り入れ"に変わっただけで、銀行預金誕生の説明とほぼ同じですが、日銀当座預金には第4の故郷"買いオペ"があります。現残高のほとんどがここから生まれたものです。

但し、政府支出でも日銀当座預金が生まれることには重要な意味がありますので、そこんとこ、よろしゅうたのんます。

 

国債

国債は、政府が発行する負債で、一次的には市中銀行が所有する資産です。個人向け国債もありますけど、いまはマクロ経済の話をしていますので個人向け国債は無視します。これに合う仕訳は、国債発行だけです。 

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銀行預金や日銀当座預金はキクロテラみたいにいろんなところから生まれますが、国債の故郷はここだけです。

 

現金(紙幣)

現金(紙幣)は、日銀が発行する負債で、普通は企業・家計が所有する資産です。これに合う仕訳は、現金引き出しだけです。 

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現金も国債と同様に故郷が1つしかないわけですが、これは国債とは意味合いが少し違います。というのも、現金は"日銀の負債である"という点においては、日銀預金と全く同じです。

なので、日銀借り入れ・政府支出・買いオペのプロセスで日銀が市中銀行に支払をするときに日銀預金ではなく、現金を使う(何千億円とか何兆円とかを札束で送り付ける)ことも物理的には可能です。その場合は日銀預金ではなく、現金が生まれます。

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しかし、そんな札束ドーンみたいなしょうもない嫌がらせをされても、銀行は即座にその現金を日銀に預け返すでしょう。例えば買いオペの代金を現金払いされて、それを即預け返した場合は、こうなります。

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普通の買いオペはこうです。

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全く同じことになります。札束ドーンしても手間が増えるだけです。なので、こんなことをする人はいません。よって、現金が生まれるのは、実質的には、現金引き出しのときだけ、ということになります。


次回予告 

本記事では、銀行・財政・国債のオペレーションに関して、最後に3つの注意点を挙げて、第3章を締めくくろうと思います。

って冒頭に書きましたが、1つ目で意外とボリュームが出てしまったので、残り2つは次回にします。

 

 
それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

前回記事で付加価値説と外貨説を紹介しました。 

xbtomoki.hatenablog.com

なぜこんな間違った説を信じている人がいるかと考えたときに、たぶんこうなんじゃないかな、と勝手に考えたのが、

お金、カネ、マネー、貨幣・・・いろいろ呼び名はありますが、"お金"と呼ぶことにしますと、彼らの思考では、「お金とは水素とか砂糖とかと同じ並びにある、一種のモノであって、その実体は常に"お金"というモノなんだ。水素がガスだったり水の一部だったり見た目や用途が変化しても、その大元が水素原子であるのは変わらないのと同じように、"お金"が現金だったり、銀行預金だったり、日銀預金だったり、円だったり、ドルだったり、と誰がどのように持つかによって、"お金"がいろいろと姿形を変化させても、やはりその実体は常に"お金"というモノなんだ。見え方・捉え方が変わってるだけなんだ。」というような感覚で捉えているんじゃないでしょうか・・・

もしそうであるなら、これは全くの誤りです。

貨幣は【資産|負債】の取引の記録です。その発行者にとっては金融負債であり、その所有者にとっては金融資産です。貨幣はモノではありません。貨幣の根源的な本質は「発行者には返すべき "借り"があります。」という情報(データ)です。

  

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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3-7.銀行・財政・国債の仕訳

ここで、現在流通している国債は、政府による過去の財政赤字の結果として発行されたものなので、国債購入に必要な準備預金残高は間違いなく、過去の政府赤字やFRBの非政府部門に対する貸出の結果である。

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目次 

 

仕訳集

 [3-1]から[3-6]まで、たくさんの仕訳が出てきました。

いいかげん訳が分からなくなっていると思いますので、ここらでまとめておきましょう。

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わあ、すごい。たくさんありますね。

ついでなので、リンク集みたいにしておきます。

 

仕訳集の使い方

仕訳集はいろんなプロセスの仕訳の合計のところをかき集めたものですが、これをさらに合計して使うことができます。

この、"全部を合計することで、結局どうなったのかが簡単に分かる"、というのが複式簿記の真骨頂です。

 

国債発行+政府支出+買いオペ

例えば、「政府が国債を発行して、財政支出をしました。国債は後で日銀が買いオペをしました。さて、銀行の日銀預金は増えるでしょうか?減るでしょうか?」

これにパッと何も見ずに答えられたら大したもんです。

そこで仕訳集の出番です。仕訳集から国債発行と政府支出と買いオペを抜き出して、合計すると・・・

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素晴らしい。何がどうなるか一目瞭然です。ということで、銀行の日銀預金は増えます。ついでに言うと、国債と銀行預金も増えます。
 

徴税+国債償還

もう1つくらい見ておきましょうか。
「政府が企業や家計から税を徴収して、国債の償還に充てました。」池上彰さんなんかが、ことあるごとに言ってるクニノシャッキンを返済するプロセスです。
これはどうでしょう。銀行の日銀預金はどうなるでしょう。

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このプロセスでは、銀行の日銀預金は増えも減りもしません。徴税のときにいったん減りますが、国債償還で減った分が帰ってきます。
 

貨幣はどこで生まれるのか

日本円建てで存在している貨幣にはいろんな種類がありますが、このブログのテーマはマクロ経済ですので、重要なのは次の4つです。

  • 銀行預金
  • 日銀預金
  • 国債
  • 現金(紙幣)

 

どこかで誰かが作ってるはず

ある会社員が毎月、自分の銀行口座に給与を支給されてたとします。さて、その振り込まれた給与はどこからやって来たのでしょうか?

勤め先の会社の売上ですよね。じゃあ、その売上はどこから?会社の顧客の所得から?じゃあ、その顧客の所得はどこから?

このどこからどこからゲームは、一見するとキリが無いようですが、いつかは必ず終わるはずです。だって、貨幣の総量は全種類が毎年毎年いまでも増え続けていますから。

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見づらいですが現金紙幣も少しずつ増えてます。

いま世の中にあるカネがぐるぐる回ってるだけなんだったら、ほんとにキリが無い可能性がありますが、貨幣総量が増えてるっちゅうことは、どこかで誰かが貨幣を作ってるんです。

そうでなきゃ辻褄が合いません。

 

なぜこの問いが重要か

この問いは、仕訳集を分析することで答えが見えてきますが、それは次回にして、この問いに対する間違いの代表例が2つありますので、今回記事ではそれを解説します。

「貨幣がどこで生まれるか」がなぜ重要なのかは、その2つの間違いがどういうクレイジー政策につながっているかを知れば分かると思います。

 

付加価値説

「仕事によって付加価値が創出されて、それが売上として具体化されるときに貨幣が増える。」という説です。

少々分かりにくいですよね。まあ間違ってるんで、ピンとこないのは当たり前なんですけどね。これは例えば、100円で原材料を仕入れて、加工して製品を作って、200円で売れたら、100円の付加価値が生まれる、というような感じです。だからその200円はどこから来たんかって聞いとんのよ、っちゅう話で答えになってないんですけどね。

この説が正しければ、みんなが一生懸命仕事をすれば、みんなが黒字になれるはずですが、それが不可能なことは[1-4](マクロ会計の恒等式)で解説したとおりです。

というわけで、これは完全な間違いなわけですが、これをこじらすと、こうなります。

がんばれば黒字になる→がんばってないと赤字になる→赤字は怠け者の証拠! 黒字はえらい!ユニクロが過去最高益だって!?すごい!ユニクロ最高!日本の誇り!お控えなすって!え?なんだって?給与とかのコストカットしただけ?株主配当が増えただけで、きみにとっては1円の得にもなってないよだって?ユニクロの社員の給与が減った分、世の中の消費が減って、むしろきみの所得減ってるよ?やかましいわ。ひがむな貧乏人が。わしの所得は減っとらんわ!20年前からずっと同じや!

挙句の果てには「大阪市をこんなに黒字化させました!(=大阪市民をこんなに貧困化させました!)」とかいう何の自慢にもなってないことを"改革実績"なんつってアピールしてしまい(デマかもしれませんが)、「もっともっと市民を貧乏にしよう!」とかいうワンダーランドに突入してしまうわけです。

oneosaka.jp

 

外貨説

「輸出等で外国からカネを得たときに貨幣が増える。」という説です。だからその外国のカネはどこから来たんかって聞いとんのよ、っちゅう話でこれも答えになってません。

この説が正しければ、外貨を獲得できなければ、日本は経済成長できないということになりますので、とにかく大事なのは"国際競争力"つまり、いかに日本の財・サービスを外国に買ってもらうか、ということになります。

ここで、ガツンと投資して供給能力を高めて、良い製品で勝負するってぇならまだマシなんですが・・・政府と経団連が取った方策は、「コストカットして安売り」でした。結局は同じことです。日本人の所得は20年前から全く増えていません。

さらに悪いことに、誰が言い出したか知りませんが、最近では"インバウンド"で外貨を稼ごう、とかいうのも現れました。

日本の美しい景色や文化をエサにしてカネを落としてもらおう、というわけです。これなら簡単に外貨が稼げます。今まで先人たちが築き上げてくれた財産を切り売りするだけですから。もうね、ほんと情けない・・・いや、外国の人たちに観光に来てもらうのは悪いことじゃないんですよ。ただね、これで「日本経済を浮上させる」とか総理大臣に言われちゃうと、いやー、ちょっとしんどいな。 

www3.nhk.or.jp

 
 
それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

先日、座右の銘を決めました。

「分かりません。間違いました。ごめんなさい。」

詳しいことは控えますが、これが言えなくなったら、人間としての成長が終わるんだなあって実感する出来事があったもので。

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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3-6.国債のオペレーション

財務省口座がFRBにとって負債だとすれば、この口座への流出入は準備預金の残高に影響を与える。例えば、財務省の支出は銀行の準備預金残高を増加させ、租税の受領は残高を減らす。通常、銀行システムの準備預金の増減は翌日物金利に影響を与える。そのため、財務省のオペレーションは、誘導目標レートの設定・維持に関するFRBの金融政策オペレーションと切り離すことができない。

MMT現代貨幣理論入門』kindle版 207/553pp


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目次 

 

日銀の買いオペ・売りオペ

過去に政府が発行して銀行に売った国債を、日銀が銀行から買い上げることを"買いオペレーション"(買いオペ)と言い、その逆を"売りオペレーション"(売りオペ)と言います。実際には、日銀と銀行で直接やり取りするわけではなく、国債市場を通じて取引されますが、本質には影響ないので、直接買い上げるイメージでも構いません。

 

買いオペの仕訳

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前回にも説明しましたが、"貨幣は資産|負債の取引の記録"ですので、資産|負債の仕訳があるところには必ず貨幣発行があるわけですが、買いオペのプロセスには日銀に 資産|負債 の仕訳がありますので、貨幣が発行されています。ここで発行されている貨幣は日銀預金です。

ちなみに、このプロセスは[3-1]で説明した企業・家計が銀行に現金を預け入れるプロセスにそっくりです。銀行への現金預け入れはこちらです。

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ね?そっくりでしょ?

だからどうしたって聞かれたら何もないんですけどね。 

 

売りオペの仕訳

f:id:xbtomoki:20201111115614p:plainこっちでは日銀に負債|資産の仕訳があり、日銀預金が消滅しています。そして、現金引き出しとの類似が見られます。
f:id:xbtomoki:20201111115525p:plain

金利への影響

[3-4]で翌日物金利は、日銀預金利息 < 翌日物金利 < 基準貸付金利、となることを説明しました。翌日物金利の上限・下限は、日銀がコントロールしているわけです。

xbtomoki.hatenablog.com

さて、翌日物金利は、日銀預金利息~基準貸付利率の間を上がったり下がったりするわけですが、これはどういうときに上がって、どういうときに下がるのでしょうか?

 

まずはデータを確認

まずは、データを確認しましょう。2000年からの翌日物金利の推移はこちらです。

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2010~2015あたりが微妙に日銀預金利息 > 翌日物金利 になっとるんですが、それ以外の部分はしっかりと、日銀預金利息 < 翌日物金利 < 基準貸付金利 になっています。

現在、いわゆるマイナス金利政策によって、銀行は日銀預金を増やし過ぎると、その増やし過ぎた分の日銀預金利息が-0.1%になります。つまり、預金者が利息を払ってもらうのではなく、逆に利息を取られます。

その結果、いまの翌日物金利は-0.05%くらいになっています。貸す側が金利を払っているわけですね。日銀預金として持っておくと-0.1%の金利が取られるので、それ以下であれば、利息を払ってでも誰かに借りてもらった方が得だからです。

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日銀預金残高と翌日物金利の関係

それではデータが確認できたところで、本題にいきます。

銀行が翌日物市場へ日銀預金を借りに行くのは、手持ちの日銀預金が不足してしまったときです。なので、何らかの理由で多くの市中銀行が潤沢に日銀預金を持つようになると・・・

  1. 翌日物の借り注文が減る
  2. 少数の借り手と多数の貸し手の構図になる
  3. 借り手はよりどりみどりの貸し手の中から選べるようになる
  4. 貸し手は金利を下げないと競争に勝てなくなる
  5. 金利が下がる

こういった仕組みが働いて金利が下がります。日銀預金保有残高が減れば、これが逆に働くので、翌日物金利は上がります。

【銀行の日銀預金保有残高が増える(減る)→翌日物金利が下がる(上がる)】

 

買いオペ・売りオペと翌日物金利の関係

ここで、買いオペでは日銀預金が発行されて、売りオペでは日銀預金が消滅することを思い出してください。 そして銀行の日銀預金保有残高と翌日物金利には上記の関係がありました。

つまり、

  1. 日銀が買いオペをする
  2. 銀行保有国債が日銀に渡って、銀行の日銀預金残高が増える
  3. 銀行が日銀預金を多く持つようになると、翌日物金利が下がる
これを表にまとめるとこういうことになります。

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よって、日銀は、翌日物金利を下げる目標を立てたときには、買いオペを行い、逆に上げるときには売りオペを行えば、その目標を達成できるということになります。

 

翌日物金利は日銀の掌の上

とすると、ですよ。

日銀は、翌日物金利について、その上限・下限の決定権を持っていて、さらにその上限・下限の範囲内で上がるか下がるかの決定権も持っている。

ということになるわけですから、日銀には翌日物金利をいかようにでもコントロールする権限と能力を(本来は)持っていることになります。翌日物金利は日銀の掌の上っちゅうことですわ。

 

異次元緩和とは

アベノミクスだー!」ってはしゃいでた頃に"異次元緩和"とか"黒田バズーカ"とか"QE"とか言われてたのは何だったのかと言いますと、要するに"超巨額の買いオペ"です。バカみたいに買いオペしまくって銀行の日銀預金を増やしまくったんです。

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安倍政権発足の2012年の40兆から、それまではほぼ横ばいだったのが、どんどん増えて2020年には430兆になっています。それと完全に並行して日銀の国債保有残高も増えています。「買いオペではこの2つが同時に増える」と上で説明したとおりです。
その結果、銀行は日銀預金が不足するということがなくなったので、翌日物市場からは借り手がいなくなり、翌日物金利はダダ下がりとなり、少々買いオペ・売りオペをしたくらいでは、ピクリともしなくなりました。

上記で日銀は買いオペ・売りオペで翌日物金利をコントロールできる、と言いましたが、実は安部さんのおかげで、その仕組みは現在のところ機能不全状態になっています。

なんで安部さんはそんなことしたのかって?一言で言えば「政府が貨幣と経済の仕組みを理解してないから」なんですけど、もうちょっと言うと「銀行の日銀預金が増えると景気が良くなる」という謎理論を信じちゃったからです。

長くなってしまうので詳しいことはまた今度にしましょう。
 

 
それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

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このデータの2010~2015あたりが日銀預金利息 > 翌日物金利になっとった理由は、いろいろ調べましたが分かりませんでした。日銀の買いオペが影響してるのは間違いないと思いますが、なんで預金利息より低いところまで下がったのか・・・

過去に例が無いほど日銀預金残高があふれかえって、さすがに損するとは分かっていても、パニック起こして放置しとくわけにいかない空気になったから・・・?そんなに銀行ってバカかなあ・・・?

誰かご存じの方がいらっしゃいましたら、ご教示いただければありがたいです。

 

 

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3-5.財政政策の仕訳

要約すれば、政府が支出すると、誰かの銀行預金と銀行の準備預金に同時に振込がなされる。課税の場合はその反対で、銀行預金と準備預金から同時に引落としがなされる。国債の売却は、銀行の準備預金からの引落としで決済される。

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目次 

 

財政に関する仕訳を見てみよう

政府の財政政策には、細かいことを言い出せばそれこそ無限のパターンがありますが、大きな視点で捉えれば、つまるところは次の2つ(4パターン)です。

  • 徴税を増やすor減らす
  • 政府支出を増やすor減らす

政府がどーゆー財政政策をすると、どこにどんな影響が出て、それが結局はどういった変化をもたらすか、みたいなのを考える前に、仕訳を確認しておきたいと思います。急がずゆっくりいきましょう。

まずは、徴税と政府支出の仕訳を説明して、ついでに、政府の財政政策には国債が大きく関係してきますので、国債の発行と償還(返済)の仕訳も見ていきます。

 

徴税・政府支出の仕訳

徴税

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当たり前ですが、これは過去記事[3-3.銀行の役割 その3 (引出・振込・納税)]で解説した銀行の納税仲介と全く同じ仕訳です。政府の資産(日銀預金)が増えて、企業・家計の資産(銀行預金)が減るわけですが、その仲介をした銀行の資産(日銀預金)と負債(銀行預金)も減っている点に注意してください。

政府支出

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政府の資産(日銀預金)が減って、企業・家計の銀行預金が増えます。

当たり前だと思うでしょう?でも、財務大臣さんはこれを理解してないみたいです。これを理解してないってことは徴税すると企業・家計の預金が減ることも理解してないかもしれません。いやまさかね・・・

"ネットの声"とやらも理解してないみたいで、そこがさらに気が滅入るわけですけど・・・

news.livedoor.com

さて、今度は徴税のときとは逆に、仲介をした銀行の資産(日銀預金)と負債(銀行預金)が増えています。

さらに言うと、その他の部分も何から何まで、徴税と政府支出は逆の動きになっています。それぞれの合計を並べてみると、このとおりです。

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徴税と政府支出って素朴な感覚だと、別次元に思えてしまいますが、実はこの2つはセットで対を成しています。 

 

財政政策のキモ

徴税と政府支出は真反対ですから、徴税を増やすのと、政府支出を減らすのは本質的には同じことです。

で、徴税を増やすと政府の収益が増えて、政府収支が黒字に傾きます。徴税を減らせば赤字化します。政府支出を増やすと費用が増えて赤字化し、減らせば黒字化します。

但し、支出は政府が決めたとおりに増やすことができますが、税収は税率を上げれば上げただけ増えるとは限らないことには注意が必要です。

つまり、財政政策というものは、突き詰めると、"政府収支を黒字にするか、赤字にするか、黒字(or赤字)にするならば、どのくらいの額にするのか"というものであるわけです。

 

国債の発行と償還の仕訳

国債の発行

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"貨幣は資産|負債の取引の記録"ですので、資産|負債の仕訳があるところには必ず貨幣発行があるわけですが、国債発行のプロセスには政府に 資産|負債 の仕訳がありますので、貨幣が発行されています。ここで発行されている貨幣は国債です。よって、国債は貨幣の一種であり、政府が発行する貨幣ですから"通貨"の一種でもあります。詳しくはこちらの過去記事参照のこと。

xbtomoki.hatenablog.com

 

ちょっと脱線しますが、

国債発行のプロセスでは、銀行の日銀預金が減り、その分だけ政府の日銀預金が増えます。これはこういうふうに理解できます。

  • 政府は、貨幣(国債)を創り出して、銀行の日銀預金と貨幣同士で交換している。
  • 銀行は、手持ちの余剰の日銀預金を国債に振り替えている。

ここで、銀行にとっては、国債も日銀預金も金融資産であることには変わりありません。但し、銀行にとっての国債と日銀預金はこんな違いがあります。

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3-3のとおり、銀行は日常業務をこなすのに必要な日銀預金が不足すると、まずいことになりますので、ある程度の日銀預金を常にキープしておかなければなりません。しかし、その"ある程度"をキープしてしまえば、それ以上の余剰金を日銀預金として持っておくメリットはありません。
そこで、銀行はこの余剰金を国債として持っておきたいと考えます。国債として持っておけば利息がもらえるメリットがあるからです。
これは、個人が日常の家賃とか電気代の支払に使う分のカネは普通預金口座に入れておいて、それ以上は定期預金口座に移して、多く利息を得ようとするのに似ています。
銀行が政府の発行した国債を買うのは、収集癖とかボランティア精神によるものではなく、余剰金の運用先として最適だからです。
 

国債の償還

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"貨幣は資産|負債の取引の記録"ですので、逆の 負債|資産の仕訳があるところには必ず貨幣消滅があるわけですが、国債償還のプロセスには政府に 負債|資産 の仕訳がありますので、貨幣(国債)が消滅しています。
 

 

それでは本日ここまで。

 

 

おまけ

本日のおまけは独り言です。

ネットニュースでもテレビのニュースでも、最近よく「ネットの声」なるものが紹介されますけど 、あの手口にすごい嫌悪感があります。違和感じゃないです。嫌悪感です。すごく嫌な気持ちになります。

ネットの声って、それこそいろんな意見があるわけで、それの中から自分の主張とか立場に都合いいのをピックアップしただけですよね、あれ。

それを「こんなのもありました。」なら百歩譲ってまだマシですけど、だいたいは「みんなこう言ってます」の体で出てるのがね。もうほんときもい。自分の意見があるなら堂々と言いなよ。やり方が卑怯っちゅうか、こすいっていう言葉がぴったりくる。

あーもー、やーねー。やだわー。もーほんとにいや。

 

 

日本人は本当はもっと豊かになれます。そのためにはもっと多くの人々が貨幣と経済の仕組みを理解しなければなりません。

私たちが、そして次世代の子供たちが、貧困に怯えずに暮らせる日本を目指しましょう。

 

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